M&A案件の探し方には、マッチングサイトの活用や仲介会社への依頼などの方法があります。方法ごとにメリット・デメリットは異なります。公認会計士が、M&A案件の探し方や注意点、活用する資料を紹介します。(公認会計士監修記事)
案件の探し方 | メリット | デメリット |
---|---|---|
マッチングサイト | 効率的、手数料が安い | サポートを得にくい |
仲介会社 | アドバイスやサポートを得られる | 手数料が高い、利益相反問題がある |
金融機関 | 案件数が多い、資金調達しやすい | 小型M&Aの取り扱いが少ない |
事業承継・引継ぎ支援センター | 公的機関なので安心、相談無料 | M&A全体のサポートは得られない |
税理士などの士業 | 各プロセスの進行が効率的 | 案件紹介を得られない可能性あり |
ベンチャーキャピタル | 成長性の高い案件が多い | 買収額が割高となりやすい |
知り合い・取引先 | 仲介手数料が不要 | 案件紹介を得られない可能性あり |
SNS | 直接アプローチが可能 | 悪質な案件も集まりやすい |
M&AマッチングサイトとはM&Aの買い手と売り手をマッチングさせるインターネットサービスです。
潜在的なM&Aの相手先を効率よく探せることに加え、手数料が安い点が大きなメリットとして挙げられます。
特に売り手の手数料が無料になるM&Aマッチングサイトもあるため、会社売却による手取り額を最大化することができます。
M&A仲介会社と比べて、M&Aのサポートは得にくいですが、別途FAを起用するなど、自分の行動でデメリットをカバーすることができます。
買い手であってもM&A仲介会社の成功報酬よりも安く、数あるM&A案件の中から様々な検索条件で自身が求めているM&A案件を検索することもできます。
M&A仲介会社に依頼することでM&Aの相手先を探してもらうことができます。
単にマッチングするだけではなく、初期的な検討、基本合意、デューデリジェンス、契約交渉などM&Aプロセスのそれぞれの場面でプロジェクトマネジメントやアドバイスを受けることができる点が特徴です。
アドバイスを受けながらM&A案件を進められるため安心してM&Aプロセスを進められる点がメリットですが、報酬体系には注意する必要があります。
M&A仲介会社によっては、相談料や手付金、中間報酬など成功報酬以外に手数料が必要なため、注意してM&A仲介会社を選定する必要があります。
また、M&A仲介会社は売り手と買い手の間に立ち双方にアドバイスを提供することから、ビジネスモデルが利益相反であると指摘[1]されることもあります。
銀行、証券会社などの金融機関にM&A案件の紹介を依頼することができます。
金融機関は数多くの取引先を抱えているため、潜在的なM&A案件を含めて数多くの案件を抱えています。金融機関の目を通したM&A案件であるため、買い手としてはある程度信頼して検討を進めることができます。
また、M&A案件の規模が大きい場合など資金調達の相談もしやすい点がメリットです。
ただし、金融機関の案件は大型案件であることが多く、小型のM&A案件を扱っているケースは少ない点は留意が必要です。
買い手に資金力があり、大型案件を探している場合には金融機関に相談することは有力な選択肢となります。
事業承継・引継ぎ支援センターは国が設置する公的相談窓口で中小企業の事業承継に関する相談を何でも受けてくれる機関[2]です。
公的な機関であるため安心して相談することができ、手数料も無料で利用することができます。
しかし、M&Aプロセス全体を付きっ切りで支援してもらえるわけではなく、別途FAや士業などの専門家を起用した方が良いケースもあります。
買い手にとっては事業承継案件が多いため、スタートアップなど成長性の高い案件を探す場合には事業承継・引継ぎ支援センターはあまり適していません。
顧問先の多い税理士などの士業にM&A案件がないか相談することも有力な選択肢の一つです。
士業は顧問先を中心として多くの顧客基盤を有しています。
その顧客基盤に会社売却を検討している企業があれば優先的にM&A案件として紹介してもらえる可能性があります。
顧問先の案件を紹介してもらえた場合には、士業が財務データ等の詳細を把握しているため、資料のやり取りや質疑応答、デューデリジェンスのプロセスを効率的に進めることができるといったメリットがあります。
一方、タイミングによっては潜在的なM&A案件も含めて紹介を受けられないこともある点は注意が必要です。
ベンチャーキャピタルは有望なスタートアップに投資し、投資先がIPOやM&Aされることによりエグジットし利益を出しています。
全ての投資先がIPOできるわけではなく、ベンチャーキャピタルが投資資金を回収するためには、M&Aをうまく活用する必要があります。
