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M&Aによる多角化戦略とは?特徴やメリットを図解で解説

M&Aによる多角化とは、買収によって既存事業とは異なる市場に進出する戦略です。多角化の目標を短期間で実現できる点がM&Aのメリットです。多角化戦略の概要やM&Aによる多角化の事例をくわしく解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)

M&A 多角化の種類

目次
  1. 多角化戦略とは
  2. 多角化戦略のメリットとデメリット
  3. 多角化戦略の種類
  4. 多角化の方法
  5. M&Aによる多角化のメリット・デメリット
  6. 多角化を目的としたM&A戦略の類型
  7. M&Aによる多角化を成功させるポイント
  8. M&Aによる多角化を進めている企業の事例
  9. まとめ

多角化戦略とは

多角化戦略の概要とその他の戦略との関連性について解説していきます。

多角化戦略の概要

多角化戦略とは、新規市場に新規の商品やサービスを投入する戦略をいいます。
さらに多角化戦略は、水平型、垂直型、集中型、集成型の4つに分類されています。
こちらの分類についての詳細な内容は後述します。

また、多角化戦略は企業にとっては今までやったことのない新たな市場に新たな商品やサービスを投入することになるため、他の戦略と比較するとリスクが高くなりますが、この戦略をとることでのメリットも多く、企業の戦略として選択されています。

多角化戦略のメリットやデメリットは次章で解説していきます。

アンゾフの成長マトリクスにおける多角化とその他戦略の関連性

多角化戦略はアンゾフが提唱した製品と市場、既存と新規の軸から区分した戦略の一つ[1]ですが、その他の戦略の概要と関連性について解説していきます。

アンゾフ 成長 多角化

市場浸透戦略

市場浸透戦略とは、既存市場に既存の商品やサービスを投入する戦略をいいます。

既存の市場拡大を狙ってとられる戦略となりますが、新規市場に新規の商品やサービスを投入する多角化戦略とは真逆の戦略となります。
広告宣伝によるブランドや認知の向上や価格の再設定などによって既存の市場のシェアを拡大していきます。

新市場開拓戦略

新市場開拓戦略とは、新規市場に既存の商品やサービスを投入する戦略をいいます。

多角化戦略とは新規市場に投入するという側面では同じになりますが、既存の商品やサービスを投入する点が異なります。
既存の商品やサービスを国内から海外へ展開するエリアを変更するエリア戦略や大人向けから子供向けへのターゲットを変更するターゲット戦略が新市場開拓戦略となります。

新製品開発戦略

新製品開発戦略とは、既存市場に新規の商品やサービスを投入する戦略をいいます。

多角化戦略とは新規の商品やサービスを投入するという点では同じになりますが、既存市場に投入するという点が異なります。
既存市場に新たな商品やサービスを投入する戦略となるので、
既存製品に対して新機能を追加するなどが該当します。

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[1] 「アンゾフの成長マトリクス」(中小企業庁)

多角化戦略のメリットとデメリット

多角化戦略をとることによるメリットやデメリットについて解説していきます。

メリット

多角化戦略のメリットは主には5つあります。

経営全体のリスクを分散できる

新規市場に新規の商品やサービスを投入する多角化戦略は、これまでとは異なる市場、かつ、異なる商品やサービスを投入するため、リスクを分散することが可能になります。

これまでは異なる市場や商品、サービスを投入することで既存の市場の環境が悪化した場合や、既存の商品やサービスが顧客に受け入れられない状況となっても、新たに取り組む事業を展開することで悪化した状況などを避けることができます。

範囲の経済性を享受できる

範囲の経済とは、同一企業で異なる複数の事業間で共有可能な経営資源を一元化することで、個別事業で得られる以上のコストメリットを得ることをいいます。

範囲の経済においては複数の事業で同じ経営資源を共有することになるので、同じコストであったとしても、一つあたりの事業のコスト負担を減らすことができます

ここで参考ですが、範囲の経済と似た単語で、規模の経済があります。
規模の経済とは、一定の生産設備において、生産量を増やすことで当該設備に係る固定費を分散することができ、一つあたりのコスト負担を減らすことをいいます。

後述する水平型多角化であれば、規模の経済の恩恵を得ることができます。

シナジー効果を創出できる

シナジー効果とは複数の事業が合わさることで、個別の事業で得られる以上の成果が得られることをいいます。
シナジー効果は相乗効果ともいわれます。

多角化戦略においては、販売シナジーや操業シナジー、経営シナジーなどが得られる可能性があります
それぞれ、販路面や生産設備面、経営ノウハウ面などのメリットを得ることができます。

