Webサービスの売却には、まとまった資金や時間を確保できるメリットがあります。Webサービスを売却する流れや最新のM&A事例、売却額の相場、成功可能性を高めるポイントをわかりやすく解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)
はじめに、Webサービスの売却・M&A事例を25例紹介します。
事例では、売却や買収に至った背景・理由、用いられたM&A手法、売却金額などが分かります。
Webサービスの売却を検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
And Technologies:HR領域におけるリード獲得をサポートするDX プラットフォームを運営[1]
みらいワークス:人材採用・調達を支援するサービスを展開[2]
譲り受け企業:And Technologiesが有する知見・ノウハウの活用による「自社サービスにおける新規登録者の獲得強化」
Supadü Limited:欧州・北米を中心に、出版に関するEコマースソリューション事業を展開
NetGalley UK Ltd.:メディアドゥの連結子会社として、書籍のWeb マーケティングツール「NetGalley」の提供事業を展開
譲り受け企業(親会社):海外ビジネスの強化、国内と欧米における出版業界のDX 推進支援を加速すること[3]
ムービングクルー:ファンコミュニティサイトの企画・開発・運営事業を展開[5]
アピリッツ:Webサービスの企画・運営事業、オンラインゲームの企画・開発・運営事業を運営[6]
譲り受け企業:エンターテインメント領域の顧客に対する開発ノウハウ・デジタル人材の獲得、事業規模の拡大
ネモフィラ:UI自動検証サービス「ISSO」の提供事業を運営[7]
パイプドHD:クラウドシステムの開発、ECサイト・アプリの構築および運営などの事業を展開[8]
譲り受け企業:ネモフィラ社とのサービス・事業連携の強化
REMODELA:賃貸不動産の原状回復工事に関する受発注業務をweb 上で完結することができるサービスを運営[9]
ダスキン:清掃・衛生用品のレンタル・販売事業を運営[10]
譲り受け企業:社会課題への対応、清掃・衛生関連サービスの提供・協業、将来的なシナジーが発揮できる領域における価値創造
イーエックス・パートナーズ:病院検索サイト「ホスピタ」、名医の紹介サイト「名医ログ」などのサービスを展開[11]
ジェイフロンティア:オンライン診療、オンライン服薬指導、薬の宅配プラットフォームの運営[12]
譲り受け企業:相互の顧客基盤活用によるサービスの導入医療機関数増加、医療機関のDX推進に関する新たな提案メニューの拡充、さらなる収益力強化など
マルジュ(新設会社):Web広告の効果計測やレポート自動作成を支援するSaaS型サービスを運営
ジーニー:広告プラットフォーム事業、マーケティングSaaS事業を運営
譲り受け企業:主力事業の拡大
LINE:メッセージのやりとりを行うサービス「LINE」を運営
Zホールディングス:ECサイトや検索エンジン、広告などのWebサービスを展開
譲渡企業・譲り受け企業:各企業が有する事業領域の強化、新規事業領域への成長投資、Fintech事業や集客面でのシナジー効果獲得[14]
ZOZO:日本最大級のファッションECサイト「ZOZOTOWN」の運営、 プライベートブランド「ZOZO」の販売、ファッションメディア「WEAR」の運営事業を展開
先ほど紹介したZホールディングス
譲渡企業・譲り受け企業:市場のさらなる成長が期待できるeコマース事業の拡大、事業シナジーの最大化[18]
楽天:Eコマースや金融、旅行などを含む70種類以上のWebサービスを展開
日本郵政:全国的に郵便や保険、銀行などの事業を運営
譲渡企業・譲り受け企業:両社グループ間の関係強化、物流やDXなどさまざまな領域での業務提携[20]
Instagram:写真共有サービス「Instagram」を運営
Facebook:SNSツール「Facebook」を運営
譲り受け企業:将来の競争相手を排除すること、モバイル分野の強化[22]
PillPack:患者が服用する処方薬をあらかじめ小分けにして届けてくれるオンライン薬局を運営
Amazon:世界最大級のショッピングサイトを運営
譲り受け企業:医薬品配達サービスの事業展開
Github:ソースコード管理サービス「GitHub」を運営[25]
マイクロソフト:ソフトウェアやPCなどの販売・提供事業を世界的に展開[26]
譲り受け企業:自社サービスを新たなターゲットへ拡張すること
譲渡企業:事業の成長加速[27]
GEAR:WebサイトのM&Aに特化したプラットフォームや、比較サイト、婚活メディアなどを運営
ラグザス・クリエイト:中古車売買のプラットフォーム「カーネクスト」を運営
