会社売却のサイトでは、売り手・買い手がインターネット上で、主にマッチングをはじめとするM&Aの手続きを低コストで行えます。各サイトの特徴や料金体系、選び方、活用するメリットを徹底解説します。(公認会計士 西田綱一 監修)
株式会社M&Aサクシード
M&Aサクシードは経営者のための完全審査・会員制の会社売却サイトです。
サービスとして、主に、審査を通過し厳選された優良企業からのオンラインオファーの受信、企業名を伏せた匿名での交渉、M&Aの進捗に応じて必要な手続きの案内などが提供されます。
売り手:登録無料
買い手:
M&Aサクシードのサービスの特徴として、まず、売り手側は登録無料で利用できる点が挙げられます。
また買い手側の手数料体系も他サイトと比較して安い点は大きなメリットです。
さらに、買い手企業による公募がある点は珍しい点です。
完全審査制で案件の質が高いことも特筆すべき点であると言えます。
株式会社エムアンドエーパーク
M&A PARKは小規模~中小企業向けのオンラインとオフラインのサービスを併せ持ったM&Aサービスです。
500万円以内の譲渡案件の交渉可能
300万円以内の譲渡案件の交渉可能
全ての譲渡案件の交渉可能
海外投資家が登録しているため、世界中に向けて自社や事業をアピールできる。海外のマッチング相手を探せる。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
M&AプラスではFAによる担当制で交渉をサポートしてもらえます。
FAとはフィナンシャル・アドバイザーのことで、売り手又は買い手の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関のことです。
FAの情報をサイト上に無料公開しており、得意分野や実績等を参考に、希望するFAに対して、サイト上から担当オファーすることができます。
M&Aプラス会員(売手会員/買手会員/FA会員)によって登録された全ての案件の中から取引先を検討することができます。
入会登録料:20万円
2アカウントまで無料
3カウント以降は1アカウントあたり月額1万円
FA契約発生料金
売り手FA:無料
買い手FA:10万円/回
仲介:10万円/回
最終契約締結時発生料金
売り手FA:0円~300万円
買い手FA:50万円~300万円
仲介:50万円~600万円
入会登録料:20万円
1アカウントあたり月額1万円
最終契約締結時発生料金
売り手FA:無料
買い手FA:0~150万円
仲介:0~150万円
1アカウントあたり月額5万円[2]
リクルート
事業承継総合センターでは、連携M&A仲介会社の買い手企業リストをもとに、売り手に適したM&A仲介会社、買い手を比較検討することができます。
売買金額に応じた成功報酬(最低金額500万円)
買金額と報酬料率の関係は以下の通りです。
5億円以下の部分:5%
5億円超~10億円以下の部分:4%
10億円超~50億円以下の部分:3%
50億円超~100億円以下の部分:2%
100億円超の部分:1%[3]
株式会社アイデアルパートナーズ
スピードM&Aは、1円~50億円[6]まであらゆる規模の案件を取り扱っているサービスです。
成功報酬:下記A+B+C(最低20万円)
A:売買金額のうち3,000万円以下の部分の5%
B:3,000万円超~1億円以下の部分の3%
C:1億円超の部分の1.5%[7]
※仲介会社・FAが登録した案件の一部で手数料が無料
案件数:約1,500
登録数:約9,000[6]
株式会社バトンズ
平均11ヵ月かかっていたM&Aですが、バトンズでは平均3ヵ月での成約を実現。[7]
専門スタッフがサポートしてくれます。
(最低報酬 税込27.5万円)[7]
国内最大級の規模を誇るサービス。1,800社超[7]の専門家によるサポートを提供。
株式会社ビジネスマーケット
ビズマでは、オンラインプラットフォームとしてのサイト上での支援を行っています。
またオンラインでの利用が難しい、もしくは、抵抗感がある方のためにオフラインも組み合わせた様々な支援策を展開しています。
専門性の紹介ページでの掲載や進捗案件に関するファイル管理といった機能を一部有料にて提供
無料プラン:着手金、仲介手数料は無料
有料プラン:
月額費用3,000円
企業概要書作成ツール(簡易版)の利用など
1回3,000円(有料会員は、2回/月まで無料)
1件あたり30,000円
案件登録企業にアドバイザーとして紹介(企業との間でアドバイザリー契約が締結された時点で手数料が発生)[8]
[1]利用料金 (ma-park.com)
[2]料金プラン|M&Aプラス
[3]M&A・事業承継総合センターの料金体系 (rbsp.jp)
[4]M&A・事業承継総合センター (rbsp.jp)
[5]M&A・事業承継総合センター登録の事業譲渡案件一覧(rbsp.jp)
[6]スピードM&A
[7]BATONZ
[8]よくある質問(bizma.jp)
利用するサービスを決定する上で、料金体系は非常に大きな要素です。
中小企業や個人事業主のM&Aにおいては、M&Aそのものに多額のコスト(サイト利用料や士業等専門家等の手数料や報酬)を掛けられない傾向があることも想定されます。
そういった面でも料金体系は非常に大事であると言えるでしょう。
例えば、情報の開示範囲について、法人・個人問わず閲覧・掲載が可能な会社売却サイトであれば、マッチングの可能性を広げることができるというメリットがあります。
一方で、法人のみに限った会社売却サイトであれば、法人の情報が登記情報等により比較的取得しやすいことから会社売却サイトの安全性を一層高めることができるというメリットがあります。