多角化戦略をとった場合、既存事業と新規事業と共有できる経営資源が多くなる傾向があります。
これを関連多角化と言いますが、後述する水平型多角化や垂直型多角化、集中型多角化が該当することになります。

未使用の経営資源を有効活用できる

経営を進めている中で遊休となっている資産など経営資源が余っているケースがあります。
こうした未使用の経営資源は既存事業だけを展開している限り、使用される可能性は高くありません。

多角化戦略を採用することで新たな市場に参入し、新たな商品やサービスを投入することでこれまで未使用であった経営資源を活用できる可能性があります
経営資源は使わなければ、無駄なものですが使用することで価値が上がり、事業拡大のキーとなる可能性もあります。

多角化戦略を採用すればそうしたメリットも得ることができます。

社員のモチベーションをアップできる可能性がある

既存事業だけを展開していると新たなことが生じることもなく、社員のモチベーションも維持が難しく、低下してしまう可能性があります。

多角化戦略を採用することで新たな事業を展開することになるので、社員にとっては刺激となり、モチベーションアップをすることができる可能性があります。
また、新たな事業を展開する中で社員のスキルアップやこれまで見えなかったスキルが発揮される可能性もあります。
そうしたことで既存事業にも良い効果をもたらす可能性もあります。

多角化戦略は企業の成長につながる可能性がありますが、社員の成長にもつながる可能性があるのです。

デメリット

多角化戦略の主なデメリットは3つあります。

費用がかかる

多角化戦略を採用すると新たな事業を展開することになるため、新たな投資や費用をかけることになります
既存事業だけであれば、追加の費用が必要なかったものが、新規事業となるため、投資や費用をかけることになります。

新規市場の参入や新規商品やサービスの提供により事業が拡大すれば、回収することができますが、失敗した場合、これらの費用や投資は無駄になってしまいます。
多角化戦略を採用する場合にはそうした費用や投資と得られるリターンを考えながら、進める必要があります。

非効率な経営となり得る

新たな投資先が増えることで、これまでかけることができていた事業の投資が分散されることになります。
投資先が分散されればされるほど、経営は非効率になっていきます。

既存事業だけで経営をしていれば、経営資源などはそこだけに集中することができ、また、ノウハウ等も広げる必要がなく、効率的な経営をすることが可能ですが、事業が広がれば広がるほど、経営は非効率になってしまうのです。

事業を広げれば、可能性も広がるのでその可能性と比較しながら、多角化戦略を検討していくことになります。

企業の特徴が分かりにくくなる恐れがある

事業が少なくて、その事業に特異性や強みなどがあれば、企業の特徴を伝えやすいのですが、多角化戦略をとると事業が多くなってしまい、得意分野などが分かりにくくなり、特徴が分かりにくくなってしまいます

それぞれに強みがあり、また、関連性もあれば特段問題にはならないのですが、全てが中途半端になってしまうと企業の特徴が分かりにくくなり、他社へのアピールなどが難しくなってしまいます。

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多角化戦略の種類

多角化戦略の分類について解説していきます。

多角化戦略 種類

水平型多角化

水平型多角化とは、既存事業と同じ分野で複数の事業を展開することをいいます。

既存事業と共通する経営資源を活かして、新たな事業を展開するため、既存事業とのシナジー効果が見込まれます。
また、既存の事業の技術面など蓄積されたノウハウを活用することもできます。

一般消費者向けの製品を展開していた会社が業者向けの製品などに展開することなどが該当します。

垂直型多角化

垂直型多角化とは、既存事業が展開しているものから川上あるいは川下の事業を展開することをいいます。

既存事業の延長線上にあるものであるため、既存事業のノウハウなどを活用して展開することができます。
ただし、既存事業の販売先や仕入先と競合してしまう可能性があるため、既存の取引先との関係を検討し、参入することが必要となります。

外食チェーン店が食品の生産などを開始することなどが該当します。

集中型多角化

集中型多角化とは、既存事業の経営資源を新たな市場に投入することで、複数事業を展開することをいいます。
特に自社の中核となる強みであるコアコンピタンスを活用することで複数事業へ展開することでスムーズに多角化を進めていきます。

