M&Aとは、買い手企業が売り手企業の全てや事業の一部を買い取る、企業買収を指す言葉です。今回はM&A失敗事例を紹介します。失敗する原因や、事例から学ぶ失敗しないためのポイントを紹介します。
M&Aでは、買収対象企業の財務状況やコンプライアンスに関する情報を精査するDD(デュー・デリジェンス)の実務を専門家に依頼するのが一般的です。しかしながら、DDが不十分であったために、買収後に売り手企業の粉飾や不正会計が発覚し、買い手企業の経営がかえって悪化してしまうケースも存在します。
最悪の場合、買い手企業が経営破綻に追い込まれる場合もあります。事前の調査を怠るとM&Aに失敗するだけでなく、自社そのものを追い込みかねないということを認識しておきましょう。
M&Aの買収金額を算出する際には、買収対象企業の「のれん代」も買収金額に加算されます。のれん代は、企業のブランド力・事業価値・人脈などの、収益に関わる要素を総合的に判断して考慮されたものです。
のれん代は、適切な金額を評価することが非常に難しい点がネックとなります。M&A実施後は、買い手企業はのれん代を長期にわたり減価償却しますが、当初予定した経営統合のシナジーを得られなかったなどの理由により、買収対象企業の評価額が下がると、減損処理により損失を計上しなければなりません。
M&Aにおいては、あまりにも高額なのれん代に対し買収を強行してしまったために、その後多額の損失を計上したというケースも多々存在します。売り手企業のれん代に関しては、より入念に精査するようにしましょう。
M&Aでは、投資対効果が見合わず、買収に使用した投資金額を回収できない失敗も多く存在します。売り手企業の企業価値は、買収したい企業が複数存在する場合、どうしても値段が上昇してしまいます。
そのほかにも、買収対象企業に対する調査が不十分出会った場合、実際の評価額家よりも高い金額でM&Aを実施してしまう「高値掴み」が発生するケースが多々あることにも、留意しておきましょう。
M&Aでは財務上の問題だけでなく、売り手企業のコンプライアンス問題・ハラスメント問題・環境汚染・訴訟リスクなどを見誤り、買収後に買い手企業のイメージが悪化してしまうケースも存在します。特に、文化や宗教などが大きく異なる海外M&Aを実施する際に発生しやすい問題です。
国内のビール市場で、上位のシェアを誇るキリンホールディングスは、過去に海外M&Aに失敗しています。2011年11月、キリンホールディングスはブラジル2位のシェアを誇るビール会社、スキンカリオールに対し3000億円の資金で買収を実施しました。[1]
当時のブラジルは年10%の成長が見込める市場でしたが、景気悪化の影響を受け、ベルギーのビール会社との価格競争に敗北。2015年12月期の決算で、ブラジルキリンは1100億円の減損を計上し、上場以来初となる473億円の赤字を出しました。
最終的に、ブラジルキリンは2017年6月に、オランダのハイネケングループに770億円で売却されています。この買収の失敗の要因は、市場調査の不足と言われています。
ゲームアプリの運営などで知られるDeNaも、M&A失敗の経験がある企業のひとつです。DeNaは2014年、キュレーションサイトを運営するiemoとペロリを買収し、10サイトの運営を開始しました。[2]
しかし、ヘルスケア・医療関連の情報を取り扱うWELQをはじめとする運営サイトで、根拠が不明確かつ、外部コンテンツの無断使用・コピー・リライトをしただけと疑われる記事が多数発見され、炎上に至っています。
さらには、クラウドソーシングを通じて、低単価で外部ライターへのリライトを助長するような文言で発注をしていた事実が暴かれかこともあり、最優的に守安功社長が謝罪会見を開くに至り、運営10サイトは閉鎖されました。
住設機器メーカーのLIXILは、2014年にグローエ・ドーン・ウォーターテック(現LIXILアフリカ)を約4,000億円で買収、同時にグローエ子会社の中国企業ジョウユウも傘下に収めました。[3]
しかし、2015年4月にジョウユウの不正会計が発覚。ジョウユウが債務超過で破綻処理を迫られた結果、LIXILは関係会社投資の減損損失・債務保証関連損失などで608億円の損害を出しました。
グローエはLIXILの買収が行われるより以前の2009年にもLIXILからの一部出資を受けており、この時点でジョウユウの主要な財務情報にアクセスできないにも関わらず、その旨をLIXILに報告していませんでした。
