M&Aをする最大のメリットは時間を買えることです。買い手は新規事業や既存事業の拡大にかかる時間を買えます。売り手は投資回収・現金化の時間を短くできます。今回はM&Aのメリット・デメリットを解説します。
通常、新規事業を立ち上げるためには「マーケティング」「技術開発」「従業員の教育」などで多くの時間が必要になります。しかし、M&Aを実行すれば、すでに完成している状態の事業や企業を買収できますので、上記の新規事業に必要な時間を短縮可能です。
M&Aにあたって、買い手企業は選択するスキーム次第では多額の買収資金が必要になります。しかし、時間と労力を大幅に削減できるため、M&A実施が長期的に見てプラスになるケースも多く存在します。
M&Aでは、買収対象企業が保有する「事業用資産」「不動産」などの有形資産を取り込めます。また、それだけでなく「技術」「事業のためのノウハウ」「既存の取引先」「流通網」などの無形資産も吸収できますので、相手側の企業はその文自社のビジネス規模拡大可能です。
一般的に、取引量が多くなれば固有の取引先に対する交渉力も強まり「仕入れコストの値下げ」「設備の稼働率の上昇」「知名度やブランド力の向上」などが望めます。M&Aで買収対象企業の既存の顧客層を取り込むことができれば、自社のビジネスを一気に加速させられるでしょう。
事業を行っていく中で安定的に売上を伸ばすためには、収益源の多角化も必要になってきます。いちから新規事業に参入しようとすると、さまざまなリスクが発生します。しかし、M&Aを行い、既にある分野で業績を伸ばしている授業を買収すれば、ローリスクで新たな収益源を確保できます。
また。新規事業参入だけでなく「人材」「特許」「ノウハウ」などを取り込むことによる、自社が既に行っている既存事業の技術教科の目的でもM&Aは選択肢に挙がるでしょう。
先進国では、消費者ニーズの多角化により、ひとつの製品のライフサイクルが年々短くなっていますので、企業側が商品の研究開発にあまり時間をかけられないケースも多くなりつつあります。
そのため、研究対策に多額の資金を注ぎ込むよりも、M&Aによりすでにある程度の技術を持つ企業の事業を買収した方が、スピーディーに新しい商品を開発できるのです。
M&Aには書いて企業側が節税できるというメリットもあります。M&Aにあたって買収対象企業が赤字を抱えていた場合、選択したスキーム次第では買い手企業が、その負債を引き継ぎます。
赤字は発生した年から7年間は繰越可能で、翌年に繰り越された赤字は「繰越欠損金」と呼ばれます。繰越欠損金は自社の黒字売上と相殺できますので、マイナス分だけ企業の法人税を削減可能なので、M&Aが節税対策になるケースもあるのです。
市場における需要がピークに達して「成熟期」に入ると、それ以上の市場の成長は見込めず、競合他社同士によるシェアの獲得競争が盛んになります。
この状態ではより多くの顧客を獲得するために、商品価格の値下げ競争なども発生し、市場全体が疲弊してしまうリスクがあるのも特徴のひとつです。そのため、M&Aを実施し、ライバル企業を取り込めば業界再編が可能になります。
さらに、M&Aにより競合他社を取り込めば、市場における価格競争から抜け出せますので、業界内での持続性も保てると言えます。
M&Aでは、買い手企業が買収を成立させた後に「退職給付引当金」「未払いの給与」などの、貸借対照表に載っていない「簿外債務」を引き継いでしまう恐れもあります。
また、簿外債務だけでなく「顧客とのトラブル」「環境汚染」などの将来自社に不利益をもたらす「偶発債務」を継承してしまう可能性も考えられます。
偶発債務を意図せず引き継いだ場合、M&Aの後に自社が多額の訴訟に巻き込まれてしまう可能性もありますので、十分に注意をしましょう。
M&Aでは、上記のように買収対象企業が、何らかの財務リスクを抱えている可能性が多々ありますので、事前にしっかりと財務状況の調査を行う必要があります。
M&Aを実行する対象企業の行っている事業が、許認可の必要なものである場合、この許認可に関する権利を引き継げず、事業譲渡が失敗に終わる可能性もあります。
これは「対象企業の重大な法令違反がM&A成立後に発見された」「そもそも事業に必要な許認可を全て取得していなかった」など、売り手企業側の粉飾を見落としていた場合に発生します。
企業買収に「合併」「会社分割」「事業譲渡」などのスキームを選択した場合、買収成立後に許認可の引き継ぎが認められないと、悪い場合買い手企業が新規に許認可を取得し直さなければなりません。
