個人によるM&Aは、マッチングサイトや公的機関のサービスを中心に、数多く成約しています。今回は個人によるM&Aに焦点を当てて、案件の探し方やM&Aのメリット・デメリット、流れをくわしく解説します。(公認会計士監修記事)
個人で行えるM&A案件の探し方
| メリット | デメリット |
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M&Aマッチングサイト |
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事業引継ぎ支援センター |
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M&A仲介会社 |
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個人が買い手としてM&Aを行う場合、買収予算には限度があるため、買収額は小さくなる傾向にあります。
また、サラリーマンが副業としてM&Aすることもあり、サラリーマンの給料でも買収できる案件も多くあります。
M&Aマッチングサイトであれば、数百万円の案件はもちろん、100万円以下の買収案件も数多く登録されています。
個人によるM&Aが増えている背景としては、①副業することがより一般的な世の中になったこと、②個人でも利用しやすいインターネットを介したM&Aサービスが台頭したことの2点が挙げられます。
正社員の副業を認める企業が55%[1]と、増加傾向にあり、年々副業をすることに対する抵抗感がなくなっています。
副業する際の一つの手段として挙げられるのがM&Aです。個人がM&Aを実施し、副業と同程度以上の収益を獲得できる可能性もあります。
また、インターネットを介したM&Aマッチングサイトが現れたことにより、個人が以前よりもM&Aに親しみやすくなったことも背景の一つです。
少額案件も多く登録されており、個人が気軽にM&Aを実施できる世の中になりつつあります。
個人M&Aの対象となる会社・業種には特に制限はありません。個人でM&Aしやすい業種としては、飲食店、美容系サービス、学習塾などの教育関連サービス、webサービス(ECサイトやアフィリエイトサイト)などが挙げられます。
買い手が引き継ぐにあたり、特別な知識やノウハウが必要のない業種については、より個人がM&Aしやすい会社・業種となります。
個人が小規模なM&A案件を探すためには、M&Aマッチングサイトを利用することが手軽でお勧めです。
会員登録を行うことで売却案件の一覧を確認することができ、気になる案件があった場合には、売り手と交渉することが可能になります。
M&Aマッチングサイトを利用することのメリットは、小規模なM&A案件が多く登録されていること、手数料が比較的安いことが挙げられます。
M&Aマッチングサイトには、日々多数の売却案件が登録されており、小規模な案件であっても簡単に検索することが可能です。
また、手数料もM&A仲介会社よりも比較的安く設定されていることが多く、投資コストをより安く抑えたい場合にお勧めの方法です。
一方、M&Aマッチングサイトでは、M&A仲介会社に依頼するよりもアドバイスが手薄になる場合もあるという点がデメリットです。
ただし、初めてのM&Aで不安がある場合には、自分でアドバイザーを付けることもでき、アドバイスを貰いながら自分の思うように売り手との交渉を行うこともできます。
個人がマッチングサイト上でM&Aを実施する事例も増加傾向にあり、会員登録自体は無料で行えるため、M&Aに興味がある場合には一度、マッチングサイトに登録してみると良いでしょう。
後継者探しが困難な地方企業も積極的に活用[2]しています。
事業引継ぎ支援センターは国が運営しており、公的な事業承継サービスを提供しています。
そのため、手数料無料で利用することができる点、親身に対応してもらえる点がメリットとして挙げられます。
一方、事業承継が目的の案件であるため、少額M&A案件を探す際には、案件の絶対数が少ないというデメリットがあります。
また、手数料が無料で利用できるものの、デューデリジェンスやバリュエーションを取るために外部専門家を起用する際は別途費用がかかる点は留意が必要です。
個人であってもM&A仲介会社に希望を伝えることで、小規模なM&A案件を紹介してもらうことができます。
M&A仲介会社に探してもらうことのメリットとして、希望条件に沿った案件を紹介してもらえること、M&A全般の相談に乗ってもらえることが挙げられます。
初めてM&Aを行う場合で不安に思うことがある場合でも、M&A仲介会社が間に立つことで、売り手との交渉もスムーズに進めてくれることもあります。
一方、デメリットとして、手数料が比較的高いことと、親身に対応してもらえないことがある点が挙げられます。
M&A仲介会社の手数料体系は、手付金+成功報酬と手付金が必要な場合もあり、成功報酬率も5%など比較的高いと言えます。
また、最低手数料が設定されている場合もあり、M&A仲介会社に相談する場合には、事前によく報酬体系を確認しておく必要があります。
