M&Aアドバイザーとは、M&Aの業務全般に対して、アドバイスやサポートを行う専門家を意味します。業務はM&Aの検討~デューデリジェンスといった専門的な分野まで多岐に渡ります。今回はM&Aアドバイザーの業務、手数料、必要なスキルを解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)
はじめに、M&Aアドバイザーの意味や、M&Aアドバイザリーとの違い、種類など、基本的な部分をご説明します。
M&Aアドバイザーとは、M&Aに関連する業務に対して、アドバイスやサポートを行う専門家です。「ファイナンシャルアドバイザー(FA)」や「M&Aコンサルタント」とも呼ばれています。
M&Aのプロセスでは、マッチングや交渉といった業務のみならず、バリュエーションやデューデリジェンス 、契約書の作成など、会計や税務、法律などの専門知識を要する業務もあります。
専門性の高い業務をM&Aを行う当事者のみでこなすのは困難なので、専門家であるM&Aアドバイザーは重宝されています。
M&AアドバイザーとM&Aアドバイザリーは同じように見えて厳密には異なる概念です。
M&Aアドバイザーとは、M&Aの業務をサポートする「人」を指します。
一方でM&Aアドバイザリーは、M&Aのサポート・アドバイスを行う「業務」を指します。つまり、M&Aアドバイザリー業務を行う専門家のことを「M&Aアドバイザー」と呼ぶわけです。
仲介会社とは、仲介形式の業態によって、M&Aアドバイザーがサービスを提供する専門家集団(業者)を意味します。
M&Aアドバイザーの業態は、大きく「アドバイザリー形式」と「仲介形式」の2種類に分けることができます。
アドバイザリー形式とは、M&Aの売り手・買い手のいずれかの側に着任し、助言やサービスの提供を行う業態です。
アドバイザリー形式を採用しているM&Aアドバイザーは、自身が契約している企業の利益を最大限に高めることを目指して、各種業務のサポートを行います。
そのため、アドバイザリー形式の業者に依頼すれば、自社にとって有利な条件となることを目指してM&Aに取り組んでもらえます。
ただし売り手と買い手のM&Aアドバイザーの利害がぶつかるため、交渉の長期化リスクがあります。
一方で仲介形式とは、売り手と買い手双方と契約し、中立的かつ第三者の立場でM&Aの成約をサポートする業態です。
仲介形式は、売り手と買い手双方にとって納得しやすい条件でM&Aの成約を目指す形式です。
ただし、買い手に対して便宜を図った方がメリットは大きいことから、実際には売り手側に不利な条件でM&Aが成立しやすいと言われています。
つまり、仲介会社はM&Aアドバイザーにおける業態の一部に含まれており、業務内容に大きな違いはありません。「一部のM&Aアドバイザーが仲介会社で働いている」という認識で問題ないでしょう。
M&Aアドバイザーと経営コンサルタントの違いは、アドバイス・サポートの範囲にあります。
M&Aアドバイザーは、あくまで「M&A」の分野に特化したアドバイスやサポートを業務としています。一方で経営コンサルタントは、M&Aのみならず経営に関する幅広い分野に関してアドバイス・サポートを行います。
要するに、M&Aアドバイザーは「狭く・深く」アドバイスを行う一方で、経営コンサルタントは「広く・網羅的に」アドバイスを行うわけです。経営コンサルタントは必ずしもM&Aに精通しているわけではないため、M&Aに関して質の高いサポートや助言を得ることは期待しにくいでしょう。
M&Aアドバイザーの業務を行う会社(プレーヤー)は、大きく「アドバイザリー専門会社」、「金融機関」、「士業事務所」、「仲介会社」の4種類に大別されます。ここでは、それぞれの特徴を分かりやすくお伝えします。
アドバイザリー専門会社とは、M&Aアドバイザーの業務を専門的に行っている会社を指します。具体的には、GCAやTMACなどの会社がアドバイザリー専門会社に該当します。
アドバイザリー専門会社は、後述する仲介会社と同様に、M&Aに関する業務の全般を担っています。そのため、アドバイザリー専門会社を起用すれば、M&Aの相手探しからクロージングに至るまで、専門性の高いサービスを受けることが可能です。
ただしアドバイザリー専門会社は、月額報酬や初期費用よりは、成果報酬を主な収入源としています。つまりM&Aが成約しないと収益を得られないため、案件の途中でM&Aの交渉を止めるべき事態が起きても、止めるべき旨を助言してくれない可能性があります。