そのような自体を避けるためにも、事前に「許認可の有効性」「M&A成立後にその許認可を引き継げるか」「引き継げない場合に新たな許認可を取得する難易度やコスト」など、入念に調査しましょう。
M&Aにおいては、異なる会社同士の事業を掛け算することによって生まれるシナジーを想定して買収対象企業の価値を算出し、買収金額を決定します。
しかし、いざM&Aを実行すると「新規の顧客にうまく売り込めない」「生産効率が思ったより良くならずコストが削減できない」「業務統合に想像以上の時間がかかる」などの理由から、シナジー効果を十分に発揮しないというケースも発生するのです。
シナジーが発生しないだけでなく、M&Aにより事業規模が拡大した結果、会社を維持するための固定費が膨らみ、キャッシュフローが悪化するケースも想定されます。
M&Aで買収金額が高くなりすぎた場合、事業統合を行った後の利益が思ったほど出せない状況もあります。M&Aでは、買収対象企業の企業価値を判定して買収金額を算出しますが、この金額は買収対象企業の「事業統合後のシナジー」「ブランド力」「所有している技術」などの「のれん代」をもとにして決められます。
のれん代は毎年減価償却する必要があります。買収の際にのれん代が多額であったにも関わらず、事業統合後の利益が思ったよりも伸びなければ、のれんの償却によって利益がマイナスになるのです。また、投資としてM&Aに当てた費用が回収できないと見込まれる場合、回収不能額はまとめて損失として計上する「減損」の手続きを取る必要もう発生します。
多額ののれん代を費用処理しなければいけなくなると、一気に自社の経営が困難になるケースも存在しますので、M&Aに当たっては統合後のシナジーも含め妥当な買収金額を算出しなければいけません。
M&Aの買収対象企業の従業員は、買収成立後に買い手企業の従業員となります。しかし、経営統合後に「給与」「仕事内容や働き方」「昇進のしやすさ」「福利厚生」などの待遇面で、売り手企業側の社員の望みを叶えられない可能性があります。
M&Aでは、労働環境や評価システムなどが一変するため、売り手企業に在籍していた従業員が不満を抱き、モチベショーンが下がる恐れが発生するのです。さらには、ただモチベーションが低下するだけでなく「現場で買い手企業に元からいた従業員とトラブルになる」「退職する」などのトラブルに発展する恐れもあります。
M&Aの目的のひとつは、優秀な人材や技術の取り込みによる自社の事業強化でもありますので、買収成立後に売り手企業の人材が流出してしまっては、大きな損失となります。M&Aの経営統合後は、新しい環境で働く従業員が不満を抱かないよう、密なヒアリングやコミュニケーションをとりましょう。
M&Aにおいて大切なのは、大きく失敗しない意識を持つことです。M&Aが成立した時点で「時間を買うこと」には成功していますので、後は事業統合後にM&Aによるシナジー効果が発揮できるように意識する必要があります。
M&Aで買い手企業が、大きく失敗しないためには、正確な「DD(デューデリジェンス)」を行いましょう。DDとは、M&Aで売り手企業の財務・税務・法務・人事などのあらゆるリスクを洗い出す作業で、正確な買収価格の算出のためにも、大切なプロセスとなります。
買収対象企業をさまざまな観点から分析し、意図せず継承してしまう恐れのある「簿外債務」「偶発債務」まで含めて把握できれば、買収後のトラブルも最小限に留められます。
そのほか、M&Aでは「適切なスキームの選択」「基本合意の締結」なども大失敗を避けるためには必要な要素ですので、しっかりと把握しておきましょう。
M&Aのスキームとして、会社の権利を完全に以上する「100%の株式譲渡」などではなく、一部の事業を売却する「事業譲渡」を選択すれば、自社の利回りの低い事業を手放しつ譲渡金を買い手企業から受け取れます。
たとえ、自社にとって利益率の低い事業であったとしても、インフラや資金のある大企業からすれば、シナジー効果を期待できる価値ある事業のケースも多くありますので、十分な資金で売却できる可能性も大いに存在するのです。
事業譲渡で投資資本回収までにかかる時間を大幅に短縮できれば、売り手企業側もほかの事業に注力し、業績アップを図れる可能性もあるでしょう。
M&Aで会社の全て、もしくは事業の一部を売却した場合の対価として、売り手企業は買い手企業から現金もしくは新株式の発行などの形で支払われます。もし、自社が負債を生み出す事業を抱えていた場合、この譲渡金を使って事業を立て直せます。
