賃貸・リース業のM&A・事業承継の動向と事例
賃貸・リース業の分野では、成長分野への進出や事業規模の拡大を目的としたM&Aが活発です。M&Aにより、譲渡企業は成長性の高い事業への集中、譲り受け企業は海外進出による安定的な収益確保などのメリットを期待できます。
賃貸・リース業の概要
定義
賃貸・リース業には、主に以下の業種が含まれます。
- 自動車賃貸、リース業
- 物品賃貸、リース業
市場規模・環境
物品賃貸業全体の市場規模は以下のとおり推移しています。[1][2]
出典:令和3年経済センサス‐活動調査(e-Stat)、経済構造実態調査(e-Stat)を基に弊社作成
自動車賃貸業のみの市場規模は以下のとおり推移しています。[1][2]
物品賃貸業全体の市場規模は横ばいである一方で、自動車賃貸業単体で見ると拡大傾向です。
出典:令和3年経済センサス‐活動調査(e-Stat)、経済構造実態調査(e-Stat)を基に弊社作成
リース業の市場規模(リース取扱高)は以下のとおり推移しており、やや減少傾向と言えます。[3]
出典:リース統計 2021年度(公益社団法⼈リース事業協会)を基に弊社作成
2021年度のリース設備投資額(連結ベース)における「所有権移転外ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の構成比は以下のとおりです。[3]
出典:リース統計 2021年度(公益社団法⼈リース事業協会)を基に弊社作成
課題・展望
賃貸・リース業には以下に挙げた課題があります。
- 国内需要の頭打ち
- 業者間の競争激化
- 低金利政策に伴うリースの優位性低下
- 半導体不足や感染症流行による設備投資の先送りなどを理由とした業績悪化
上記課題を受けて、賃貸・リース業では以下の取り組みに対する重要性が高まっています。
- 海外市場への進出
- 安定的な収益や今後の成長が期待できる分野(エネルギー領域など)への多角化
- 同業他社との連携
賃貸・リース業のM&A動向
M&Aが行われている背景
賃貸・リース業では、以下の目的・戦略によりM&Aが活用されています。
- 大手企業への傘下入り、同業他社の買収による市場での生き残り、事業規模の拡大
- 後継者不足の企業による事業承継
- 成長や安定的な収益を見込める新規事業への進出
- 海外進出
- 自社事業とのシナジー創出
賃貸・リース業でM&Aを行うメリット・デメリット
メリット
譲渡企業 |
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譲り受け企業 |
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デメリット
譲渡企業 |
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譲り受け企業 |
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賃貸・リース業のM&Aを成功させるポイント
譲渡企業
- ニーズがある商品や将来性の高い商品の取り扱いを強化する
- 商品開発や営業力などの強みを確立し、M&Aの際には譲り受け企業にアピールする
- 負債比率などの財務状況、回収サイト、リース料率などに問題があれば改善しておく
- 事業が成長しているタイミングで早めにM&Aの準備を進めておく
- 賃貸・リース業のM&Aを得意とするアドバイザーや仲介会社を起用する
譲り受け企業
- 商品ラインナップや運営事業の安定性、将来性を重視する
- 自社事業とのシナジー効果を見込める譲渡企業を選定する
- 法務や財務上の問題、賃貸・リース業に特有の問題を精査する
- デューデリジェンスの結果をもとに買収可否や買収額を検討する
- 買収後のPMI(経営統合)を慎重に行う
賃貸・リース業のM&A事例・インタビュー
主な有名事例
M&Aが行われた時期 | 譲渡企業・譲り受け企業の概要 | M&Aの目的・背景 | M&Aの手法・成約 |
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2020年4月 | 譲渡企業:ヤマトリース 譲り受け企業:芙蓉総合リース | 譲渡企業・譲り受け企業:両社が有するノウハウ等の組み合わせによる競争力強化、事業領域の拡大 | 手法:株式譲渡 結果:芙蓉総合リースがヤマトリース株式の60%を取得し、同社を子会社化 取得価額:約36億円(アドバイザリー費用等込み)[4] |
2021年11月[5] | 譲渡企業:CAI International, Inc. 譲り受け企業:三菱HCキャピタル | 譲り受け企業:海上コンテナリース事業の拡大、安定的なリース需要の獲得など[6] | 手法:株式譲渡 結果:三菱HCキャピタルがCAI International, Incの全株式を取得し、同社を子会社化 取得価額:約1,264億500万円[5] |
2018年10月 | 譲渡企業:グランド山形リース 譲り受け企業:フィデアホールディングス | 譲り受け企業:提供ソリューションの品揃え充実化、グループ全体の収益力強化 | 手法:株式譲渡 結果:フィデアホールディングスがグランド山形リースの全株式を取得し、同社を子会社化 取得価額:16億2,600万円[7] |
[1] 令和3年経済センサス‐活動調査(e-Stat)
[2] 経済構造実態調査(e-Stat)
[3] リース統計 2021年度(公益社団法⼈リース事業協会)
[4] ヤマトリースを対象とする株式譲渡契約の締結(芙蓉総合リース)
[5] CAI社の買収完了(三菱HCキャピタル)
[6] CAI社の買収(三菱キャピタル)
[7] グランド山形リースの株式取得(フィデアホールディングス)