- 埼玉県
- 運送
- 神奈川県
化粧品や雑貨の配送を行うA社(神奈川県)と食品の配送を行うB社(埼玉県)が一緒になることで事業拡大を狙った、運送会社同士のM&A事例です。お子さんが大学を卒業し、これからは新しいことに挑戦したいと考えたA社の譲渡オーナー(50代)。事業拡大をしてより大きくなった企業をお子さん(5年前に入社し現在専務)に事業承継すべく、M&Aを検討したB社社長。エリアと荷物の種類が異なる両社が一緒になった経緯やシナジー効果についてお話を伺いました。(2021年6月公開)
上場企業と直接取引する営業黒字の運送会社と出会う
――B社様の事業概要とM&Aを検討された背景について教えてください。
B社(譲り受け企業) 当社は創業約30年、埼玉県に本社を置き、食品の配送を得意としています。 配送先はスーパーマーケットやラーメン店、レストラン、ドラッグストアなどです。
M&Aを検討することになったのは、私のこどもが5年前に当社に入社し(現在専務に就任)、事業を拡大してこどもに引き継ぎたいと考えたためです。そこで、関東圏の運送会社や食品の倉庫会社を探しはじめました。
――過去にM&A経験はありますか?
B社 はい。7、8年前に知人からの紹介で、当事者同士でM&Aを行いました。知人からの紹介ということもあり、デューデリジェンス等の調査や価格の精査もせずM&Aを実行しました。結果として統合がうまくいかず、譲り受けてから3、4年で手放したことがあります。その経験があったため、今回は3名の専門家(中小企業診断士、公認会計士、社労士)に調査を依頼しました。M&A後も本件を担当した専門家が、PMI(M&A後の統合プロセス)がうまくいっているかを気にかけてくれて、3カ月たった今もたまに連絡してきてくれています。M&Aサクシードには、M&Aサクシードと同じVisionalグループのトラボックスからの紹介で登録しました。
――A社様の事業概要について教えてください。
A社(譲渡企業) 上場企業や大手化粧品メーカーとの長期の直取引があり、1都3県と一部大阪を中心に営業していました。保有トラックは2トン車、3トン車、4トン車、軽の計10台、ドライバーは30代から50代の10名弱で構成しています。
上場企業や大手化粧品メーカーに対し、承継先が人員・車両に余力があれば更なる取引拡大が見込めました。
また、資産はほぼ現預金・売掛債権・トラックのみと非常に軽く、営業黒字かつ純資産プラスで財務内容もよい方だと思います。かつ、過去、違反点数の累積や行政処分を受けた経歴は一切ありません。
のれん代がどれほど評価されるかを試し、希望金額で評価される
――第三者承継を検討した背景について教えてください。
A社 私は54歳で、娘2人は継ぐ意志がまったくありませんでした。21歳から32歳まで大手運送会社で働いて、32歳で独立し、当社の会社設立からは20年超経過しています。3年前頃から事業にふんぎりをつけて、自分の会社ののれん代がどれほど評価してもらえるのかと思って試してみたところ、自分が希望とする金額で評価されました。そのこともあり、スパッとやめようと決心しました。あとはもう一つ、運送業しかやってこなかったので、ほかのことがしたいという思いもありました。
M&Aサクシードに登録する前は、そのように評価してもらえるとは期待しておらず、あと最低5年くらいはがんばらないといけないかなと思っていました。
私はのれん代にはすごくこだわっていました。というのも、当社の取引は9割以上が元請けです。大手運送会社で働いていたときに、元請けと下請けの差を見てきたため、元請けでの取引に非常にこだわりがありました。現在取引のある元請け先については、すべて飛び込み営業で新規開拓した先です。そこから何年もかけて取引先を増やしていきました。元請けの取引が多いということは非常に価値があることだと思っていましたので、のれん代にもよい影響を与えるはずだと考えました。
――M&Aサクシードはどうやって知ったのですか?
A社 あるM&A会社から私宛にメールが来て、大手企業さんが当社をM&Aしたいという打診があったのですが、話を聞こうとするも進捗が無く、進みませんでした。そこからM&Aが気になりはじめ、今度は大手M&A仲介会社の話も聞いたところ、手数料が高くて手元にほとんど残らないと言われました。
そういった時に、利用していたトラボックスでM&Aの宣伝を見かけて連絡してみたところ、それがM&Aサクシードでした。2020年5月にM&Aサクシードに登録しました。
従業員、取引先、企業名を引き継ぐM&A
――登録後はどのようなプロセスがあったのですか?