銀行や証券会社などの金融機関には、M&Aアドバイザーの業務を専門的に行う部署を設けているところもあります。例えばみずほフィナンシャルグループや野村ホールディングスなどが、M&Aアドバイザー業務を行う金融機関として有名です。
M&Aアドバイザー業務における金融機関の強みは、幅広いネットワークを保有していることです。M&Aアドバイザー業務を行うような大手の金融機関は、全国各地にたくさんの支店を持っています。そのため、M&Aの候補先となる企業を幅広いネットワークを駆使して探せます。
一方で、ローテーション制によりM&A部門の人材が配置されるケースの多さから、専門会社や士業事務所などと比べると、M&Aの専門知識を持つプロの少なさがデメリットとなります。また、本業を優先するために、M&Aの成功よりも買い手に融資を行うことを重視して、アドバイス業務を行う恐れもあります。
弁護士や公認会計士、税理士事務所の中にも、M&Aアドバイザー業務を担っているところがあります。たとえば西村あさひ法律事務所やデロイトトーマツなどが、M&Aアドバイザー業務を行う士業事務所として有名です。
M&Aアドバイザーとして最大の強みは、専門知識の高さです。例えば会計事務所ならば財務DDやバリュエーション。弁護士事務所ならば法務DDや契約書の作成など、各分野で高い専門性を発揮します。そのため、会計や法律、税務の分野に関して質の高いサポートを得たい場合には、士業事務所に相談するのがおすすめです。
ただし、あくまでM&Aが本業というわけではないため、M&Aの業務全般に関してスキルやノウハウを持っているわけではありません。また、仲介会社やアドバイザリー会社と比べると、M&Aの候補先に関するネットワークも少ない傾向があります。
したがって、士業事務所だけにM&Aの包括的なサポートを期待するのはおすすめできません。
前述したとおり仲介会社とは、仲介形式によりM&Aのサポートを行う専門家集団です。M&Aアドバイザーにおける業態の一種であり、アドバイザリー専門会社と行う業務に大きな違いはありません。具体的には、日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズが仲介会社に該当します。
仲介会社に依頼するメリットは、スムーズにM&Aが決まりやすい点です。あくまで中立的な立場で交渉を進めるため、交渉が難航して長期化する事態を回避できます。また、マッチングからクロージングまで、一貫してM&Aの実務をサポートしてくれる点も魅力の1つです。
ただし、M&A仲介会社の中には、ほとんどM&Aの専門知識や経験を持たないアドバイザーを起用しているところもあるので注意が必要です。また、前述したとおり売り手企業が不利となる形で交渉を進められるリスクもあります。
M&Aアドバイザーが担う業務は、相手候補の選定からクロージングにいたるまで、その範囲は多岐に渡ります。この章では、M&Aアドバイザーが担う具体的な業務の内容を9種類お伝えします。
M&Aアドバイザーが着任先である企業のM&A候補を選定する際には、下記3つのプロセスを経るのが一般的です。
ロングリストには、企業名や本社所在地、取扱商品、売上高など、主要な情報を記載します。一方でショートリストは、当事者となる企業の希望条件を踏まえて、ロングリストの中からM&Aを行いたい企業を数社ピックアップします。なおショートリストには、株主構成や時価総額、事業上の強み・弱みなど、より詳細な情報も記載します。
上記のようなプロセスを経ることで、売り手または買い手の希望に適うと同時に、M&Aの実現可能性が高い相手候補を選定するわけです。
相手候補に対してM&Aを提案する資料を作成するのも、M&Aアドバイザーが担う業務の1つです。
一般的なM&Aでは、売り手企業に関する「ノンネームシート」と「企業概要書(インフォメーション・メモランダム)」という2種類の資料が作成されます。
ノンネームシートとは、特定されない範囲で売り手企業の情報がまとめられた資料です。具体的には、事業の分野や事業規模、売却理由などが大まかに記載されています。一方で企業概要書とは、会社の実名や所在地、事業や財務の具体的な情報などが記載された資料です。
M&Aの実務では、まずアドバイザーがノンネームシートを買い手候補に提出します。買い手候補が興味を持ったら、売り手と買い手の間いで秘密保持契約を締結します。そして、秘密保持契約を締結した後に、M&Aアドバイザーが買い手候補に対して企業概要書を提出します。