そのため、買い手企業がベンチャーキャピタルとの関係を構築しておくと、投資先から優先的にM&A案件を紹介してもらえる場合があります。
例えば、ベンチャーキャピタルにLP出資しておき、普段から継続的なコミュニケーションを取っておくと良いでしょう。
ベンチャーキャピタルが出資している案件ですので、将来の成長性が高く見込まれる企業であることも多くあります。
一方、対象会社が高い時価総額で増資している場合には、その時価総額以上の金額でないと実質的にエグジットすることが難しいケースが多く、割高な買収額になりやすい点がデメリットとして挙げられます。
知り合いや取引先からM&A案件を紹介してもらえる場合もあります。
ビジネスとして紹介していなければ、紹介後は対象会社と直接交渉することで仲介手数料が必要なくなるというメリットがあります。
ただし、知り合いや取引先はいつもM&A案件を抱えているわけではなく、タイミングが重要となります。
SNSを活用し対象企業の社長などに直接アプローチすることも可能です。
対象企業が明確でどのような企業を買収すればシナジーが出るか、買い手企業自身で明確に把握している場合には有力な手法です。
また、買い手企業がSNS上でM&A案件を探している旨の投稿を行うことで案件を集めることができます。
ただし、集まってきた案件は悪質なものが含まれていることもあるため、どのような案件であれば検討できるかは明確に見極めていくことが重要です。
自身の案件規模を得意とするM&Aサービスを利用することが重要です。
例えば、売上規模が小さい場合に大手案件を得意とするM&A仲介会社に相談しても、相手にしてもらえない場合もあります。
また、成功報酬も最低手数料が定められているケースも多く、売却金額が小さい場合には割高な成功報酬となってしまうこともあります。
複数のサービスに問い合わせを行い、手数料体系を把握するとともに担当者が信頼できるかどうかも確認しておく必要があります。
M&A仲介の実務に付く場合、必要な資格等はなく担当者によるレベル差があるものです。
信頼して自社の売却を任せられるM&Aサービスを選択するようにしましょう。
M&Aサービスに相談する前に、買い手のM&A戦略を明確にしておくことが成功のポイントです。
M&A仲介会社に対して、何でも良いのでM&A案件を紹介して欲しいといってもM&A仲介会社は数多くの案件を抱えており、何を紹介して良いのか判断することができません。
結果として、紹介できる案件数が少なくなり、買い手が頭の中に想像していたような案件を紹介してもらえる可能性は低くなってしまいます。
買い手企業についても、売り手企業と同様に探している案件規模を得意とするM&Aサービスを利用することが大切です。
また、手数料についてもサービス毎に大きく異なっているため、投資金額を節約しM&Aの成功確率を高めるためにも、手数料体系には注意するようにしましょう。
ロングリストとは企業名、代表者名、本社所在地、主な商材、売上高、利益といった項目がリスト化されたM&Aの相手先候補です。
ロングリストの段階では20~100社程度を目安にリストアップしていきます。
必要な情報は、候補先会社のホームページや信用調査会社の企業検索、未上場企業のデータベースサービスの利用などにより取得します。
ショートリストはロングリストから更に絞られたM&Aの相手先候補リストで、5~10社程度までターゲット企業を絞ります。
ショートリストはロングリストの情報の他、従業員数、株主構成、役員構成、時価総額、事業の強み・弱みなどより詳細な情報を追加していきます。
ショートリストの情報をもとに実際にターゲット企業へのアプローチを開始していきます。
ノンネームシートとは買い手企業が初期的な検討ができるような事業の特徴、売却条件、だいたいの業績等が記載された書面です。
ノンネームシートという名前のとおり、対象会社の名前や対象会社を推定できるような情報は記載されていません。
買い手企業はノンネームシートを確認し、次の検討ステップに進める場合には、秘密保持契約書を締結しより詳細な情報を得るという流れになります。
企業概要書(IM)は買い手企業がM&Aの検討ができるよう詳細な情報のパッケージです。
例えば、対象会社名、対象会社の概要、役員・株主構成、沿革、組織図、事業概要、3~5年の財務データ、将来の事業計画等が開示されます。
M&A案件の探し方は8種類ありますが、手数料の観点でお勧めできるのはM&Aマッチングサービスです。
M&A仲介会社よりも手数料が安く、数多くのM&A候補先が登録しています。
自身の希望する案件規模に適したM&Aサービスを利用して効率よくM&A案件を探すことが重要です。
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