また、M&Aで売り手企業の経営者が、会社の廃業を検討している際にもM&Aで得られる譲渡金は大きな助けとなります。通常、会社の廃業には「解雇する従業員に対する補償」「税務処理の依頼費用」「事業用設備や在庫商品の処分費用」などで、資金が必要になるためです。
さらには「廃業には多くの手間と時間がかかる」「廃業後も経営者は借入金の返済をしなければならない可能性がある」などの理由から、手元に残る資金は多ければ多いほど助かると言えるでしょう。
少子高齢化の日本において、多く中小企業は「後継者問題」に悩まされているという実情があります。日本政策金融公庫総合研究所が2020年1月に発表した[1]によると、日本の約50%の中小企業が廃業を検討しており、その内の約30%が「後継者不足が理由」と判明しています。
事業自体は好調であるものの、後継者不足から廃業を検討している場合も、M&Aによる事業承継は有効な選択肢となります。M&Aでスムーズに事業を買い手企業に譲渡できれば、既存の取引先や顧客に迷惑がかかる心配もありません。
日本の中小企業が抱えている後継者問題に関しては、政府も重く考えており「経営承継円滑化法」[2]のもと「事業承継税制」という特別制度を設けています。この制度を利用すれば、非上場企業が株式を承継する際に贈与税・相続税の面で優遇処置を受けられます。
節税メリット以外にも、経営承継円滑化法では「民法上の特例措置」「日本政策金融金庫などからの金融支援」などの利点があり、事業承継相談の窓口として各地域に「中小企業基盤整備機構」が設置されています。
M&Aで会社の権利を全て買い手企業に売却した場合、売り手企業の従業員は買い手企業から雇用されるケースが一般的です。そのため、売り手企業の存続が危ぶまれるほど経営状況が悪化していた場合、従業の生活を守れるというメリットが発生します。
しかし、買い手企業側からしたら人材の確保ではなく、単に売り手企業の事業や既存の顧客が買収の目的である可能性も考えられます。そのため、売り手企業側が従業員の雇用を守りたいと考えた場合、売却の条件にM&A成立後に、自社の従業員を買い手企業に雇い入れることを明示しておきましょう。
[1] 中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)(日本政策金融公庫総合研究所)
[2] 経営承継支援円滑化法による支援(中小企業庁)
M&Aにおいて、売り手企業が買い手企業を見つけるのは決して簡単ではありません。M&A仲介会社に依頼したとしても、スムーズに買い手企業が見つからないケースは多々あり、特に経営難から自社の売却を考えている企業ほどネックとなるデメリットでしょう。
買い手となる企業が見つかったとしても、希望価格でM&Aを実行できない可能性もあります。基本的にM&Aの買収金額は、売り手企業の企業価値で決まりますので、自社の事業に将来性がなかった場合などは低い買収金額を算出されてしまいます。
また、「DD(デューデリジェンス)」後に簿外負債などの粉飾が見つかってしまい、トラブルに発展それば、最悪の場合M&A自体が白紙になってしまう可能性もあります。
そのため、売り手企業は「従業員への未払金」「顧客とのトラブル」など、企業買収の交渉を進める上で問題となりかねない要因について、あらかじめ対処をしておきましょう。
M&Aで大企業の傘下に入った場合、売り手企業にとっては経営者の権限が小さくなる点もデメリットです。経営統合後は「経営方針」「目標利益額」「予算配分」「車内人事」の面に至るまで、買い手企業の方針に従う必要が出てきます。
売り手企業の経営者が経営統合後もある程度の影響力を残したい場合、買収成立前の交渉段階で多少は譲歩を引き出せる可能性もありますが、売り手企業は基本的に立場が弱いので、あまり現実的ではありません。
M&Aで、事業内容や契約内容に大幅な変更が発生すると、自社の既存の取引先とトラブルに発展してしまうことも懸念されます。最悪の場合、契約の打ち切りなどに発展しかねませんので、売り手企業は自社の顧客に対し、適切なタイミングでの説明を行うようにしましょう。
M&Aはどのスキームを選ぶかによって、見込まれる利益や、かかる税金、必要な手続きが大きく変わります。ここでは各M&Aスキームの特徴とメリットとデメリットを説明します。
「株式譲渡」とは、買収対象となる企業の発行済みの株式を、買い手企業が買い取り、経営権を取得するM&Aスキームです。
株式譲渡には、以下の3種類の手法があります。