東芝は2006年、アメリカの原子力会社ウエスチングハウスを6,600億円で買収しました。[4]
しかし、2011年の東日本大震災時の福島第一原発事故により、世界的に原発の安全性が問われる事態に発展。さらにウエスチングハウスとのPMIにも失敗し、買収先企業の不正会計や原発事業の巨額損失が発覚。
最終的に、たった1年の内に、東芝はウエスチングハウス関連で最大7,000億円に及ぶ巨額の損失を出しました。
総合商社大手の丸紅は、さらなる事業拡大を図り2012年に同社の買収額としては過去最大となる約2,800億円の買収金額で、アメリカのメジャーな穀物会社ガビロンを買収しました。[5]
当時、丸紅はガビロンを含めたアメリカの複数拠点での穀物集荷事業と、中国を中心としたアジアでの販路拡大を期待して買収を実施しています。
しかし、買収後に丸紅の想定通りのスケジュールでシナジーを発揮できなかったこともあり、1,000億円と巨額な金額だったガビロンののれん代で、500億円の減損損失を出す結果となりました。
大手製薬会社の第一三共は、2008年に4,900億円でインドの医薬品メーカーであるランバクシーを買収しました。[6]
しかし、第一三共によるランバクシーのTOB(株式公開買い付け)期間中から問題が発覚。アメリカのFDAがランバクシーの2工場で「抗生物質の取り扱い」「製造器具の洗浄状況」「生産管理」「品質管理」などに関する問題を指摘。30種以上の医薬品のアメリカへの輸入を禁止しました。
売上高の30%を占める米国市場を失った結果、ランバクシーの株価は大暴落。第一三共にも3595億円の評価損が発生し、2009年3月期連結決算で2154億円の最終赤字を計上しています。
大手家電メーカーのパナソニックは、2009年に6,600億円の資金を投じて、三洋電機を買収。内5,180億円は、巨額ののれん代に充てられました。[7]
しかし、その後わずか2年で三洋電機の企業価値は半分近く下落し、のれん代の内2,500億円を偏損処置するに至っています。
パナソニック財務担当取締役発表によると、三洋電機の企業価値下落の原因は「三洋電気主力であった民生用リチウムイオン電池の事業価値が、円高などの環境悪化のせいで、大きく毀損してしまった」とこのことです。
総合エレクトロメーカー富士通は、欧州エリアの影響力拡大のため、1990年に以前から業務提携関係にあったイギリスのIT企業であるLCL株式の80%を1,890億円で取得。1998年には完全子会社化しています。[8]
その後も、富士通は欧州の拠点とするべくドイツ企業などを買収し、累計投資額が3,500億円を超えました。しかし、業績は徐々に悪化し、2007年3月期個別決算で2,900億円の評価損を計上しました。
三菱地所は、1989年に約2,200億円の資金を投じて、アメリカのマンハッタンにあるロックフェラーセンターを買収しました。[9]
しかし、バブル崩壊による不動産市場の冷え込みによる不動産価値の暴落で、三菱地所は莫大な負債を抱えることになります。最終的に、1,500億円の特別損失を計上した三菱地所は、物件のほとんどをアメリカに売り戻しています。
ITバブル到来によって海外M&Aの先陣を切ったNTTドコモは、2000年にオランダのKPNモバイルに4,000億円、イギリスのハチソン3GUKに1,900億円を投資。さらに、2001年にはアメリカの携帯電話会社AT&Tワイヤレスに1兆2,000億円を投資しています。[10]
しかし、NTTドコモの海外事業はいずれも失敗し、2005年にはすべて撤退しました。損失額は1兆5,000億円に昇っています。
光学ガラス最大手のHOYAは、2007年にカメラ・医療機器メーカーのペンタックスに対しTOB(株式公開買い付け)を実施し、ペンタックス発行済株式の90.5%を取得しました。[11]
当初、両者は合併に合意していましたが、突如ペンタックス側が態度を一変し、HOYAとの合併を撤回すると宣言し、代表取締役社長の交代を発表しました。
その後、ペンタックス側は筆頭株主のスパークス・グループなどの理解を得られなかったこともあり、提案を撤回。HOYAはペンタックスを吸収合併しますが、思ったように業績は上がらず、2011年にはペンタックスをリコーに売却しています。[12]
[1]BusinessJournal
[2]日経ビジネス
[3]東洋経済
[4]BLOGOS
[5]東洋経済
[6]BusinessJournal
[7]東洋経済
[8]M&AOnline
