サービス業界(個人向け)では、少子化によるでの受講生顧客の争奪戦、コロナ禍における事業構造の変化への対応などを目的としたM&Aが活発です。M&Aにより、譲渡企業は「ブランド力の強化」、譲り受け企業は「人材の獲得」などのメリットが得られます。
サービス業界(個人向け)の現況
定義
サービス業界(個人向け)には、「美容・理容サービス」、「冠婚葬祭」、「教育・学習」、「幼稚園・保育園・その他」の業種が含まれます。
具体的には以下の業種が該当します。
業種 |
詳細 |
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美容・理容サービス |
エステ、マッサージ・整体・接骨・鍼級、美容院・理髪店、ネイル・まつエクサロン、その他美容サービス |
冠婚葬祭 |
葬儀、婚礼 |
教育・学習 |
学習塾、音楽教室、外国語学校、日本語学校、資格学校、スポーツ・健康教授業、PCスクール、その他教養・技能教授業、自動車教習所 |
幼稚園・保育園・その他 |
幼稚園、保育園(保育所)、託児所、その他乳幼児向け教育・施設 |
市場規模・環境
美容・理容サービス
2020年度の理美容市場規模は前年度比92.7%の1兆9,700億円となっています。[1]
コロナ禍新型コロナウイルス感染症によりの顕著な影響を受けており、来店間隔の長期化などから大幅な減少となっています。
出典:理美容市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)を基に弊社作成
また、2021年度におけるエステティックサロンの市場規模は、前年度比97.6%である3,270億円の見込みです。[2]施術分野がコロナ禍新型コロナウィルスの影響で減少した一方で、物販分野は在宅時間増加などで下支えをした結果、理美容市場よりも落ち込みは少なくなっています。
出典:エステティックサロン市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)を基に弊社作成
今後は、少子高齢化進行と出生率の低下などによる人口減少により、また、外出が減少していることから市場は微減傾向が継続すると考えられます見込まれています。
また、労働人口の減少により、人材獲得が難しい局面を迎えています。
冠婚葬祭
2020年におけるブライダル関連の市場規模は、1兆2,708億円となっています。[3]
コロナ禍において挙式披露宴の中止・延期が相次ぎ大幅な減少となりました。
ただし、2021年は市場が回復傾向にあります。[3]
出典:ブライダル市場に関する調査を実施(2022年)(矢野経済研究所)を基に弊社作成
また、2020年度の国内葬祭ビジネスの市場規模は、前年比83.1%の1兆5,060億円です。[4]
コロナ禍新型コロナウィルスの影響などの影響によりを受け、平均単価が減少したことなどでの影響により、減少しています。
出典:葬祭ビジネス市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)を基に弊社作成
コロナ禍新型コロナウィルスの影響を正面から受けたブライダル市場は、回復基調ではあるもののコロナ禍前に戻るまでは時間を要する可能性があります。
したがって、コロナ禍によって変化した顧客ニーズを踏まえて、新しいサービス(フォトウエディングなど)を提供する戦略が必要となるでしょう。
今後もコロナ禍感染症の影響を大きく受ける可能性が高く、従来とは異なった視点での成長が必要となっています。
教育・学習
2020年度の学習塾・予備校の市場規模は、前年度比95.1%の9,240億円となっています。[5]
2014年以降堅調に推移していた学習塾・予備校市場ですが、コロナ禍新型コロナウィルスの感染拡大の影響により事業環境が一変し、休塾措置などの対応、新年度の生徒募集活動の自粛などにより減少しています。
出典:学習塾・予備校市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)を基に弊社作成
また、2020年度の資格取得学校の市場規模は前年度比98.4%の1,830億円、語学スクール・教室の市場規模は前年度比89.3%の2,710億円となっています。
コロナ禍新型コロナウィルスの影響により、対面授業の休止や休講、営業時間短縮など事業活動の停止が行われたことで前年度比での減少となっている。