代表的な事例として、カメラ・フィルム技術を医療機器等に転用した富士フィルムがあげられます。

コングロマリット型多角化

コングロマリット型多角化は、集成型多角化ともいわれ、新たに既存の市場や商品、サービスとは全く接点がない分野に展開していくことをいいます。

既存の事業と関連性が低いため、既存の経営資源を活用しにくく、シナジー効果が得られにくい方法ですが、一方で既存事業とは全く異なるがゆえに既存事業の影響も受けにくく、リスク分散をすることができます。

コングロマリット型多角化は、さまざまな事業を展開する商社が該当します。

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多角化の方法

具体的に多角化する方法について解説していきます。

新規事業・社内ベンチャーの立ち上げ

事業の多角化するにあたって手っ取り早い方法は社内で新規事業や社内ベンチャーを立ち上げることがあげられます。

既存事業のノウハウを活用できることやコストも他の方法よりも安くでき、他の方法よりも簡単にすることができます。
いわゆる水平型多角化が向いていると言えます。

ただし、新たな分野に進出するため、時間がかかってしまうことや新しい発想はなかなか出てこない可能性がある点には留意が必要です。

社内での新規事業や社内ベンチャーの立ち上げは他社が参入していない新たな市場の開拓などに対しては有効な手段となります。

アライアンス(資本・業務提携)

資本提携と業務提携

アライアンス資本業務提携)は、内部の経営資源を活用するとともに外部の経営資源を活用できるため、既存事業とは異なる領域でも展開することが可能となり、垂直型多角化や集中型多角化などに向いています。

アライアンスには資本提携と業務提携、またその2つを組み合わせた資本業務提携があります。

資本提携とは資本参加を伴うアライアンスで、必ずしも業務上の関連性がある企業と提携するとは限りません

業務提携とは資本参加を伴わないアライアンスで、業務上の関係性がある企業と提携するケースがほとんどです

これらを組み合わせたのが資本業務提携で、資本参加を伴う業務提携で、より強固な関係性を構築するために用いられます。

アライアンスは、提携先のノウハウなどを活用することができるため、自社で単独で展開するよりも短期間で展開することができます。

一方、複数企業が関係するため、調整が必要になることやアライアンスが解消された場合にはノウハウなどの流出などのリスクがあります。

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M&A

M&Aとは

M&Aは他社を買収することなどですが、M&Aを用いた多角化は、既存事業との関連性に関係なく用いることができ、経営資源を内部に取り込むことが可能となります。

企業として成り立っている事業を買収してくるため、水平型多角化、垂直型多角化、集中型多角化、コングロマリット型多角化の全てにおいて用いることができます。

特に既存の事業に関係ないコングロマリット型多角化では、上述の新規事業・社内ベンチャーの立ち上げやアライアンスには限界があり、M&Aは有効な手段となります。

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M&Aによる多角化のメリット・デメリット

M&Aを用いた多角化によるメリットやデメリットについて解説していきます。

M&A 多角化 メリット・デメリット

メリット

M&Aによる多角化の主なメリットは3つあります。

短期間で多角化の目標を達成しやすい

M&Aによる多角化ではすでにビジネスとして成り立っている企業などを買収することになるため、他の方法と比較して速やかに多角化を進めることができます
すでにビジネスとして成り立っているため、多角化に対する不透明感はなく、他の方法と比較して多角化の目標を達成しやすいというメリットもあります。

多角化が失敗するリスクを軽減できる

M&Aによる多角化はビジネスとして成り立っている企業を買収するため、これから新たに展開する方法よりもリスクを軽減することができます

自社で立ち上げて進める場合には、成功するか失敗するかも不透明な中で進めることになり、失敗するリスクがついて回りますが、M&Aを用いた場合にはすでにビジネスとして成り立っているため、失敗するリスクを軽減することができるのです

