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物流・運送業界のM&A・事業承継の動向と事例

物流・運送業界では人材不足・2024年問題への対応や3PLなどのサービス拡大を目的としたM&Aが盛んです。M&Aによって、譲渡企業は「積載率向上や経営再建の実現」、譲り受け企業は「物流統合やドライバー・拠点の確保」などのメリットを期待できます。

物流・運送業界の現況

定義

物流・運送業は日本標準産業分類では「運輸業」と呼ばれ、以下のような業種が含まれます。

業種

定義

一般貨物運送(一般貨物自動車運送)

トラックなどによる貨物運送

軽貨物運送(貨物軽自動車運送)

軽自動車・バイクによる貨物運送

ハイヤー・タクシー(道路旅客運送)

ハイヤー・タクシーによる旅客運送

バス・貸切バス(道路旅客運送)

バスによる旅客運送

外航海運

日本・外国間の港を結ぶ船舶による旅客・貨物運送

旅客・観光海運(沿海海運)

国内の港を結ぶ旅客(日本人客・訪日外国人客)運送

航空運送

航空機による旅客・貨物運送

港湾運送

港湾内における荷役・はしけ運送・いかだ運送

鉄道運送

鉄道による旅客・貨物運送

倉庫

倉庫での物品管理

梱包・仕分け

運送のための物品荷造り

運送代理店

運送契約締結などの代理

貿易仲介

国内外輸出入業者間の貨物売買取引を仲介

その他運送関連サービス

運送施設運営、貨物利用運送(貨物運送の契約・管理を行い、実際の運送業務は他社に委託)など

近年では運送関連サービスが多様化し、関連業種も含めて「物流業」と総称されることが多くなっています。

市場規模・環境

国内貨物輸送量は下図のように近年ほぼ横ばいで推移してきましたが、2020年にはコロナ禍によりBtoB向け貨物が打撃を受け、全体の輸送量が押し下げられる結果となりました。

※数量が少ないため、「航空」のジャンルはグラフから除外
図:国内貨物輸送量(トンベース=輸送重量、トンキロベース=輸送重量×輸送距離)
出典:我が国の物流を取り巻く現状と取組状況(経済産業省)を基に弊社作成

国内貨物輸送のうち宅配便の輸送量はEC市場規模の拡大に伴い急速に伸びており、コロナ禍も輸送量を急激に押し上げる働きをしました。[1]

近年、大手を中心に運送事業の多角化・総合化の動きがあり、とくに3PLと呼ばれる事業形態が拡大しつつあります。

3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは、他社の物流プロセスに関する戦略策定やシステム構築・改革の提案などを行い、物流業務を包括的に請け負う事業を言います。

車両・物流施設などを保有して実際の運送業務も行う「アセット型」と、そうした資産は保有せずにノウハウ提供や貨物利用運送を通して事業を展開する「ノンアセット型」があります。

業界の課題・展望

物品を必要なときに必要な量だけ配送するというニーズが一般化したことで、運送の小口多頻度化(1件当たりの貨物量の小口化と配送の頻回化)が進行しています(下図)。
小口多頻度化は積載率の低下を引き起こしており、とくにトラック運送は平均積載率40%以下という低水準で推移しています。[1]

出典:我が国の物流を取り巻く現状と取組状況(経済産業省)を基に弊社作成

また、運送サービス価格(サービス利用者側から言えば物流コスト)が近年上昇傾向にあり、とくに輸送量が急激に伸びている宅配便のサービス価格が高騰しています。
こうした背景から、運送事業者・運送サービス利用企業の双方にとって運送・物流の効率化が大きな課題となっています。

こうした流れと並行して、運送業の労働力不足が顕在化しており、とくにトラック輸送におけるドライバーの不足や平均年齢上昇が問題となっています。

2024年4月1日以降、働き方改革関連法に基づき自動車運転業務(トラック・タクシー・バスなどの運転を主とする業務)に対して年間時間外労働時間の上限規制(960時間まで)が開始されます。[2]

