Webメディア売却の市場は近年拡大しており、さまざまな種類・規模のメディアが売買されています。Webメディア売却の動向や最新事例、メリット、売却金額の相場などをくわしく解説します。(執筆者:京都大学文学部卒の企業法務・金融専門ライター 相良義勝)
矢野経済研究所の調査[1]によると、Webサイト売買の市場は2006年から2010年にかけて急激に成長しました。
2005年には成約案件10件、売却金額にして4,000万円規模の市場に過ぎなかったものが、翌年には160件、6億4,000万円に伸び、その後も倍増の勢いを見せて2010年には成約1,500件、85億円規模に達しています。
その後はリーマンショックなどの影響で一時的にM&A市場全体が落ち込みましたが、現在ではリーマンショック以前を上回る規模となっています[2]。
日本企業がインターネット広告にかける費用は年々大きく増加し、2020年にはマスコミ4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の合計額に迫る勢いを示しており[3]、Webサイトの市場規模とともにWebサイト売買市場の規模も大きく成長しているものと見られます。
さらに、インターネット広告のうちインフィード広告(Webコンテンツの合間に表示される広告)に限定しても一貫して大きな成長を見せている[4]ことから、Webメディアへの投資が継続的に増加し、売買市場もさらに拡大していくものと推測されます。
また、近年では大企業だけでなく中小企業もM&Aを積極化していますが、中小企業が買収対象とするのは小規模企業が多い[5]ことから、個人や小規模法人が運営するWebメディアにとっても売却機会が大きく広がってきていると言えるでしょう。
[1] 急成長するサイト売買市場(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)
[2] グラフで見るM&A動向(MARR Online)
[3] 2020年日本の広告費(電通)
[4] サイバーエージェント、インフィード広告市場調査を実施(サイバーエージェント)
[5] 中小企業におけるM&Aの動向(日本商工会議所)
Webメディア売却の目的(メリット)は以下の3つです。
Webメディアのオーナーは、売却によってまとまった資金を得ることができます。
これは、事業に投資してきた資金をその成果とともに回収すること(イグジット)に成功したことを意味します。
ベンチャー企業などでは、当初からM&Aによるイグジットを視野に入れて経営を行っている例もあります。
イグジットに成功すれば、手にした資金をもとに、以前よりも大きな規模で新しい事業に投資することが可能になります。
Webメディアを育て上げ好条件で売却に成功したという実績が信用力を生み、資金調達や取引が行いやすくなることも期待できます。
株式譲渡などにより大手企業の子会社となる形でWebメディアを売却し、売却後も現経営陣が会社に残って運営に携わるというケースもあります。
大手グループに加わることで資金調達が安定化し、豊かな事業基盤のもとで事業拡大や新事業開発を図ることができるようになります。
何らかの理由でメディア運営を続けられなくなった場合、運営力に長けた他社に売却することでメディアを有意義な形で存続させることが可能になります。
そのメディアに価値があれば、閉鎖するよりも売却したほうが社会に有益ですし、オーナーは売却益も手にすることができます。
また、メディアとともに人材も買い手に承継してもらうことで雇用を維持することができます。
株式譲渡などで子会社となる以外にも、人材の転籍を伴う事業譲渡でも雇用維持が可能です。
ユービジョンはメディア運用・SEO代行と自社メディア運営を手がけるWebマーケティング企業です。[6]
セレスはモバイル向けの各種サービスやWebメディア運営、暗号資産販売所運営、ブロックチェーンサービス開発、投資育成などの事業を展開している企業です。[7]
セレスはユービジョンの金融情報Webメディア「資金調達プロ」を取り込むことで自社モバイルサービス事業を強化するとともに、自社のアフィリエイト運営ノウハウを活用して「資金調達プロ」の収益力を向上させることができると判断し、事業譲受にいたりました。[8]
2019年3月、ユービジョンは現金6億2,100万円を対価としてセレスに「資金調達プロ」事業を譲渡しました。[8]
