飲食店・テイクアウト・デリバリーのM&A・事業承継の動向と事例
飲食店、テイクアウト、デリバリー業(飲食業)では、人材の獲得などを目的としたM&Aが活発です。M&Aによって、譲渡企業は「従業員雇用の維持」、譲り受け企業は「未展開地域での営業基盤の拡大」などのメリットを期待できます。
飲食業の現況
定義
飲食店、テイクアウト、デリバリー業(以下、飲食業)には、顧客の注文に応じて調理した飲食物・その他の食品・飲料をその場所で提供する事業所、顧客の注文に応じて調理した飲食物をその場所で提供又は顧客の求める場所に配送する事業所、調理した飲食物を顧客の求める場所で提供する事業所が主に該当します。
具体的には以下の業種が含まれます。
業種 | 定義 |
---|---|
洋食レストラン | 主食を中心とした様々な洋食の提供 |
居酒屋・バー | 居酒屋:主に店内でアルコール飲料と料理を提供 バー:主に洋酒と料理を出し、客に娯楽と食事の提供 |
カフェ・喫茶店 | 主にコーヒー・紅茶・ソフトドリンク等の飲料と簡単な食事の提供 |
焼肉・ステーキ | 主に焼肉(自ら網で焼くもの)をその場所で飲食させ、又は、ステーキを提供 |
寿司・日本料理店 | 主に特定の日本料理(そば・うどんを除く)や寿司をその場所で提供 |
ラーメン店 | 主にラーメンをその場所で提供 |
そば・うどん | 主にそばやうどんをその場所で提供 |
中華料理店 | 主に中華料理をその場所で提供 |
その他飲食店(自社ブランド) | 主に大福・今川焼等、他に分類されない飲食料品を自社ブランドで提供 |
テイクアウト・デリバリー | テイクアウト:飲食することを主たる目的とした設備を有さず、客の注文に応じその場所で調理した飲食料品を持ち帰る状態で提供 デリバリー:その事業所内で調理した飲食料品を客の求める場所に届ける、又は、客の求める場所において調理した飲食料品を提供 |
フランチャイジー | フランチャイザー:フランチャイズ(一般的には本部が加盟者に対して、特定の商標・商号等を使用する権利を与えるとともに、加盟者の物品販売等について統一的な方法で指導等を行い、これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態)の加盟店を募集する本部 |
フランチャイザー | フランチャイジー:フランチャイズの加盟店 |
市場規模・環境
コロナ前である2019年における外食産業全体の市場規模は26兆2,684 億円です。[1]
2021年においてはその83.2%に減っています。[2]


参考:外食産業市場規模推計の推移(日本フードサービス協会)を基に弊社作成
業界の課題・展望
飲食業全体に共通する課題として、少子高齢化による需要の低迷、労働力不足と長時間労働及びそれに伴う従業員の管理、仕入と在庫管理・レジと帳簿作成・予約・店舗業務の効率化、新規顧客とリピーター・ロイヤルカスタマーの獲得、参入障壁の低さ等が挙げられます。
少子高齢化等により国内市場が縮小する中、大都市圏企業等の大型店・チェーン店・コンビニエンスストアの参入により競争が激化し、価格下落により飲食業を取り巻く事業環境は厳しさを増しています。
消費者ニーズを的確に把握し、創意工夫を凝らした事業展開が求められています。
長時間労働も大きな問題です。休暇を取りやすくするなどして、従業員を確保する必要があります。
また、セルフサービスや発券機の導入により、従業員の業務負担を軽減する努力も必要です。
外国人在留資格の拡大やシニア人材の活用など、労働力の確保も重要です。
参入障壁の低さも課題として挙げられます。飲食業には新規出店に厳しいルールがないため出店しやすい、出店に必要な初期投資が比較的少ないなどの特徴があるからです。近年、景気後退を背景に競争が激化し、価格競争が起きていると思われます。
今後は、消費者が重視する付加価値を高め、適切な価格水準を維持するよう業界として取り組んでいく必要があります。
飲食業のM&A動向
M&Aの件数・規模
M&A Onlineのデータによると、飲食業全体のM&A件数(2022年1-7月)は4件で、2021年の13件(1-6月は7件)の3分の1ほどに留まっています。[3]

参考:外食・フードサービスの2021年(2021年1月1日~12月21日)のM&A 件数、金額ともに過去10年間で最低に(M&A Online)、ラーメンなどの外食産業のM&Aが過去最高に(M&A Online)を基に弊社作成
M&Aが行われている背景
飲食業では、主に以下の目的・戦略でM&Aが活用されています。
- 資本強化
- 人材の確保
- 海外進出
- 規模の経済性
- サービスの充実
M&Aの成功可能性を高めるポイント
譲渡企業が重視すべき要素
- 売上不足の解消
- 不採算店舗をなくす
- 店舗を拡大するためのリソース
- 後継者問題の解消
- 本業への集中
- 飲食業以外への挑戦
- 会社のさらなる成長
譲り受け企業が重視すべき要素
- 店舗の立地・コンセプト・メニュー価格等がマッチしているか
- 店舗ごとの損益管理、売上単位での顧客コスト管理
- 周辺に強い競争相手の存在するか
- スタッフの教育体制(マニュアルなど)、処遇体制
- 調達ルートや食料品の価格の安定性
飲食業でM&Aを行うメリット・デメリット
メリット
譲渡企業 |
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譲り受け企業 |
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デメリット
譲渡企業 |