このプロセスを経ることで、売り手企業の機密情報やM&Aを実施する旨が外部に漏洩するリスクを軽減できるわけです。
バリュエーションとは、売り手の企業または事業が持つ価値(企業価値や事業価値)を算出する業務です。「価値算定」とも呼ばれるバリュエーションは、M&Aの交渉を本格的に始める前に行われるのが一般的です。
M&Aの実務では、バリュエーションで算出された企業価値の金額をベースに、取引価格をめぐる価格交渉が行われます。M&Aの成否を左右し得るため、M&Aアドバイザーが担う業務の中でも特に重要です。
バリュエーションでは、「インカムアプローチ」、「コストアプローチ」、「マーケットアプローチ」のいずれかの方法で、企業価値の評価を行います。それぞれの特徴は以下のとおりです。
どのアプローチも一長一短であり、適した場面は異なります。したがって、状況に応じて最適なアプローチを選びつつ、場合によっては複数の手法を活用した上で、妥当な企業価値を評価することが重要です。
バリュエーションが完了すると、経営者同士の面談(トップ面談)や条件面の交渉が行われます。こうした面談や交渉が円滑に進むようにサポートするのも、M&Aアドバイザーが担う重要な業務です。
交渉の場面では、譲渡金額やM&Aのスケジュール、従業員の処遇、用いるスキームなどの具体的な条件を決めていきます。M&Aでは売り手と買い手の利害が対立するため、お互いが100%納得できる条件で契約しようとすると、交渉が平行線となる可能性があります。
交渉が長期化したり、不利な条件でM&Aを進めたりする事態を防ぐには、妥協できる部分とできない部分を明確化し、お互いが歩み寄って納得できる条件を見つけなくてはいけません。M&Aアドバイザーは、そんな妥協点を見つけ出し、円滑で満足いく条件に近づけるサポートをしてくれるのです。
デューデリジェンスは、面談や交渉のサポートと同じくらい、M&Aアドバイザーが担う業務の中で重要なものです。デューデリジェンスとは、売り手が持つ潜在的なリスクや価値、収益性などを詳細に分析する業務です。
デューデリジェンスの範囲は、「財務」や「税務」、「法務」、「IT」、「ビジネス」など多岐に渡ります。財務は公認会計士、法務は弁護士といった形で、各分野の専門家がデューデリジェンスの実務を担当します。
デューデリジェンスの実施により、より妥当な金額となるようにバリュエーションの結果を修正したり、重大なリスクを抱えているM&Aの実施を回避したりすることが可能となります。
M&Aの失敗を回避するためにも、専門知識を持つM&Aアドバイザーを起用した上で、デューデリジェンスを徹底するのが好ましいでしょう。
M&Aでは、基本合意書や秘密保持契約書、最終的な契約書など、何回か契約書を作成する場面があります。
基本合意書とは、条件面の交渉が終わった段階で、売り手と買い手の間で合意した内容をまとめた契約書です。秘密保持契約書とは、M&Aのプロセスで知った相手の情報を第三者に開示する旨を禁止する契約書です。
そして最終的な契約書とは、売り手と買い手が正式にM&Aの実施について合意した時点で締結するものであり、「株式譲渡契約書」や「事業譲渡契約書」などと用いるスキームによって名称が異なります。
契約書の作成に際しては法律の専門知識を要するため、基本的には法務分野に精通したM&Aアドバイザー(弁護士など)が契約書作成の業務を担います。
M&Aにおけるクロージングとは、取引の実行を意味します。具体的にやることは、用いるM&Aスキームによって異なります。たとえば株式譲渡だと、売り手側による株券の引き渡し、買い手側による対価の支払いがクロージングで行うべき業務となります。
仲介会社やアドバイザリー専門会社などのM&Aアドバイザーであれば、こうしたクロージングで何を行うべきかの助言をしてもらえます。
PMIとは、M&A後に行う経営の統合作業を指します。M&Aを成功させるには、売り手の持つ強みが最大限発揮されたり、買い手が持つ経営資源とのシナジー効果を発揮したりすることで、収益の増加やコスト削減などの効果を得なくてはいけません。
そのために必要となるのが、売り手の持つ経営資源や価値観などを、買い手側と上手く統合する作業です。具体的には、企業文化や人事制度、ITシステムなどが統合の対象となります。
統合する範囲や統合の方法はケースバイケースなので、仲介会社やアドバイザリー会社、士業事務所といったM&Aアドバイザーの力を借りながら、臨機応変にPMIを進めることが重要です。