[9]企業の巨大買収が失敗に終わる3つの理由(MONEY PLUS)
[10]BusinessJouranal
[11]大和総研
[12]デジカメWatch
売り手企業であるA社は、代表の高齢化・後継者不足を理由にM&Aを検討していました。A社は、日々の業務に追われていたために後継者問題について考える余裕がなく、金融機関からの借入などにより継続していた事業は徐々に業績が悪化していました。
顧客が日に日に離れていき、資金繰りが悪化する中でA社代表が弁護士に相談し、買い手企業を探しました。相談を受けた弁護士は、A社の資金繰りがどんどん悪化する中で何社かA社に関心を示す企業を見つけました。
しかし、その時すでにA社の活気が失われていたことによりM&Aは不成立に終わっています。日々の業務に追われ、M&A着手が遅れてしまったために失敗した事例です。
後継者不足からM&Aを検討していたB社は、金融機関の紹介により、M&A専門業者に中小M&Aの相談を行いました。仲介業者が迅速に動いたことから、M&A着手からわずか4ヶ月で買い手企業とのマッチングが実現、基本合意を締結し、最終契約に向けて交渉を進める段階にまで至りました。
しかし、B社代表が情報漏洩について再三に渡って警告を受けていたにも関わらず、最終契約前に従業員は一部取引先を含め様々な関係者に、買い手企業の名前を出した上でM&Aを行う旨を公表。
情報流出に激怒した買い手企業は、信頼関係の破綻を理由に交渉を打ち切りました。これは、売り手企業側が、情報の取り扱いの重要性を理解していなかったため、起きた失敗事例です。
C社は新規事業に挑戦するも失敗し、人件費の高騰などで業績が伸び悩んでいたこともあって、資金繰りが悪化していました。そこで、C社副社長が知り合いの弁護士に相談したところ、紹介されたM&A仲介業者に複数のスポンサー候補を提示されました。
スポンサー候補内のひとつである企業が、C社に対し関心を示し、C社副社長と面談を行いました。しかし、副社長の兄でもあるC社社長が、自分に対し何の相談もせず弟がスポンサー探して行なったことに激怒し、副社長を解任するとともに書いて企業との交渉を打ち切りました。
その後、C社内では刑事の内紛に疑問を感じた社員から退職者が急増、売上も伸びず事業規模を縮小していき、最終的には廃業に至っています。
D社は、地域密着型で運送業を営んできましたが、代表が高齢化し、後継者も存在しなかったことからM&Aを決意、専門業者にマッチングを依頼しました。D社は地域内で有名な企業であったこともあり、すぐに同地域内の買い手企業とマッチングが成立しました。M&A交渉はD社保有株式の100%譲渡を条件に、基本合意締結にまで至っています。
しかし、だんだんと会社を手放すのが惜しくなってきたD社代表が、譲渡条件が固まった後になって急に条件の変更を要求。D社の不誠実な対応に嫌気がさした買い手企業は、信頼関係が損なわれたことを理由に、交渉を中止しました。
その後、D社は数年後に代表が持病で亡くなり、それまでの社内抗争で弱体化していたことも相まって廃業しました。[13]
[13]中小M&Aハンドブック
2010年代には十数兆円規模にまで成長していると言われるM&A市場は、その成功率は決して高くないと言われています。実際に、海外の事例の実に目を向けてみると、日本企業の海外買収の失敗率は8~9割とのことです。[14]
しかし、日本国内のみに焦点を当てた場合、イメージほど失敗率は高くなく、約5割のM&A事例が成約に至っています。[15]
失敗する企業も存在しますが、一部の企業はM&Aを活用し自社を成長させていることも事実です。特に経済がグローバル化する中で、成長を遂げるためにはM&Aはリスキーではありますが有効な手段です。
M&A大失敗する原因は複数ありますが、次項より個別に解説しますので、しっかりと把握しておきましょう。
[14]日本経済新聞
[15]MARROnline
M&Aの目的は、企業の目的は企業買収により自社の事業や販路を拡大することにあります。しかし、M&Aの製薬そのものがゴールになってしまい、経営統合後のビジョンが不明瞭であると、M&Aそのものは失敗に終わってしまうケースが多くあります。
M&Aはあくまで経営戦略の手段にすぎません。買収後に業績が悪化しないよう、慎重にM&Aを行う目的や経営統合後のプランを練るようにしましょう。