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---|---|
譲り受け企業 |
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飲食業のM&A事例・インタビュー
主な有名事例
M&Aが行われた時期 | 譲渡企業・譲り受け企業の概要 | M&Aの目的・背景 | M&Aの手法・成約 |
---|---|---|---|
2018年3月 | 譲渡企業:ビー・ワイ・オー 譲り受け企業:日本KFCホールディングス | 譲り受け企業:新たな事業機会及びシナジーの創出 | 手法:資本提携 結果:KFCホールディングスによる議決権比率が25%となる[4] |
2021 年1月 | 譲渡企業:大将軍 譲り受け企業:木曽路 | 譲り受け企業:付加価値の高い商品・サービスを提供できる | 手法:株式譲渡 結果:完全親子会社化[5] |
2019 年 9 月 | 譲渡企業:Il Fornaio (America) LLC 譲り受け企業:社クリエイト・レストランツ・ホールディングス | 譲り受け企業:北米での事業展開の加速に繋がる | 手法:持分取得 結果:子会社化 取得価額:約79.4億円[6] |
[1]外食産業市場規模推計の推移(日本フードサービス協会)
[2]外食産業市場動向調査 (日本フードサービス協会)
[3]外食・フードサービス業界のM&A (maonline.jp)
[4]ビー・ワイ・オーとの資本・業務提携(kfc.co.jp)
[5]大将軍の株式の取得(子会社化)(木曽路)
[6]北米におけるレストラン運営会社の持分取得(子会社化)(クリエイト・レストランツ・ホールディングス)
M&Aサクシードで成約した事例
飲食店・テイクアウト・デリバリーに関連する業界でも成約が生まれています。
- ゴーストレストラン事業
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 経営コンサルティング業
- 業種
- サービス業(法人向け)
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 4店舗展開 和食レストラン
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 自動車部品等卸販売
- 業種
- 金属・プラスチック
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- 都心高単価焼肉店
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 車両製造・販売
- 業種
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 25億円~50億円
- ベーカリーショップ
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 中国地方
- 売上高
- 5億円~10億円
- 飲食業・建設業等
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 中国地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- 大衆和牛居酒屋 7店舗
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 飲食FC展開・コンサルティング等
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 中国地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- ワイン専門商社
- 業種
- 飲食料品
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 婚礼・レストラン等運営
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 中国地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- ハワイアンカフェ2店舗
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 中部地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 外食事業・福祉介護事業等
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- 関東に展開する居酒屋7店舗
- 業種
- 飲食業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 食品加工製造業
- 業種
- 飲食料品
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
飲食店・テイクアウト・デリバリーのM&A案件一覧
M&Aサクシードに掲載されている飲食店・テイクアウト・デリバリーのM&A売却・事業承継案件のうち、企業様に許可をいただいた一部案件の基本情報のみを掲載しています。会員登録(無料)すると全ての売却案件情報が閲覧できます。
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飲食店M&Aのメリット、売却価格相場、事例
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