譲渡企業:金融系比較サイトへの集中、売却対象となったサイトのさらなる成長の実現
譲り受け企業:M&Aを活用した積極的な事業領域の拡大
コインチェック:仮想通貨の取引所サービスを運営
マネックス:証券や投資助言などのサービスを展開
譲り受け企業:本格的な仮想通貨事業への参入
dely:レシピ動画をユーザーに届けるWebサービス「クラシル」を運営[29]
ヤフー:イーコマース事業、インターネット広告事業などを運営[30]
譲り受け企業:食やレシピが関係する領域におけるシナジー創出
譲渡企業:ヤフーが有するメディア・コマース事業におけるリソース活用による「独自性や競争優位性の強化」
Increments:プログラマ向けの技術情報共有サービス「Qiita」を運営[31]
エイチーム:人生の日常生活やイベントに関する比較サイトの運営、ゲームの企画・開発事業を展開[32]
譲り受け企業:参入が困難・時間のかかる事業の取得、アセットやノウハウ活用による新たな事業展開の加速
トライフォート:Webサービスの開発・運営事業、スマートフォン向けアプリ事業を運営
ユナイテッド:広告配信プラットフォームの運営、スマホ向けゲームアプリ事業、コンテンツ事業などを運営
譲り受け企業:安定的な収益が見込める事業の獲得、優秀な経営人材・経験豊富な開発組織の確保
アップルワールド・ホールディングス:子会社が世界中のホテル情報を消費者等に提供するWebメディアを運営[34]
じげん:求人サービス「リジョブ」や、不動産賃貸住宅情報サービス「賃貸スモッカ」などを展開[35]
譲り受け企業:旅行事業への本格参入
3ミニッツ:ファッション動画マガジンの運営、インフルエンサーマーケティング事業、動画マーケティング事業を運営
グリー:ゲーム事業や広告事業、メディア事業などを展開
譲り受け企業:動画広告市場における事業の拡大
サークア:マーベリックの新設会社。スマートフォン向け広告配信システムの開発・運用事業を承継。
駅探:経路検索のWebサービスなどを運営
譲り受け企業:多角化による事業リスクの分散、グループ全体の事業ポートフォリオ強化、Webメディア収益化のノウハウや人材などの獲得、アドテクノロジー領域の事業取得
WILBY:家電やスポーツ、ファッションの分野を中心とした情報を紹介するwebマガジン「SAKIDORI」を運営
ビックカメラ:家電量販店を全国的に展開
譲り受け企業:WILBYが有する高い商品紹介のノウハウ獲得による「自社Webサイトの品質向上」、「インターネット通販事業のさらなる発展」、「オムニチャネルの強化」
俳句てふてふ:株式会社PoliPoliの伊藤代表が開発した俳句を投稿するSNSサービス
毎日新聞:日本を代表する新聞社
譲渡企業:主力事業への集中、「俳句てふてふ」事業のさらなる成長
Peing – 質問箱:個人事業主のせせり氏が運営していた匿名質問ができるWebサービス
ジラフ:買取価格比較サイト「ヒカカク」などのWebサービスを運営
譲渡側:サービスのさらなる成長
一人会社(社員が創業者1人のみの会社)であるChoiceeが運営していた「IT系コンテンツを配信するオウンドメディア」
大阪府に本社を置くIT企業であり、Webサイト制作やシステム開発などの事業を展開
譲渡企業:事業の選択と集中、新しい事業に必要な時間確保・資金獲得
[1] And Technologiesの株式取得(みらいワークス)
[2] 会社概要(みらいワークス)
[3] Supadü Limited の株式取得(メディアドゥ)
[4] 「Supadü」をグループ化(メディアドゥ)
[5] ムービングクルーの株式取得(アピリッツ)
[6] 会社概要(アピリッツ)
[7] ネモフィラの連結子会社化(パイプドHD)
[8] 事業内容(パイプドHD)
[9] REMODELA株式の一部取得(ダスキン)
[10] 事業内容(ダスキン)
[11] イーエックス・パートナーズの子会社化(ジェイフロンティア)
[12] 会社概要(ジェイフロンティア)
[13] マルジュの新設会社を完全子会社化(ジーニー)
[14] 経営統合に関する最終合意の締結(Zホールディングス)
[15] LINEとの経営統合が完了(Zホールディングス)
[16] ソフトバンク・韓ネイバー、LINE株のTOB終了(日本経済新聞)
[17] LINEによる公開買付けの結果(Zホールディングス)
[18] ZOZO株式に対する公開買付けの開始(ヤフー)
[19] Zホールディングスによる公開買付けの結果(ZOZO)
[20] 日本郵政との資本・業務提携(楽天)
[21] 第三者割当による新株式の発行(楽天)
[22] FacebookがInstagram買収に大金を投じた理由(CNET Japan)
[23] フェイスブック、インスタグラムの買収完了(日本経済新聞)