マッチングの仕組みも会社売却サイトによって違いがあります。
例えば、売り手・買い手双方から交渉を始められる会社売却サイトもあれば、売り手からしか交渉を始められない会社売却サイトもあります。
また、当事者が直接登録・交渉できる会社売却サイトもあれば、それができない会社売却サイトもあります。
したがって、各サイトのサービスの内容をしっかりと理解した上で活用することが重要です。
会社売却サイトのマッチング実績や評判も選ぶ際のポイントとなります。
ただし、実績は秘密保持契約の観点から考えると大々的に提示できないのが通常である点には留意しておくべきです。
一般的には、案件登録数、ユーザー数は多い方が良いと言えます。
数が多いとその分候補企業が増えるため、条件に合った相手を見つけやすくなるメリットがあるからです。
ただし、利用にあたってはそれだけでなく、入会や案件登録に対する審査の有無や成約実績についてもチェックした方が良いでしょう。
買い手の数が多くとも、登録だけ多くては意味がないからです。
また、財政状態などに問題のある企業が登録していると、交渉が始まってからトラブルに発生する恐れもあるので注意が必要です。
案件数や会員数だけでなく、信頼性が高いサイトを選んでトラブルを回避しましょう。
サイトによって対応している業種・取引規模・地域に傾向があるため、それを押さえて選定するようにしましょう。
そのサイトが得意としている業種・取引規模・地域を見極め、よりよいマッチング相手が見つかるよう検討しましょう。
仮に大手の会社売却サイトだとしても、実際に案件を担当するのは数名の担当者です。
そのため、 サイトの知名度だけでなく、担当者のこれまでの経験・能力・人間性まで含めてサイトを選択できると、より良いでしょう。
実際に案件が始まるとサイトの主担当者と企業側の主担当者のやり取りが非常に多くなることが想定されます。
それだけに信頼できる担当者かどうかでM&A成約までのスムーズさは大きく変わるといっても過言ではありません。
会社売却サイトによって、マッチングのために支援機関に相当額の手数料を支払う資力のない小規模な事業者であっても、手軽に会社売却の相手企業を探すことができ、M&Aの可能性が大きく広がったとされています。
会社売却サイトの中には売り手と買い手である当事者が自ら相手先を探すことができるものも存在します。
以前はM&A専門業者しか接触できなかったM&Aの案件情報に直接接触することができるようになるため、希望条件に適う相手企業を直接探せる上に、スピーディな交渉が可能となったと言えます。
比較的安価に利用できる会社売却サイトであれば、小規模な会社売却でも利用しやすいと言えます。
例えば近い将来に廃業することを検討している小規模な事業者であっても、廃業以外の選択肢が現実的にあり得るとの認識の下、会社売却サイトの活用を積極的に検討することも可能です。
売り手と買い手を仲介するいわゆる仲介サービスにおいては、利益相反のリスクが小さくありません。
例えば、売り手が買い手に会社の事業を譲り渡す場合、売り手にとっては譲渡対価が高い方が望ましい一方、買い手にとっては譲渡対価が安い方が望ましいと言えます。
そのため仲介サービスには、構造的に売り手・買い手の両者間において利益相反の状況が存在するといわれます。
このような仲介サービスと比べて、利益相反の問題が生じにくいのが、当事者間で直接交渉できるサイトやFA制を採用しているサイトが少なくない会社売却サイトであると言えます。
会社売却サイトにおいてこれまでに数多くのM&Aが成立しているため、会社売却サイトは、近年のM&A 市場の成長に相当程度の貢献を果たしてきたと言えます。
ただし、士業等専門家については法令において資格要件・善管注意義務・刑罰等が明確にされており、例えば、不動産取引においては、宅地建物取引業法の規制が存在します。
一方で、会社売却サイトについては、許可制・免許制等は採用されていません。
さらに業界全体における一般的な法規制も存在していません。
また、M&Aを支援する際には、マッチング能力や交渉に係る調整ノウハウ、更に、財務・法務等の分野の専門知識が不可欠となるケースが多くありますが、支援経験や知見の乏しい会社売却サイトのスタッフの場合には、適切に業務を進められないおそれがあるとも考えられます。
このように個々の会社売却サイトによって、サービスの質や内容が大幅に異なることには大きな注意が必要です。
一部の会社売却サイトは、FAや士業等専門家の紹介を行っていますが、会社売却サイトはあくまで売り手・買い手のマッチングまでに留まることが一般的です。
マッチング後の基本合意・最終契約締結や、これに関する条件交渉等の具体的な手続は、原則として、売り手・買い手である当事者が行うことになります。
そういった意味で、会社売却サイトにおいては専門家からの協力を得にくいというデメリットがあるという見方もあります。
ここまで会社売却のためのサイトについて詳しく説明してきました。
具体的なサイトとその特徴を挙げ、会社売却サイトを利用するメリット・デメリットも合わせて説明したため、よく理解できたという方もいらっしゃることでしょう。
会社売却サイトの選択についてはサービス内容や料金体系などをしっかりと理解した上で行ってください。
(執筆者:公認会計士 西田綱一 慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、一般企業で経理関連業務を行い、公認会計士登録を行う。その後、都内大手監査法人に入所し会計監査などに従事。これまでの経験を活かし、現在は独立している。)