A社 登録2週間以内に12社からオファーがあり、私が提示した金額で検討してくれる企業様がいるのか、意向表明書提出を依頼したところ、2社から満額でご提出いただけました。まさかこんな形で評価してくれるとは思ってもいませんでした。
そこで、2社とトップ面談をすることになったのですが、1社様はコロナ禍では当社を評価しづらいということで断念されました。そこで、B社様と面談しました。1社目の方と面談した後だったので間が空いたし、またコロナ禍という理由できっとM&Aは検討してもらえない、どうせだめだと思っていました。
しかし、B社様が当社をコロナ禍であっても評価してくださり、かつ、従業員や取引先、企業名もそのまま維持してくれるとのことで、譲渡を決めました。B社様とは3回社長にお会いしました。その後はスムーズに契約まで移行できました。引き継ぎも従業員にも挨拶が終わっていますし、取引先にも先にお伝えしたうえでB社様に引き継いだので、スムーズでした。
――A社様がよいと思った決め手は何ですか?
B社 当社は埼玉県にあり、A社は神奈川県にあります。そして、当社の荷物は食品ですが、A社は雑貨などです。両社が一緒になれば、エリアを拡大でき、神奈川地区の食品の仕事を増やす、埼玉での雑貨の仕事を増やす相乗効果がある、うまくやれば伸びると判断しました。
M&Aを検討するにあたって、数社とトップ面談しましたが、そのなかでもA社様は譲渡オーナーの第一印象がよかったです。譲渡オーナーから、「引き継ぎ期間が終わっても電話1本で助けに来てくれる」と言ってくれて、M&Aを決断しました。実際、譲り受け後も助けてもらってありがたく思っています。
また、A社のNo.2の方がしっかりしていたこともあります。その方は、現在、所長に任命してA社の運営を任せています。会社名、従業員、取引先のすべてをそのまま引き継ぎました。
――M&Aサクシードを利用してみた感想をお聞かせください。
B社 スピード感をもって対応してもらえてよかったです。今回は最初のやりとりから5カ月で最終契約を締結できましたが、これがもし1年、2年とかかると、お互いの意向が変わってしまうこともあるので。そして、契約締結の2カ月後に譲り受けました。
A社 12社からオファーがあり、2社も私の提示した金額で検討してくれて、よかったです。交渉もスムーズに進めることができました。
――A社様は、第三者承継して今のお気持ちは?これからどんなふうに過ごされるのですか。
A社 第三者承継してよかったです。運送会社はトラックの購入等投資が大きすぎるので、どうしてもリースや借入など借金をする必要があります。今回譲渡したことで、そういった債務から離れ、株式譲渡対価が手元にくるわけですから。
今は空いた時間で株式投資をしています。もともと仕事をしながら少しやっていたのですが、今は自由になる時間が増えたので、いろいろセミナーなどを聞きながら、勉強しています。
自社がどれくらい評価されるか、企業の健康診断感覚で登録してみては
――最後にこれから事業の譲渡を検討する経営者の方へメッセージをお願いします。
A社 のれん代はふたを開けてみないとわからないものです。自分の会社がどれくらい評価されるのか、企業の健康診断のような感覚でまずはM&Aマッチングサイトに登録してみることをオススメします。登録無料なので、そこからどうするか考えればいいのではないでしょうか。
――B社様は今後もM&Aを積極的に検討されますか?
B社 はい。後継者不在企業が多いなか、従業員の雇用を守っていくことが大切です。そのようななか、当社はM&Aによる事業の拡大を経営の一つの選択肢と考えています。メインで探しているのは、関東圏で冷蔵・冷凍車を保有している食品関係の運送事業様や一般貨物系の事業者様です。ほかにもよい案件があれば、食品の配送センター、梱包・倉庫業様も検討したいです。
――これからM&Aを検討される企業様へメッセージをお願いします。
B社 私の周囲の物流会社でもM&Aをしたことがあるという企業が増えてきています。M&Aでは、特に譲渡オーナーの方の人間性を確認することが大切だと思います。トップ面談でしっかりと確認することをおすすめします。