Dugong(現:CrowdLab)は、国内外の旅行・観光スポットやグルメ、宿泊に関する情報を発信するWebメディア「TravelNote」を運営する企業です。[9]
ブランジスタは企業プロモーションの支援を目的に、電子雑誌の発行と広告掲載、電子雑誌制作受託、EC運営サポート、Webサイト制作・運営、CRMサービスなどの事業を展開している企業です。[10]
「TravelNote」が月間200本以上の良質な記事を供給する体制を有し、サービス開始から10か月で月間1,500万PVを達成するなど、広告ビジネスとして高い収益性を構築している点をブランジスタは評価し、株式取得による子会社化を決定しました。
以下のようなシナジーが実現できるものと期待されています。[10]
2018年12月20日、ブランジスタがDugongの発行済株式の100%を取得し、同社を子会社化しました。
取得対価は5億3,000万円です。[11]
Incrementsはプログラマ向け技術情報共有サービス「Qiita」などを開発・運営している会社です。[12]
エイチームはゲームコンテンツ事業、ライフスタイルメディア事業、EC事業を展開する企業です。[13]
エイチームは成長と企業価値向上のための中長期的な施策として「自社で容易に参入できない(参入に時間のかかる)事業を持つ企業」の買収を積極的に行っており、Incrementsはこれに該当することから、今回のM&Aにいたりました。
エイチームはIcrementsの資産やノウハウを活用することで新たな事業展開を加速させる予定です。[12]
2017年12月、エイチームはIncrementsの発行済株式の100%を取得し、同社を子会社化しました。
取得対価は約14億4,630万円です。[12]
プルチーノはWebメディアの企画・立案、コンテンツ制作、広告代理業務を手がけている企業です。[14]
リアルワールドはInstagramを活用したマーケティング支援、デジタルギフトサービス、Webメディア運営などを手がけている企業です。[15]
リアルワールドグループはWebメディア運営事業の開拓を目指しており、それに向けた戦略の第1弾としてプルチーノの電子書籍紹介メディア「漫画大陸」の事業を譲受しました。
今後もWebメディアの買収を進め、漫画を含めたエンタメコンテンツ全領域においてユーザーとコンテンツをつなぐマッチングメディアプラットフォームを形成し、シェアNo.1を目指すとしています。[15]
2020年11月、プルチーノは現金2億2,000万円を対価として「漫画大陸」事業をリアルワールドに譲渡しました。[15]
Nico Inc.はマレーシアを拠点にインターネットによる広告・宣伝事業を展開している企業です。[17]
REAL FINTECHはリアルワールドの子会社で、デジタルギフトサービスの運営やFinTech領域の事業開発を行っています。[17]
リアルワールドグループのWebメディア事業戦略の第2弾として、Nico Inc.の格安SIM比較情報メディア「すーちゃんモバイル比較」をREAL FINTECHが譲受することになりました。
同グループは今後も保有メディアの拡大などを進めていくとしています。[17]
2020年12月、Nico Inc.は現金1億8,000万円を対価として「すーちゃんモバイル比較」運営事業をREAL FINTECHに譲渡しました。[17]
delyはレシピ動画メディア「クラシル」を運営している会社です。[18]
ヤフーは多数のWebメディアサイト・Eコマースサイトの運営やマーケティングソリューションなどの事業を展開している日本有数のインターネット企業です。[19]
今回のM&Aは、ヤフーとdelyが戦略的パートナーとなり「クラシル」を中心として相互にシナジーを創出していくことを目的として行われました。[18]
2018年7月、ヤフーがdelyの議決権の29.6%を取得し、ヤフー子会社のYJ2号投資事業組合が保有する15.9%と合わせて45.6%を保有することになりました[18]。
取得対価は93億500万円です。
ヤフーはさらに取締役派遣などによりdelyを実質的な支配下におき、同社を子会社化しました[20]。
OPENERSは高級商材を扱うライフスタイルメディア「OPENERS」を運営する会社です。[21]
