レストランを高値売却できる可能性を高めるには、立地や設備等についてポイントを押さえることが重要です。レストランを売却するメリットや最新M&A事例、高値売却の成功可能性を高めるポイントを徹底解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)
はじめに、レストランの売却・M&A事例を20例紹介します。
レストランのM&A事例では、売却・買収や資本提携に至った目的、用いられた手法、成約金額などが分かります。
そのため、事例を確認することで、レストランの売却・M&Aに対する理解を深めることができるでしょう。
また、最初の4例は2021年の最新売却・M&A事例ですので、レストラン業界におけるM&Aの最新動向を知りたい方はぜひ参考にしてください。
ダイナックホールディングス:全国で235店舗のレストラン(「パパミラノ」など)を運営(2020年12月末現在)[1]
サントリーホールディングス:グループ全体で、飲料・食品事業や酒類事業、健康食品事業、外食事業等を運営
譲渡企業:コロナ禍で悪化した業績の改善、経営基盤の強化
譲り受け企業:グループ全体における意思決定の迅速化、経営資源・ノウハウの相互活用を通じた協業体制の強化
譲渡企業の概要
J.フロントフーズ:J.フロントリテイリングの子会社として、全国の大丸・松坂屋店舗やショッピングセンターなどでレストランを出店・運営[4]
ダンシンダイナー:焼肉・焼肉食べ放題やハンバーガーのお店、居酒屋などを運営[5]
譲渡企業(親会社):成長事業に対する経営資源の集中(業績が低迷しているレストラン事業の売却)
ひらまつ:シェフや支配人、ソムリエの「個」を表現した高級レストランを運営[6]
太平洋グループ:ゴルフ場やホテル、レストラン等の経営を展開
マルハン太平洋クラブインベストメント:経営コンサルタント業やゴルフ場経営などを展開[7]
譲渡企業:財務基盤の強化による「既存店修繕やシステム投資」、「収益機会の増加」、「既存事業の拡大・発展」
なすび:静岡市内を中心に16店舗の飲食店(ビュッフェレストランなど)を展開
AFC-HD アムスライフサイエンス:健康食品・化粧品の受託製造事業を展開
譲渡企業:新規事業・海外事業の展開、通販事業の拡大[8]
譲り受け企業:全国・海外展開の推進
いっちょう:料亭を思わせる雰囲気が特徴の和食レストラン「いっちょう」を展開
クリエイト・レストランツ・ホールディングス:和食や洋食、中華、エスニックなどのレストランを展開[10]
譲り受け企業:競争力ある独自のビジネスモデルの獲得、総合的なセントラルキッチンの運用ノウハウの取り込みによるグループ内シナジー発揮
エスエスエル:ゴルフ場内でのレストラン運営事業等を運営(本件M&Aのために、西洋フード・コンパスグループが新たに設立)
先ほど紹介したクリエイト・レストランツ・ホールディングス
譲り受け企業:事業ポートフォリオの質的向上、安定的な収益確保、仕入れやニュー開発等の共有による店舗運営力の向上
ココスジャパン:全国で約600店舗の洋レストラン「ココス」を展開(2019年時点)。M&Aを行った時点で、譲り受け企業の連結子会社として事業を運営。
ゼンショーホールディングス:郊外型ファミリー牛丼店の「すき家」を中心に、グループ全体でレストラン事業を展開
譲渡企業:店舗数の少ない西日本エリアへの出店、必要な人材の確保・育成、人事交流による組織の活性化、物流費用の削減、上場廃止に伴う機動的かつ柔軟な経営体制の構築、株式上場の維持コスト削減
譲り受け企業:グループシナジーを最大限発揮できる体制の構築
華屋与兵衛:当時、譲渡企業の連結子会社として和食レストランを運営
先ほど取り上げたゼンショーホールディングス
譲り受け企業:業務における連携の更なる強化、経営の効率化
アークミール:吉野家ホールディングスの連結子会社として、「ステーキハウス フォルクス」や「ステーキのどん」、「しゃぶしゃぶどん亭」などのファミリーレストランを展開
安楽亭:郊外型の焼肉レストランチェーン店を展開
譲渡企業(親会社):事業ポートフォリオの最適化、戦略的なリソース配分
