会社売却で社長は、後継者が不在でも事業承継を実現できるメリットなどを得られます。会社売却後における社長の処遇や会社売却を成功させるポイント、成功事例などを公認会計士がわかりやすく解説します。(公認会計士監修記事)
全国の社長の年齢分布の中で、70代の占める割合が年々増加[1]しており、日本の高齢化問題は大きな社会的な課題となっています。
70代社長のおよそ4割が後継者不在の状況[1]であり、親族などの後継者がいない場合、会社売却という選択肢を選ぶことがあります。
親族内承継と異なり、会社売却の際の後継者は同じ地域、同業者など多数の候補から選ぶこともできます。
経営の先行き不安は廃業を決断する理由の一つ[2]ですが、会社売却を検討する事もできます。
会社売却により経営の不安から解放され、日々のストレスを減少させることができます。
社長は会社売却により、会社が得られる利益の数年分を一括で得ることができます。
得られた売却益をどのように使うかは社長が自由に決めることができ、自身が描いた人生を歩むことができます。
会社売却の相手先として大手グループやシナジーの大きな会社等を選択することで、従業員の待遇向上や会社の成長を実現できる場合があります。
経営戦略の一つとして会社売却を選択することで、会社の利益貢献に繋がる可能性があります。
社長の目線で見た会社売却のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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会社売却により事業承継を実現できる点がメリットとして挙げられます。
M&Aマッチングサイトを利用することにより、多数の買い手候補から相性を見極め、自分の会社を引き継いでもらいたい相手先に事業承継することが可能です。
廃業する場合、解散・清算人選任の登記で39,000円[3]、清算結了の登記で2,000円[4]、合計41,000円の登記費用が必要です。
その他、官報公告の掲載費用で数万円、廃業手続を司法書士などの士業に依頼する場合には更に数十万円の費用がかかります。
その点、会社売却であれば廃業による費用支出は必要ありません。
会社売却の実現により資金と時間を得ることができます。
社長は長年やりたかった新規事業の立ち上げもできますし、働くのを止めアーリーリタイアすることもできます。
社長自身の人生を歩める点が大きなメリットの一つです。
会社を廃業させた場合、取引先や社員に多少なりとも迷惑をかけてしまいます。
会社売却であれば、会社を存続させることができるだけでなく、シナジーがある買い手に引き継いでもらえれば、更に会社が成長できる可能性があります。
[3] 法務省 解散・清算人選任登記申請書
[4] 法務省 清算結了登記申請書
会社売却後、基本的に社長は経営者としての地位を失うことになります。
元の会社の社長に戻りたいと思っても戻ることはできません。
社長としてやり残したことがある場合には、経営者としての地位を失うデメリットが大きくなってしまう点は留意が必要です。
社長として働いている場合には役員報酬で毎月安定的な収入を得ることができます。
会社売却後には、社長を退任することで、毎月の安定的な収入源を失うことになります。
引退する場合には、会社売却で得られた利益で、どれだけの期間をやり繰りできるのかシミュレーションしておくことが大事です。
業績が良いタイミングで会社売却することで、会社売却の成功率を高めることができるだけでなく、売却金額も高くできる可能性が高まります。
業績は会社の評価額に大きな影響を及ぼす事項の一つであり、業績が良ければ良いほど売却金額を高くでき、たくさんの買い手候補を見つけることができます。
業績が悪くなったタイミングで会社売却をする際は、買い手候補は直近の業績を特に注視するものであり、会社売却の成功確率が低くなってしまいます。
自社の業績がどのような位置にいるのかを見極め、良いタイミングで売却のプロセスを進めるようにしましょう。
会社を売却したいと思ってもすぐに売却できるわけではありません。
会社の財務情報など基本的な情報の整理からM&A仲介会社、FA、M&Aマッチングサイトの選定など必要な準備は数多くあります。
早い時期から会社売却の準備を進めておくことで、スムーズに会社売却プロセスを進めることができ、会社売却成功に近づけます。
会社売却のプロセスで、買い手は自社の強みや弱みは必ず質問されるポイントの一つです。
事前に社長の頭の中をクリアにしておくことで、どのような買い手が合っているかのイメージも付きやすくなります。
また、会社売却の目的を明確にしないまま買い手と交渉してしまうと、自分の中の優先順位がぶれてしまい、交渉相手と妥協点を探すことが困難になってしまいます。
高く売却すること、後継者を見つけること、会社をより成長させてくれる買い手に引き継いでもらうことなど、会社売却の目的をあらかじめ明確にしておくことが重要です。
会社売却後の社員や取引先のことも考えて売却先を選定する必要があります。
会社売却は自分だけが高値で売れれば良いというわけではなく、関わる全てのステークホルダーが幸せになれるディールとする必要があります。
社員や取引先のことを大切に考えてくれる買い手候補を探す努力が大切です。
会社売却は一人の力で成功させるには難易度が高すぎます。
会社売却の成功確率を高めるためには、信頼できるM&A仲介会社、FAなどの会社売却の専門家やM&Aマッチングサイトを活用することが重要です。
自社の規模や業種に合ったM&Aサービスを利用するようにしましょう。
GHインテグレーション:受託開発・SES事業をメインとしたシステムインテグレーション事業を展開
フーバーブレイン:サイバーセキュリティツールを主軸とした様々なIT事業を展開
高度な技術を持つエンジニアの確保、第4次産業革命に向けた新たな成長戦略の実現
実行時期:2021年3月
手法:株式譲渡(対価は70%が現金、30%は譲り受け企業の株式)
結果:創業者利益の獲得
譲渡金額: 2億6,640万円
FLP:トラックの整備・修理工場を運営
富士運輸:大型トラックによる長距離輸送事業を展開
売上・市場シェアの拡大と業務効率化やコスト削減を図り高収益化の実現
実行時期:2021年2月
手法:株式譲渡
結果:事業承継の実現
社長が会社売却を実現できれば、事業承継を実現でき、アーリーリタイアの達成や創業者利益の獲得など様々なメリットがあります。
会社売却の実現までは時間がかかるため、早いうちから準備を進め、M&A専門家やM&Aマッチングサイトをうまく活用しながら、タイミングよく効率的に売却プロセスを進めることが重要です。