M&Aでは、買収対象企業の財務状況やコンプライアンスについて調査するDD(デュー・デリジェンス)を実施します。冒頭でもご説明したとおり、DDが不十分であると、買収成立後に売り手企業の粉飾などが見つかり、業績悪化につながります。
貸借対照表に記載されていない簿外債務や、買収対象企業が既に書かれている取引先や顧客とのトラブルなどについては、見落とされがちな要素です。
M&Aにおいて、売り手企業の評価額を正確に算出することは、重要な要素のうちのひとつです。経営統合後のシナジーに期待しすぎるあまり、適切な評価額を大幅に上回る金額で買収を行なってしまうと、M&A成立後の業績悪化につながります。
本記事で紹介した事例ですと、パナソニックの三洋電機に対するM&Aが、巨額の売り手企業ののれん代に対し投資を行ってしまったために、多額の損失を計上した失敗事例となります。
M&Aでは、M&A業者やFA(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に、買収の仲介を依頼します。しかし、専門家だからといって、仲介人に全てを任せきりになっていると、思わぬタイミングで失敗してしまうケースがあります。
新規事業へ参入するために異業種の企業を買収するM&Aでは、自社の人間と仲介人のどちらにも、売り手企業が行なっている事業に対する専門的な知識がないために、企業価値を正しく評価できない可能性も考えられます。そのため、外部のアドバイザーに任せきりになるのではなく、買い手企業内でもM&Aの交渉を進めるためのチームを作ることを検討しましょう。
M&A実施後は、買い手企業と売り手企業の企業文化が統合することになります。この際に、労働環境や待遇の変化により、優秀な人材が退職してしまう可能性がM&Aにあるのです。
M&Aで買い手企業が買収を行うのは、売り手企業が所有する事業や設備だけでなく、培ったノウハウや人材も含まれます。そのため、買収成立後に従業員が離職してしまうと、思ったようにM&Aによるシナジーを発揮できなくなると認識しておく必要があります。
M&Aでは、買収成立後にPMI(経営統合)を実施します。買い手企業と売り手企業の統合作業では、経営・制度・業務など様々な側面から融合を図る必要があります。
そのため、事前の準備が不足していると現場で混乱が生じ、M&Aによるシナジーが発揮されるまでに、当初予定していた以上の時間がかかる可能性が存在します。PMIの失敗は、場合によっては買い手企業の業績悪化につながってしまいかねない要素です。
M&Aでは基本的に買い手企業の交渉力が強く、条件などに関する取り決めを有利に進められます。しかし、売り手企業側が、あまりにも買い手企業に対して譲歩しすぎると、売り手企業内で不満が発生し、内紛に至る可能性があります。
M&Aの失敗事例の中には、経営層での意見の不一致が発生し、M&A交渉が思うように進まず、買い手企業側が交渉離脱するに至った事例もありました。
M&Aの買収スキームでは、売り手企業側が所有する株式の一部あるいはすべてを売り渡す「株式譲渡」が選択されるケースもあります。売り手企業側の株券や所在が不明確であると、調査に想像以上の時間がかかり、一向にM&A交渉が進まなくなってしまいかねません。
特に、中小企業M&Aでは株主名簿が存在しないこと、株主名簿に株主が正確に反映されていないことなど、株主追跡に時間を要するケースが多々あります。
買い手企業にとって、議事録は売り手企業の動向をチェックするために重要な書類です。議事録を用意していない場合「役員登記などを行っていない」などと判断され、買い手企業からの信用を失い、最終的には交渉決裂に至る可能性もあります。
「株式総会議事録」「取締役会議事録」の2点は特に重要な書類となりますので、長期間未整備なっている場合は、早い段階で司法書士などの専門家に依頼し、書類を整備するようにしましょう。
M&Aに関する情報は、企業買収が成立するまで慎重に扱わなければなりません。万が一、買収プロセスに関わっていない社内外の人間に情報を漏洩してしまうと、書いて企業側からの信頼を失墜し、交渉が決裂してしまいます。最悪の場合法的措置に出られる可能性もあるでしょう。
また、情報の取り扱いと同時に「必要書類の用意」「交渉をスムーズに行う努力をする」など、書いて企業に対し誠実な対応を取ることも大切です。M&A失敗事例では、基本合意後に事業譲渡の条件の変更を要求してしまったため、買い手企業の怒りを買い、不成立に終わったケースもあります。