非上場企業の場合は、上記のうち「相対取引」しか方法がありません。株主が分散している場合は、株式を買い集めるのに時間がかかるケースも懸念されます。また、株主間で不満が発生しないように、実務上は同一価格で株式を買い集めるが一般的です。
上場株式であれば「市場買付け」が可能ですが、発行済みの株式総数(および潜在株式総数)の合計5%を超えて取得した場合、取得日から5営業日以内に大量保有報告書を財務局へ届け出る必要があります。市場からの買付けは、買付け同行が明らかになる都合上、買い集めに伴い株価が高騰し買取金額が嵩んでしまうリスクが生じるため、過半数を目指す場合には選択されません。
「事業譲渡」とは、一定の目的のために組織化された有機的に機能する財産(事業)の一部または全てを、他の会社に譲渡するスキームです。ただの事業用財産や権利義務の譲渡が事業譲渡には当たりませんが、事業用財産に製造・販売のノウハウなどが付随していれば事業譲渡となります。
事業譲渡では、譲渡側の企業に対して、対価として現金が支払われます。
対価として譲受会社の株式を新たに発行することも可能です。その場合は裁判所が専任した検査役の調査を受ける必要があります。
「会社分割」のスキームには「新設分割」「吸収分割」という2種類の組織再編方法があり、それぞれ以下のような特徴があります。
また、会社分割のスキームでは、会社分割による対価の引き渡しの方法も「分割型分割」「分社型分割」の2つの方式があります。
「株式交換」とは、完全子会社(100%子会社)となる会社の株主が保有している株式の全てを、完全親会社となる会社の株式と交換するスキームです。
「株式移転」とは、完全子会社となる会社の株主が保有する株式の全てを、新設する完全親会社となる会社の株式と交換するスキームとなります。
株式交換はある会社を完全に子会社化したい場合に用いられ、株式移転は完全親会社として持ち株会社を新設する場合に採用される買収手段です。
新株引受けの実務には「第三者割当増資」「新株予約権」の2種類があり、それぞれの概要は以下の通りです。
第三者割当増資には、「既存の株主がそのまま既存の株式を保有し続けるため新、株引受者は100%の支配権を獲得できない」「売り手企業は新株発行の対価として現金を受け取る」という特徴があります。そのため「支配権を目的としない買収先企業の関連会社化や業務提携」「財務状況が悪化している企業の買収」に用いられるスキームです。
「合併」とは、複数の会社をひとつにまとめる「組織再編成」を目的としたスキームです。M&Aにおける合併の定義は、以下の2種類があります。
スキームに新設合併を選択した場合、許認可の申請などで手続きが複雑になる都合上、実務上は吸収合併が多く選択されます。
「基本合意」とは、M&Aの実務プロセスにおいて最終契約に入る前に、売り手・買い手の双方が基本的な事項について、合意できたかどうかを書面で確認することを指し「LOI(Letter Of Intent)」「MOU(Memorandum Of Understanding)」などとも呼ばれます。
基本合意は、一般的に取引条件面では法的拘束力を持たないとのイメージを持たれていますが、内容次第では法的拘束力があるとの解釈もされ、取引条件面以外での条項については法的拘束力を有するケースも多くあります。
基本合意を締結できればM&Aの成功率も格段に高まります。基本合意はM&Aの実務プロセスにおいて重要なフェーズですので「法的拘束力がない」と軽く考えないようにしましょう。
基本合意書には「買収価格」「スキーム」などの、交渉上の重要な論点に関する合意が盛り込まれているケースが多くあります。
そのため、基本合意締結を通じて、交渉上の重要な論点において合意形成ができ、買い手・売り手
双方のM&A締結に向けた心理的拘束が可能だという点がメリットのひとつです。
基本合意書には「具体的な買収価格」「買収価格の値幅」が記載されていることが多くあります。そのため、買い手側にとって、基本合意を行えば買収価格の上限を設定できるとのメリットが発生します。
ただし、通常は基本合意締結後に「DD(デューデリジェンス)」が行われるため、DD後の発見内容次第では、買収価格をさらに引き下げられる可能性についても想定しておきましょう。
基本合意書に「最終契約日までのスケジュール」「基本合意の有効期限」を盛り込めば、M&A実務のクロージングまでの日程を明確化できます。これは、買収対象企業の意思決定が遅い際に特に恩恵を得られるメリットです。
基本合意を行えば、買い手企業に排他的交渉権(独占交渉権)が付与されるというメリットもあります。これにより、売り手企業が他の第三者と交渉する可能性を排除できます。競合買収者の出現が懸念される有料な売り案件の場合、排他的交渉権は特に有効です。