譲渡企業:シナジー効果の創出
日総開発:当時、和風レストランの「開花亭」や焼肉レストランの「花炎亭」を運営
先ほど取り上げた安楽亭
譲り受け企業:既存事業の拡大
WIZ JOINT PTE. LTD.:当時、シンガポールで鉄板焼き店を運営予定だった会社
G.COM RESTAURANT SINGAPORE PTE. LTD.:神戸物産の海外子会社として、海外でのレストラン事業を展開
譲り受け企業:海外レストラン事業の強化
ハットリフーズ:マウンテンコーヒーの子会社として、名古屋市内であんかけスパゲッティとハンバーグをメインとした「ドン・キホーテ」を3店舗運営(2019年時点)[18]
JBイレブン:「一刻堂」などのラーメンチェーンを展開[19]
譲り受け企業:事業規模と収益機会の拡大
萬坊:日本で最初の海中レストラン「海中魚処 萬坊」を展開
JR九州:鉄道事業を展開
譲り受け企業:観光・物販の両面における連携、お土産品の販路開拓、新商品・新業態の開発、業容の拡大
一品香:横浜市で中華レストランを展開[21]
イートアンドホールディングス:大阪王将をはじめとした飲食チェーンを展開[22]
譲り受け企業:自社事業の成長、シナジー効果の創出
ぱすと:イタリアンレストランチェーンを展開
アスモフードサービス:フードサービス事業(給食事業)を展開
譲り受け企業:新規事業領域(レストラン事業)への進出
ミツウロコプロビジョンズ:ショップやレストランの運営事業を展開[25]
シダックスアイ:売店やコンビニエンスストアの運営事業を展開[26]
譲り受け企業:相乗効果の創出、新しいサービスの提供、事業の拡大
チタカ・インターナショナル・フーズ:ショッピングセンターにおいて、パスタとデザートを中心としたレストランを展開
ヴィア・ホールディングス:M&Aを通じて数々の会社を買収し、36都道府県に528もの飲食店を展開(2015年4月時点)
譲り受け企業:既存事業との関連性が深いレストラン事業の取得による「シナジー効果の創出」、デザート製品の企画・製造等による「協働的な発展の実現」
鐵人化計畫股份有限公司:鉄人化計画の子会社として、台湾で日式レストランやカフェ事業を展開
第一太平洋投資股份有限公司:レストラン経営や経営コンサルタント事業を展開
譲渡企業:主力事業であり、かつ今後の需要拡大が見込まれるカフェ事業への集中(拉麺店舗の売却)
大多喜ハーブガーデン:千葉県でレストランやホテルの経営、ハーブガーデンの運営・企画事業を展開[29]
イントランス:不動産投資やプロパティマネジメント事業を運営[30]
譲り受け企業:譲渡企業が有する不動産の有効活用による事業の再生、さらなる成長の実現
大手アパレル会社:本業のアパレル事業に加えて、ハワイアンカフェ(レストラン)を運営
オークニ商事:和食を中心とする外食チェーンや障害児通所支援・高齢者介護施設の運営
譲渡企業:事業ポートフォリオの見直し
譲り受け企業:売上の拡大、新規事業領域の開拓
[1] サントリーHDによる当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明のお知らせ(ダイナックホールディングス)
[2] 沿革(ダイナック)
[3] ダイナックホールディングスに対する公開買付けの結果に関するお知らせ(サントリーホールディングス)
[4] 連結子会社の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせ(J.フロントリテイリング)
[5] 会社情報(ダンシンダイナー)
[6] 事業内容(ひらまつ)
[7] マルハン太平洋クラブインベストメント及び太平洋クラブとの株式引受契約等に関するお知らせ(ひらまつ)
[8] AFC-HD アムスライフサイエンスとの 簡易株式交換における完全子会社化に向けた基本合意に関する件(なすび)
[9] なすびの株式取得による子会社化および簡易株式交換による完全子会社化に向けた基本合意に関するお知らせ(AFC-HD アムスライフサイエンス)
[10] 事業紹介(クリエイト・レストランツ・ホールディングス)