加えて、M&A仲介会社にとって、資金力のある買い手候補に優先的に案件を紹介することも多く、予算の小さい個人には親身に対応してもらえないこともあり得ます。
M&A仲介会社に探してもらう際は、メリット・デメリットをよく検討したうえで、相談するようにしましょう。
[2] ネット使いM&A仲介 後継者難の地方企業が活用 日本経済新聞
| メリット | デメリット |
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売り手 |
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買い手 |
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個人が事業を続ける場合、事業を辞めるまでに獲得する利益を期間の経過に従って獲得することができます。
事業売却であれば、将来に獲得することのできる利益も含める形で事業売却による利益を得ることができます。
例えば、事業売却であれば、利益の5年分を一括で得ることも可能になります。
一時的に多額の資金需要がある、事業を継続する時間がないといった際に、事業売却の選択肢は売り手にとって大きなメリットと言えるでしょう。
事業承継の方法は、親族内承継、従業員等への承継、M&Aの3つに分けられます。
引退を考えている経営者にとってはM&Aは選択肢の一つとなります。
M&Aによる事業承継であれば、候補が複数いるため、自社の事業を高く評価してもらえるシナジー効果の高い買い手が見つかるかもしれません。
結果として、親族内承継や従業員等への承継よりも高い金額で事業承継を行える可能性がある点がメリットです。
中小企業が借入を行っており、オーナー経営者が個人保証を行っているケースは一般的です。
会社経営がうまくいかず、借入金返済が困難になった場合、連帯保証人である経営者自身が返済を行わなければならずプレッシャーがかかります。
M&Aにより会社を売却することで、個人保証を買い手経営者に引き継いでもらうこともでき、個人保証から解放される点は大きなメリットの一つです。
ゼロから事業を立ち上げる際、時間、コスト、労力を事前に見積もらなければなりません。
例えば、飲食店を開業する際は、立地調査、賃貸借契約締結、内装工事、従業員の採用、メニュー開発、オープン告知など様々なプロセスを経ることが必要です。
M&Aであれば既存事業をそのままの形で引き継ぐことができるため、事業立ち上げにかかる時間、コスト、労力を減らせる可能性があります。
M&Aを複数回実施することで、自社で新規事業を立ち上げるよりも、成長スピードを速めることもできます。
買い手がM&Aを実施した際、買収事業から得られる収入は買い手が得ることができます。
投資金額回収後は、毎年プラスのキャッシュフローを積み重ねることが可能です。
また、自社の売上よりも大きい売上規模の対象会社を買収することも可能です。
大型のM&Aや複数M&Aを成功させることで、将来得られるキャッシュフローを大幅に増やせる可能性があります。
買い手は買収した事業を、再度第三者に事業売却することもできます。
買い手が売り手から経営を引き継ぎ、バリューアップさせることで、買収金額よりも高い金額で事業売却することもできます。
買い手は買収後、そのまま経営を続ける、しばらく経営を続けた後に事業売却するという選択肢があり、M&Aの市況を見極めながら自由に意思決定を行うことができます。
買い手は買収の意思決定をする際、対象企業の業績は必ず確認します。
業績が悪ければ、投資金額を回収できる可能性が低いため、買収を見送ることが多いでしょう。
そのため、対象企業や事業の業績が悪い場合には、買い手が見つかりにくいというデメリットがあります。
売却プロセスは進めたものの、最終的に買い手が見つからないこともあります。
従業員にとって、M&A後に買い手の経営方針によっては、待遇や仕事内容などが変わる可能性があります。
また、社名変更や経営統合の実施により、作業負担も生じます。
M&Aは従業員の人生に大きな影響を及ぼしてしまうこともある行為です。
売り手は、M&Aの条件として従業員の雇用条件の一定期間維持することなどを、条件として定めることもあります。
買い手はM&A後、既存の取引先ではなく、新規の取引先を開拓することもでき、自由に経営することができます。
既存の取引先にとっては、取引がなくなることで今後の経営に大きな打撃を受けてしまうこともあります。
売り手にとって、M&Aは従業員や取引先に迷惑がかかる可能性がある点は留意しておかなければなりません。
企業文化や経営方針が合わなければ、買い手企業に対して売り手企業の従業員や取引先から反発を受けるリスクがある点がデメリットの一つとして挙げられます。
買い手はトップ会談やデューデリジェンスなどを通して売り手企業の企業文化や経営方針をきちんと理解することが大切です。
買収前にPMI計画をある程度建てておき、従業員や取引先に配慮したM&Aを実施するようにしましょう。
M&Aの金額は、売上や利益といった業績に大きく左右されます。
業績が良い企業は買収金額が高くなり、業績が悪い企業は買収金額が低くなる傾向にあります。
