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金属・プラスチック製造・卸のM&A・事業承継の動向と事例

金属・プラスチック製造業では技術・人材の獲得等を目的としたM&Aが活発です。M&Aによって、譲渡企業は「大手・中堅企業との有力グループ形成」、譲り受け企業は「金型技術や優秀な人材獲得」等のメリットを期待できます。

金属・プラスチック製造業の現況

定義

金属業には鉄鋼や非鉄金属等の金属精錬製品を原材料として、金属部品や最終製品に加工し、販売する事業所が該当します。
プラスチック業には、押出成形機や射出成形機等で成形された成形品を製造する事業所、そしてこれらの製品の切断・接合等を行う事業所、さらにこれらの製品をリサイクルする事業所が含まれます。

金属・プラスチック製造業には、主に以下の業種が含まれます。

業種

定義

金型設計・製造

プラスチック・ゴム・金属といった素材を流し込むための「金型」の製造・販売

金型卸売

金型の卸売

金属切削・プレス・鋳造

金属切削:金属を所定の大きさに切断して次工程に送る

プレス:金属材料を金型に入れ、加工機で一定の荷重をかけて切断・変形させる

鋳造:高純度の金属材料を熱で溶かして型に流し込み、冷却・凝固させる

製缶板金

鉄やステンレス等の金属板を切断・曲げ・溶接して、容器や枠状の構造物を製造

金属部品製造

プレートやフラットバー等の金属部品の製造

金属部品卸売

プレートやフラットバー等の金属部品の販売

その他金属等加工

上記以外の金属等加工

プラスチック射出成型

プラスチック材料を加熱し、適切な成形条件(樹脂温度・射出圧力・金型温度等)を設定し、溶融したプラスチック材料を高圧で金型に流し込み成形

その他プラスチック加工

射出成形法以外の押出成形法・移送成形法等でプラスチックを加工

プレス加工

プラスチック成形の一種で、金属板を金型に押し付けて成形

ゴム加工

ゴム素材を加工して目的の形状に成形

表面処理(メッキ、研磨、塗装等)

素材の表面に処理を施すことにより、硬度・耐性・絶縁性・断熱性・密着性・装飾性等を向上させる

冶具製造

加工時に加工対象物を固定し、加工をガイドする補助機能を持った装置である治具の製造・販売

バルブ・ポンプ

液体を低いところから高いところに移動させる機械であるポンプとポンプのメンテナンス時にライン内の液体の流出を止めるバルブの製造・販売

その他鋳造

先述した鋳造を主として実施

市場規模・環境

経済産業省が発表した「2020年工業統計表 産業別統計表データ」によると、2019年の金属製品業界の市場規模(従業者4人以上の事業所の製造品出荷額等)は15,965,293(百万円)です。
従業者4人以上の事業所数は25,094​​で、その従業員数は612,427人です。[1]

参考:2020年確報 産業別統計表(経済産業省)を基に弊社作成

またプラスチック製品製造業界(一部除く)の2019年の市場規模(従業者4人以上の事業所の製造品出荷額等)は12,962,929(百万円)です。
従業者4人以上の事業所数は12,119で、その従業員数は451,650人です。[1]

参考:2020年確報 産業別統計表(経済産業省)を基に弊社作成

業界の課題・展望

金属業界

金属製造・卸売の製品の約7割は自動車産業や電子・電気機器産業向けであり、両産業の影響を直接受ける構造となっているため、新たな需要源の開拓が必要です。[2]
特に自動車産業においては、電気自動車の開発が進み、その生産に必要な金属加工が不要になることが想定されています。

今後必要とされる製品・技術としては、ヘルスケアや宇宙産業における海外製品との差別化製品、IoTに対応した新製品、金属3Dプリンター等の高付加価値製品・新材料加工技術・高精密加工技術、微細加工技術等の新技術が挙げられます。

  • 金型設計・製造業界の課題:受注価格の下落、受注量の減少、最終市場の縮小、人材育成と技術承継等
  • 金属部品製造の課題:ニーズの多様化への対応、IT技術と効率化等

プラスチック業界

プラスチック射出成形業界の動向ですが、プラスチック業界全体の売上高は、海外移転や安価な輸入品の増加の影響を受けており、業界では減少傾向にあります。

フィルム・シート業界は、商社の海外移転や安価な輸入品の増加等により、企業数が減少傾向です。
機械・設備・部品業界においては、アジア諸国の低価格製品に対抗するため、海外で大量生産・加工・組立が可能な製品が求められています。

その他プラスチック加工の内、ブロープラスチックに関する世界市場について見てみると、ブロープラスチック市場は、BRICS諸国の建設・自動車・包装が牽引しています。2021年から2028年にかけて世界市場は成長していくと予測されています。