一方、今後に関してはコロナ禍で生活様式等が変容する中、学習塾・予備校市場などにおいてもDX化などが求められ、新サービス(オンライン授業など)の需要が高まると予測されています。
幼稚園・保育園・その他
ここでは、幼児英才教育の市場規模を紹介します。2020年における幼児英才教育市場は前年度比98.4%の494億円です。[6]
出典:子供関連ビジネス市場に関する調査を実施(2022年)(矢野経済研究所)
コロナ禍で新規会員獲得に向けた営業活動が制限されたこと、また、休講要請なども行われたことで減少低下しています。
ただし、緊急事態解除後は底堅い動きから順調に回復しています。
今後は底堅い受験対策ニーズや能力開発・知力向上を目指す熱心な保護者の関心や需要により拡大推移となると予測されています。
業界の課題
サービス業界(個人向け)の課題は以下の3点です。、
- コロナ禍に伴う変化への対応
- 少子高齢化や労働環境の悪化による人手不足
- デジタル化による業務の効率化
上述してきた通り、コロナ禍新型コロナウィルスの影響を受けやすく、変化に対応する必要があることですります。
また、サービス業界(個人向け)においては、少子高齢化などの影響、労働環境の悪化などにより、人手不足の課題もを抱えています。
それ以外にもデジタル化が浸透しておらず、業務の効率化が進んでいないこともサービス業界(個人向け)の課題となっています。
サービス業界(個人向け)においては、以下のような課題を抱えています。
- 少子高齢化による需要の減少
- コロナ禍における生活様式の変化への対応
- 労働人口の減少に伴う人手不足
- 労働環境の改善
- DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する対応
- 多様化する消費者志向への対応
コロナ禍新型コロナウィルスの影響により、休講要請や営業時間短縮など営業活動の制限や披露宴の中止などサービス業界(個人向け)は影響を受けやすく、今後も新たな感染症などが広がった際には生活様式の変化への対応が求められることになります。
また、他業界では対応できているデジタル化などもサービス業界(個人向け)では、遅れているデジタル化への対応も必要となりますの対応が遅れているためおり、今後対応していく必要があります。
サービス業界(個人向け)のM&A動向
M&Aの件数・規模
ここでは、学習塾・専門学校業界のM&A件数を取り上げます。2022年1月から8月で41件[7]であり、過去最多を記録した前年同期の28件から大幅な増加となっています。
学習塾・専門学校業界におけるM&Aの件数は以下の通り、増加傾向となっています。
参考:「学習塾・専門学校業界のM&A動向(3)」1-8月期、5割増。ベネッセHD、事業改革推進(MARR Online)を基に弊社作成
例えばまた、国内葬祭業界では葬儀の低価格化やが進み、葬儀社の倒産[8]が相次いでおり、国内葬祭業界においてもM&Aが進むと見込まれます。
ブライダル業界においてはワタベウェディングがコロナ禍において経営不振から私的整理の一種である事業再生ADRを申請しているなど、厳しい状況[9]となっています。
サービス業界(個人向け)は、コロナ禍において経営不振となっている企業が多いため、経営状況の改善などを目的としたるなど業界構造自体を大きく変化していく必要があり、再編が必要となり、M&Aが増加すると考えられますことが見込まれます。
また、顧客(受講生)の確保やノウハウの獲得を目的としてM&Aを行う企業が増える可能性もあります。
受講生の獲得など少子高齢化から顧客の確保、ノウハウの獲得のためにM&Aが活用される場面が増加していく可能性もあります。
M&Aが行われている背景
サービス業界(個人向け)では、以下の背景からM&Aが活用されています。
- 経営不振による事業企業の選択と集中
- 受講生の獲得など顧客や人材の確保
- 労働者が減少していることから、人材の確保
- ブランド力強化や事業拡大のため
- 市場の限界からの業界内再編、経営状況の改善
- 後継者問題不足の解決するのための事業承継
- コロナ禍におけるノウハウの獲得
M&Aの成功可能性を高めるポイント
M&Aを成功させる可能性を高めるポイントは以下となります。
譲渡企業が重視すべき要素
- デジタル化など業務の効率化などを進める
- 経営資源やこれまでの実績等の明確化などを明確にする
