お知らせ:「ビズリーチ・サクシード」は「M&Aサクシード」にサービス名を変更しました

M&Aの投資手法や成功のコツ 投資ファンドのM&Aも徹底解説

M&Aは、シナジー効果の発揮など以外にも、投資(売却利益の獲得など)を目的として行われることもあります。この記事では、投資を目的としたM&Aの手法や成功させるポイントなどをわかりやすく解説します。(公認会計士 西田綱一 監修)

M&A 投資(FV)

目次
  1. M&Aと投資の違い
  2. M&Aによる投資の手法
  3. M&Aによる投資を成功させるコツ
  4. 投資ファンドによるM&Aの概要
  5. まとめ

M&Aと投資の違い

まずは、M&Aと投資の定義から説明します。
定義の把握を通じて、M&Aと投資の違いについて抑えてください。

M&Aの定義

M&Aとは、「merger and acquisition」の略語です。
日本語で合併買収を意味します。
複数の会社が一つになることや、ある会社が別の会社を買う事です。

より広い意味で用いられるときは、合併と買収以外に資本提携事業譲渡をM&Aに含める場合もあります。

M&Aは、基本的に、シナジー効果の発揮や既に存在する企業や事業を購入することによって企業が成長するための時間を短縮することなどを目的として行なわれます。
一般的に、先行する競合先が既に利益を出しているような市場では、一から企業を設立して追いつき追い越していくのは、簡単ではないとされています。

上記以外のM&Aの目的としては、経営資源を中核事業に集中することなどが挙げられます。

M&A・事業承継
M&Aは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略です。この略語には、かなり複雑な内容が込められています。M&Aの読み方や成り立ち、意味、関連語の概要をくわしく解説します。 […]

投資の定義

投資は、大きく金融投資と事業投資に分けられます。

金融投資は、時価の変動や配当の受け取りにより利益を得ることを目的に、債券や投資信託などを購入することです。
株式の購入も、目的が左記の通りであれば、金融投資に含まれます。

一方、事業投資は工場・設備・備品などの購入のことです。
事業を通じて、中長期的に利益を得るための投資です。

M&A・事業承継
事業投資とは?目的、方法、M&Aによる成功事例【わかりやすく解説】

事業投資とは、事業への投資を通じて利益を得ることです。新規事業への投資やM&Aなどの方法があり、それぞれメリット・デメリットは異なります。事業投資の目的や方法、投資事業有限責任組合による投資の仕組みなどを詳しく解 […]

M&Aと投資の違いとは

金融投資とは異なり、M&Aで企業への支配権を得て経営を行なうために他社の株式を購入することは、事業投資に含まれます。
この場合、自社が進出したい事業や自社の既存事業と相乗効果があるような事業を行なっている企業の株式を購入して、経営を行なうこととなります。

一方、金融投資としてM&Aを行なうケースもあります。
この場合のM&Aは、株価の変動後に株式を売却することや配当を受け取ることにより、利益を得ること自体を目的として行なわれます。

M&Aも「投資」である

M&Aのために他社の株式を取得することが、金融投資に該当するにしろ、事業投資に該当するにしろ、M&Aも「投資」であると言えます。

M&A・事業承継
M&Aとは?目的・手法・メリット・流れを解説【図解でわかる】

M&A(エムアンドエー)とは、Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で、「会社あるいは経営権の取得」を意味します。今回は、M&Aの意味・種類・目的・メリット・基本的な流れ・税金・ […]

M&Aによる投資の手法

ここまで、M&Aによる投資の意義について説明してきました。
ここからは、M&Aによる投資の手法について説明します。

株式取得・資本参加

株式譲渡

株式譲渡

M&Aの手法としての株式譲渡は、M&A対象会社の支配権の取得又は支配への参画のために、M&A対象会社の株主から、その保有するM&A対象会社の株式を取得することです。
M&Aにおいて、最もよく利用されるスキームです。

M&Aの手法としての株式譲渡のメリットとして、株式譲渡では株主構成が変更されるだけなので、買い手はM&A対象会社の債務に対する責任を直接負うことはないことなどが挙げられます。
また、会社法上の債権者保護手続きは、要求されていません。