M&Aアドバイザーの起用には、メリットとデメリットの両面があります。M&Aを実施する際には、メリットとデメリット十分に比較検討した上で、アドバイザーを起用するかどうか決めましょう。
M&Aアドバイザーを起用するメリットは次の4つです。
M&Aアドバイザーを起用すれば、相手探しや条件交渉といった手間がかかる手続きから、デューデリジェンスやバリュエーションなどの専門的な手続きにいたるまでをサポートしてくれます。そのため、当事者である会社だけで手続きをこなす場合と比べて、つまずくことなくスムーズにM&Aを進めやすいです。
独力でM&Aを行うと、高値掴みや契約上の不備によるトラブルといった失敗におちいるリスクがあります。各分野の専門知識を持つM&Aアドバイザーを起用すれば、あらゆる失敗の要因に対処しながらM&Aの実務をこなしてくれるため、上記のような失敗に陥るリスクを軽減できます。
M&Aアドバイザーを起用すれば、資料の作成や相手探し、交渉のセッティングといった大半の業務を代わりに行ってくれます。独力でM&Aを進める場合よりも大幅に負担を軽減できるため、事業活動と並行しながらでもM&Aを行えるでしょう。
一般的にM&Aアドバイザーは、M&Aを行いたい売り手・買い手と比べて幅広いネットワークを持っています。また会計や税務、ビジネスなどの観点から、もっともシナジー効果を得られる相手を見つけるノウハウを持っています。
そのため、自力で探す場合と比べて、より最適なM&Aの相手候補を見つけやすくなると言えます。
M&Aアドバイザーを起用する上で注意すべきデメリットは、以下の2つです。
M&Aアドバイザーの助言が原因で失敗やトラブルに発展しても、その責任は追求できません。あくまで「成功に向けて最大限努力すること」がM&Aアドバイザーの業務であり、成功を保証するものではないため注意が必要です。
多額の手数料が発生する点も、M&Aアドバイザーに依頼する上で注意すべきデメリットです。たとえばアドバイザーと契約した時点で支払う着手金は、大体50万円〜200万円ほどが相場となっています。M&Aアドバイザーに支払う手数料には、他にもたくさんの種類があります。案件の規模にもよりますが、合計で数千万円〜数億円もの手数料がかかるケースも少なくありません。
一口にM&Aアドバイザーと言っても、コストや得意領域は様々です。また、たとえ実績が豊富なM&Aアドバイザーを起用しても、自社が行いたいM&Aには適していないケースも考えられます。
この章では、手数料の相場と、自社に適したM&Aアドバイザーの選び方を5種類お伝えします。M&Aアドバイザーの起用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
最初に見るべきは、手数料の体系です。M&Aアドバイザーによって、請求する手数料の種類や金額などの体系は異なります。したがって、複数のアドバイザーを比較し、ご自身の予算から考えて最適な相手にM&Aのサポートを依頼するようにしましょう。
M&Aアドバイザーに支払う手数料には、主に以下4種類があります。手数料の概要や相場をお伝えしますので、参考にしてください。
着手金とは、M&Aアドバイザーへ業務を正式に依頼した時点で支払う手数料です。相場は50万円〜200万円程度と言われています。ただし、500万円もの高額な手数料を請求するM&Aアドバイザーや、着手金をまったく請求しないところもあります。
着手金は、たとえM&Aの交渉が失敗に終わっても返金してもらえない手数料です。したがって、予算の余裕がない場合には、着手金を請求しないM&Aアドバイザーを選ぶのが無難です。
リテイナーフィーとは、M&Aアドバイザーと契約している期間中、毎月支払う手数料です。相場はM&Aの規模によって異なり、スモールM&A〜中規模M&Aだと月30万円〜200万円、大規模なM&Aだと月1,000万円〜1,500万円程度と言われています。
毎月発生する仕組み上、M&Aの手続きが長引くほど、支払う手数料の総額は増えます。したがって、交渉が長引くと想定されるケースや、じっくり希望に適う相手を探したい場合には、リテイナーフィーを請求しないM&Aアドバイザーを選ぶのがおすすめです。
中間金とは、売り手と買い手が基本合意書を締結した時点で発生する手数料です。相場は50万円〜200万円程度となっています。ただし、着手金と同様に中間金を請求しないM&Aアドバイザーも少なくありません。
成功報酬とは、M&Aの最終契約が正式に締結された時点で発生する手数料です。成功報酬の金額は、レーマン方式(会社または事業の売買金額に応じて報酬額が決まる方式)によって計算されます。