[24] アマゾン、PillPackを買収(CNET Japan)
[25] マイクロソフトがGitHubを買収(日経クロステック)
[26] 事業内容(マイクロソフト)
[27] GitHubを75億ドルで買収(マイクロソフト)
[28] コインチェックの完全子会社化(マネックス)
[29] delyの連結子会社化(ヤフー)
[30] 会社情報(ヤフー)
[31] Incrementsの株式取得(エイチーム)
[32] 会社概要(エイチーム)
[33] トライフォートの株式取得(ユナイテッド)
[34] アップルワールドHDの株式取得(じげん)
[35] Our Services(じげん)
[36] 3ミニッツの株式取得(グリー)
[37] サークアの株式取得(駅探)
[38] WILBYの株式取得(ビックカメラ)
[39] 『俳句てふてふ』をPoliPoliから事業譲渡(毎日新聞)
[40] 「Peing – 質問箱」を買収(ジラフ)
Webサービスの売却が成功する可能性を高めたい(失敗するリスクを軽減したい)ならば、以下9つのポイントを押さえることが重要です。
以下では、それぞれのポイント(注意点)をくわしく解説します。
中身がまったく同じWebサービスでも、どのタイミングで売却するかによって売却金額は大幅に変わってくる可能性があります。
たとえば売り手と比べて買い手のニーズが圧倒的に多ければ、そうでない場合と比べて相場は高くなる傾向があります。
また、業績が下降傾向にあるタイミングよりは、売上やユーザー数が増加傾向にあるタイミングの方が、買い手企業から高く評価される可能性が高いです。
高値で売却できる可能性を高めたいならば、専門家と相談しながら、「どのタイミングであれば高値で売却できそうか」を慎重に考えましょう。
売上やユーザー数などのKPIが良くても、競合他社が運営している同種のWebサービスと差別化できる強みがないと、満足できる条件で売却できなかったり、より安く買収できるWebサービスを買い手側が選んだりする可能性があります。
高値での売却可能性を高めたいならば、競合他社との差別化につながる強み(集客ノウハウや革新的なサービス内容など)を確立しましょう。
また、自社サービスの強みを明確に認識していなければ、買い手候補にWebサービスの価値を最大限アピールできないため、自社で提示した条件に合意してもらえない可能性が高まります。
競合他社との比較などによって自社サービスの強みを明確化し、客観的な根拠(数字のデータなど)を活用して、その強みを買い手候補に伝えることが大切です。
Webサービスに限らず、事業の売却先は慎重に見極める必要があります。
売却先の見極めを怠ると、買収後にサービスの内容をめぐってクレームをつけられたり、売却したサービスの顧客や取引先に迷惑がかかったりするリスクがあるためです。
また、自社サービスとのシナジー効果が期待できる買い手候補を選ばないと、売却価格などの条件面で不利となる可能性も考えられます。
Webサービスの売却を成功させたいならば、以下の観点で売却先を慎重に見極めましょう。
Webサービスの運営に際しては、システム開発や記事制作、イラスト作成などの業務を外注するケースが少なくありません。
サービスの一部を外注している場合、外注部分の所有権がどうなっているかを事前に確認することが重要です。
契約書内に所有権を発注者側が有する旨が記載されていないと、基本的には仕事を引き受けた側が所有権を有することになります。
この場合、Webサービス事業を売却する際に、個別で同意を得る必要が出てきます。
また、所有権の所在を明らかにせずにWebサービスを売却すると、外注先との間で後からトラブルとなる可能性があります。
上記の事態を避けるためにも、かならず権利関係の確認は行いましょう。
サービスの運営に携わっていた外注人材が買い手企業の下で業務を続けることを拒否した場合、売却後にサービスの品質が低下する可能性があります。
また、売却時点で買い手側から買収額の減額を要求されることもあり得ます。
したがって、Webサービスの運営業務を外注している場合は、人材の引き継ぎを円滑に行えるように対策が必要です。
具体的には、以下の対策が効果的です。
買い手企業は、Webサービスの強みだけでなく、「売上」や「費用」、「ユーザー数などのKPI」も買収の判断材料として重視します。
したがって、買い手企業が知りたい上記のデータはあらかじめまとめておくことがおすすめです。
特に、成長している指標に関しては高く評価されやすいので、見やすさを意識した資料を用いるなどして、積極的にアピールしましょう。
Webサービスのみを売却する場合(エンジニアやデザイナーなどの人材を引き継がない場合)は、コードやデザインに関係する資料を買い手企業に渡すことが一般的です。