一方、デメリットとしては、シナジー効果が発揮されにくいことや、簿外債務を引き継いでしまう可能性がある事などが挙げられます。

M&A・事業承継
株式譲渡とは?メリット・手続き・契約・税金を税理士が解説

株式譲渡とは、売却会社の株主が持つ株式を、買収会社に譲渡し、会社を売買する方法です。 中小企業のM&Aの多くは株式譲渡によって行われています。 株式譲渡のメリット・デメリット、手続き、契約書、かかる税金・価値算定 […]

M&A・事業承継
会社売却が株主に与える影響とは?株主が行う手続きも詳しく解説

会社売却(株式譲渡)で株主は、保有する株式を買い手企業に譲渡します。会社売却が株主に与える影響やメリット、株主が行う手続き、税金を徹底解説します。また、事業譲渡が株主に与える影響も説明します。 目次会社売却(株式譲渡)が […]

第三者割当増資

第三者割当増資

第三者割当増資とは、会社の行なう募集株式の発行等のうち、特定の第三者に対してのみ募集株式の申込みの勧誘と割当てを行なう増資のことです。
M&Aの手法としての第三者割当増資は、株式を割り当てられた買い手による、M&A対象会社の支配権の取得又は支配への参画のことです。

メリットとして、特定の第三者が、M&A対象会社が発行する新株又は処分する自己株式を引き受けるだけなので、スキームが非常にシンプルであることなどが挙げられます。
一方、デメリットとして、株式譲渡と比較すると、M&A対象会社の支配権を取得するためのコストが大きいことなどが挙げられます。

M&A・事業承継
第三者割当増資とは?メリットや手続き、株価の算定方法を解説

会社を経営する上で、資金調達は避けては通れない問題となります。資金調達は、金融機関の借り入れ、あるいは、第三者割当増資のどちらかが採用されることが一般的です。今回は第三者割当増資のメリット・デメリット・手続きの流れ・最新 […]

株式交換・株式移転

株式交換は、M&A対象会社がその発行済株式の全部を他の会社(買い手)に取得させ、買い手がM&A対象会社の株主に対し、対価を交付するスキームです。

株式交換

M&A・事業承継
株式交換とは?メリット・デメリットや手続きを解説【事例付き】

株式交換は売り手企業の全株式を買い手企業の株式と交換し、親会社・子会社の関係を作り出すM&A手法です。株式交換の仕組みや株式移転との違い、メリット・デメリット、手続き・事例について図解でわかりやすく解説します。 […]

株式移転は、M&A対象会社がその発行済株式の全部を新たに設立する会社に取得させ、M&A対象会社の株主は新たに設立された会社の株主となるスキームです。

株式移転

M&A・事業承継
株式移転とは?株式交換との違い、メリット、手続き、事例を解説

この記事は既存の会社を対象として、新たに親会社を作り対象会社の会社の株式をすべて取得させる株式移転についての記事です。株式移転の目的や手法、メリット・デメリット、手続きの流れ、事例について解説します。 目次株式移転とは? […]

株式交換・株式移転のメリットとして、買い手は対価として新株を発行すればよく、買収資金が不要であることなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、M&A対象会社の株主が買い手企業の株主となり、買い手企業の株主構成が変わってしまうことなどが挙げられます。

M&A・事業承継
株式取得とは 方法やメリット・デメリットを公認会計士が徹底解説

株式取得とは、株式の取得により支配権を得るM&A手法です。株式譲渡や株式交換・移転、第三者割当増資などの方法があり、比較的簡単にM&Aを行える点がメリットです。手続きや税金、事例をくわしく解説します。(公 […]

事業譲渡・会社分割

事業譲渡

事業譲渡

事業譲渡は、会社(売り手企業)が、事業の全部又は一部を、他の会社(買い手企業)に譲渡するスキームです。

メリットとして、買い手企業が不要な資産を抱え込む必要がないことなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、個別の資産の所有権や契約上の地位の移転手続きが必要であるため、コストがかかることなどが挙げられます。