[11] いっちょうの株式取得に関するお知らせ(クリエイト・レストランツ・ホールディングス)
[12] フード・コンパスグループの一部レストラン運営事業の取得に関するお知らせ(クリエイト・レストランツ・ホールディングス)
[13] 日本レストランホールディングスによるココスジャパンの完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ(ゼンショーホールディングス)
[14] 簡易株式交換による連結子会社の完全子会社化に関するお知らせ(ゼンショーホールディングス)
[15] 特定子会社の異動に関するお知らせ(吉野家ホールディングス)
[16] 店舗譲受に関するお知らせ(安楽亭)
[17] 当社海外子会社による孫会社の異動を伴う株式取得に関するお知らせ(神戸物産)
[18] ハットリフーズの株式取得に関するお知らせ(JBイレブン)
[19] ブランド紹介(JBイレブン)
[20] 萬坊の第三者割当増資引受に関するお知らせ(JR九州)
[21] 一品香および有限会社一品香フーズの株式取得に関するお知らせ(イートアンドホールディングス)
[22] グループ事業紹介(イートアンドホールディングス)
[23] 沿革(イートアンドホールディングス)
[24] 子会社等における新たな事業の開始及び孫会社の異動に関するお知らせ(アスモ)
[25] 当社連結子会社による事業譲受に関するお知らせ(シダックス)
[26] シダックスアイ株式会社(SHIDAX)
[27] 業務提携及び事業譲受のお知らせ(ヴィア・ホールディングス)
[28] 海外子会社の事業譲渡に関するお知らせ(鉄人化計画)
[29] 大多喜ハーブガーデンの株式の取得に関するお知らせ(イントランス)
[30] 事業案内(イントランス)
先ほど紹介した事例より、近年におけるレストラン業界の売却・M&Aには、以下2つの特徴があると言えます。
前述した事例からわかるとおり、事業の存続や成長を目的としてレストラン事業・会社を売却するケースが多いです。
たとえば、高級レストラン運営のひらまつは、「既存事業の拡大・発展」などを目的に、太平洋グループに株式を売却しました。
また2021年は、コロナ禍による業績の悪化を踏まえて、業績改善や経営基盤の強化を目的に、レストラン事業・会社を売却するケースも見受けられました。
前述したサントリーホールディングスとダイナックホールディングスのM&Aが一例です。
特に小規模〜中堅規模のレストランであれば、会社売却によって大手企業の傘下に入ることで、買い手企業が有するブランド力や資金を活用できるようになります。
そのため、自力で事業を続ける場合と比べて、経営の安定化や事業の成長加速を実現しやすくなるでしょう。
他業種の企業がレストラン事業を買収したり、大手飲食会社が海外のレストランを買収したりするケースも活発です。
他業種によるレストラン買収としてはシダックスアイによるミツウロコプロビジョンズの事業買収、大手飲食会社による海外企業の買収としては神戸物産の海外子会社によるWIZ JOINT PTE. LTD.の買収が一例です。
M&Aを活用することで、すでに国内・海外の市場で事業を軌道に乗せているレストランを買収できます。
そのため、一から新規でレストランを開業したり、海外市場にレストラン事業を進出したりするケースと比べて、より短期間・少ないリスクで事業を軌道に乗せやすくなると言えます。
メリットが大きいため、今後も新規事業や海外市場への進出を目的に、レストラン事業を買収する事例は活発に見られると考えられます。
レストランを売却する際、まず知っておくべきが売却価格の相場です。
相場を理解すれば、M&Aを実施するかどうかの判断を行いやすくなります。
また、安い金額で買い叩かれるリスクや、高すぎる金額を買い手企業に提示して交渉が白紙になるリスクなどを低減することもできます。
この章では、一般的なレストランの売却価格相場や売却額を左右する要素、企業価値評価をわかりやすく解説します。
売却の方法(居抜きとM&A)や店舗の立地・規模、業績などによってレストランの売却価格は変わってきます。
したがって、一概に「〇〇円」が相場と断言することはできません。