上場企業を対象として買収案件の場合、基本合意締結後に案件内容が適時開示されるケースが多くあります。この場合、M&Aが進んでいることが公表されれば、買い手企業の交渉力の強化に繋がります。
その理由は、基本合意後にM&Aが取りやめとなれば、第三者からしたら「DD後に問題が発覚した」との印象を売り手企業に持つため、売り手企業のその後の営業に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
基本合意を行い、案件内容が公表されれば、売り手企業も交渉成立を重視せざるを得なくなり、買い手企業側が相手の譲歩を引き出し易くなります。
M&Aを実施し、売り手企業と買い手企業の文化が統合されれば、双方の従業員にとっては「さらに働きやすくなる」「福利厚生が改善する」などの恩恵を得られる可能性があります。
また、自身の実力を十分に発揮できなかった社員も、業務統合後に資金面や設備面が充実した結果、さらなる活躍が望めるようになるかも知れません。
M&Aでは、売り手企業の社員が買い手企業に組み込まれるので、業務体制や社内文化の変化に売り手企業側の社員が多大なストレスと抱える可能性もあることがデメリットとして挙げられます。
M&Aにおいて、買い手企業・売り手企業の双方の顧客にとって、取引している企業の「商品ラインナップの増加」「事業のスケールアップによるコスト」の恩恵を得られる可能性が存在します。
買い手企業・売り手企業が同一市場の競合関係にある会社だった場合、顧客側が取引を継続できなくなる可能性が存在します。また、経営統合後に一部事業や取り扱い製品の廃止が発生し、従来通りの取引ができなくなる点も懸念事項です。
地域社会や行政にとって、そのままでは廃業となる企業がM&Aによって存続すると、地域の経済基盤を維持できるというメリットがあります。それだけでなく、事業統合によりさらん地域の利便性が増す可能性もあるでしょう。
M&A後に、売り手企業の事業が一部廃止されれば、その事業を利用していた地域住民にとってはマイナスとなります。また、M&Aにより悪質な企業が地域社会に参入すれば、健全な地域文化維持の妨げとなります。
もし売却側の企業が金融機関の融資を返せないまま廃業してしまえば、その融資を回収することは困難になります。M&Aは金融機関にとっても、貸し倒れを防ぐことのできる有効な手段です。金融機関は地域に多くの取引先を持ち、また全国の金融機関ともネットワークを持っているため、企業間のM&Aをサポートすることのできる組織と言えます。
M&Aを行う企業に対し、金融機関がアドバイザーとして関われば、M&Aアドバイザリーの手数料を受け取れます。アドバイザリー業務を行なった場合の主な手数料は「着手金」「リテイナーフィー」「成功報酬」などです。
すでにご説明した通り、日本では中小企業の後継者不足が問題となっており、特に地方では過疎化などの影響からこの問題が顕著です。そのため、地方でもM&A仲介のニーズは高まっており、地方銀行・信用金庫などは、自社店舗がある地域社会の中小企業を対象として事業承継支援ビジネスに、参入しやすくなっています。
M&Aにおいて、税理士は「企業価値を判定するバリュエーション」「税務・財務のデューデリジェンス」「アドバイザリー」などの業務を請け負えます。
特に、税務・財務の専門家である税理士は、バリュエーションを「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3つの手法で実施可能です。
会計士は、M&Aの実務に関われば「M&A戦略とスケジュールの策定」「バリュエーション」「財務デューデリジェンス」を行えるので、自身のキャリアの幅をさらに広げられます。
M&Aにおいて、弁護士が担当できる業務は多く「M&Aアドバイザー/FA業務」「M&A仲介業務」「M&Aに関連する法務・労務管理」などを担えます。
そのため、一度の依頼で企業同士のマッチングからクロージングまで一括で依頼を受けることも可能です。
2014年、サントリー・ホールディングスは、ジムビームを所有している米国の蒸留酒企業にM&Aを実施、1.6兆円の譲渡金で大型の海外M&Aを成功させました。[3]
日本郵政は、2018年に今後3年間の間にM&Aやベンチャー投資に力を入れると発表。[4]同年12月には、アフラックコーポレーテッド・アフラック生命保険への3000億円の出資を決定しました。[5]