ベクトルはITを駆使したマーケティング手法によりPR、HR領域の幅広い事業を展開している企業です。[22]
Webメディア戦略がますます重要性を増すなか、ベクトルは検索されやすく拡散されやすいコンテンツの生成・配信を実現するサービスの展開を目指しており、一方のOPENERSは優れた企画力・編集力とブランドネットワーク力を有しながら新規顧客開拓については課題を抱えていました。
今回のM&AによりベクトルとしてはWebメディア戦略を強化でき、OPENERSとしてはベクトルのサポートを得て事業拡大が可能になるものと期待されています。[21]
2017年7月、ベクトルはOPENERSの株式を取得して議決権比率90%の筆頭株主となり、同社を子会社化しました。取得対価は1,850万円です。[23]
morondoは大阪府牧方市の生活情報を発信するWebメディア「牧方つーしん」を運営している会社です。[24]
INCLUSIVEはマスメディア企業のためのデジタルメディアマネジメント支援や一般企業に向けたDX関係コンサルティングなどを行っている会社です。[25]
INCLUSIVEは各地の地域メディアのDXサポートにとどまらず地域メディアの運営にも乗り出すことで、Webメディアを通した地域活性化事業を展開しています。
「牧方つーしん」はメディアをハブとした地域活性化の成功モデルであり、他地域にも応用可能であるとの判断から、今回のM&Aにいたりました。
今後は地元のお店のためのクラウドファンディングや他の地域メディアとの連携などを進めていく予定です。[24]
2020年4月、INCLUSIVEはmorondoの発行済株式の100%を取得し、同社を子会社化しました。
取得対価の金額は守秘義務契約により非開示とされています。[26]
MAKEYは、美容系動画を配信するYouTuberの発掘・育成とコスメ情報共有メディアの運営を行っている企業です。[27]
エイベックスグループは音楽事業、アニメ・映像事業、タレントマネジメント事業などを展開している大手エンタテインメント企業です。[28]
近年ではYouTuberを初めとする個人のクリエイターがマスメディアを介さずに多数のファンを獲得するなど、消費者にとって芸能人と個人クリエイターの垣根が消えつつあります。
そうしたなか、エイベックスはMAKEYの買収を通して個人クリエイター発掘・育成ノウハウと美容系コンテンツのプロデュース力を自社事業に取り込むとともに、個人クリエイターの芸能活動支援や芸能人とのコラボレーションなどを展開していく予定です。[27]
2019年1月、エイベックスがMAKEYの株式を取得し同社を子会社化しました(2020年3月31日現在、エイベックスはMAKEYの議決権を75.1%所有)。[29]
マイケルは日本中の自動車好きが集うSNSサービス「CARTUNE」を運営している会社です。[30]
メルカリはフリマアプリ(CtoCマーケットプレイス)「メルカリ」の企画・開発・運用を行っている会社です。[31]
メルカリはフリマアプリ「メルカリ」における各商品カテゴリーの強化を推進しており、マイケルの「CARTUNE」が有するユーザー基盤、コミュニティ、運営ノウハウを取り込むことで、車体・パーツなどの自動車関連カテゴリーの強化を目指すとしています。[30]
2018年11月、メルカリは株式交換によりマイケルを完全子会社化しました。[30]
マイケルは自動車関連SNS「CARTUNE」を運営している会社で、2018年11月以来メルカリの子会社となっていました。[32]
イードは多分野にわたる多数のWebメディアを運営し、マーケティングリサーチ事業やEC企業向けASPシステム事業なども行っている会社です。[33]
イードは日本最大級の自動車総合ニュースメディア「レスポンス」を初め、複数の自動車関連メディアを運営しており、自動車関連スタートアップへの投資や事業支援なども手がけてきました。
マイケルの「CARTUNE」が有するユーザー基盤を獲得することで、自動車関係事業の全方位展開をさらに進めることができると判断し、今回のM&Aにいたりました。[32]
2020年6月、イードがメルカリよりマイケルの発行済全株式を取得して同社を子会社化しました。
取得対価の額は公表されていません。[34]
motoは転職ノウハウなどを発信するWebメディア「転職アンテナ」を運営する会社です。[35]
