- 埼玉県
- 物流
- 自動車整備
- 奈良県
全国に100拠点以上、トラック2,000台以上保有する物流グループであるフジトランスポート株式会社(旧・富士運輸株式会社)は、「M&Aサクシード」を通じて、後継者不在だったトラックの整備工場を運営する株式会社 FLPを、交渉開始からわずか2カ月後の2021年2月にM&Aしました。フジグループのM&A実績は12社(うち「M&Aサクシード」経由で2件)。フジグループは、従業員の労働条件の向上を最優先にしながら、事業を拡大することで、業務効率化やコスト削減を図り、高収益を実現。本件の譲渡オーナー様も「社員が前よりもはつらつとしていて、うれしい」と喜ばれています。そこで、M&Aの経緯やフジグループに入るメリットについて、フジトランスポート株式会社 代表取締役の松岡 弘晃様と株式会社 FLP元代表の齊藤 清一郎様に伺いました。(2021年5月公開)
経営に積極的にM&Aを取り入れ、業務効率化、コスト削減を実現
――フジグループはこれまで数多くM&Aされていますね。その背景について教えてください。
松岡(フジトランスポート) フジグループは、トラック輸送をメインに長距離輸送の「ロジスティクス・プロバイダー」として、2035年には、大型トラックの保有台数を5,000台にすることを目標に掲げています。
1978年に創業した当社は、現在グループ全体で年商393億円(2020年6月決算)、トラック2,090台保有、 従業員約2,345名、全国に105ヵ所の拠点を保有するほか、トラック販売の会社やシステム開発会社、自社整備工場も完備し自社トラックの車検整備も内製化しています。
今後も大型トラックでの輸送ビジネスに特化し、最近厳しくなりつつある労務管理にも対応するためにさらに全国に拠点を持ちたく、経営にM&Aを積極的に取り入れています。過去に12社のM&A実績があり、 この1年弱(2020年6月~2021年3月)だけでも、運送会社3社、運送事業部1社、整備会社2社をM&Aしました。M&Aサクシード経由は、今回のFLPさんのほか、埼玉県の別の自動車整備工場も合わせて2件です。
――フジグループの強みについて教えてください。
松岡 フジグループの強みは3つあります。一つ目は、全国に広がる拠点があり、多くのトラックを保有していること。二つ目は、自社整備工場に投資し、業務効率化とコスト削減できること。また、ITシステムを内製化し、空車率を低減できること。三つ目は、インタンク(自社内燃料タンク)を全国に30箇所以上設置し、コスト削減を実現できること。これらにより、高収益を実現しています。
――FLPさんの事業概要について教えてください。
齊藤(FLP) 約20年弱、埼玉県でトラックの修理・整備工場を9名(私以外に事務2名、整備士6名)で運営してきました。主な業務は、トラック修理・整備、車検、トラックの販売・買い取りです。
当社の強みは、お客さまの車両管理体制、人件費の負担を当社が代行し、大切な財産である車輛の維持管理をすることで修理費の削減、車両の代替え期間の延長を実現できることです。お取り引き先として、東証一部上場物流企業様が複数社あり、多くのお客様からご利用いただいていました。優良事業所として、陸運局から表彰を受けた実績もあります。
30代の工場長をはじめ整備士の年齢も若く、整備に対する研究心も旺盛で、技術力もあり、ボデー修理、事故車両の修理、レッカー移動なども引き受けていました。
――第三者承継を検討した背景について教えてください。
齊藤 子どもは3人いますが、全員承継するのが難しく、後継者不在で、3年ほど前から80歳になったら譲渡しようと考えていました(現在81歳)。
以前から大手物流会社から引き継ぎたいという話があったのですが、3年経ってもなかなか決まらないので、インターネットで「事業譲渡」と検索したところ、「M&Aサクシード」を見つけて、2020年10月末に自分で登録しました。
以前、別の運送会社を経営していたときに第三者承継をしたことがあり、そのときは大手仲介会社に依頼したのですが、手数料に2,000万円かかりました。今回は登録無料の「M&Aサクシード」にしようと思いました。
社長同士が直接やりとりし、2カ月で株式譲渡
――登録してからはどのように進んだのですか?
齊藤 「M&Aサクシード」で、6社からオファーがあって、2社よさそうな会社がありました。2社のホームページを見て、この会社だったら社員を大切にしてくれそうだと思って、12月末にフジトランスポートさんにメッセージを送りました。すると、松岡社長からすぐに返信がありました。メッセージのやりとりのなかで、「ぜひ工場を見てみたい」とのことでした。文章に松岡社長の素晴らしい人間性が表れていました。そこで、電話したところ、半月もしないうちに来てくださることになり、どんどん進みました。
松岡 私自身がいつも「M&Aサクシード」をはじめ、さまざまなマッチングサイトを日々見たりしているので、スピーディに意思決定できています。そして、当社は、自己資金による決済、追加の再投資により、早期の収益改善を実現しています。
齊藤 それで、松岡社長が来てくださり、整備工場なので普通なら工場を見るところ、まずは会社のトイレを見に行きました。当社はトイレを普段からきれいにしているのですが、トイレを使うのかなと思ったら、ドアを空けてすぐ閉めました。そして、松岡社長が「トイレがきれいな会社は、整理整頓ができていて、しっかりした会社ですね」とおっしゃいました。
それから工場を見に行って、社員と挨拶をして(うちの社員は挨拶をしっかりするほうなのですが)、私と20~30分話しました。そして、松岡社長から「ぜひよろしくお願いします」と言われました。それで、私もその場で「良いご縁になりますように」と返答しました。
――お互いにその場で決断するというのは、すごいことですね。
齊藤 松岡社長は私と似ているところがあって、私も若い頃と同じようなことをやっていました。それは「即断即決」です。今まで生きてきて、誠実な人かどうかは表情を見ればわかるようになっていて、松岡社長だったらいいなと第一印象で感じたのです。その後、社内の手続きなども経て、松岡社長から後日正式にオファーがありました。2月半ばには最終契約を締結したので、最初のやりとりから2カ月でした。決断が速すぎて、今までの約3年は何だったのかと思ったほどです。
――松岡社長がFLP様を魅力に感じた点は何ですか?
