M&Aの依頼先とは?仲介会社や税理士に相談するメリットを解説
- 法務監修: yokoyoko777 (公認会計士)
M&Aの依頼先には、仲介会社や税理士、金融機関などがあります。依頼先ごとに、相談するメリットや得意とする業務は異なります。各依頼先の特徴やM&Aの依頼にかかる手数料、おすすめの依頼先などを紹介します。
依頼先 | 依頼できる業務 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
仲介会社・M&A専門会社 | M&Aに関する総合的なサポート | 要望に適うM&Aの相手先を紹介してもらえる | どの会社を選べば良いか分かりにくい |
税理士などの士業 | 財務、税務デューデリジェンスやM&Aの相手探し | 案件を紹介してもらう際、依頼先の士業は対象会社の財務内容に精通している場合が多い | 必ずしも案件を持っているとは限らない |
金融機関 | 資金調達のアレンジ、M&Aの相手探し |
| 取り扱う案件が比較的大型であり、会社の規模が小さいと取り扱ってもらえない可能性がある |
公的機関 | 中小企業の事業承継に関する相談など |
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マッチングサイト事業者 | M&Aの相手探し |
| サービスによっては、仲介会社等と比較してサポートが手薄 |
仲介会社・M&A専門会社へM&Aの相手先探しを中心に、M&Aに関する総合的なサポートを依頼することができます。
M&Aを専門にサービス提供しているため、M&Aに興味のある顧客を多数抱えており、売り案件も豊富である点が特徴です。
顧客要望に合ったM&Aの相手先を紹介してもらえる点が大きなメリットです。
実際に交渉が進んだ際は、買収価格の相場や交渉の仕方など様々な点でアドバイスも受けることができます。
仲介会社・M&A専門会社の数は多く、どの会社を選んで良いのか分かりづらい点がデメリットです。
自身が探している案件規模や業界に応じて適切な会社を選択しなければ、なかなか良い案件に巡り合えず時間を無駄にしてしまう可能性があります。
税理士にはM&Aの際の財務、税務デューデリジェンス等を依頼することができます。
買い手が買収の意思決定前に対象会社のデューデリジェンスを実施することで、対象会社にリスクがないかを深く調査します。
また、デューデリジェンスだけでなく、税理士にM&Aの相手先探しも依頼することができます。
税務顧問を多く抱えている税理士であれば、M&A案件やM&Aの相手先を探せる可能性が高まります。
税理士からM&A案件の紹介を受けた場合、税理士が対象会社の財務内容に精通していることが多い点がメリットです。
税理士の紹介案件ということである程度、信頼してM&Aの検討を進めることができます。
税理士にM&A案件の紹介を依頼したとしても、必ずしも紹介を受けられるとは限らない点がデメリットです。
税理士はM&Aを毎日業務として行っているわけではなく、本業は税務顧問業です。
そのため、案件を持っていない場合には案件として出てくるまで待つ必要があります。
金融機関について、買収資金の融資など資金調達のアレンジを基本的には依頼することができます。
金融機関によってはM&A案件の紹介やM&Aの相手先探しをサポートしてくれることもあります。
金融機関から案件を紹介してもらった場合、買収資金のアレンジも同時にサポートしてもらえる点が大きなメリットです。
地方銀行や信用金庫であれば、その地域に特化したM&A案件や買い手を探してくれるケースがあります。
金融機関の取り扱う案件は大型案件であることが多い点がデメリットと言えます。
買い手であれば買収資金が小さい場合、売り手であれば自社の規模が小さい場合には、金融機関からM&Aのサポートを受けられないこともあります。
公的機関として、事業承継・引継ぎ支援センターに親族内承継、第三者への引継ぎなど中小企業の事業承継について相談することができます。[1]
公的機関が運営しているため、安心して利用することができます。
また、手数料も必要ないため、お金がなくても利用することができます。
事業承継案件に限定されており、自分の希望する地域、業種に案件がない可能性があります。
また、M&Aの交渉など専門的なアドバイスを受けたい場合には、別途FAなどを起用しなければならない点は留意が必要です。
マッチングサイトはM&Aの相手探しを依頼することができます。
