教育・学習のM&A・事業承継の動向と事例
教育・学習分野では少子化やデジタル化を背景にM&Aが活発に行われています。M&Aにより譲渡企業は事業基盤安定化や事業承継を実現でき、譲り受け企業はシェア拡大や次世代型教育サービスの推進などを図ることができます。
教育・学習の概要
定義
以下の教育・学習施設が該当します。
- 学習塾
- 音楽教室
- 外国語学校
- 日本語学校
- 資格学校(国家資格などの取得を目的とした教育施設)
- スポーツ・健康教授業(各種スポーツ・体操・ヨガなどの教室)
- PCスクール(PC操作やプログラミング、Webデザインなどの教室)
- その他教養・技能教授業(料理教室、ダンス教室、教養講座など)
- 自動車教習所
市場規模・環境
当業種全体の月間売上高(年平均)は以下のように推移しています。[1]
2020年はコロナ禍で大きく落ち込み、2021年には回復が見られたもののコロナ禍以前の水準には戻っていません。
出典:サービス産業動向調査年報 事業活動の産業(中分類)別売上高(e-Stat) を基に弊社作成
少子化・人口減少の流れにより教育・学習分野の需要は中長期的に縮小していくことが予想されますが、子供1人あたりの学習塾費は近年上昇傾向にあり[2]、コロナ禍においても同様の傾向が見てとれます[3]。
学習塾市場は当面のところ安定的に推移するものと予想されます。
出典:子供の学習費調査 年次統計(e-Stat)を基に弊社作成
eラーニング(オンライン授業やデジタルコンテンツによる教育・学習)は近年成長が顕著であり、コロナ禍も追い風となりました。[4]
出典:eラーニング市場に関する調査を実施(2022年)(矢野経済研究所)を基に弊社作成
社会人のリカレント教育(学び直し)も少しずつ市場が拡大しています。[5]
出典:リカレント教育市場に関する調査を実施(2021年)(同上)を基に弊社作成
課題・展望
需要の中心は集団・画一式教育からパーソナライズ教育(個人ごとのニーズに合わせた学習プログラム・個別指導)へと移ってきています。
人口減少社会のなかでサービスの差別化と単価向上を図るためには、この傾向をさらに推し進める必要があると考えられます。
授業のオンライン化や、AI・ビッグデータを用いた個人別学習プログラムの提案、学習者の進捗状況・モチベーションの可視化など、デジタル技術をベースとした教育サービス(EdTech)が徐々に広がりを見せています。
EdTechは教育のパーソナライズ化にとって欠かせない手段です。
今後の教育・学習分野の発展はパーソナライズ化とEdTechが鍵になると考えられますが、そうした流れの中で、人と人が直に向き合って行う教育・学習のよさをデジタル技術といかに融合・連携させていくかも重要な課題となるでしょう。
教育・学習のM&A動向
M&Aの件数・規模
学習塾および専門学校のM&A件数は以下のとおり推移しています。
参考:「学習塾・専門学校業界のM&A動向(3)」1-8月期、5割増。ベネッセHD、事業改革推進(MARR Online)を基に弊社作成
M&Aが行われている背景
- 業容拡大(地盤や顧客年齢層の拡大)
- オンライン授業・EdTechの導入・拡大
- 講師などの人材の確保、採用力向上
- 経営者高齢化・後継者不在のなかでの事業承継
- コロナ禍で悪化した事業の立て直しや切り離し
教育・学習でM&Aを行うメリット・デメリット
メリット
譲渡企業 |
|
---|---|
譲り受け企業 |
|
デメリット
譲渡企業 |
|
---|---|
譲り受け企業 |
|
教育・学習のM&Aを成功させるポイント
譲渡企業
- 人材の離職防止・モチベーション向上、労務状況の明確化
- 財務状況の明確化、オーナー個人の資産と法人資産の明確な分離
- M&A・事業承継の早期検討
- 需要変化や当該業種の動向を踏まえた、相性のよい譲り受け企業の選定
譲り受け企業
- 経営統合により大きなシナジーが期待できる譲渡企業の選定
- M&A成立後を視野に入れた戦略策定・譲渡企業選定・交渉・契約
- 譲渡企業が抱えるリスクの精査と対応の検討
- 譲渡企業の企業価値やM&A成功の見込みに対する現実的で具体的な分析
教育・学習のM&A事例・インタビュー
主な有名事例
M&Aが行われた時期 | 譲渡企業・譲り受け企業の概要 | M&Aの目的・背景 | M&Aの手法・成約 |
---|---|---|---|
2022年11月 | 譲渡企業:learningBOX 譲り受け企業:①ベネッセホールディングス、②チェンジ | 譲渡企業:EdTech事業の拡大[6] 譲り受け企業①:学習成果アセスメントCBT化サービスの推進[7] 譲り受け企業②:DX事業の推進[6] | 手法:資本業務提携 結果:ベネッセホールディングスとチェンジが個別にlearningBOXに出資し資本業務提携を開始 出資価額:2.5億円(2社合計) |
2021年10月(株式取得)、2023年4月(株式追加取得予定) | 譲渡企業:ボーダーリンク 譲り受け企業:レアジョブ | 譲渡企業・譲り受け企業:外国語指導助手(ALT)派遣事業とオンライン英会話事業の融合による事業拡大 | 手法:株式譲渡 結果:レアジョブがボーダーリンク株式の49%を取得して協業を開始し、株式追加取得によりボーダーリンクを完全子会社化[8] |
2021年7月 | 譲渡企業:綜合教育センター 譲り受け企業:学研エデュケーショナル | 譲り受け企業:幼児教育事業への本格参入、幼児から高校生までを指導する体制の構築 | 手法:事業譲渡 結果:学研エデュケーショナルが綜合教育センターより「知能教育 めばえ教室」の事業を譲り受け[9] |