LOGLYはネイティブ広告(記事広告など、メディア本体に溶け込んだ形の広告)のプラットフォーム「LOGLY lift」やWebマーケティング用分析ツールなどを開発・提供している会社です。[36]
LOGLYは取り扱い広告ジャンルの拡大を中期戦略のひとつとして掲げており、その一環として、転職サービス分野で順調に売上を伸ばしてきた「転職アンテナ」を買収しました。
また、LOGLYのビッグデータ解析の技術力と「転職アンテナ」の転職者傾向のデータ分析を掛けあわせることで、新たな事業創出が可能になるものと期待されています。[35]
2021年4月、LOGLYはmotoの発行済全株式を取得し、同社を子会社化しました。
取得対価は取得時の7億円に加え、アーンアウトによる成功報酬(買収後のmoto社による目標達成の度合いに応じて追加で支払われる対価)が最大3億円となっています。[35]
アドブレイブはEC企業向けに新規顧客獲得・ブランド認知拡大・既存顧客育成のための戦略を提案している広告代理店[37]です。
譲渡前はEC・通販事業者向けのWebメディア「通販通信ECMO」を運営していました。
ユニメディアはスマートフォン広告ソリューションやAdTech(広告テクノロジー)を主軸に事業を展開している企業で、各種のメディア運営も行っています。[38]
ユニメディアは広告領域におけるシナジーが見込めると判断して「通販通信ECMO」の事業買収にいたりました。
「通販通信ECMO」はアドブレイブからそのまま転籍した編集部が引き続き運営し、ユニメディアの運営ノウハウを取り入れながら収益性の拡大を目指します。[38]
2020年6月、アドブレイブは「通販通信ECMO」事業をユニメディアに譲渡しました。
譲渡対価の額は公表されていません。[38]
M&Aファースト(現:サイトキャッチャー)はWebサイト売買プラットフォームを運営する会社です。[39]
auc-oneはWebメディア「TENRAKUキャッシング(現:お金のこと辞典)」などを運営している会社です。[40]
「バラエティ&ドラマ見逃し動画辞典」は国内外のバラエティ・ドラマの動画配信元を検索・比較することができるWebメディアです。
auc-oneはコロナ禍による外出自粛・巣ごもりが常態化するなか動画配信を利用し始める人が増加することを見越し、同メディア事業を買収しました。[40]
2021年2月、auc-oneはM&Aファーストから「バラエティ&ドラマ見逃し動画辞典」事業を譲受け、運営を開始しました。
譲渡対価の額は公表されていません。[40]
peekabooは無料保育所を備えたオフィスの運営と保育園の運営を行っている会社で、オフィスの事業としてWebライティングやアウトソーシング、Webメディア運営などを手がけています。[41]
アイラッシュガレージはアイラッシュ(まつ毛エクステンション)商材の輸出入・卸・販売やアイラッシュ関係の人材育成・情報提供などを行っている会社です。[42]
「Beaute」はアイラッシュ施術者・アイラッシュサロン経営者向けのWebメディアで、技術や商材など専門性の高い情報を提供しています。
アイラッシュガレージは譲受した「Beaute」の内容と質を継承しつつ、自社および親会社の有する顧客基盤と取引先ネットワークを活かしてサロンやメーカーの情報発信の場としても発展させ、アイラッシュ事業拡大に活かしていく予定です。[43]
2021年1月、peekabooが「Baute」事業をアイラッシュガレージに譲渡しました。
譲渡対価の額は公表されていません。[43]
エスタイルはWebメディア運営とコンテンツマーケティング支援・コンテンツ制作を行っている会社です。[44]
ノヴィータはWebコンテンツ・広告の企画制作、Webシステム構築、Webコンサルテーションなどを手がけている企業です。[44]
「BRAVA」はリアルな体験談をメインに、ワーキングマザーに向けて等身大の働き方や育児の仕方を伝えるWebメディアです。
ノヴィータでもワーキングマザーを主なターゲットとするメディア「LAXIC」を運営しており、職場環境の問題や求人情報など、より仕事に重点を置いた情報を発信しています。
ノヴィータは「BRAVIA」と「LAXIC」の連携によりこれまで以上に高品質の情報発信を行うことができると考え、事業の譲受にいたりました。[43]