松岡 関東から関西は日本でもっとも物流が集中するエリアで、トラックの往来も多い場所です。関東エリアは主要幹線のなかでも重要で、当グループの支店も集中しています。また、関越自動車道 所沢ICに近い入間郡三芳町は都心へのアクセスがよく、今後ますます増車するトラックの車検やメンテナンスが必要になるので重要な整備のポイントとなる場所のひとつです。
社員の家族に手書きの手紙を送り、理解を得る
――FLPの社員の方々にはどのように伝えたのですか?
齊藤 松岡社長が当社にいらしたときは、経理の2人は勘づいていたようですが、他の社員には伝えていませんでした。決まってから少しずつ話をしていったところ、動揺した社員もいました。
そこで、私から社員のご家族全員に手書きの手紙を渡しました。というのも、社員だけでなく、社員の家族も大事だと思うからです。その手紙に、「今のFLPとフジトランスポートさんとは、こんな違いがある。今までは小さい会社だったが、これからは大きなグラウンドで思いっきりプレイできる。大きなグラウンドでプレイできれば、それだけの収入も増えるし、ご主人も大きくなれますよ。絶対に家族の皆さんには不幸にしないので」と書きました。手紙を読んで泣いてくれた奥さんもいたみたいです。それで社員も「やってみよう」ということで気持ちが固まったようです。
―― 社員の方の雇用のほかにも譲渡金額などいろいろあると思いますが、何が決め手でしたか?
齊藤 もちろん(譲渡)金額も大切なことですが、社長の人柄が一番大切です。松岡社長は整備士の出身でもあり、整備のことに非常に詳しいし、整備の人の気持ちもわかってくれるなと。そして、トラックをたくさんもっている会社で、どんどん成長している企業だということでした。今、前よりも社員がはつらつとしていて、うれしいです。
――M&Aサクシードを使ってみての感想をお聞かせください。
松岡 日々自らサイトへ目を通すようにしていますが、全国のさまざまな物流会社の情報をスピード感をもって取得でき、交渉もスムーズに進む点が使いやすいと感じています。また、今回は手数料も安価に取り組むことができて満足しています。今回に限らず、ご一緒していただける企業様とはこれからも接点をもたせていただきたいと思っています。
齊藤 「M&Aサクシード」は売り手の気持ちになってくれてよかったです。担当の方が非常に丁寧にやってくれました。親切にやってくれたので今でも感謝しています。それに売り手はまったく手数料がかからなかったことが大きいです。契約の締結なども、当社の経理担当者がしっかりやってくれたので、専門家には依頼せず費用はかかりませんでした。
今後も積極的にM&Aを検討するフジグループ
――フジグループでは、今後もM&Aを積極的に検討するそうですが、どのような企業と一緒になりたいですか?
松岡 全国地域を問わず、大型トラックでの中距離・長距離輸送の企業さまや、それに付随するシナジー効果が期待できる企業さまを探しています。また、FLPと同様、トラックの車検整備ができる整備工場も募集しています。今後も年間複数件のM&Aを予定しています。
――フジグループに入ると、どんなメリットがあるのですか?
松岡 当グループと一緒になっていただく企業さまに対しては、先程説明した当社の強みを提供することでドライバーや管理職の安定確保ができています。 また、お取引先さまには適正運賃の収受や法令順守について相談し、実現していきます。
当グループの管理職の大半はドライバー経験があり、乗務員と管理者の関係も良好です。トラックの導入も最新の安全性の高い装備のトラックを導入し、乗務員の労働条件の向上を最優先に従業員ファーストを徹底しています。 後継者不在による事業承継の悩みをはじめ、事業継続・成長に対して課題をお持ちの企業様からのご相談をお待ちしております。
――齊藤さまは、これからどんなふうに過ごされるのですか。
齊藤 社長退任後も顧問を務めていますが、実は今、それとは別に新しい事業を準備していて、すでに会社登記もしました。私は今まで28回仕事を変えていて、もともとは整体師でした。お年寄りが腰が痛い、膝が痛いといろいろあるので、そういう人を早く、みんなで治し合って、元気でいられるよう、いろいろ取り組んでいきたいと思っています。
――これから新たな事業を開始されるのですね!最後にこれから事業の譲渡を検討する経営者の方へメッセージをお願いします。
齊藤 譲渡するときは人間、非常に迷うものです。迷いは必ずありますが、とにかく決断は早ければ早いほうがいいです。これから事業の譲渡を検討する会社が増えてくると思いますが、M&Aサクシードなら喜んでもらえる人が多くなると思います。私の生の声として、お勧めしたいです。