ただし、市場に出回っているレストランの売却案件を見る限り、居抜きであれば数百万円、M&Aであれば数百万円〜数千万円ほどが売却価格の相場と考えられます。
レストランの売却価格は、一般的に下記の要素によって左右されると言われています。
たとえば立地が良く人気メニューを有しているレストランであれば、業績が同程度の他社レストランと比較して、高い金額で売却できる可能性が高いと考えられます。
一方で、設備が老朽化していたり、立地が悪かったりする場合、相場を下回る金額でのM&Aとなる可能性が高まるでしょう。
実際のM&Aでは、企業価値評価(バリュエーション)を行い、その結果をもとに売り手と買い手が交渉し、レストランの売買価格を決定することが多いです。
バリュエーションを行うことで、客観的に妥当な基準を設定し、交渉を進めることができます。
そのため、売り手と買い手の片方にとって不利な金額となったり、交渉がまとまらなかったりする事態を回避しやすくなるでしょう。
バリュエーションの方法は、大きく下記の3種類に分けることができます。
メリットやデメリット、最適な使用場面はそれぞれ異なります。
したがって、状況に応じて最適な方法を検討したり、複数の方法を併用したりすることが重要です。
M&Aを検討している経営者であれば、できるだけ高い金額でレストラン事業や会社を売却したいと考えるでしょう。
高値でのレストラン売却を成功させる可能性を高めたいならば、以下5つのポイントを押さえることが大切です。
以下では、それぞれのポイントをくわしくご説明します。
レストランに限らず、飲食店にとって立地条件は収益を大きく左右する要素であり重要です。
一般的には、駅からのアクセス性に優れた立地や観光エリアにあるレストランであれば、集客効果が見込めるため、高値で売却できる可能性が高まります。
また、レストランの外装・内装やコンセプト、取り扱うメニューなどと合っている立地である場合も、同様に高値売却の可能性を高めるポイントとなるでしょう。
たとえば高級路線のレストランであれば落ち着いた高級住宅街、お洒落なイタリアンレストランであればお洒落な観光地などが良いと考えられます。
ターゲットの客層や料理のメニュー、コンセプトに適した外装・内装であることも、レストランを高額で売却できる可能性を高めるポイントです。
たとえばオシャレ志向の女性をターゲットとするならば、外装や店内のデザインもオシャレさを追求したものが良いでしょう。
富裕層が対象の高級和食レストランならば、和風のデザインに統一し、かつ高級感あふれる外装・内装が適していると考えられます。
ターゲットの客層や料理のメニュー、コンセプトに合致した内装や外装のレストランは、少なくとも内装・外装だけで言えば、ターゲットとする客層のニーズを的確に掴めていると言えます。
そのため、顧客の満足度向上によってリピート客の増加や、口コミによる新規来店数の増加といった効果を期待できます。
つまり、外装・内装が良ければ売上や利益を増やせる可能性があるため、高値で売却できる可能性が高まるということです。
一般的に、レストランを一から開業するには、調理器具や製氷機・食洗機などの機器類、室外機やエアコン、排気・排水に関する装置などを一通り揃える必要があります。
こうした設備を揃えるには、工事や購入に多額の費用がかかります。
したがって、必要な設備が一通り揃っているレストランであれば、そうでない場合と比べて、買い手企業から高く評価してもらえる可能性があります。
また、ピザ窯やワインセラーなどの専門的な設備を有している場合、その設備に対するニーズを持っている買い手企業に対して、高値で売却できる可能性が高まります。
ご自身が経営するレストランに専門的な設備がある場合は、その設備にニーズを有する買い手企業を選定することがおすすめです。
店内の面積が同じのレストランでも、レイアウトによって実際の売却価格が変わる可能性は十分あります。
高値での売却可能性を高めたいならば、店舗内のレイアウトを使いやすいものにすることが重要です。
具体的には、以下の条件を満たすレイアウトであれば、一般的に使いやすいと判断されます。