2016年2月、エクスタイルが「BRAVA」事業をノヴィータに譲渡しました。
譲渡対価の額は公表されていません。[43]
ismは働く女性向けコミュニティ「ism」を運営し、Webマーケティング支援、企業オウンドメディア運営支援、PR支援なども手がけている企業です。[45]
PR TIMESはプレスリリースをマスメディア向けに配信するとともに、Webメディア「PR TIMES」上で一般向けにも公表している企業です。[45]
PR TIMESはプレスリリース配信にとどまらず、各種Webメディア事業を買収するなど、配信事業の拡大を進めています。
PR TIMESとismはPR支援メディアの共同プロジェクトを継続している関係にあり、両社のシナジーをいっそう深める目的で今回のM&Aが実現しました。[45]
2020年10月、PR TIMESがismの発行済株式の100%を取得し、同社を子会社化しました。
取得対価の額は公表されていません。[45]
トレンダーズはSNSアカウント運用代行、SNSを中心とした広告運用に加え、各種Webメディアを運営している会社です。[46]
メディアインベストメントは、潜在力の高いWebメディアを買収し健全な形で投資育成を行って収益性を高めるというビジネスモデルで事業を展開している企業です。[47]
メディアインベストメントは「feely」の潜在力を高く評価し今回の事業譲受にいたりました。
同時に、トレンダーズを含む数社を引き受け先とする第三者割当増資を実施し、総額約1億円の資金調達を行っています。[47]
2017年12月、トレンダーズは「feely」の事業をメディアインベストメントに譲渡しました。
譲渡対価の額は公表されていません。[47]
まぐまぐはメールマガジン配信サービス「まぐまぐ!」やWebメディアの運営を行っている企業です。[49]
エボラブルアジア(現:エアトリ)はグループ傘下企業とともに旅行事業、ITオフショア開発、ヘルスケア事業、投資事業などを展開している企業です。[50]
エアトリは総合旅行サービスプラットフォーム「AirTrip」上で国内外の航空券・ホテル・ツアー予約などの旅行事業を手がけ、同プラットフォームを国内線予約No.1ブランドとするための戦略を展開しており、その一環としてまぐまぐを子会社化しました。[49]
まぐまぐとエアトリの得意分野を掛けあわて旅行特化型メディアの運営を行うことを当初の目的の1つとしており、それは旅行メディア「TRiP EDiTOR」のリリースという形で実現しています。[51]
2017年9月、エアトリがまぐまぐの株式を取得して議決権比率59.6%の株主となり、同社を子会社化しました。
取得対価は約8億円です。[52]
Choiceeはガジェット・ITツールのレビューメディア運営からスタートし、現在はWebサイト制作などを手がけている会社です。[53]
大阪を拠点にしてWebサイト制作・運営、システム開発などを手がけている会社です(詳細は非公表)。[53]
Choiceeは代表が1人でレビューメディアを運営する会社で、記事の専門性の高さから順調に収益性を向上させることに成功しました。
代表は新しい事業の展開を模索していたものの、現在のメディア運営で手一杯で次のステップに進めなかったため、M&Aによりメディアを譲渡することを決断しました。[53]
Choiceeはマッチングプラットフォームで買い手を募集し、複数社とのリモートでの直接交渉を経て、募集から2か月で大阪のWeb関連会社に事業を譲渡しました。正確な時期や譲渡金額は公表されていません。[53]
[6] サービス(ユービジョン)
[7] 事業内容(セレス)
[8] 2018年12月期 有価証券報告書(株式会社セレス)
[9] 企業沿革(ブランジスタ)
[10] 株式会社Dugongの株式取得(子会社化)に関するお知らせ(ブランジスタ)
[11] 2019年9月期(第19期)第1四半期報告書(ブランジスタ)
[12] 2018年7月期 有価証券報告書(エイチーム)
[13] 事業情報(エイチーム)
[14] トップページ(プルチーノ)
[15] 【おうち時間増加で高まる電子書籍市場】GAFAメディア戦略 第一弾、 Webメディア「漫画大陸」事業譲受のお知らせ(リアルワールド)
[16] 有価証券報告書-第16期(令和1年10月1日-令和2年9月30日)(リアルワールド)