- ブランド力の向上を高める
- 設備投資の実施をは適切に行うっておく
- 譲歩できる条件とできない条件の明確化を明確にする
譲り受け企業が重視すべき要素
- 提供サービスのブランド力やノウハウの精査提供しているサービス内容が自社の要求水準を満たすか確認する
- 提供しているサービスのノウハウやブランド力を確かめる
- 引き継ぐ従業員のノウハウや設備投資の確認などを確かめる
- オンライン授業などコロナ禍に対する対応状況を確かめる
- 適切に設備投資を行っているか
- 専門家を利用してデューデリジェンスを実施し、その結果を買収価格・契約条件に反映する
- シナジー効果と実行可能性のについて検討する
- M&A後に行うのPMI(統合作業)の事前検討、計画策定を事前に準備を進める
サービス業界(個人向け)でM&Aを行うメリット・デメリット
メリット
譲渡企業 |
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譲り受け企業 |
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デメリット
譲渡企業 |
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譲り受け企業 |
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サービス業界(個人向け)のM&A事例・インタビュー
主な有名事例
M&Aが行われた時期 |
譲渡企業・譲り受け企業の概要 |
M&Aの目的・背景 |
M&Aの手法・成約 |
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2018年3月 |
譲渡企業:ロイネス及びB-first 譲り受け企業:CLSAキャピタルパートナーズ |
譲渡企業:サービス業界における知見やネットワークの獲得、管理・企画機能の拡充 譲り受け企業:事業の拡大 |
手法:株式譲渡 結果:サンライズ・キャピタルが、特別目的会社を通じ、株式の過半数を取得 取得価額:非公表[10] |
2020年9月 |
譲渡企業:グッドラック・コーポレーション 譲り受け企業:ケン不動産リース |
譲渡企業:経営資源の集中と投資効率の向上、顧客価値向上 譲り受け企業:事業シナジーの獲得 |
手法:株式譲渡 結果:保有している91.8%の株式をケン不動産リースに譲渡 取得価額:非公表[11] |
2021年11月 |
譲渡企業:個別進学館(明光ネットワークジャパンの新設子会社) 譲り受け企業:早稲田アカデミー |
譲渡企業:事業の選択と集中 譲り受け企業:シナジー効果の強化、事業展開の加速 |
手法:新設分割および株式譲渡 結果:明光ネットワークジャパンが新設分割で個別進学館を設立後、株式を譲渡 取得価額:非公表[12] |
[1]理美容市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)
[2]エステティックサロン市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)
[3]ブライダル市場に関する調査を実施(2022年)(矢野経済研究所)
[4]葬祭ビジネス市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)
[5]学習塾・予備校市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)
[6]子供関連ビジネス市場に関する調査を実施(2022年)(矢野経済研究所)
[7] 「学習塾・専門学校業界のM&A動向(3)」1-8月期、5割増。ベネッセHD、事業改革推進(MARR Online)
[8] 高齢者は増えているのに、なぜ「葬儀社の倒産」が相次ぐのか?(M&A Online)
[9] コロナが引き金を引いた若者の「結婚式ばなれ」で業界は大激震!(M&A Online)
[10] ロイネス、B-firstとサンライズ・キャピタルの資本提携について(CLSAキャピタルパートナーズ)
[11] 連結子会社の異動、および、特別損失の計上見込みに関するお知らせ(テイクアンドギヴ・ニーズ)
[12] 明光ネットワークジャパンとの業務・資本提携の解消及び個別進学館の株式取得に関するお知らせ(早稲田アカデミー)