レーマン方式では、売買金額に一定の料率(1%〜5%)をかけることで成功報酬の金額を算出します。たとえば、5億円以下の部分に関しては5%の料率が設定されています。したがって、売買金額が1億円のM&Aでは、500万円(1億円 × 5%)の成功報酬が請求されます。
成功報酬は完全にM&Aが成立した時点でのみ発生します。そのため、着手金や中間金とは異なり、支払った手数料が無駄となる心配はありません。予算の余裕がない場合には、成功報酬のみを請求するM&Aアドバイザーを選ぶと良いでしょう。
M&Aアドバイザーによって、強みとする専門分野は異なります。たとえば士業事務所の場合、特定の分野(会計など)に関する業務を強みとする一方で、M&Aの相手探しや交渉のサポートといったM&Aに特有の業務は弱みとしている傾向があります。
したがって、サポートして欲しい業務に強みを持っているM&Aアドバイザーを起用しましょう。
M&Aアドバイザーの中には、特定の業種や事業規模を得意としているところも少なくありません。介護業界に特化しているM&Aアドバイザーや、中小企業・個人事業主によるスモールM&Aに特化しているM&Aアドバイザーなどが最たる例です。
特定の業種・事業規模を得意とするM&Aアドバイザーは、そうでない業者と比べて、その分野に関して豊富なノウハウ、ネットワーク、業界知識などを持っています。そのため、自社が属する業種や事業規模のM&Aを得意とするM&Aアドバイザーを選べば、より満足いく形でM&Aを成功させやすいと言えます。
M&Aアドバイザーの業務には、知識やノウハウと同じかそれ以上に「実績・実務能力」が求められます。
M&Aアドバイザーの業務では、多数の関係者が携わる関係上、当初の想定とは異なる事態が次々と発生します。想定外の事態に対処するには、M&Aの実務を深く理解し、臨機応変に行動する能力が求められます。
臨機応変に対処する能力は、M&Aの業務を実際にこなすことで身につきます。したがって、スムーズにM&Aの取引を成功させたいならば、実績豊富なM&Aアドバイザーを選ぶのが重要です。
実績の豊富さに関しては、ホームページの成約件数を確認したり、実際対面した際に質問したりすれば判断できるでしょう。
M&Aアドバイザーの中には、自社の利益を優先するところもあります。成功報酬を獲得するために、依頼主にとって不利な条件でも強引に契約成立まで持っていくM&Aアドバイザーが最たる例です。
たとえ実績やスキルの面で優れていても、こうした対応をされると不利益をこうむるリスクがあります。そうならないためにも、依頼主の利益を優先する誠実なM&Aアドバイザーを選ぶようにしましょう。
ここまでは、M&Aを検討している経営者の方に向けて、アドバイザーの業務内容や選び方をお伝えしました。ですが記事を読んでくださっている方の中には、M&Aアドバイザーの業務を始めたいと考えている方もいるかと思います。
そこでこの章では、M&Aアドバイザーに求められる能力を4つご紹介します。M&Aアドバイザーへの適性や必須能力を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
M&Aアドバイザーにとって、最低限必要であるのが広範囲にわたる専門知識および実務経験です。
M&Aの実務では、会計や法務、税務、ファイナンスなど、幅広い専門知識が求められます。専門的な業務は、外部の専門家(公認会計士など)に依頼できます。
しかしM&Aアドバイザー自身に専門知識がないと、外注して得られた情報の中からクライアントにとって役立つ情報を抽出するのが困難となります。また、スピーディーな判断や正しい判断ができずに、クライアントの利益を害するおそれもあります。
上記のような事態を回避するためにも、M&Aアドバイザーには最低でも専門家から得られた情報を理解できるだけの専門知識が求められます。
会計や財務、税務などの知識があれば、財務諸表の観点から収益性や安全性(倒産リスクなど)、成長性を判断できます。しかし、収益性や安全性、成長性などは、業界構造や顧客のニーズ、M&Aによるシナジー効果などによっても変わってきます。
つまり最適なM&Aの相手を選定するには、専門知識のみならず売買対象となる事業に関する理解も不可欠というわけです。売買対象となる事業を深く理解できれば、財務諸表では分からない業界構造や顧客ニーズ、売り手(買い手)とのシナジー効果も考慮した上で、最適なM&Aの相手候補を選定できるでしょう。