従来、自動車運転業務はドライバーの長時間残業を前提として成り立っていた面があり、これを変えるには業界全体の変革が求められるでしょう。時間外労働の上限規制でドライバーの労働環境が改善されるかどうかは不透明です。

業界としては、労働力不足の中でさらなる人材確保が求められるだけでなく、長距離運送のための中継拠点の確保などが必要になることから、上限規制は経営環境を圧迫する要因となり、人材不足に拍車をかける結果となる、という見方が優勢なようです。

こうしたことから、ドライバーの時間外労働上限規制導入は運送業界における「2024年問題」として深刻に受け止められています。
中長期的には、運送手段の脱炭素化やSDGsへの対応が大きな課題となっていくと思われます。

運送業界のM&A動向

M&Aの件数・規模

トラック運送会社を初めとする物流会社のM&A件数は、下図のように2000年から2018年にかけて上昇傾向を示しました。
ここ数年においてもM&Aは活発で、この流れは今後も続くものと見られます。

出典:M&Aでみる日本の産業新地図 第171回物流業界(MARR Online)を基に弊社作成

M&Aが行われている背景

以下のような業界の課題や個々の事業者の課題に対応するために、M&Aが活用されています。

  • 小口多頻度化への対応強化や物流効率化・積載率改善の必要性
  • 大手・準大手による事業拡大ニーズ
  • 3PL事業の開拓など、事業の総合化・多角化の必要性
  • 人材確保や2024年問題への対応の必要性
  • 競争激化・人材不足進行・コロナ禍などの影響下にある中小事業者の生き残り
  • 経営者高齢化と後継者不在問題

M&Aの成功可能性を高めるポイント

譲渡企業が重視すべき要素

  • ドライバーなどの人材の離職防止
  • 労務状況の明確化、コンプライアンス強化
  • 業務状況(積載率、空車回送率、燃料コストなど)の明確化
  • 財務状況の明確化、資産保有や資金の流れにおける経営者個人・会社の明確な分離
  • M&A・事業承継の早期検討
  • 自社と相性のよい譲り受け企業の選定
  • 事業引継ぎ・統合を容易にするための環境・仕組み作り

譲り受け企業が重視すべき要素

  • 事業内容・物流拠点・輸送対応地域・人的資源などの面で自社と相補う関係にあり、経営統合により大きなシナジーが期待できる譲渡企業の選定
  • M&A成立後を視野に入れた戦略策定・譲渡企業選定・交渉・契約
  • 譲渡企業が抱えるリスク(例:輸送量や燃料費の変動、財務上の問題、ドライバーの労務問題)の精査と対応の検討
  • 譲渡企業の価値やM&A成功の見込みに対する現実的で具体的な分析
  • 譲渡企業の経営方針や組織風土、職場環境、労使関係などへの配慮
  • 雇用継続など、譲渡企業の希望条件への配慮

運送業界でM&Aを行うメリット・デメリット

メリット

譲渡企業

  • 積載率向上、人材確保、2024年問題への対応など、自社単独では解決が困難な課題について、譲り受け企業の経営資源を活用することで改善が期待できる
  • 譲り受け企業グループの一員となることで、より大規模な物流サービスの一翼を担ったり、3PLなどの新しいサービスに参入したりすることが可能になる
  • 後継者不在であっても事業承継が可能
  • 譲り受け企業の信用力により、個人保証の解除が可能
  • 会社を売却し引退するオーナー経営者は、大きな売却益を生活や起業の資金として活用できる

譲り受け企業

  • 事業成長を加速できる
  • 国内外の物流拠点・物流網を獲得することで事業規模を拡大できる
  • 物流統合により効率化・コスト削減が図れる
  • ドライバーや拠点の確保により、人材不足解消や2024年問題への対応強化が図れる
  • 新しい業種への参入や、3PLなどの総合的な事業の開拓が可能

デメリット

譲渡企業

  • 経営統合がうまく行かず、事業がかえって非効率化したり、事業成長が見込めなくなったりする場合がある
  • 社内の反発、人材流出、取引先との関係悪化などが起こる恐れがある
  • 譲り受け企業の子会社となる場合、現経営陣の経営権は多かれ少なかれ制限される
  • 相性のよい相手企業がなかなか見つからない場合もある