すでにある立地や内装・外装を変更することは、莫大なコストがかかるため現実的ではありません。
一方でレイアウトに関しては比較的少ない労力・費用で行える場合が多いため、高値で売却したいならば対策してみることをおすすめします。
レストランを売却するには、M&Aの相手探しや資料作成、交渉、デューデリジェンスなど、たくさんの手続きを行う必要があります。
こうした手続きには、会計や税務、法務などの専門的な知識が必要となるため、経営者や社内のM&A担当者のみで行うことは困難です。
したがって、レストランを売却する際には、M&A仲介会社やマッチングサイトなどを最大限活用することがおすすめです。
こうしたサービスを利用することで、専門家のサポートを得ながら売却手続きを進めることができます。
特に、できる限り高値でレストランを売却したいならば、レストランの売却に関する実績が豊富な仲介会社やマッチングサイトを利用することがおすすめです。
レストラン業界に対する知識がないと、売り手企業にとって適した買い手企業を見つけることができなかったり、売り手のレストランが有するリソース(ノウハウやブランドなど)の価値を正しく評価できなかったりする可能性があるためです。
売却実績が豊富にある専門業者であれば、実績の分だけレストラン業界に対する知見も蓄積されていると考えられます。
したがって、その業者に依頼すれば結果的に高い金額で売却できる可能性が高まると言えるでしょう。
レストランの売却・M&Aには、メリットだけでなく、いくつか注意すべきデメリットもあります。
この章では、売り手と買い手それぞれの視点から、レストランの売却・買収を行うメリットとデメリット(注意点)を解説します。
はじめに、売り手企業がレストランを売却する際のメリットとデメリットを紹介します。
売り手としてレストラン事業または会社を売却すると、以下8つのメリットを期待できます。
一方で、レストラン事業・会社を売却する際には、以下4つのデメリットが発生する可能性があるため注意が必要です。
次に、買い手企業がレストラン事業を買収するメリットとデメリットを紹介します。
買い手としてレストラン事業または会社を買収すると、以下6つのメリットを期待できます。
一方で、レストラン事業・会社を買収する際には、以下3つのデメリットが発生する可能性があるため注意が必要です。
以上がレストランを売却・買収するメリットとデメリットです。
M&Aのメリットとデメリットをよりくわしく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
最後に、レストランの売却・M&Aを行うことで発生する費用を紹介します。
一般的に、レストランの売却・M&Aでは主に以下3種類の費用が発生します。
以下では、各費用の概要や目安を紹介します。
前述したとおり、一般的にはM&A仲介会社やマッチングサイト等の専門業者を利用してレストランの売却を行います。
こうした専門業者を利用する際には、アドバイザリー費用(手数料)が発生します。
主なアドバイザリー費用として、「事前相談料」や「着手金」、「中間報酬」、「リテイナーフィー」、「成功報酬」が挙げられます。
それぞれの概要と目安は以下のとおりです。
事前相談料とは、M&A実務を正式に依頼する前に、専門業者に相談する際に発生する費用です。
ほとんどの仲介会社やアドバイザー、マッチングサイトは事前相談料を無料としています。
ただし、一部の業者に関しては数千円〜1万円ほどの相談料を請求するところもあります。
少しでもアドバイザリー費用を抑えるためにも、事前に相談料が無料かどうかを確認しておくのがおすすめです。
着手金とは、専門業者と正式に契約した段階で発生する費用です。
着手金に関しては、100万円~200万円程度に設定している専門業者が多いです。
一方で、着手金を無料としている専門業者も少なくありません。
着手金を設定している専門業者であれば、本気でM&Aを実施したいと考えている売り手・買い手企業を多く抱えていると言われています。
ただし、着手金を一度支払うと、たとえM&Aの交渉が失敗に終わっても返金されないため注意が必要です。