買い手であればインターネットに登録されている売り案件から自分の希望する条件を入力して自由に案件を検索できる点が特徴です。
マッチングサイトは仲介会社やM&A専門会社と比べて、手数料が安い点が大きなメリットです。
買い手や売り手にとって、コストパフォーマンスを重視するならM&Aプラットフォームを利用することが有用です。
また、小規模な案件も登録されており、買収資金に余裕がない買い手であってもM&Aの可能性を追求することができます。
マッチングサイトを利用する場合、仲介会社やM&A専門会社と比べて、サポートが手薄になりがちな点がデメリットです。
初めてのM&Aで自信がない場合には、サポートが充実しているマッチングサイトを利用するか、別途FAなどに相談する必要が出てきます。
[1] 事業承継・引継ぎ支援センター
M&Aのサポートを依頼する場合は、会社のホームページなどを見て、M&Aの成約実績がきちんとあることを確かめましょう。
成約事例が古いものではなく、直近で成約した実績があることも確認すべきポイントです。
M&Aの専門会社は得意としている業種や事業規模があります。
例えば、M&Aマッチングサイトは小規模~中規模のM&A案件を得意としており、外資系金融機関は大規模なものやクロスボーダー案件を得意としているなど、会社によって様々です。
自社の業種、事業規模にマッチした会社に依頼するようにしましょう。
M&Aの実務は、財務や税務、法務に詳しくなければ最終的に成約させることは困難です。
M&Aの依頼先にそれぞれの専門家がいれば、専門的な質問をしても適切に回答してもらえます。
どのようなバックグラウンドを持ったコンサルタントが在籍しているのかを事前に確認しておくと安心してサポートを依頼できます。
M&A会社の中には手数料体系を明示していない会社も中にはあります。
成約後に想定していなかった手数料を請求されないよう手数料体系は事前によく確認しなければなりません。
M&Aに関する手数料が高い場合、買い手であれば投資回収できないリスクが高まり、売り手であれば手取り額がその分減少してしまいます。
なるべく、自社の事業規模に応じて手数料が安くなるM&Aサービスを活用するようにしましょう。
信頼できるM&Aの相手先を探すためには、紹介する会社が幅広いネットワークを有している必要があります。
M&A仲介会社の中には金融機関や士業事務所と連携して質の高いネットワークを構築している会社もあります。
どのようなネットワークを有しているかを念頭において、M&Aサービス会社から情報収集することがお勧めです。
M&Aのプロジェクトは1日、1週間で終わるものではありません。
一般的にM&A専門会社に業務を依頼した場合、特定の担当者がアサインされます。
担当者によっては知識や経験が乏しい場合、忙しくて連絡が遅い場合などがあり、どのような担当者が付くかによってM&Aサービスの満足度は大きく変わってきます。
担当者とコミュニケーションが取りやすいかどうか、正式に発注する前によく見極めるようにしましょう。
「アドバイザリー形式」の場合、売り手または買い手から依頼を受けて、片方のみに対してM&Aに関するアドバイスを提供します。
片方のみに対するサービス提供のため、依頼者に対して利益の方向性が一致しており、アドバイスの内容を信頼して受け取ることができます。
「仲介形式」の場合、売り手と買い手の双方に対して、M&A仲介会社はアドバイスを提供することになります。
M&Aが成約しなければ成功報酬が得られない契約内容の場合、M&Aを成約する方向へと偏ったアドバイスになりがちです。
「仲介形式」の場合、アドバイス内容を真に受けることが難しい場合があり、慎重にM&Aを進めなければならないケースがあります。
「アドバイザリー形式」の場合、売り手または買い手の片方のみに手数料を請求します。
「仲介形式」の場合、売り手と買い手の双方に対して手数料を請求する点で異なります。
手数料の種類 | 概要 | 相場 |
---|---|---|
相談料 | M&Aの事前相談にかかる手数料 | 無料〜数万円 |
着手金 | M&Aの案件登録(アドバイザーとの契約)で発生する手数料 | 100~200万円 |
中間報酬 | 基本合意の段階で発生する手数料 | 成功報酬の1〜2割 または 無料〜200万円 |
リテイナーフィー | アドバイザーとの契約期間中、毎月発生する手数料 | 月額30万円〜100万円 |
成功報酬 | M&Aの最終契約を締結した後に発生する手数料 | レーマン方式で算出 (取引金額の1〜5%) |
