お知らせ:「ビズリーチ・サクシード」は「M&Aサクシード」にサービス名を変更しました

M&Aのエクゼキューションとは?具体的な手続きなどを徹底解説

M&Aのエグゼキューションとは、価格算定や交渉、契約書締結など、M&Aにおける一連の手続きを行うフェーズです。M&Aのプロである公認会計士が、エグゼキューションの意味や手続きをくわしく解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)

M&A エグゼキューション(FV)

目次
  1. M&Aにおけるエグゼキューションとは
  2. エグゼキューションの業務内容・流れ
  3. エグゼキューションの重要性(メリット)
  4. エグゼキューションを成功させるポイント
  5. まとめ

M&Aにおけるエグゼキューションとは

まずはM&Aにおけるエグゼキューションの意味、また、それとよく似た単語でオリジネーションがありますが、そのオリジネーションとの違いについて解説していきます。

エクゼキューションの意味

エグゼキューションとは、M&Aにおいて交渉からスタートして契約書締結までの一連の事務手続きを進めていくフェーズのことを指します。
エグゼキューションでは、この前のフェーズで策定した買収戦略に基づいて実際に案件を進めていきます。

エグゼキューションフェーズになると、契約書交渉やデューデリジェンスバリュエーションなど専門的な知識が必要になってくるので弁護士会計士などの各分野におけるプロフェッショナルが必要になってきます。

オリジネーションとの違い

エグゼキューションと似た単語にオリジネーションがあります。
オリジネーションとは
案件組成のことを指し、案件の発掘や売り手と買い手のマッチングなどがあたります。

エグゼキューションはマッチングが終了して交渉などの手続きに入っているのに対して、オリジネーションは案件組成なので交渉前の段階になります。

M&A・事業承継
M&Aにおけるオリジネーションとは?意味や流れを図解で解説

M&Aのオリジネーションとは、「M&A案件の発掘」や「専門業者によるM&Aの提案・調査」などを行うプロセスです。オリジネーションの意味や専門業者に依頼する際のポイントをわかりやすく解説します。 目 […]

M&A・事業承継
M&Aの流れ・進め方 検討~クロージングまで【図解でわかる】

M&Aの全体的な手続きの流れを売り手・買い手両方の視点で見ていきます。事前準備・検討段階~クロージング・最終契約、経営統合後に必要な業務まで全ての流れを解説します。 目次M&Aの全体的な流れ検討・準備フェ […]

エグゼキューションの業務内容・流れ

それではエグゼキューションの具体的な業務内容や流れを解説していきます。

M&Aスキームの検討

M&A 全体像

交渉相手が決まり、具体的に進めていくにあたってM&Aのスキームの検討を行います。

M&Aスキームと一言に言ってもさまざまな方法があります。
案件に応じて達成したい目的は異なり取りうるスキームは異なります
それぞれのスキームのメリット・デメリットを考えながら当事者間で検討を重ね、スキームを決めていきます。

各スキームにはメリット、デメリット、注意すべき点などがあるので、主なスキームついて簡単に説明していきます。
これらを理解して用いるスキームを決めていきます。

株式譲渡

株式譲渡とは、その名の通りで売り手が保有している株式を買い手に譲渡することをいいます。

株式譲渡はM&Aにおいてよく用いられる方法で、手続きなどが容易である点がメリットとなっています。
ただし、買い手からすると会社が独立しており、
シナジー効果が発揮しにくい点や意図せず、簿外債務を引き継ぐ可能性がある点はデメリットとなります。

M&A・事業承継
株式譲渡とは?メリット・手続き・契約・税金を税理士が解説

株式譲渡とは、売却会社の株主が持つ株式を、買収会社に譲渡し、会社を売買する方法です。 中小企業のM&Aの多くは株式譲渡によって行われています。 株式譲渡のメリット・デメリット、手続き、契約書、かかる税金・価値算定 […]

合併

合併とは複数の会社が一体になる組織再編のことをいいます。
新会社が設立される新設合併と存続会社が他の会社を吸収する吸収合併の2種類あります。

合併では会社が統合され、一体運営されるため、シナジー効果が発揮しやすい反面、統合作業を早急に進める必要があるため、大きな負荷が生じてしまうデメリットがあります。
また、
資金が必要にならないというのも合併の特徴となります。

