空運・海運・港湾物流のM&A・事業承継の動向と事例
空運・海運・港湾物流のM&Aは、船員の獲得などを目的として活発に行われています。M&Aによって、譲渡企業は「運送ルートの継続」、譲り受け企業は「運送ルート・ノウハウの獲得」のメリットを得られます。
空運・海運・港湾物流の概要
定義
飛行機や船を利用し、人や荷物を国内間、海外間で輸送する事業全般を指します。
外航海運、旅客・観光海運、航空運送、港湾物流が該当します。
市場規模・環境
空運
2017〜2021年における航空輸送量(国内定期)は以下のとおり推移しており、減少傾向であると言えます。[1]
ここ数年において自然災害などの影響で減少傾向であった輸送量は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年には更に大きく減少しました。[2]
出典:航空輸送統計調査(e-Stat)を基に弊社作成
海運
日本は島国であり、貿易量の99.6%[3]は外航海運が担っています。
商船隊の数は2019年に2,405隻[3]であり、うち267隻[3]が日本籍船です。
商船隊の数の過去5年の推移は下記のとおりで、緩やかな減少傾向となっています。
出典:外航海運の現状と外航海運政策(国土交通省)を基に弊社作成
港湾物流
2016〜2020年度において、港湾運送量(船舶積卸し量)は以下のとおり推移しており、2016〜2019年は横ばい傾向であったものの、2020年は減少しています。
出典:資料12-4 港湾運送量の推移(国土交通省)を基に弊社作成
課題・展望
人材不足
たとえば海運業では、労働環境が悪く船員がなかなか増えない問題を抱えています。
2019年における日本人の船員は2,174人であり[3]、1974年の56,833人[3]をピークに大幅に減少しています。
なお、過去5年の日本人の船員数は下記のとおり横ばい傾向です。
出典:外航海運の現状と外航海運政策(国土交通省)を基に弊社作成
また、以下のとおり港湾物流業でも人手不足が課題となっています。
2019年度と比べると不足感は薄れているものの、依然として4割弱の事業者では人材が不足している状況です。[4]
出典:2020年度 港湾労働者不足に関する実態調査(国土交通省)を基に弊社作成
燃料の高騰
空運、海運は原油を燃料に運送を行っているため、原油高の局面では利益が減少する傾向にあります。
燃料高を理由にすぐに輸送価格に転嫁することは困難であり、空運、海運のビジネスは市況に影響を受けやすいビジネスと言えます。
今後、温室効果ガスの削減や自動運航船、ビックデータの活用などを行い、様々な方面でのイノベーションへの取り組みが求められています。[3]
空運・海運・港湾物流のM&A動向
M&Aの件数・規模
運送業界全体のM&A件数は以下のとおり推移しています。[5]
当業界に含まれる空運・海運・港湾物流業のM&Aに関しても、活発に行われていると考えられます。
出典:M&Aでみる日本の産業新地図 第171回物流業界(MARR Online)を基に弊社作成
M&Aが行われている背景
この事業領域では、主に以下の背景でM&Aが活用されています。
- 船員の確保
- 運送ルート、対象港の拡大
- 船などの輸送機の獲得
- 管理機能の統合によるコスト削減
空運・海運・港湾物流でM&Aを行うメリット・デメリット
メリット
譲渡企業 |
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譲り受け企業 |
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デメリット
譲渡企業 |
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譲り受け企業 |
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空運・海運・港湾物流のM&Aを成功させるポイント
譲渡企業
- 船、航空機の整備状況を確認しておく
- 長期輸送のスケジュールがある場合、事業に影響が出ないよう期限を区切って交渉を進める
- ルート別、輸送機別のKPIデータなど、デューデリジェンスの際に求められる可能性の高い各種データを整備しておく
- 船長、船員に対して上手く事業承継できるよう慎重にコミュニケーションを取る
譲り受け企業
- 過去の事故履歴や安全マニュアルを確認しておく
- 船長や船員の経歴を確認し、今後何年間勤務できるのかを明らかにする
- 過去数年間に大規模な修繕が実施されていない場合は、修繕費を買収コストに加算して投資回収できるかの意思決定を行う
- 譲渡企業の経営分析を行い、実績数字が企業の実力値なのか、市況による影響なのかを慎重に見極める
空運・海運・港湾物流のM&A事例・インタビュー
主な有名事例
M&Aが行われた時期 | 譲渡企業・譲り受け企業の概要 | M&Aの目的・背景 | M&Aの手法・成約 |
---|---|---|---|
2022年3月 | 譲渡企業:佐渡汽船 譲り受け企業:みちのりホールディングス | 譲り受け企業:佐渡と本土間の人流・物流の発展を狙う | 手法:第三者割当増資 結果:みちのりホールディングスが佐渡汽船の株式66.7%を取得[6] 取得価額:15億円[7] |
2020年7月 | 譲渡企業:北日本海運 譲り受け企業:栗林商船 | 譲り受け企業:青函フェリーの一層の一体運営 | 手法:株式譲渡 結果:栗林商船が北日本海運の株式100%を取得[8] 取得価額:20億円[8] |
2019年11月 | 譲渡企業:北日本航空 譲り受け企業:FPG | 譲り受け企業:新規事業への参入により事業の多角化を狙う | 手法:株式譲渡 結果:FPGが北日本航空の株式100%を取得[8] 取得価額:非公開[9] |
[1] 航空輸送統計調査(e-Stat)
[2] 我が国の国内航空貨物輸送の動向(国土交通省)
[3] 外航海運の現状と外航海運政策(国土交通省)
[4] 2020年度 港湾労働者不足に関する実態調査(国土交通省)
[5] M&Aでみる日本の産業新地図 第171回物流業界(MARR Online)
[6] 佐渡汽船への出資(みちのりホールディンス)
[7] 佐渡汽船へみちのりホールディングスが15億円出資(日経新聞)
[8] 北日本海運の株式の取得(栗林商船)
[9] 北日本航空の株式の取得(FPG)
M&Aサクシードで成約した事例
空運・海運・港湾物流に関連する業界でも成約が生まれています。
- 一般貨物運送業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 一般貨物運送事業・倉庫業等
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- 好立地倉庫 3PL事業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 運送業・物流業等
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- 一般貨物自動車運送業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 中部地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 物流総合企業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 中部地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- 一都三県対象 運送業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 食品中心配送業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 5億円~10億円
- 一般区域貨物運送業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 北海道地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 総合物流企業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 5億円~10億円
- 一般貨物自動車運送業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 一般貨物運送事業・派遣業等
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
- 一般貨物運送事業・食品加工業
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- アパレル小売・OEM等
- 業種
- 日用品
- 地域
- 四国地方
- 売上高
- 2億5,000万円~5億円
- 貨物運搬業・産業廃棄物処理
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 1億円~2億5,000万円
- 物流・海運・倉庫業等
- 業種
- 運送業
- 地域
- 南関東地方
- 売上高
- 10億円~25億円
空運・海運・港湾物流のM&A案件一覧
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