決して安い金額ではないため、基本的には着手金無料の仲介会社やマッチングサイトを利用することがおすすめです。
中間報酬とは、M&Aのプロセスがある程度のところまで進んだタイミングで支払う費用です。
一般的には、買い手企業と基本合意書を締結したタイミングに請求されます。
中間報酬の相場は、「成功報酬の10%~20%程度」と言われています。
固定報酬制の専門業者であれば、100万円程度が相場です。
また、着手金と同様に中間報酬を無料としている専門業者も少なくありません。
中間報酬に関しても、M&Aが失敗した際に返金されることは基本ありません。
したがって、少しでも予算を抑えたい方は、中間報酬がかからない専門業者に依頼しましょう。
リテイナーフィーとは、専門業者との契約期間中、毎月支払う手数料です。
中小規模のM&Aを取り扱う仲介会社やマッチングサイトの場合、リテイナーフィーは無料であることが多いです。
一方で、ある程度大きな案件を取り扱う金融機関や仲介会社の場合、月額50万円ほどのリテイナーフィーを設定していることが多いです。
毎月発生する費用であるため、M&Aの成立が長引くほど、トータルで支払う費用も増え続けます。
したがって、基本的にはリテイナーフィーが無料の専門業者を選ぶのが得策です。
成功報酬とは、M&Aの最終契約書を締結したタイミングで支払う費用です。
多くの仲介会社やマッチングサイトでは、成功報酬をレーマン方式に基づいて算出しています。
レーマン方式では、以下の手数料率を使って成功報酬を計算します。
※業者によっては、異なる料率を設定している場合もあるため注意が必要です。
たとえば買収金額が3億円であれば、3億円×5%=1,500万円が成功報酬となります。
M&Aが成約してから支払う費用であるため、着手金や中間報酬と異なり払い損になることはありません。
ただし、金額自体は小さくないため、成功報酬を低く設定している専門業者を選ぶことを検討することもおすすめです。
M&Aサクシード譲渡企業は登録無料で利用でき、譲り受け企業が負担する手数料も一般的な仲介会社などと比べて安価です。
大幅にレストラン売却にかかる費用を削減できるため、マッチングサイトの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
レストランの店舗を閉店する場合と異なり、売却する場合は基本的に原状回復費(工事費)が発生しません。
ただし、賃貸の店舗を売却する際には、貸主から承諾を得る際に承諾料の支払いを求められる可能性があります。
物件の賃貸借契約書に「譲渡を許す代わりに、承諾料の支払いを課す」などの文言が記載されている場合には、契約内容にしたがって承諾料を支払わなくてはいけません。
どのくらいの金額となるかは、契約書の内容や交渉の結果次第です。
売り手企業がレストランの営業を停止してから、実際に買い手企業が営業を開始するまでに空白の期間が発生する場合、その期間について家賃の支払いが発生する可能性があります。
空白期間が長引くと、収入がないにもかかわらず家賃が発生し続け、手元のキャッシュが大幅に減少する事態となり得ます。
こうした事態を防ぐには、買い手企業との契約や店舗等の引き継ぎをスムーズに行い、空白期間が生じないようにすることが重要です。
レストランの売却は、事業承継の実現や売却利益の獲得、事業の成長など、あらゆるメリットを得られる戦略です。
「店内のレイアウトが良い」、「ターゲットに適した内装・外装である」などの条件を満たせば、高い金額で売却できる可能性もあります。
レストラン経営に行き詰まっている経営者の方や、事業をこれまで以上に成長させたい経営者の方は、ぜひM&Aという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
(執筆者:中小企業診断士 鈴木 裕太 横浜国立大学卒業。大学在学中に経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士資格を取得(休止中)。現在は、上場企業が運営するWebメディアでのコンテンツマーケティングや、M&Aやマーケティング分野の記事執筆を手がけている)