M&A・事業承継
事業譲渡とは?メリット・手続き・流れ【図解で分かる】

事業譲渡とは、会社がある事業の全部または一部を譲渡することをいいます。企業全体を売買対象とする株式譲渡と違い、譲渡対象の事業を選べるのが特徴です。M&Aの代表的な手法のひとつです。この記事では、事業譲渡の意義、株 […]

会社分割

会社分割(新設分割_吸収分割)

会社分割とは、会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割し、他の会社に承継させるスキームです。

メリットとして、事業譲渡と比較して手続きがシンプルであることや、転籍させる従業員から個別に同意を得る必要がないことなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、システムの統合などで現場への負荷が高まり、経営統合がスムーズに進まない可能性があることなどが挙げられます。

M&A・事業承継
会社分割とは?吸収分割・新設分割の違い、手続き、事例を解説

会社分割は事業の一部もしくは全部を、他の会社に承継させることをいいます。新設分割と吸収分割の方法があります。この記事では会社分割の意味、手法の特徴、メリット・デメリット・手続きの流れ・事例を解説します。   目 […]

M&Aによる投資を成功させるコツ

ここまで、M&Aによる投資の手法について説明してきました。
ここからは、M&Aによる投資を成功させるコツについて説明します。

無理のない規模で買収する

自社の規模と比較して、大きすぎる企業を買収することには、それなりのリスクが伴います。
そのため、無理のない規模の企業を買収することが、M&A投資を成功させる秘訣の一つです。

無理のない規模で買収することで、M&Aを失敗した時の損失も、最小限に抑えることができるでしょう。
特にM&Aの経験が少ない場合は、より小さい規模の会社を対象とすべきと言えます。

仮にM&A対象企業の規模がある程度大きい場合は、買い手がM&A対象企業を一方的にコントロールすることは難しくなるでしょう。
買い手とM&A対象企業とが対等であることを要求されるケースが想定されます。
ただし対等でいることが足かせとなり、非効率な経営体質を維持することは避けるべきです。

ある程度大きい規模の会社に対してM&Aを行なう場合は、M&A後の利害を一致させることが大きなポイントです。

買収価格が高くなりすぎないように注意する

M&Aによる投資を行なう上で、投資が回収できる範囲での買収を行なうことは、非常に重要なポイントです。
シナジー効果を過大に見積もることなどを理由に、高すぎる買収価格でM&A投資を行なうことには、大きなリスクを伴います。

M&A対象企業の従業員とのコミュニケーションを上手に行なう

M&A対象企業の従業員のモチベーションは、M&A後の経営が上手くいくかどうかを、大きく左右しうるものです。
M&A対象企業の従業員の不満や不安を解消し、買い手企業と目標を共有し、モチベーションをアップさせることが重要です。

M&A・事業承継
M&Aで従業員はどうなる?雇用や待遇などへの影響を徹底解説

M&Aを実施すると、従業員の雇用契約が継続されるなどのメリットを得られます。ただし、円滑な雇用の引継ぎには、従業員の不安解消が重要です。M&Aが従業員に与える影響やメリットをくわしく解説します。 目次従業 […]

企業価値が低く、今後の成長が見込める企業をターゲットとする

何かの理由で現時点にて算定される企業価値が低くても、今後大きく成長していく企業は存在します。
そのような企業を見出し、M&Aによる投資が行なえれば、失敗時のリスクを小さくできることや仮に成長した時に大きな利益を得られることなどのメリットがあります。

M&A・事業承継
イグジット(エグジット、EXIT)とは?意味をくわしく解説

イグジット(エグジット、EXIT)とは、M&AやIPOで利益を得ることです。ハーベスティングとも言われるイグジットは、事業の投資資本を回収する出口戦略です。公認会計士がイグジットの意味を解説します。 目次イグジッ […]

実績があるM&Aの専門家に協力してもらう

M&Aには、極めて高度で専門的な知識が要求されます。
そのためM&Aの検討・実施にあたっては、通常、外部専門家のサポートを受けることとなります。
多くの場合、フィナンシャル・アドバイザー(FA)、リーガルアドバイザー、会計・税務アドバイザーが起用されます。