M&Aでは、売り手と買い手のみならず、双方のM&Aアドバイザー、取引先、金融機関など、あらゆる利害関係者が関与します。そのため、あらゆる場面で次々と意見の対立や想定外のトラブルが発生するのが一般的です。
M&Aアドバイザーには、そのような意見の対立やトラブルが生じるたびに、常に最適な意思決定を行い、当初のスケジュール通りにM&Aを完結させる能力が求められます。
M&Aでは、売り手と買い手の間で、価格や従業員の処遇をはじめとして、あらゆる条件について交渉が行われます。ただし、基本的に売り手と買い手では希望が真正面から対立するため、交渉の成立は一筋縄ではいきません。
ただ単に自社の希望を伝えるだけでは、交渉が平行線となって時間だけが過ぎたり、交渉が決裂したりする恐れがあります。一方で相手の意見を聞き入れるだけでは、クライアントが不利益を被るので好ましくありません。
したがってM&Aアドバイザーには、駆け引きにより妥協できる部分は妥協し、できない部分は相手に受け入れさせる交渉力が求められます。
M&Aアドバイザーの業務を担う方の多くは、関連した資格を保有していると言われています。そこでこの章では、M&Aアドバイザーの業務に関連した3種類の資格をご紹介します。資格によって、得意とするM&Aアドバイザーの業務範囲が異なる点に注目です。
M&Aエキスパート認定制度は、事業承継・M&Aエキスパート協会が運営している試験制度です。
試験には、「事業承継・M&Aエキスパート」、「事業承継シニアエキスパート」、「M&Aシニアエキスパート」の3種類があり、1つ目の事業承継・M&Aエキスパートを取得することで、他2つの上級資格を取得できる仕組みです。[1]
1つ目の資格では、事業承継と中小企業のM&Aに関する基本的な知識を学べます。中小企業のM&Aや事業承継を網羅的に支援したい方におすすめです。
[1]M&Aエキスパート認定制度(事業承継・M&Aエキスパート協会)
JMAA認定M&Aアドバイザーとは、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)が認定している資格です。同機関が開催する養成講座を受講し、JMAAの正会員に入会することで資格を取得できます。[2]
オンライン受講できる講座のみで資格を取得できるため、名刺に記載できるM&Aアドバイザーの資格を手軽に撮りたい方にはおすすめです。また、会員同士のコミュニティが形成されているので、M&Aアドバイザーの実務に役立つ人脈を得る効果も期待できます。
[2]JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)資格取得までの流れ(日本M&Aアドバイザー協会)
M&Aに特化した資格ではないものの、士業系の資格(弁護士や公認会計士、税理士など)を取得しておくと、M&Aアドバイザー業務で重宝します。
何度もお伝えしたとおり、M&Aでは会計や税務、法律などの専門的な知識が求められます。そこで各分野の士業系資格を取得すれば、知識を駆使して質の高いサポートを提供できる上に、専門性の高さを証明できます。
上記でお伝えした2つの資格と比べると、M&Aに特化しているわけではない上に、取得難易度ははるかに高いです。ですが取得すれば、実務能力が高いM&Aアドバイザーとして活躍できるでしょう。
M&Aアドバイザーは、クライアントの利益を最大限高めることを目的に、相手探しや交渉のサポート、デューデリジェンスといった幅広い業務を担う専門家です。M&Aアドバイザーを起用すれば、M&Aで生じるリスクを軽減すると同時に、スムーズかつ少ない負担で事業や会社の売買を行えます。
M&Aの成功を左右する存在である以上、M&Aアドバイザーには会計などの専門知識だけでなく、事業の理解力や案件のハンドリング力など、幅広い能力が求められます。したがってM&Aアドバイザーになりたい方は、資格などを取得して専門性を高めると同時に、ヒューマンスキルや思考力といった部分も磨く必要があるでしょう。
(執筆者:中小企業診断士 鈴木 裕太 横浜国立大学卒業。大学在学中に経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士資格を取得(休止中)。現在は、上場企業が運営するWebメディアでのコンテンツマーケティングや、M&Aやマーケティング分野の記事執筆を手がけている)
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