したがって、あらかじめ必要な資料は、すぐに引き渡せるようにまとめておきましょう。
ここで重要なのは、「買い手企業が見やすいように、データをまとめておくこと」です。
コードやデザインが見づらいと、買い手企業はWebサービスの改善を行いにくくなります。
資料が見づらいというだけで、交渉が難航したり、売却価格などの条件が不利になったりする可能性があるため注意しましょう。
サービス内で使っている文章や画像などに関して、売却前に無断転載がないかどうかをしっかり確認しましょう。
無断転載が発覚すると、Webサービスの運営続行が困難となったり、運営企業の社会的責任が問われたりするおそれがあります。
そのため、無断転載があるWebサービスを売却すると、買い手企業との間で大きなトラブルに発展することが考えられます。
このような事態を回避するためにも、コピペ率の測定ツールを活用するなどして、第三者の著作権を侵害しているかどうかを必ず確認することが重要です。
Webサービスの売却では、売上などの財務指標だけでなく、「ユーザー数」や「PV数」などの業界特有の指標も、バリュエーションや買収判断の基準として活用されます。
したがって、WebサービスのM&Aを強みとしている(豊富な実績を有する)マッチングサイトやM&Aアドバイザーを起用することがおすすめです。
WebサービスのM&Aに関する強みや実績がない業者に依頼すると、自社の強み(ユーザー数の多さなど)を正しく評価してもらえない可能性があります。
その結果、シナジー効果を期待できる買い手候補を探してもらえなかったり、バリュエーションの結果を低めに見積もられたりする事態になり得ます。
一方でWebサービスのM&Aを強みとする業者に実務を依頼すれば、満足いく条件で売却できる可能性が高まると考えられるでしょう。
この章では、Webサービスの売却を行う際に最低限知っておくべき知識をご説明します。
Webサービスとは、「インターネットの標準技術を応用し、他のウェブサイトのソフトウェアシステムを活用する仕組み・サービス」を意味します。[41]
広義の意味では、ウェブ上で利用できる電子メール、ワープロ、表計算などのアプリケーションソフト全般も含まれます。[41]
具体的には、Webメディアや地図検索サービス、動画投稿サービスなどがWebサービスに該当します。
以上より「Webサービスの売却」とは、企業のオウンドメディアやブログ、インターネット上で顧客に提供しているオンラインサービスなどを第三者に譲渡することと定義できます。
一般的にM&A(会社売却・事業売却)は、法人間で行われるものというイメージを持たれています。
しかしWebサービスに関しては、前述の事例にあるとおり、個人(または一人会社)が売却するケースも少なくありません。
理由としては、小規模なサービス(情報サイトなど)であれば、1人でも少ないリソースで作成・運営し、十分な収益を得られるからです。
あくまで売上やKPIによって売買価格が決まるため、個人・一人会社が売り手のWebサービスであっても、数千万円〜数億円で売却できる可能性は十分にあります。
一方で、小規模なWebサイトを制作し、数十万円〜100万円程度で売却する事例も多いです。
「売り手が法人だけでなく個人も多いこと」と「売却価格が数十万円〜数億円と幅広く分布していること」の2点が、WebサービスのM&Aに関して特徴的な点であると言えます。
[41] Webサービスとは(コトバンク)
Webサービスの売却には、「安定した収入源を失う」、「希望通りの条件で売却できるとは限らない」というデメリットがあります。
しかし一方で、Webサービスの売却には、デメリットを上回るほど大きなメリットがあります。
この章では、Webサービスを売却することで得られる3つのメリットを紹介します。
具体的なメリットは以下のとおりです。
以下では、各メリットをくわしく解説します。
Webサービスを売却すると、目安として数年分の営業利益に相当する売却収益を得られます。
主力事業の拡大や新規事業の立ち上げに、獲得した資金を投入できるようになります。
また、会社経営や事業の運営から完全に引退し、金銭的に困ることのない悠々自適な生活を実現できる可能性もあるでしょう。
Webサービスの運営では、サービスの維持・発展に多大なコストがかかります。
また、打ち合わせや営業、人材採用などにも多大な労力や時間を割くことになるため、精神的・身体的な負担も大きいです。
Webサービスを売却すれば、サービスの運営から退くため、金銭的な負担から解放されます。
また、打ち合わせや営業などの業務もなくなるため、精神的・身体的にも楽になるでしょう。
Webサービスの売却により、それまで費やしていたリソース(経営者自身の時間や人員など)に空きができます。
そのため、新しいWebサービスや別業種の事業を立ち上げるなど、それまではリソース不足で行えなかったことに注力できるようになります。