フィナンシャル・アドバイザーは、買い手又は売り手の選定からクロージング手続きまで、M&Aプロセスの全体に関与して案件を進行させる役割を担います。
フィナンシャル・アドバイザーの候補としては、例えば、投資銀行・証券会社、商業銀行、経営コンサルティング会社、M&A専門会社などがあります。

外資系投資銀行は、企業価値で数百億円~数千億円の大型案件を中心に扱っていて、最低報酬は2~3億円であるとされています。[1]
日系の証券会社は、企業価値で数十億円~数千億円の幅広い案件を扱っていて、最低報酬は2~3千万円であるとされています。[2]

商業銀行については、メガバンクであれば最低報酬が2千万円~3千万円程度とされています。[3]
地方銀行であれば、最低報酬が数百万円~1千万円であるとされています。[4]
最近は、地方銀行や信用金庫もM&Aに関する業務を行なっています。

M&A専門会社は、M&Aのアドバイザリー業務を専門的に扱う会社です。

戦略コンサルティングファームや財務系コンサルティングファームも、フィナンシャル・アドバイザー業務や企業価値評価などのM&A関連業務を提供しています。

M&Aにおけるリーガルアドバイザーには、弁護士が就任します。
文書の作成やM&Aスキームの検証、法務デューデリジェンスなどを担います。

M&Aにおける会計アドバイザーは、通常、公認会計士が就任します。
財務情報の詳細な調査を行なう財務デューデリジェンスを実施します。

M&Aにおける税務アドバイザーは、通常、税理士が就任します。
税務面の詳細な調査を行なう税務デューデリジェンスを実施します。

M&A・事業承継
M&Aアドバイザリーとは?業務内容、手数料、仲介会社との違い

M&Aアドバイザリーとは、M&Aの専門知識を持ち、M&Aによる利益最大化の為に助言を行う業態を指します。今回はM&Aアドバイザリーの業務内容、成約時に支払う手数料、M&A仲介会社と […]

[1] 企業買収の実務プロセス p.6
[2] 企業買収の実務プロセス p.60
[3] 企業買収の実務プロセス p.61
[4] 企業買収の実務プロセス p.61

投資ファンドによるM&Aの概要

ここまで、M&Aによる投資を成功させる秘訣について説明してきました。
ここからは、M&Aによる投資のプロフェッショナルである投資ファンドについて説明します。

投資ファンドとは

ファンドという言葉は、元々、「基金」と訳される言葉です。
そのため「投資ファンド」は、投資家から集めた資金を、不動産・公開株式・非公開株式・債券・為替などに投資する基金のことです。
ただし多くの場合、そういった基金を運営する機関・組織という意味で用いられます。

投資ファンドは、事業の拡大ではなく転売を目的として、企業の株式に投資を行ないます。
そして、投資によって得た利益を投資家に分配します。

投資ファンドの種類

投資ファンド 種類

投資ファンドは、投資対象や投資の手法などによって、種類が分かれます。
ここでは、種類ごとにそれぞれの特徴などを説明します。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、投資家などから資金を集め、ベンチャー企業に投資を行なう投資ファンドです。
出資先が株式公開(IPO)を行なったり、M&Aを受けたりした際に、株式を売却することで利益をあげます。

ベンチャーキャピタルは出資を行なうだけではなく、役員派遣をはじめとした、企業価値を高めるための活動も行ないます。

M&A・事業承継
ベンチャー企業のM&Aを成功させる秘訣とは【事例12選】

ベンチャー企業にとってM&Aは、大きな戦略的意味を持ちます。ベンチャー企業にとってのM&Aの意味や近年の動向・事例、売却価格の決定方法や成功の秘訣について、図解を用いて徹底解説します。 目次ベンチャー企業 […]

バイアウトファンド

バイアウトファンドは、キャッシュを安定的に創出できる成熟した企業に投資を行なう投資ファンドです。

企業の議決権の過半数を取得して、投資後に投資先の経営に関与し、株式価値を向上させてから、保有する株式を売却することによって収益を得て、投資家にキャッシュを還元します。