M&Aの相談は初回相談無料の会社が多いですが、中には相談料がかかる会社もあります。
M&A専門会社へ問い合わせて打ち合わせをセットする場合には、相談料がかかるかどうかは事前によく確認しておく必要があります。
M&Aの売り案件として登録する際、着手金が必要なことがあります。
M&A仲介会社によっては着手金100万円程度が必要なため、覚悟してM&Aプロジェクトを進める必要があります。
買い手目線で考えると、着手金のあるM&A仲介会社の案件の方が、売り手が本気な案件であることが多いため、安心して買収の検討ができるというメリットもあります。
中間報酬とは、基本合意の段階で請求する成功報酬の一部です。
基本合意後に買い手はデューデリジェンスを実施し、売り手と契約書の内容を詰めていくことになります。
デューデリジェンスで簿外負債の発見など大きな問題が見つかり買収を取りやめた場合、中間報酬は多くの場合、返還されることはありません。
中間報酬が必要な場合には、買い手にとってデューデリジェンスの結果によらず、M&Aを成約させたいという気持ちが出てしまうリスクが生じる点に留意が必要です。
リテイナーフィーとは、月額費用のことです。
多くのM&A仲介会社ではリテイナーフィーは取らないことが一般的ですが、FAはリテイナーフィーを取ることもあります。
リテイナーフィーが必要な場合、早くM&Aを成立させたいというプレッシャーにもなってしまう点がデメリットと言えます。
成功報酬とはM&Aの最終契約締結後に請求される費用のことです。
レーマン方式と呼ばれる算式で計算されることが一般的で、買収金額が高くなればなるほど手数料率が安くなることが特徴です。
M&A仲介会社の手数料の中でも成功報酬が大部分を占めるため、成功報酬の計算方法については詳細に確認しておく必要があります。
M&Aサクシードは完全審査制M&Aプラットフォーム[2]です。
案件登録前に審査が行われ、審査が通った案件しか掲載されないため、買い手は安心してM&A案件を探すことができます。
譲渡企業は登録無料で利用でき、譲り受け企業が負担する手数料も一般的な仲介会社などと比べて安価です。
日本M&Aセンターは友好的M&A支援でNo.1の実績がある仲介会社[4]です。
多くの地方銀行、信用金庫、会計事務所と連携して幅広いネットワークを有している点が特徴です。
相談料は無料ですが、成功報酬の他に着手金も必要[5]です。
プルータス・マネジメントアドバイザリーは、公認会計士を中心とするメンバーにより構成されたM&Aアドバイザリー会社[6]です。
資本政策、事業戦略に熟知したメンバーが集まり、仲介会社とは異なり、買い手または売り手の片方のみに対してアドバイスを提供しています。
インテグループは、中小・中堅企業のM&Aに強みをもったM&A仲介・アドバイザリー会社[7]です。
売上規模1億円~150億円程度まで様々な業種でM&Aの成約実績[7]があります。
完全成功報酬制を採用しており、着手金、リテイナーフィー、中間金は必要なく、手数料が発生するのはM&Aが成約したケースのみ[8]です。
山田コンサルティングは、会計、税務、法律、事業、M&A、ITなど多方面にわたる経営コンサルティングサービスを提供[9]しています。
総合コンサルティング会社である強みを生かして、M&A検討支援(プレM&A)からM&Aアドバイザリー、統合支援(ポストM&A)の支援まで行っている[10]点が特徴です。
[2] M&Aサクシード 公式HP
[3] M&Aサクシード 手数料体系
[4] 日本M&Aセンター 公式HP
[5] 日本M&Aセンター 手数料体系
[6] プルータス・マネジメントアドバイザリー 公式HP
[7] インテグループ 公式HP
[8] インテグループ 手数料体系
[9] 山田コンサルティング 公式HP
[10] 山田コンサルティング M&Aコンサルティングサービス
M&Aの案件探しや相手を探す場合、M&A仲介会社からマッチングサイトまで様々なサービスがあります。
それぞれのサービスごとにメリット、デメリット、得意としている事業規模や業種、手数料体系が大きく異なっているため、自身の状況にあったサービスを利用することが重要です。
事前によくサービス内容を確認したうえで、問い合わせることが重要です。
(執筆者プロフィール:公認会計士試験に合格後、大手監査法人にて監査業務やコンサルティング業務に従事。その後、経営コンサルティング会社などを経て、現在は事業会社におけるM&A実務を行っている。日々、投資やM&Aに関するノウハウを発信中。)