[17] 事業譲受に関するお知らせ(リアルワールド)
[18] dely株式会社の連結子会社化に関するお知らせ(ヤフー)
[19] サービス(ヤフー)
[20] 『 四半期報告書 』 第24期第2四半期 平成30年9月30日(ヤフー)
[21] 株式会社OPENERSの株式取得(子会社化)のお知らせ(ベクトル)
[22] ベクトルグループの事業(ベクトル)
[23] 2018年2月期 第2四半期報告書(ベクトル)
[24] 株式会社 morondo の株式取得(子会社化)に関するお知らせ(INCLUSIVE)
[25] 事業とサービス(INCLUSIVE)
[26] 2021年3月期 第1四半期報告書(INCLUSIVE)
[27] 美容系YouTuber事業を展開するMAKEY社を子会社化(エイベックス)
[28] 事業紹介(エイベックス)
[29] 有価証券報告書-第33期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)(エイベックス)
[30] 有価証券報告書-第7期(平成30年7月1日-令和1年6月30日)(メルカリ)
[31] 会社情報(メルカリ)
[32] イード、メルカリ子会社のマイケルを買収(イード)
[33] 事業概要(イード)
[34] 有価証券報告書-第21期(令和1年7月1日-令和2年6月30日)(イード)
[35] moto 株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(LOGLY)
[36] 事業内容(LOGLY)
[37] 事業内容(アドブレイブ)
[38] ユニメディア、EC・通販業界のWEBメディア「通販通信ECMO」をアドブレイブから譲受(ユニメディア)
[39] サイトキャッチャー株式会社へ社名変更のお知らせ(旧:M&Aファースト株式会社)(サイトキャッチャー)[40] VODメディア「バラエティ&ドラマ見逃し動画辞典」の事業を取得(auc-one)
[41] 会社情報(peekaboo)
[42] 会社案内(アイラッシュガレージ)
[43] アイラッシュ業界唯一のWEB情報メディア「Beaute」取得について(アイラッシュガレージ)
[44] ワーママ・プレワーママ向けWEBメディア「BRAVA(ブラーバ)」事業譲受のお知らせ(ノヴィータ)
[45] PR TIMES、株式会社ismの全株式を取得(完全子会社化)(PR TIMES)
[46] サービス&メディア(トレンダーズ)
[47] メディアインベストメント、トレンダーズから「FEELY」を事業譲受。(メディアインベストメント)
[48] トップページ(feely)
[49] 株式の取得及び簡易株式交換による株式会社まぐまぐの子会社化に関するお知らせ(エボラブルアジア)
[50] 事業案内(エアトリ)
[51]当社子会社の株式会社まぐまぐが旅行メディア『TRiP EDiTOR(トリップエディター)』をリリースいたしました。(エアトリ)
[52] 有価証券報告書-第11期(平成28年10月1日-平成29年9月30日)(エアトリ)
[53]【M&A成功事例】1人で運営していたIT系情報サイトの売却益を、新規事業の準備資金に。交渉から契約までリモートで完結(M&Aサクシード)
M&Aではバリュエーション(企業価値算定)をもとにして売買金額の交渉を行います。
Webサイトの売却では簡易的な手法でバリュエーションが行われるのが通例で、結果的に「月間営業利益の18~24か月分」程度の売却価格になることが多いと言われています。
バリュエーションの手法としては、将来にわたる事業計画をもとにファイナンス理論を駆使して価値を算出するDCF法や、類似する上場企業との比較から価値を算出する類似会社比準法(マルチプル法)が一般的ですが、小規模な事業の場合、DCFに必要な事業計画を用意したり上場企業と比較したりすることは現実的でないケースが大半です。
そのため、売却時点での「時価純資産」の金額に「営業利益数年分(月間営業利益数十か月分)」の金額を加算することで価値を割り出す手法がよく用いられます。
後者の金額は将来的な収益力を(過去の業績をもとに)簡易的に評価したものです。
Webメディア売却で売却対象となるのはメディアそのもの(コンテンツやノウハウなど)であり、設備やソフトウェアなどの資産は含まれない(もしくは額が小さい)のが通例です。