M&A・事業承継
合併の意味とは?種類・メリット・手続き・有名な事例を解説

合併とは、複数の会社を1つの会社に統合するM&A手法です。どの会社が消滅会社の権利義務を引き継ぐかによって、新設合併と吸収合併に分かれます。今回は合併の種類・メリット・デメリット・手続きの流れ・最新事例を解説しま […]

事業譲渡

事業譲渡とは、一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産を全部または一部を他の会社に譲渡することをいいます。

事業譲渡では、会社を丸ごと引き継がないため、買い手からすると必要な資産・負債などを引き継ぐことができるというメリットがあります。
売り手にとっても
本業に関係ない事業を譲渡できるというメリットがあります。
また、個別に譲渡対象を決めるので簿外債務を引き継ぐことはありません

一方で、税制メリットが少なく手続きが煩雑になってしまう点は事業譲渡のデメリットとなります。

M&A・事業承継
事業譲渡とは?メリット・手続き・流れ【図解で分かる】

事業譲渡とは、会社がある事業の全部または一部を譲渡することをいいます。企業全体を売買対象とする株式譲渡と違い、譲渡対象の事業を選べるのが特徴です。M&Aの代表的な手法のひとつです。この記事では、事業譲渡の意義、株 […]

会社分割

会社分割は、1または2以上の会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により新たな会社を設立する新設分割1または2以上の会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割し、他の会社に承継させる吸収分割があります。

吸収分割は事業譲渡と似ていますが、事業譲渡と異なり、包括承継となるため、個別に手続きが必要なく、手続きが容易に進めることができます。

M&A・事業承継
会社分割とは?吸収分割・新設分割の違い、手続き、事例を解説

会社分割は事業の一部もしくは全部を、他の会社に承継させることをいいます。新設分割と吸収分割の方法があります。この記事では会社分割の意味、手法の特徴、メリット・デメリット・手続きの流れ・事例を解説します。   目 […]

株式交換

株式交換とは、完全子会社となる会社の株主が保有する株式を完全親会となる会社の株式に交換することをいいます。
株式交換は株式を交換するため、買収資金などが不要になりますが、株式交換により親会社の株主構成は変わってしまうため、注意が必要です。

M&A・事業承継
株式交換とは?メリット・デメリットや手続きを解説【事例付き】

株式交換は売り手企業の全株式を買い手企業の株式と交換し、親会社・子会社の関係を作り出すM&A手法です。株式交換の仕組みや株式移転との違い、メリット・デメリット、手続き・事例について図解でわかりやすく解説します。 […]

株式移転

株式移転とは、完全子会社となる会社の株主が保有する株式を新たに設立する完全親会社となる会社の株式に交換することをいいます。
株式移転は新たに会社を設立してその下にそれぞれの会社がぶら下がることになるため、経営統合などに用いられる手法になります。

M&A・事業承継
株式移転とは?株式交換との違い、メリット、手続き、事例を解説

この記事は既存の会社を対象として、新たに親会社を作り対象会社の会社の株式をすべて取得させる株式移転についての記事です。株式移転の目的や手法、メリット・デメリット、手続きの流れ、事例について解説します。 目次株式移転とは? […]

さまざまなスキーム

M&Aにおいてよく用いられるのは株式譲渡ですが、それぞれメリット・デメリットがあり、M&Aの目的によりスキームは変わってきます。
事業承継などであれば、株式譲渡や事業譲渡、合併などが適していますが、経営統合では株式譲渡はあまり向かず、株式移転などが適したスキームになります。

達成したい内容に応じてスキームを決めていくことになります。

M&A・事業承継
M&Aスキーム(手法)の種類・特徴・メリット・税金を図で解説

M&Aのスキーム(手法)には多くの種類があります。目的にあわせた方法を選ぶことで、利益を最大化することができます。今回は各スキームごとの特徴・メリット・デメリット・かかる税金・成功事例を解説します。(中小企業診断 […]

バリュエーション

スキームが決まれば、バリュエーション、すなわち企業価値算定が行われます。
企業価値算定は、買い手側はもちろんですが、
売り手側も自社の価値を把握しておく必要があるため行われます。