また、経営者や事業家から引退して、趣味や投資などに没頭することも可能となるでしょう。
Webサービスの売却は、一般的に以下の流れで実施されます。
各プロセスで行う実務をわかりやすくご説明します。
本業と並行してWebサービスの買い手を自力で探すことは困難であるため、基本的にはマッチングサイトなどのプラットフォームに登録し、そこで買い手を探すことが一般的です。
なおWebサービスを運営している会社ごと売却する場合は、仲介会社などに買い手を探してもらうことも多いです。
利用するプラットフォームによって、サービスの内容や得意とする業種・規模、手数料の体系は異なります。
Webサービスを売却する際には、IT系の実績が豊富であり、かつ手数料が比較的安く済むプラットフォームを利用するのがおすすめです。
プラットフォームへの登録を完了したら、実際に買い手候補となる企業や個人を選定します。
大半のプラットフォームでは、案件を登録・公開し、買い手候補からのオファーを待つ形となります。
案件を掲載する際には、主に以下の項目を登録します。
なお、利用するプラットフォームによって、どこまでの情報が公開されるかは変わってきますので、情報の漏えいを防ぎたい方はあらかじめ確認しておきましょう。
なお一部のプラットフォームでは、自ら買い手候補を選定し、Webサービスの売買を打診することも可能です。
仲介会社のサービスでは売り手企業が自ら買い手候補を選定することは基本的にできないため、「自分の目で買い手を探したい」と考えている方は、こうしたプラットフォームを利用すると良いでしょう。
興味を持ってくれた買い手候補が現れたら、交渉を開始します。
具体的には、売却価格や用いるM&Aのスキーム、今後のスケジュール、人材の引き継ぎなどの条件面を交渉します。
大半のプラットフォームでは、売り手の担当者と買い手の担当者が直接インターネット上で交渉を進めます。
一方で、交渉の一部を専門のスタッフがサポートしてくれたり、成約に至るまでM&Aアドバイザーが本格的に間に立って支援するプラットフォームもあります。
webサービス売却の実務を進めることに不安がある方は、サポートが豊富なサービスを利用すると良いでしょう。
交渉を経て売り手と買い手の双方が条件面で合意したら、最終契約書を締結します。
Webサービス売買の契約書には、主に以下の項目を盛り込みます。
ただし上記は一例であり、状況に応じて契約書の内容を慎重に検討することが重要です。
弁護士やプラットフォーム内のスタッフなどの協力を得た上で、契約書を作成するのがおすすめです。
契約書を締結したら、契約書の内容に沿ってWebサービスを売り手企業から買い手企業に移転します。
Webサービスの移転作業は、「コンテンツの移転」、「ドメインの移転」、「その他資産・契約の移転」という3種類の作業に大別できます。
コンテンツの移転は、Webサービスの中身(記事コンテンツやイラスト、画像など)を譲渡する手続きです。
具体的には、「サーバーの名義変更を行う方法」や「ファイル・データベースを買い手企業のサーバーに移す方法」が用いられます。
ドメインの移転は、Webサービスのドメインを買い手企業に移転する手続きです。
「同じドメインの管理会社内で名義変更する方法」や「ドメインの管理会社を変えた上で名義変更する方法」が用いられます。
最終契約書の内容次第では、コンテンツとドメイン以外の資産・契約を移転することがあります。
具体的には、外注スタッフとの契約や事業用資産、オフィスなどの契約が該当します。
なお、一部のプラットフォームでは、Webサービスの譲渡や売買代金の支払いについて、エスクローの仕組みを活用しています。
エスクローとは、プラットフォームの運営者が売り手と買い手の間に入ることで、取引の安全性を確保する仕組みです、
エスクローの仕組みが採用されている売買プラットフォームでは、以下の流れでWebサービスの譲渡や売買代金の支払いが行われます。
上記の手続きを経ることで、売り手企業は代金が支払われない事態を回避することができます。
IT業界全体が成長傾向にあるため、今後もWebサービスの売買は活発に行われると予想されます。
Webサービスの売却は、イグジットの実現や事業資金の獲得、事業のさらなる成長実現などにつながります。
Webサービスの運営に悩んでいる方は、現状を打開する手段としてM&A(事業・会社の売却)を検討してみてはいかがでしょうか。
(執筆者:中小企業診断士 鈴木 裕太 横浜国立大学卒業。大学在学中に経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士資格を取得(休止中)。現在は、上場企業が運営するWebメディアでのコンテンツマーケティングや、M&Aやマーケティング分野の記事執筆を手がけている)