M&Aでは、企業買収によりどのようにして事業を成長させるのかと言う「成長戦略」事前に立てる必要があります。一概に「M&Aにより自社を成長させる」と言っても、さまざまな方法が存在しますので、以下の典型的な成長戦略パターンごとの、M&A戦略の類型について把握しておきましょう。
M&Aでは、ある程度買収対象の企業候補を絞ると、それぞれを評価し、実際に買収を提案するターゲット企業を選定します。ターゲット企業の選定にあたっては「売却ニーズ」「事業上のシナジー」「財務の健全性」「来週の実現可能性」の4点から評価を行うのは一般的です。
売却ニーズは、オーナー企業の場合、後継者が存在するかどうかが重要な要素となります。後継者の有無については役員構成と株主構成を見れば予想することができ、役員の中にオーナーと同性の人物がいて、株主として相当程度の株式を保有している場合、後継者である可能性が非常に高いでしょう。その役員の年齢によっては、後継者としての任期も短いケースがありますので、オーナーとの関係性もふまえ調査する必要があります。
買収対象企業が大手企業の子会社である場合は「親会社と子会社との関係性」「子会社の業績」もう売却ニーズの判定基準となります。親会社、子会社ともに業績が悪い場合は売却ニュースが高いと判断可能できます。
子会社の事業内容が親会社の本業と大きく関わりがない場合、交渉の余地があると判断できそうですが、よほど親会社の業績が悪化していないと、子会社を手放さないケースが多々あるのが現実です。
買収対象企業の事業分野が、書いて企業が今後強化したいと考えている分野であり、その市場において強い存在感を示す場合、事業上シナジーは高く評価できるでしょう。
事業上シナジーについて考える場合、買い手企業側のノウハウや経営資源を、買収対象企業の授業に購入した際のシナジーについても考慮する必要があります。
逆に「買収後に新たな設備投資が必要になる」「買収対象企業の既存の顧客を失ってしまう」謎の事態が想定されると、事業上シナジーについてマイナス評価を加えなければなりません。
財務の健全性を評価する場合「買収後、書いて企業の支援が無くても自立して経営できる財務状態であるかどうか」に着目しましょう。
買収対象企業の財務データが手に入った場合、収益性・安全性を分析することになります。収益性の分析においては「売上総利益率と営業利益率の推移」「正味運転資本回転率の推移」など、安全性の分析では「流動比率」「自己資本利益率の水準」に着目しましょう。
対象企業の財務データの入手方法としては、上場企業の場合は有価証券報告書の入手、非上場企業の場合は信用調査会社からの購入・官報からの決算公告の入手などがあります。
買収の実現可能性の評価方法については、株主構成は想定買収価格から判断しましょう。M&Aにおいては、買収対象企業株主の過半数の賛同が得られない限り、買収が実現できません。そのため、少なくとも買収対象企業の株主の顔ぶれから、買収が実現できそうか否か判断する必要があります。
買収価格に関しては、買収対象会社が上場企業であれば「市場株価平均法」「類似会社比較法」「DCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)法」などを用いれば、ある程度の相場を算出できます。
非上場企業の買収価格を算出したい場合、詳細の財務データを入手できないことが一般的であるため、正確な価値算定はできません。しかし、信用情報から得られるデータを元に、大まかな価格を予測可能です。
企業価値の算定方法は「マーケット・アプローチ」「インカム・アプローチ」「コスト・アプローチ」の3種類があります。M&Aの実務においては、どれか一つの評価方法を選択するというわけではなく、複数の手法を組み合わせる必要があります。
それぞれのアプローチの特徴を踏まえ、企業価値の評価を行うようにしましょう。
マーケット・アプローチは、株式市場での市場価格をベースに買収対象企業を評価する方法です。対象企業が上場企業の場合、市場株価をベースに評価します。非上場企業であれば、類似企業の市場株価をベースにして評価を行います。
株価をベースにした評価方法は、客観的かつ公平であるため、買収対象企業が上場企業である、非上場企業であっても類似上場企業が存在する場合、最も重要視されるアプローチ方法です。
ただし、市場株価は一時的に価格が変動することが多々あるため、一定期間の平均値を算出するなど、短期の価格変動で評価が歪まないよう工夫しましょう。