譲り受け
企業

  • 譲渡企業のリスクを引き継いでしまう恐れがある
  • 経営統合が難航し、コストがかさんで、想定より高い買い物になってしまう場合がある
  • M&Aの失敗で多額の損失が生じるケースもある

運送業界のM&A事例・インタビュー

主な有名事例

M&Aが行われた時期

譲渡企業・譲り受け企業の概要

M&Aの目的・背景

M&Aの手法・成約

2022年7月

譲渡企業:M・Kロジ

譲り受け企業:丸和運輸機関

譲り受け企業:D2C企業向け3PL事業のノウハウを有する譲渡企業をグループ化し、EC物流事業を強化

手法:株式譲渡

結果:丸和運輸機関がM・Kロジの全株式を取得

取得価額:40億4400万円[3]

2022年4月

譲渡企業:東日本急行

譲り受け企業:ハマキョウレックス

譲り受け企業:両社の物流ノウハウを組み合わせ、3PLを中心とする物流サービスの付加価値を向上

手法:株式譲渡

結果:ハマキョウレックスが東日本急行の発行済株式79.6%を取得[4]

2022年3月

譲渡企業:イオンネクストデリバリー

譲り受け企業:SBSホールディングス

譲渡企業:譲り受け企業のノウハウ提供を受け、次世代型オンラインスーパーマーケット事業の物流サービスを確立

譲り受け企業:ラストワンマイル物流(最終拠点から消費者までの物流)の強化

手法:出資

結果:SBSホールディングスがイオンネクストデリバリーに出資

出資額:4,900万円[5]

[1] 我が国の物流を取り巻く現状と取組状況(経済産業省)
[2] 自動車運転業務の時間外労働上限規制の適用に向けた取組(厚生労働省)
[3] 第50期第1四半期報告書(丸和運輸機関)
[4] 東日本急行株式会社の株式の取得(ハマキョウレックス)
[5] イオンネクストデリバリーへの出資(SBS HD)

M&Aサクシードで成約した事例

M&Aサクシードでご成約された、物流・運送業界の成功事例をご紹介します。

物流・運送業界に関連する業界でも成約が生まれています。

譲渡
一般貨物運送業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    1億円~2億5,000万円
株式譲渡
譲り受け
一般貨物運送事業・倉庫業等
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    10億円~25億円
譲渡
好立地倉庫 3PL事業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    2億5,000万円~5億円
株式譲渡
譲り受け
運送業・物流業等
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    10億円~25億円
譲渡
一般貨物自動車運送業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    中部地方
  • 売上高
    2億5,000万円~5億円
株式譲渡
譲り受け
物流総合企業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    中部地方
  • 売上高
    10億円~25億円
譲渡
一都三県対象 運送業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    1億円~2億5,000万円
株式譲渡
譲り受け
食品中心配送業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    5億円~10億円
譲渡
一般区域貨物運送業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    北海道地方
  • 売上高
    2億5,000万円~5億円
株式譲渡
譲り受け
総合物流企業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    5億円~10億円
譲渡
一般貨物自動車運送業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    2億5,000万円~5億円
株式譲渡
譲り受け
一般貨物運送事業・派遣業等
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    10億円~25億円
譲渡
一般貨物運送事業・食品加工業
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    2億5,000万円~5億円
株式譲渡
譲り受け
アパレル小売・OEM等
  • 業種
    日用品
  • 地域
    四国地方
  • 売上高
    2億5,000万円~5億円
譲渡
貨物運搬業・産業廃棄物処理
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    1億円~2億5,000万円
株式譲渡
譲り受け
物流・海運・倉庫業等
  • 業種
    運送業
  • 地域
    南関東地方
  • 売上高
    10億円~25億円

物流・運送業界のM&A案件一覧

M&Aサクシードに掲載されている物流・運送業界のM&A売却・事業承継案件のうち、企業様に許可をいただいた一部案件の基本情報のみを掲載しています。会員登録(無料)すると全ての売却案件情報が閲覧できます。

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