Covid-19の世界的な流行により、様々な医薬品・消毒剤・除菌剤等の需要が増加し、医療用途のブロー成形樹脂の需要が高まっていると言えるでしょう。

金属・プラスチック製造業のM&A動向

M&Aの件数・規模

金属・プラスチック製造業のみを集計したM&A件数・規模に関するデータはありません。
したがって、ここでは「製造業全体」の件数を紹介します。
M&A Onlineによると、製造業全体のM&A件数(2020年)は174件でした[3]。2016〜2020年までの件数は以下のとおり推移しています。

出典:M&Aの主役交代!? 「製造業」が「サービス業」にトップの座を譲る(M&A Online)を基に弊社作成

M&Aが行われている背景

金属・プラスチック製造業では、主に以下の背景があり、M&Aが活用されています。

  • 新しい技術習得
  • 事業拡大
  • 海外への販路開拓
  • 生産拠点の獲得
  • 経営基盤の強化

M&Aの成功可能性を高めるポイント

譲渡企業が重視すべき要素

  • 金型技術の有無
  • メッキ業の場合は土壌汚染に注意する必要がある。他の産業では、脱脂工程で使用される溶剤の使用歴にも注目する必要がある。
  • 財務状況の改善(借入金等)
  • 業務プロセスの自動化の進展
  • 信用情報の収集
  • 不採算の顧客や製品の取引
  • 余剰在庫

譲り受け企業が重視すべき要素

  • 優秀な人材の有無
  • 発注⇒購入⇒販売⇒回収の流れ
  • 売掛回収の遅延の有無
  • 顧客の範囲(特定の業種等に集中していないか)
  • 業界再編や取扱商品の価格変動に対応できる体制の有無
  • 会計情報の正確性(定期的な棚卸しの有無等)
  • 金型技術の有無(特に金型設計・製造業界)
  • 特許の保有状況や得意とする技術の競争力(特に金属部品製造業界)
  • 生産ラインの自動化・省人化・省力化の状況・生産性・成形の品質(特にプラスチック射出成型業界)
  • 高品質・高付加価値製品に対するニーズ(特にその他プラスチック加工業界)

金属・プラスチック製造業でM&Aを行うメリット・デメリット

メリット

譲渡企業

  • 会社の存続
  • 従業員の雇用の保護。従業員の家族の生活も守ることに繋がる。
  • 大手の販売力・知名度の活用
  • 財務基盤の安定
  • 大手の資本を利用できる

譲り受け企業

  • 生産拠点および生産技術の取得(金型技術等)
  • 優秀な人材の獲得
  • 販売チャネルの獲得。
  • 経営基盤の強化
  • 事業展開のスピード化

デメリット

譲渡企業

  • 会社や事業を希望する条件での売却や買い手を見つけることが可能とは限らない
  • 株式を譲渡すると、経営者としての立場を失う
  • 従業員や顧客等のビジネスパートナーから反対される可能性

譲り受け企業

  • 偶発債務またはオフバランス債務を引き受けるリスク
  • シナジー効果は必ずしも期待通りには得られない
  • 買収後の事業運営がうまくいかず、投資資金を回収できないリスクがある

金属・プラスチック製造業のM&A事例・インタビュー

主な有名事例

M&Aが行われた時期

譲渡企業・譲り受け企業の概要

M&Aの目的・背景

M&Aの手法・成約

2022年3月

譲渡企業:神戸製鋼所

譲り受け企業:丸の内キャピタル(三菱系投資会社)

譲渡企業:業容拡大、事業成長、企業価値の向上

手法:株式譲渡

結果:丸の内キャピタルが神戸製鋼所を完全子会社化

取得価額:約120億円[4]

2021年10月

譲渡企業:栗山アルミ

譲り受け企業:コンドーテック

譲渡企業:アルミ商材の獲得、グループの持続的成長

手法:株式譲渡

結果:コンドーテックが栗山アルミ株式の75.7%を取得し、同社を子会社化[5]

取得価額:非公表

2019年10月

譲渡企業:森田鋼材

譲り受け企業:小野建

譲り受け企業:技術やノウハウ、顧客基盤、取引先などの確保

手法:株式譲渡

結果:小野建が森田鋼材を完全子会社化[6]

[1]2020年確報 産業別統計表(経済産業省)
[2]各産業分野の今後の動向 (内閣府)
[3]「製造業」が「サービス業」にトップの座を譲る (maonline)
[4]連結子会社の異動(株式譲渡)及び特別損失の発生(神戸製鋼)
[5]栗山アルミの株式取得(子会社化)(コンドーテック)
[6]森田鋼材株式会社の株式の取得(完全子会社化) (小野建)

M&Aサクシードで成約した事例

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