最新のIT需要を取り込むために、 優秀なエンジニアを抱えるSIerをM&Aで完全子会社化
- 譲渡
GHインテグレーション株式会社 事業概要: 受託開発・SES事業(ネットワークインフラ /5G/IoT領域に精通) 本社所在地: 東京都 従業員数: 43名(2021年3月31日現在) 売上高:3億100万円(2021年3月期) 譲渡理由:事業成長のため 実質譲渡金額: 2億6,640万円(株式取得現金+交換時価)
株式譲渡・株式交換- 譲り受け
株式会社フーバーブレイン 事業概要: サイバーセキュリティ事業、生産性の向上支援事業等 本社所在地: 東京都 従業員数: 55名(2021年3月31日現在) 売上高:10億8,300万円(2021年3月期) 譲り受け理由: 優秀な人材の確保・事業拡大のため
- 東京都
- SI
- SES
- 5G
- IoT
- サイバーセキュリティ
日本経済のカギを握るIT。しかしその内実を見ると、IT業界で急成長している分野においては、エンジニア不足が深刻な問題となっています。インフラ関連のネットワークエンジニアをはじめ、5GやIoT、セキュリティ関連のような高度な技術を持つエンジニアの確保は、関係するすべての事業者にとって喫緊の課題なのです。その状況を改善に導く手法のひとつが「M&A経営」です。2021年3月、株式会社フーバーブレインはM&Aによって、エンジニアを派遣するシステムインテグレーターを完全子会社化。優秀な人材を確保するだけでなく、第4次産業革命に向けた新たな成長戦略を描きます。株式会社フーバーブレイン 代表取締役社長 輿水 英行 氏とGHインテグレーション株式会社 代表取締役社長 錦織 劉一 氏に話を聞きます。(2021年9月公開)
第4次産業革命に向け、優秀なエンジニアを確保
――ともにIT領域で業績を伸ばしている会社です。
フーバーブレイン 輿水 フーバーブレインは主に3つのカテゴリーでビジネスを展開しています。1つ目は、創業以来、主軸を担っているのが企業向けサイバーセキュリティのツールです。エンドポイント(ネットワークにつながっている端末)と呼ばれる最後の場所(PCやサーバなど)でコンピュータを守る製品と、ネットワークの入り口と出口を守るネットワークセキュリティツールです。2つ目はSIer(システム会社)に常駐してのITサービスやネットワークを守る構築業務。3つ目はこのところ注力している働き方改革支援の領域です。PC操作のログを収集し従業員の業務を可視化することにより、労働生産性をあげるツールを販売しています。
GHインテグレーション(以下、GHI) 錦織 GHIはSI(システムインテグレーション)事業者として、受託開発をはじめ、国内大手SIerへのSES(クライアントにエンジニアを派遣するサービス)事業をメインにしています。サムスン電子ジャパン様、伊藤忠テクノソリューションズ様、NEC様とは直接の取引をさせていただき、高い評価をいただいています。会社の設立は2018年ですが、私自身のITエンジニアとしてのキャリアは、出身である韓国時代を含めて約25年になります。
――フーバーブレイン様は2015年に東証マザーズに上場、今年創業20周年を迎えました。その節目を第2の創業と位置付けていますね。
輿水 「第4次産業革命を当社の成長エンジンに」というビジョンを掲げています。第4次産業革命の中核となる5G、その先の「Beyond 5G」と呼ばれる6GやIoTも含めて今後の大きな波をとらえるIT領域を常に探しています。しかしどんな領域であっても、まずは優秀なエンジニアを確保することが先決であり重要です。そういう目的意識のなかで今回のM&Aを行いました。
――M&Aによる子会社化は今回が初めてですね。
輿水 これまでに資本提携も含めるといくつかのM&Aを実施してきました。私は外部から招聘され2018年に社長に就いています。私のバックグラウンドはファイナンスや投資です。その経歴を生かして「上場企業としてどう勝負するか?」が私に課せられたミッションだと理解しています。その戦略上に「M&A経営」は当然含まれています。
エンジニアの生活を安定させるために上場会社と手を携える
――互いのシナジー効果をどこに見出しましたか?