M&A予算が少なく少額の案件を中心に検討している場合には、売上や利益が少ない案件が多くなる点に留意が必要です。
株式譲渡によるM&Aを行う場合には、買い手は簿外債務のリスクを負うリスクが生じます。
簿外債務とは帳簿に載らない債務のことで金額が多額になる可能性もあります。
簿外債務がある企業を買収してしまった場合、その債務を弁済しなければならず、投資金額以上の損失を追ってしまうケースもあります。
会計士・税理士などの外部専門家によるデューデリジェンス、最終契約書における売り手の表明保証などを通じて、簿外債務等のリスクを低減させるアクションが必要となります。
個人がM&Aを開始する際は、マッチングサービスへの登録、仲介会社との契約から始めることが一般的です。
最初の登録・相談は、社名・郵便番号・氏名・電話番号・メールアドレスといった基本的な情報の入力のみで可能です。
各マッチングサービスや仲介会社の強み・弱み、メリット・デメリットを比較検討のうえ、利用するサービスを選択するようにしましょう。
買い手企業はマッチングサービス上に開示されている情報、仲介会社から提供されたノンネームシートと呼ばれる限定的な情報をもとに、初期的な検討を行います。
興味がある案件があれば、QAやより詳細な資料をもとに次のステップに進むかどうかの検討を行います。
個人によるM&Aの場合、自らが手を動かすというよりは、マッチングサービスや仲介会社の力によって、M&Aの相手企業が探せるかどうかの結果が変わってきます。
案件によっては、すぐに交渉相手が見つかる場合もありますが、反応が悪く、交渉相手がなかなか見つからないこともあります。
売却プロセスを長い間進めていたにも関わらず、M&Aの交渉相手がなかなか見つからない場合には、アピールする情報の変更やサービス自体の変更を検討してみることもおすすめです。
交渉相手が見つかった後は、M&Aの基本的な条件交渉を行います。
売却金額、売却時期、引き継ぎ方法、従業員の処遇など、自身の優先順位に従って交渉を行うことが大切です。
この段階で買い手と売り手のトップ会談を行い、お互いの経営方針や企業文化など意見交換を行い、理解を深めておくと良いでしょう。
基本的な条件がすり合った後は、基本合意書を締結し次のステップへと進みます。
なお、M&A仲介会社に依頼している場合、基本合意書締結の段階で成功報酬の一部が発生する事があるため、留意が必要です。
買い手は基本合意書の締結後、デューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスは以下のように7つの種類があり、対象企業の状況に応じて実施の必要性の有無や外部専門家を検討するかどうかを検討します。
個人が実施する小規模なM&Aの場合であっても、財務、税務、法務デューデリジェンスに関しては外部専門家によるデューデリジェンスを実施すると、安心して買収の意思決定を行うことができます。
デューデリジェンスで検出された事項に応じて、最終契約書に何を記載すべきかが変わってきます。
また、検出された事項が金額的・質的に重要なものであれば、売り手との金額交渉を行うこともあり、最悪のケースでは買い手が買収を見送ることもあります。
買い手のデューデリジェンスが終了次第、最終契約の内容を詰めていきます。
一般的にはデューデリジェンスを実施した買い手から最初のドラフトを提示し、売り手が加筆・修正を行う流れで、実務を進めていきます。
最終契約書はM&Aプロセスの最後の段階で締結する契約書の総称で、スキームにより名称が異なります。
例えば、株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書、合併であれば合併契約書になります。
最終契約書の中でクロージング日を定め、クロージング日に買い手は買収資金を支払い、売り手は対象事業の引き渡しを行います。
クロージング後に買い手は売り手から対象事業を法的に承継することになり、以降の経営は買い手が引き継ぐことになります。
以上のように、M&Aの中でも個人が実施することを想定して、概要、案件の探し方、M&Aのメリット・デメリット、M&Aの流れを解説してきました。
副業やインターネットを介したM&Aサービスの広がりにより、これからも個人によるM&Aは増加していくことでしょう。
個人がM&Aしやすい規模の案件を買収する、売却する場合にはM&Aマッチングサイトの利用がおすすめです。
案件規模が大きくなればM&A仲介会社の利用も検討することができますが、比較的手数料が高い点には留意が必要です。
個人によるM&Aも通常のM&Aの流れと大きく異なる点はありません。
買い手の場合、案件金額が非常に小さければ専門家によるデューデリジェンスを実施すると、投資回収が難しくなる場合があります。
専門家によるデューデリジェンスを実施しない場合でも、自分で注意深くデューデリジェンスを行う、簿外負債などのリスクを切り離せるスキームや契約書で調整するといった工夫が必要です。
金額が小さいから大丈夫と油断せず、慎重に検討を行い、最終意思決定するようにしましょう。
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