[1]サービス産業動向調査年報 事業活動の産業(中分類)別売上高(e-Stat)
[2]子供の学習費調査 年次統計(e-Stat)
[3]学習塾の動向;少子化とコロナ禍の影響(経済産業省)
[4]eラーニング市場に関する調査を実施(2022年)(矢野経済研究所)
[5]リカレント教育市場に関する調査を実施(2021年)(同上)
[6]learningBOX社と資本業務提携(ベネッセHD)
[7]ベネッセホールディングス、チェンジより資金調達(learning BOX)
[8]ボーダーリンク完全子会社化を決定(レアジョブ)
[9]「知能教育 めばえ教室」の事業譲受(学研エデュケーショナル)
M&Aサクシードで成約した事例
M&Aサクシードでご成約された、教育・学習の成功事例をご紹介します。
教育・学習に関連する業界でも成約が生まれています。
- SES・受託開発業
- 業種
- 人材紹介・派遣業
- 地域
- 中部地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 教育サービス運営等
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 近畿地方
- 売上高
- 50億円~100億円
- 国家試験対策予備校
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 調剤薬局運営等
- 業種
- 調剤薬局、化学、医薬品業
- 地域
- 中部地方
- 売上高
- 25億円~50億円
- システム開発業
- 業種
- IT、WEB、通信業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 教育事業・医療事業等
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 100億円以上
- 放課後デイサービス・学習支援
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 中部地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 保育事業・携帯電話販売事業等
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 幼児向け英語教育業
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 保育業、教育事業等
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- SES企業
- 業種
- 人材紹介・派遣業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 教育関連事業等
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円以上25億円未満
- 英語教育・学童保育事業
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 学習塾・予備校等運営
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 50億円~100億円
- バイリンガル保育・学童運営
- 業種
- 教育、幼児教育、保育業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 人材紹介・技術者派遣等
- 業種
- 人材紹介・派遣業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 25億円~50億円
教育・学習のM&A案件一覧
M&Aサクシードに掲載されている教育・学習のM&A売却・事業承継案件のうち、企業様に許可をいただいた一部案件の基本情報のみを掲載しています。会員登録(無料)すると全ての売却案件情報が閲覧できます。
教育・学習に関連する記事一覧
教育・学習に関連するM&A記事をご紹介しています。
学習塾のM&A動向・事例13選・メリット
少子化などの影響により、学習塾業界ではM&Aが活発です。学習塾のM&Aでは、優秀な講師確保やサービスの質向上などのメリットを得られます。学習塾によるM&Aの動向や最新事例、メリットを詳しく解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)
学習塾の売却相場・売却金額算出方法とM&A動向を解説
学習塾における売却金額の相場は、教室数や生徒数、ブランド力などによって左右されます。学習塾のM&A動向と売却金額の相場・算出方法、高額売却を実現するポイント、近年の売却事例をくわしく解説します。(執筆者:京都大学文学部卒の企業法務・金融専門ライター 相良義勝)
英会話教室のM&Aの動向とメリット・デメリット【事例10選】
英会話教室・英会話スクール・語学学校のM&Aの動向やメリット・デメリットを、業界の現状と絡めて解説します。近年市場が拡大しているオンライン英会話や幼児・子供向け教室のM&Aもくわしく取り上げます。
登録企業は審査を通過した法人のみ。匿名で情報を掲載できるので安心です。
着手金、中間手数料はゼロ、ご利用料金は成約するまで無料、
専門のコンシェルジュがサポートしますので、お気軽にお問合せを。