輿水 第一に、GHI様がネットワーク・インフラ構築、5G、IoT、AI領域に精通するエンジニア人材を多数抱えていること。次に来る波に乗るためには必須条件です。そして、共通のクライアントを持っていること。GHI様が直接派遣をしているいくつかのクライアント様は、私たちも親しくさせていただいています。もしGHI社がボトルネックと感じている部分があるとすれば、私たちのパイプを利用することで課題は解決するでしょうし、さらには売上げの増加につながるでしょう。今回の出会いは千載一遇だと感じました。
錦織 「エンジニアの生活を安定させるためにどうすればいいのか?」――そう悩むSI事業経営者は多いと思います。これまで営業から採用まで、私がほぼひとりでやってきました。しかし社員も増えてくると限界が見えてきます。現在55人以上のエンジニアがいるのですが、職場環境、給料、福利厚生などのエンジニアの労働条件を改善するためには、現状の人脈や関係性だけではなく、上場会社と手を組むことが最善の道だと判断しました。
フーバーブレイン様にはもう一つの魅力があります。それはグローバルの意識が高いということです。私たちはこれまでに、ITスクールや「日本語×IT」専攻大学学部とのネットワークなど独自のルートを通して、韓国人の優秀なエンジニアを雇用してきました。彼らの力が会社を大きくしてくれました。エンジニアのグローバル化は今後の成長に欠かせない重要な要素だと思います。
――交渉のプロセスで重視した点を教えてください。
輿水 言葉を選ばずに言えば、「安く買いたい/高く売りたい」だけのM&Aは経営として面白くありません。「M&A後の世界をどう描くか?」「二つの会社の想いをどう形にするか?」――グループとして互いに成長する方法を模索していくことが、何よりも重要だと思います。そのことを私なりに錦織様に一生懸命伝えました。
錦織 韓国から日本に来て20年経ちました。ビジネスをしていていつも思うのは、一緒に働ける会社は「人」を大事にしてくれる会社だということです。輿水さんを通じて、フーバーブレイン様はそういう会社だと感じました。私も「人」を大切にしてきました。そこからビジネスが生まれるのだと信じています。
――デューデリジェンス(成約までに譲受け企業が譲渡企業に対して行う調査)で、見えて来ることはありましたか?
輿水 一番気にしたのは誠実性ですね。それは従業員への処遇や対応などからわかりますし、さらには財務資料チェックのやりとりからも伝わって来ます。短期間のやりとりのため、すべての資料を詳細まで調べるのは無理です。最初は「ひょっとしてすべてが嘘だったら・・・」といった疑念が頭の隅をよぎらないわけでもありません。GHI様のやりとりの中でも、資料に辻褄が合わないこともありました。しかし確認してみると、それは作り方の違いや単なるミスだったことがわかりました。大事なのは疑問に対してきちんと答えてくれるかどうかです。会話を通じて、お話しいただいた内容と資料の間に齟齬がないことが確かめられました。錦織さんが誠実で人望の高い方だと最終的に思えたのは、部長さんたちと面談させていただいた時でした。言葉の端々から錦織さんをとても信頼していることが伝わってきました。この会社となら大丈夫だと確信した瞬間です。
M&Aサクシードは見るだけでブレインストーミングになる
――M&Aサクシードを上手く活用されていたそうですね。
輿水 M&Aサクシードは無料でも会員登録ができます。タダならやってみない手はありません(笑)。使い始めて、M&Aサクシードには会社の情報が非常に多く掲載されていることを知りました。M&Aサクシードをざっと眺めてみるだけで、いま世の中にはどんなマーケットがあり、どんな業種が好調か、どんなプレイヤーが活躍しているのかなど、様々な情報が勝手に目に飛び込んで来ます。それだけでもブレインストーミングになります。その後、アクセスを重ねるうちに、自分たちが伸ばしたいエリアの会社をチェックするようになりました。そして優秀なエンジニアが在籍する会社としてGHI様を発見したのです。
譲渡希望案件ですが、誰かにスクリーニングされた情報ではなく、私自身が生情報を見たいです。というのも、M&Aを検討する際に、どの領域を検討したいかだけで探していくのは、難しいものです。たまたま出会った譲渡希望案件を見て、「この事業であれば、当社と一緒になったら、こういうシナジーがありそうだ、非常に面白くなるな」という判断は経営者にしかわからないものです。そのため、M&Aサクシードは、自分で案件を見られる点が非常にいいです。
――お話から「M&A経営」には想像以上に広い可能性があることが伝わってきます。
錦織 若い時は、会社を立ち上げ自分ひとりで大きく成長させたいと考えていました。しかし経営者として経験を積んで、心境に変化が起こりました。何よりもエンジニアの生活を守りたい。他社への派遣や長期の常駐など、エンジニアはある種の不安定さを持つ職業です。そんな状況のなかでエンジニアの生活を安定でき、楽しく仕事をしてもらうためには、「アットホームな会社」を目指すべきだと思うのです。目標を経営者ひとりで達成するのが無理なら、外部の力を借りればいいのです。共に成長できる会社とひとつになることは、今の時代において選ぶべき選択肢だと思います。
輿水 加速度的に進化するビジネスの世界では、どんな会社でも一社ですべてをまかなうのは困難です。自社にない強みを持つ会社や自社より素晴らしい会社に、いかに協力していただけるか。それが重要です。単独では成し得なかった売上げや利益がそこにあるはずです。それだけでありません。「M&A経営」には数字に現れない刺激やヒントが隠されています。M&Aを広くとらえてみると、会社を伸ばす方法が見つけられるかもしれません。
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