したがって、買収対象としての評価はそのメディアがどれほどの将来的な収益力を有しているかという点に絞られます。
結果として「月間営業利益の18~24か月分」という価格に落ち着くことが多いわけですが、それを大きく上回る価格がつくこともあれば、半年分ほどにしかならないようなケースもあります。
売り手側としては、買い手候補やM&A仲介会社などが提示する金額がどのような根拠で算出されたものなのかを確認することが肝要です。
高額で売却されるWebメディアには一般的な特徴があります。
また、事業内容などの面で相性のよい買い手を見つけることも非常に重要なポイントです。
小規模なM&Aではマッチングさえうまく行けばあとは当事者同士のやりとりでとんとん拍子に進むケースが少なくありません。
高い値段で売却できるWebメディアには、主に以下4つの特徴があります。
収益性の前提として、メディアへの流入数、訪問数やPVが大きくなければならないことは言うまでもありません。
これらが上昇しており、今後も上昇が見込めると判断できる状態であれば、買い手がつきやすくなります。
検索ボリュームが大きい(頻繁に検索されている)キーワードで上位に表示されるサイトは、最終的に収益につながる可能性が高いと判断されるため、評価が高くなります。
Webメディアが公式SNSアカウントを所有していて、多数のフォロワーがついていれば、そのメディアはブランドとして多くのファンを獲得していると評価できます。
買い手側としてはWebメディアをブランドとそのファンごと取り込むことができ、収益性の見込みが立ちやすいため、買収価値を高く見積もることになります。
Googleはユーザーの利便性を第一に考えるということを基本的なポリシーとしています。
Google検索順位はGoogleの採用するアルゴリズムの影響を受け変動しますが、ユーザー視点で制作・運営され、ユーザーにとって有用でオリジナリティの高いコンテンツを多数有しているメディアであれば、アルゴリズムに変更があってもGoogleから安定して高い評価を得ることが期待できるため、買い手にとっても価値が高くなります。
好条件で売却するためには、自社Webメディアの真価を理解し高く評価してくれる買い手を選ぶことが決定的に重要です。
相手がこちらの価値を高く評価してくれる分だけ売却金額は高くなり、売却後の経営や雇用にもプラスとなります。
買い手とのマッチングには、M&A仲介会社かマッチングサイト(Webサイト売買専門のマッチングサイトやM&A全般のマッチングプラットフォーム)を利用する方法が一般的です。
M&A仲介会社は売り手と買い手の間に入り、双方の要望をもとにして案件を取りまとめる役割を果たし、手続き面でのサポートも提供します。
マッチングサイトの場合は、売り手が売却案件情報を登録し、それを見てオファーしてきた買い手候補と直接交渉を行うのが基本の形です。
それぞれの方法には以下のようなメリット・デメリットがありますので、自社に合った方法を選ぶことが重要です。
| メリット | デメリット |
---|---|---|
仲介会社 | ・成約率が高い | ・仲介会社が成約を優先し、低い金額での売却を勧めてくる可能性がある |
マッチングサイト | ・マッチングの相手が豊富 | ・交渉や手続きを自社で直接行わなければならない |
M&A市場の拡大や、M&Aを積極的に戦略に取り入れる企業の増加、企業広告のマスメディアからWebメディアへのシフトなどにより、Webメディアの売買が盛んに行われるようになりました。
この傾向は今後も続いていくものと見られます。
大小さまざまな規模の、多種多様なWebメディアが売買されており、1人で制作・運営を行っているようなメディアでも十分に売買対象になり得ます。
Webメディア運営企業にとって、メディアを売却するという選択肢を念頭に置いて運営を行うことが今後は一般的になるかもしれません。
(執筆者:相良義勝 京都大学文学部卒。在学中より法務・医療・科学分野の翻訳者・コーディネーターとして活動したのち、専業ライターに。企業法務・金融および医療を中心に、マーケティング、環境、先端技術などの幅広いテーマで記事を執筆。近年はM&A・事業承継分野に集中的に取り組み、理論・法制度・実務の各面にわたる解説記事・書籍原稿を提供している。)