他社が有している独自の経営資源を獲得できる

M&Aによる多角化を用いた場合、買収した先を取り込むことになるため、買収先が有している経営資源やこれまで蓄積されたノウハウを獲得することができます

特に独自のノウハウなどは事業を展開していることで蓄積されるもので、まだ事業を展開していない企業にとっては貴重なものとなります。

他社が有している独自の経営資源やノウハウを活用することで、短期間で事業展開をすることも可能となります。

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デメリット

M&Aによる多角化の主なデメリットは2つあります。

買収資金が必要

M&Aは他社を買収することになるため、買収する資金が必要となります
企業を買収することになるため、相応の資金が必要になり、準備する必要があります。

また、買収に対する投資判断を誤ってしまった場合には、買収資金は無駄になってしまい、多額の損失につながります。

相応の買収資金が必要になることと、その投資判断を誤ってしまうと資金繰りに影響が出てしまう可能性があるため、慎重に進める必要があります。

PMIに時間と労力を要する

買収はクロージングまでが注目されますが、実際はその後進められることになるPMIと呼ばれる経営統合作業があります。

これまで全く違う企業として歩んできた2社が一緒のグループとして経営することになります。
そうなると
経営方針や制度などは全く異なりますし、シナジー効果を発揮させるために経営統合を進める必要があります

経営統合するには買収先に人を派遣して進めることになり、労力が相当かかるとともに、時間がかかる作業となります。

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多角化を目的としたM&A戦略の類型

ここでは、多角化を目的にしたM&A戦略について解説していきます。
多角化を目的にしたM&A戦略は主には4分類があります。

多角化 M&A戦略

コングロマリット戦略

コングロマリット戦略とは、多業種の事業を営む企業をグループ化する戦略をいいます。

M&Aを活用することで既存の製品や市場と関連性の低い企業や事業を買収することで、新規事業へ進出し事業の多角化を進めます。

事業ポートフォリオ転換戦略

事業ポートフォリオ転換戦略とは、複数事業を抱える企業が、グループの企業や事業を売却や新たに買収することで事業構成を組み替えていく戦略をいいます。

M&Aを活用することで新たな企業を組み入れたり、不採算な企業を売却したりすることでポートフォリオを組み替え、グループの成長につなげていきます。

プラットフォーム戦略

プラットフォーム戦略とは、M&Aを活用することでプラットフォームを構築・拡充する戦略をいいます。

プラットフォーム戦略には2つあり、M&Aにより業界のプラットフォーマーとしてポジションを獲得・強化する戦略と自社をM&Aのプラットフォームと位置付け、ロールアップ型のM&Aを行う戦略です。
前者は範囲の経済性を、後者は規模の経済性を発揮することが成功のカギとなります。

マルチアライアンス戦略

マルチアライアンス戦略とは、複数企業と広範囲に戦略的提携を行っていく戦略をいいます。

近年は技術革新など急速な市場の発展により、自社だけで全てに対応することが難しく、他企業と提携を進めながら、顧客のニーズに対応していくことが必要となっています。
M&Aにより広範な事業を展開することで市場のニーズを満たしていくことになります。

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事業売却とは、会社の特定事業を切り出して売却することです。不採算事業の整理や本業に経営資源を集中させるメリットのある手法です。今回は事業売却の売却相場・税金・メリット・手続きをわかりやすく解説します。 目次事業売却とは事 […]

M&Aによる多角化を成功させるポイント

M&Aにより多角化を成功させるポイントについて解説していきます。

大きすぎる投資をしない

M&Aは企業の買収などによるため、投資規模は大きくなる傾向にあります。
大規模なM&Aが成功すればその分大きなリターンを得ることができますが、規模が大きい分、失敗した時の損失も大きくなります。

そのため、自社の規模感と比較して大規模な投資をすることはリスクが高く、自社の規模感に見合った先に投資をする方が無難です。
買収したのちの経営統合などを考えても、大きすぎる投資はしないようにした方がいいでしょう。

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主力事業と関連性の高い分野で多角化を図る

多角化戦略には自社と関連性の低い分野の異なる分野で多角化を図っていく方法がありますが、自社と異なる分野の場合、事業の進め方などわからないところなども多く、失敗してしまうリスクがあります

主力事業と関連性の高い分野であれば、事業内容が異なるとしても事業の進め方などは近いものがあり、困ることは少ないでしょう。
そのため、初めて多角を進めるにあたっては主力事業と関連性の高い分野での多角化を進める方がいいでしょう。

多角化に慣れてきたら自社とは異なる分野で進めていくことも選択肢になりますが、M&Aにおいては主力事業と関連性の高い分野で進める方が成功への近道ともいえます。

シナジー効果を創出できる相手企業とM&Aを行う

自社の関連性の高く、シナジー効果を創出しやすい相手企業とM&Aをする方が、他社の力を活かして事業を拡大でき、さらにはシナジー効果も得られるため、成功しやすいと考えられます

シナジー効果には販売面もそうですが、製造面などさまざまな分野での効果を考えることができます。
自社の業種に近い方が販売や製造などを統合しやすく、シナジー効果も大きくなります。