M&A・事業承継
バイアウトの意味や各手法のメリット、目的をわかりやすく解説

バイアウトとは、従業員や経営者が株式買収で企業の経営権を得ることです。MBOやEBO、LBOなどの手法があり、それぞれメリットは異なります。バイアウトを成功させるポイントや注意点を徹底解説します。 目次バイアウトとはバイ […]

M&A・事業承継
ファンドによるエグジットとは?取引の流れや事例をくわしく解説

ファンドによるエグジットとは、投資した会社の価値を高めて、株式の売却益を得ることです。ファンドによるエグジットの流れや事例を詳しく解説します。また、ファンドに対してエグジットするメリットも紹介します。(公認会計士 前田 […]

M&A・事業承継
バイアウトファンドとは|意味や事例、ヘッジファンドとの違い

バイアウトファンドとは、投資対象会社の企業価値を向上させた後に、高値で売却して利益を創出するファンドです。主に、事業承継や事業再生の手段として活用できます。バイアウトファンドの一覧や活用による効果、M&Aの事例を […]

企業再生ファンド

企業再生ファンドは、経営不振の企業へ投資をします。
本業の収益力が高い企業や、優れた技術やノウハウを持っている企業が投資の対象となるケースが多いです。

企業再生ファンドは、ターンアラウンドやワークアウトと呼ばれる手法などにより、企業の再生を支援します。
ターンアラウンドはターンアラウンドマネージャーと呼ばれる経営者が企業経営に直接関わり、トップダウンによる事業改革等を行なうことです。

ワークアウトはコスト削減のためのリストラ策など、短期的利益を追求する手法です。

M&A・事業承継
企業再生とは メリットや事業再生との違い、条件、方法を徹底解説

企業再生とは、企業が存続の危機にある際に、その原因を排除し企業を再生することです。法的再生と私的再生という2種類の方法があります。各方法のメリットやM&Aによる企業再生の事例をくわしく解説します。(公認会計士 前 […]

ディストレスファンド

ディストレス(distress)とは、本来、「差し押さえ」の意味です。
ここから転じて、倒産した企業に投資を行なう投資ファンドを、ディストレスファンドと言います。
ディストレスファンドは「ハゲタカ」と呼ばれ、揶揄されるケースもあります。

ディストレスファンドは、非常に安い価格で債権や株式を取得できるケースが多いです。
そのため企業を再建できれば大きな利益を得ます。
一方、企業再建が上手くいかなければ、投資の回収が不可能となり大きな損失が出ます。

投資ファンドによるM&A戦略

投資ファンドによるM&A戦略として、先ずは、ロールアップ戦略があります。
ロールアップ戦略は、小規模な企業を複数買収して規模拡大と効率向上による収益拡大を実現する戦略です。

投資ファンドによるM&A戦略として、次に、MBOがあります。
MBOとは、「Management Buy-out」(マネジメント・バイアウト)の略称で、経営陣による企業買収を意味します。

MBOには一定のメリットがあるものの、経営陣はM&A対象会社に関する正確かつ豊富な情報を有していることから、株式の売却者である少数株主との間に大きな情報の非対称性が存在する、というデメリットもあります。

MBOにおける典型的な資金調達方法としては、まず、M&A対象企業の株式保有を目的に受け皿となる会社(特別目的会社)を設立します。
次に、この特別目的会社に対して、経営陣と投資ファンドが出資を行ないます。
そして、この特別目的会社が金融機関から借り入れを行なう、という流れです。

M&A・事業承継
M&Aにおける資金調達とは?方法を図解でわかりやすく解説

M&Aでは、デューデリジェンスや譲渡対価に多くの費用を要するため、資金調達の方法を理解しておくことが重要です。今回はM&Aで役立つ資金調達方法を公認会計士が網羅的に解説します。(公認会計士監修記事) 目次 […]

通常、MBOの資金調達は、株式出資と借入金とを組み合わせて行なわれます。
株式出資に加えて借入金を活用したM&Aは、一般にレバレッジドバイアウト(levetaged buy-out)と呼ばれます。