インカム・アプローチは、買収対象企業の収益力をベースに企業価値を評価する方法です。代表的な方法評価方法として、将来期待される一連のキャッシュフローを、各種リスクを反映した割引率で現在価値に割り引く株価を算定するDCF法があります。
DCF法は評価対象会社の詳細なキャッシュフローに基づいて行われるため、複数のシミュレーションを実施することが可能です。そのため、柔軟な評価ができる手法ではありますが、主観が混じった恣意的な評価を下してしまうというリスクもあります。
M&Aの交渉において、説得力を持たせるためには、合理的なロジックを用いてインカム・アプローチを実施しましょう。
コスト・アプローチは、評価対象会社の純資産をベースに、価値を算定する手法です。具体的な方法としては、貸借対照表上の資産や負債の時価を評価して、企業価値を割り出します。
貸借対照表には、過去から現在までの収益の蓄積が反映されたデータが記載されていますが、将来の収益に関しては考慮されていません。そのため、コスト・アプローチを単独でバリュエーションに使用するのは、合理的ではないということは把握しておきましょう。
DDは開始にあたりキックオフミーティングを行います。キックオフミーティングでは、チームメンバーの紹介、FAによる今後のスケジュール、必要書類の交換などが行われます。
情報漏洩を防ぐためにも、DD参加者が10名以上となる場合には、メンバーリストを作成しましょう。
DD実施にあたり、買収対象企業に対し必要な書類やデータを準備してもらう必要があります。買い手企業としては、事前に必要資料リストを入手し、対象企業に提供するようにしましょう。
この際のポイントは、買収対象企業の必要なデータや資料が十分に整備されていないことを想定し、準備に時間がかかる場合、どの資料から用意すればいいのか優先順位をつけておくことです。
買収対象企業のデータルームを使用した調査を行う場合、買収対象企業のFAからデータルームの使用可能な時間帯など、データルーム使用上のルールが提示されますので、それに従って作業を行いましょう。
調査作業自体はDD実施機関が行うため、必ずしも書いて企業側の人間が立ち会う必要はありませんが、調査開始日当日やマネジメントインタビューなど、重要なタイミングでは出席するのが望ましいと言えます。
データルームでの調査開始日には、買収対象企業の経営陣に企業概要や業界環境についての説明を実施してもらいましょう。特に、DDのチームが大人数である場合、事前に認識を共有しておいた方がその後の業務も効率的に進みます。
マネジメントインタビューとは、買収対象会社の経営陣に対する個別インタビューで、インタビューを通じて買収対象企業に関する情報を入手します。
DDの調査結果がある程度まとまると、各チームから中間報告を受けます。そこでM&Aにあたってのリスクが報告された場合、必要に応じて追加調査を行いましょう。
最終報告では、中間報告時に報告されたリスクに関する追加調査の内容も盛り込んだ報告が行われます。DDの報告会においては、買収対象企業の人間は出席させないようにしましょう。
買収対象企業が出席してしまうと、DDの報告に支障が生じる可能性があります。もし報告書の提出が求められた場合、買い手企業側に見せたい情報を提示するのが無難です。
買収成立後のPMIでは、中期的な経営課題を整理して、課題解決に向けたロードマップである「100日プラン」を作成する必要があります。M&A後の経営統合は、一般的に3ヶ月を一つの区切りとして行われることが多く、この期間を通して経営改革プランや中期経営計画が立てられます。
PMIは買収成立後一年が勝負と言われ、買い手企業が上場企業の場合、株式市場からもM&Aの成果について厳しく監視されます。さらには、買収対象企業の従業員が不満を抱かないように、早期にM&Aのメリット感じられるような施策を打つ必要もあるのです。
そのため、M&A成立後も安心することなく、できるだけ早期に経営統合のシナジーが発揮できるような、難易度が高くインパクトの強い施策を実施しましょう。
M&Aは、企業がインパクトある成長を遂げるためには効果的な手法です。しかし、その成功率は日本国内に限っても5割ほどで、失敗のリスクも存在します。
M&Aの失敗事例を見ると、事前の調査が不十分であったケースが多々見受けられます。そのため、M&Aを成功させるためには情報を十分に揃えた上で、入念な準備を行う必要があると言えます。
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