どのような分野でのシナジー効果が創出できるかを検討し、M&Aを行うことが成功しやすくなるポイントとなります。

M&A後の経営統合や事業の成長を実現できる人材を確保する

M&Aは買収、すなわち契約書の締結までが注目されやすいのですが、実際はM&A後のPMIと呼ばれる経営統合のフェーズが重要になってきます。

PMIを進めるにあたっては、経営統合や事業の成長を進めるため、事業を推進できる人が必要となります。
事業を推進し、事業の成長を実現させることで多角化が成功につながっていくのです。

M&A後の経営統合や事業の成長を実現できる人材を確保しておくことは多角化においては必須の条件となります。

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M&Aの全体的な手続きの流れを売り手・買い手両方の視点で見ていきます。事前準備・検討段階~クロージング・最終契約、経営統合後に必要な業務まで全ての流れを解説します。 目次M&Aの全体的な流れ検討・準備フェ […]

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M&Aの人材確保・育成が難しい理由、必要な経験を会計士が解説

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M&Aによる多角化を進めている企業の事例

実際にM&Aにより多角化を進めている企業の事例を紹介していきます。

楽天グループ

まず、楽天市場を展開している楽天グループ株式会社の事例です。

今となっては楽天トラベルや楽天ブックス、楽天証券など幅広く展開している会社ですが、もともとは楽天市場から始まった会社です。
楽天は1997年に設立[2]され、楽天市場をスタートさせたのが最初ですが、その後、楽天オークションや楽天トラベル、楽天ブックスのサービスも開始します。

自社で立ち上げた楽天トラベルですが、2003年9月にはマイトリップ・ネット株式会社を子会社化し、サービスの補強をしています。
また、現在の楽天証券の前身であるディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券株式会社を2003年11月に子会社化し、金融市場にも参入しています。

そうした結果、楽天経済圏といわれるまで成長しさまざまなサービスを提供するグループを作り上げたのが楽天となります。

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Webサービスの売却には、まとまった資金や時間を確保できるメリットがあります。Webサービスを売却する流れや最新のM&A事例、売却額の相場、成功可能性を高めるポイントをわかりやすく解説します。(中小企業診断士 鈴 […]

ソニー

次に紹介するのが世界でも有名なグローバル企業であるソニー株式会社です。

電気製品でスタートしたソニーは、事業の多角化としてまず実施したのが電気製品に関連する分野です。
1965年3月[3]にアメリカのテクトロにクス社と折半でソニー・テクトロニクスが初めてでそこから電池事業などの電気製品関連での多角化を進めました。

その後、ソニー・レコードやソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー生命など今となっては電池事業に限らず、レコードやゲーム、保険などさまざまな分野での展開をしています。
楽天とは異なり、外資企業との合弁が多いのがソニーの特徴ともいえます。

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小野写真館

最後に紹介するのはフォトスタジオ事業やブライダル事業などを展開している株式会社小野写真館です。

1976年に創業した小野写真館ですが、写真関連というところから成人式衣装レンタル業や美容着付け業に参入し、ブライダル産業にも参入しました。
当初は自社で展開していた小野写真館ですが、他事業展開というところで旅館やフォトブックアプリ業を実施している会社の買収を行い、多角化を進めています。

特にここ最近では、コロナの影響でブライダル事業が打撃を受け、それに伴い、事業ポートフォリオの見直しが必要となり、買収を進めています。

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[2] 楽天の歴史(楽天グループ株式会社)
[3] ソニーグループについて(ソニー株式会社)

まとめ

ここまでM&Aによる多角化を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

自社で多角化を進めていくという方法もありますが、すでに出来上がっている企業や事業を買収することで、短期間で事業拡大を進めることができます。

一方で、あまりに規模の大きすぎる投資や自社と全く関連しない事業に関して多角化することは、シナジーなども望めずリスクが大きいため、リスクと比較しながら多角化に向けM&Aを実施する必要があります。

多角化にはさまざまな方法がありますが、M&Aも一つの選択肢で有効な手段になりうるので検討してみましょう。

(執筆者:公認会計士 前田 樹 大手監査法人、監査法人系のFAS、事業会社で会計監査からM&Aまで幅広く経験。FASではデューデリジェンス、バリュエーションを中心にM&A業務に従事、事業会社では案件のコーディネートからPMIを経験。)