投資ファンドは、MBOを通じて経営陣をサポートし、買収したM&A対象会社の価値向上を目指します。
そして、株式を再上場させるか、株式を第三者に譲渡することにより、リターンを得ます。

投資ファンドによるM&A戦略としては、他にMBIがあります。
MBIとは、「Management Buy-In」(マネージメント・バイイン)の略です。
ファンドが買収した企業に外部の経営者を送り込み、経営の立て直しを行なうことです。

M&A・事業承継
M&Aにおけるファンドの役割 種類やメリット・デメリットも解説

M&Aで投資ファンドは、出資等を通じて企業価値を高め、株式売却などで利益を得ることを目的とします。M&Aにおけるファンドの役割や種類、ファンドとM&Aを行うメリットとデメリットをくわしく解説します […]

M&A達成後の投資ファンドの戦略

M&A達成後には、投資ファンドによって、様々な施策がなされます。
例えば、組織・人員配置の見直しや業績管理方法の変更などが行なわれます。
また投資が中長期に渡る場合、クロージング後100日程度で新体制下における中期経営計画を策定するケースもあります。

仮にM&A対象会社の組織構造が非効率なものである場合、見直す必要があります。
その際、組織変更と合わせて、人員配置の変更も行ないます。
特に投資ファンドから派遣する役員などを何人送り、どの役職に据えるかは非常に大きなポイントです。

また例えば、研究開発力を増強することが競争力を高める上でカギになるのであれば、新たに研究開発の部署を設置するなどの対応が考えられます。

管理会計面では、例えば、部門別収支管理の単位や製造部門と販売部門の間の中仕切り価格のルールなどを、より合理的なものに見直すケースなどが想定されます。
業績管理は投資ファンドが重視している業績管理指標を用いて行われることが一般的です。

中期経営計画については、M&Aをきっかけに、M&A対象会社において特殊事情によりあえて触れられなかった事項等に関する抜本的な解決を目指して、練られることになります。

中期経営計画の策定方法はM&Aごとに千差万別です。
通常は、プロジェクトチームを組み、現状分析を行ない、経営目標・戦略・課題等の設定を経て、具体的な実行計画を作成します。

M&A・事業承継
M&A戦略とは?策定の流れと成功のポイント【事例付き】

M&Aを成功させるためには売却・買収後を視野に入れた戦略が必要です。M&A戦略の重要性、策定の流れ、売却側・買収側それぞれの戦略の要点と注意点を解説し、成功事例を紹介します。 目次M&A戦略策定の […]

M&A・事業承継
イグジット戦略とは?M&AとIPOのメリットや違いを徹底解説

イグジット戦略とは、イグジットの方法やタイミングを決定することです。IPOとM&Aの2種類があり、それぞれメリットやデメリットは異なります。公認会計士が、イグジット戦略の種類や違いを解説します。(公認会計士 前田 […]

まとめ

ここまで、M&Aによる投資について説明してきました。
M&Aによる投資の意味・手法・成功のコツなどについて、よく理解できたという方もいらっしゃることでしょう。

投資としてM&Aを行なう場合に限らず、M&Aには非常に専門的な知識と豊富な経験を必要とします。
M&Aを成功させるために、是非、M&Aサクシードにご相談ください。M&Aプラットフォーマーとして、M&Aを専門に扱っている弊社には、大きな強みがあります。

今回の記事がM&Aに携わる皆様にとって、お役に立てば幸いです。

M&A・事業承継
M&Aによって起業すべき理由【M&Aのメリットとデメリット】

M&Aは起業の手段としても活用できます。M&Aを用いて起業すると、起業にかかる時間を短縮できるなどのメリットを得られます。M&Aによって起業すべき理由・メリット、デメリットをわかりやすく解説します […]

(執筆者:公認会計士 西田綱一 慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、一般企業で経理関連業務を行い、公認会計士登録を行う。その後、都内大手監査法人に入所し会計監査などに従事。これまでの経験を活かし、現在は独立している。)