三井住友海上は、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした市場に狙いを定め、数千億円規模のM&Aを行ってきました。[6]その結果、東南アジア諸国連合の加盟10カ国で、唯一元受事業を行っている損保グループになるまでに成長しています。
ソフトバンクは通信事業で成長する過程で、日本テレコム、ボーダフォン、イー・アクセスなどの企業をM&Aにより買収してきました。最近では、2016年に半導体企業ARMに対して3.3兆円という巨額の買収金額でM&Aを実施しています。[7]
ECモール最大手の楽天は、国内信販株式会社を買収し楽天カードのサービスをスタート、イーバンクを子会社化し楽天銀行を設立するなど、M&Aを活用し事業の幅を広げ続けています。[8]
2008年にインドの大手ジェネリック医薬品企業を買収しましたが、TOB終了後にFDAから品質問題を指摘され、インド国内からの30品目以上が輸入禁止に。買収した企業も、インド大手製薬会社に譲渡しました。
NTTドコモは、2001年に米大手電話会社に16%(98億ドル)の出資、同時期にオランダの携帯電話会社にも15%(35.96億ドル)の出資をしましたが、結果的に約2兆円の損失を招きました。
1990年、同社の株式80%を13.75億ドル(当時約2,000億円)で買収、その後に100%まで追加出資しました。しかし、不況で不動産収入が減少した影響で、大半の不動産を売却する結果となりました。
1974年に、米国・カナダでのTV事業拡大のために買収を米企業のTV事業を買収しましたが、ブランド使用ができませんでした。また、1990年にもユニバーサルスタジオのMCAを買収しましたが、こちらも早期に手放しています。
アメリカで積極的に数社に対しM&Aを実行しましたが、シナジーを発揮できず現地法人に売却しています。
国内外で精力的にブランド拡大を行っているゴーゴーカレー様が、約40年の歴史を持ち、国内で7店舗を展開する本格インド料理店サムラシード様の工場を買収。これにより、ゴーゴーカレー様はイスラム法で食べることを許されている「ハラール料理」が作れる工場を手に入れました。
愛知県で施設常駐警備業を営む株式会社ライフ・コーポレーション様は、後継者不足などによる事業承継問題に悩まれていました。そこで、M&Aサクシードを通じ買い手企業とのマッチングを図ったところ、わずか1ヶ月の短期間で、同じく愛知県に拠点を置く人材サービス企業の株式会社日輪様と成約にいたりました。
日本で会計・財務のスペシャリストとして、国内外の企業を支援するグローバル・コンサルティングファーム様が、M&Aサクシードを活用し、フィリンピンの売り手企業と日本の買い手企業をマッチング。成約が難しいとされる東南アジア企業とのM&Aを成功させました。
製造業を営むA社は「経営者の高齢化」「後継者不在」などの理由から、M&A専門家に中小M&Aの相談を行いました。専門業社の迅速な対応により、4ヶ月で買い手企業が見つかり、基本合意に至ったのですが、最終契約前にA社経営者が社内外の人間にM&A情報を漏洩したことにより、破談に終わった失敗事例です。
運送業を営むA社は、後継者問題からM&Aの仲介を専門業者に依頼した所、A社が地域で有名な企業であったことから、すぐに買い手企業とのマッチングが実現しました。しかし、A社代表が「DDに必要な書類をいつまでも提出しない」「後から譲渡条件の変更を要求する」などの不誠実な対応を行なったため、買い手企業からの信頼を失い、不成立となりました。
[3]日経ビジネス
[4]日本郵政
[5]SankeiBiz
[6]三井住友海上
[7]日経クロストレンド
[8]楽天
[9]中小M&Aハンドブック
M&Aを行えば、買い手・売り手双方にとって、事業拡大や資金回収までの時間を短縮できるというメリットが存在します。
しかしながら、買い手企業にとっては企業買収を実行したからといって、必ずしも業務統合後にシナジーを発揮できるとは限らない点がネックです。さらに、M&A成立後に売り手企業の粉飾が見つかれば、買い手・売り手間でのトラブルに発展するケースもあります。
M&Aは、成立した段階で「時間の購入」というメリットは享受できます。M&Aにおいては「事前に売り手企業に対し入念なDD(デューデリジェンス)を実施する」「信頼できるM&A仲介業者に間に立ってもらう」なども検討し、大きく失敗しないように意識しましょう。
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