バリュエーションは一般的な手法が決まっており、買い手と売り手で手法が大きく異なることはありません。
ただし、将来の損益の見通しの見方の違いなどにより、微妙な差異が生じてきます。

バリュエーションは一般的なアプローチとして、インカムアプローチマーケットアプローチコストアプローチの3種類があります。
これらの考え方について簡単に説明していきます。

M&A バリュエーション(FV)

インカムアプローチ

インカムアプローチは評価の対象となる会社の収益力をベースに企業価値を評価する方法となります。
代表的な方法としてDCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)があります。

インカムアプローチのメリットは収益力をベースに評価されるので収益力を価値に反映させることができる点や個別の事象などを織り込むことができる点などがあげられます。
一方で、事業計画などをベースに評価されるため、
恣意性が排除しにくく、また、清算が予定されている会社などには用いることができないというデメリットがあります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは評価の対象となる会社と類似した上場会社や類似した取引などをベースに類似会社や類似取引を比較して企業価値を評価する方法となります。
代表的な方法として類似会社比較法、類似取引比較法などがあります。

マーケットアプローチは、市場の情報を元に評価することになるため、客観的な評価が可能となりますが、新規事業や類似した業種がない場合には使えない方法となります。
また、客観的な評価ができる反面、
個別事象は反映しづらく、売り手からしてみれば評価してもらいたいことも織り込めないというデメリットもあります。

コストアプローチ

コストアプローチは評価の対象となる会社の純資産をベースに企業価値を評価する方法となります。
代表的な方法として修正簿価純資産法があります。

コストアプローチは会社の帳簿価額をベースに評価するため、客観的に評価をできる反面、帳簿ベースで評価をするため、将来性や市場の状況などは反映することができません
また、帳簿をベースにするため、
帳簿が誤っている場合には正確な評価とならない点も留意が必要となります。

価値評価

ここまで紹介した3つのアプローチはどれが正しいということはなく、それぞれの方法を検討して総合的に判断して企業価値を評価していくことになります。

また、一般的には収益性を反映できることから、インカムアプローチで評価した価値が一番高く、マーケットアプローチ、コストアプローチの順番になります。

M&A・事業承継
M&Aのバリュエーション(企業価値評価)とは【図解で解説】

M&Aのバリュエーションとは、企業価値を評価することです。さまざまな手法があるため、状況に応じて使い分けることが重要です。会計のプロである公認会計士が、バリュエーションの方法をくわしく解説します。(公認会計士 前田 樹 […]

交渉

バリュエーションが終われば、交渉がスタートしていきます。
交渉では、大枠の条件や価格など、重要な論点から話し合われることになります。
現職の役員の処遇や雇用面、取引先やノウハウなどの事業面など多岐に渡り、話し合われます。

また、価格についても現時点での目線は話し合われ、次のステップに進めるか進めないのかが判断されることになります。

基本合意書の締結

交渉の中で、重要な論点がまとまった段階で基本合意書が締結されます。
基本合意書は必ずしも必要ではありませんが、この後のスケジュールの明確化、価格目線や契約条件などの統一、独占交渉権の獲得などの観点から締結されることが多いです。

基本合意書には、スキームや価格目線、役員・従業員の処遇、またクロージング条件などが記載されます。
また、基本合意書を締結した段階で独占交渉権を設定されることが一般的になります。
買い手からすると、この後のデューデリジェンス費用などがかかってくるため、独占交渉権を得ることで安心して進めることができるからです。

この後のデューデリジェンスに向けては、売り手にDDの協力義務も課されます。
デューデリジェンスは売り手の協力がなければスムーズに進むことができないため、そのような義務が設定されます。

なお、基本合意書は法的拘束力を持たない点に留意しましょう。

M&A・事業承継
M&Aの基本合意書(MOU)とは|記載内容や作成タイミングを解説【雛形】

M&Aの基本合意書は、当事者の認識を揃える目的で作成する文書です。一般的には、デューデリジェンスや独占交渉権などの項目に法的拘束力を持たせます。今回は、基本合意書の記載内容をわかりやすく解説します。 目次M&am […]

デューデリジェンス

基本合意書を締結すると、デューデリジェンスに進んでいきます。
デューデリジェンスとは、企業調査のことを指し、買い手企業が売り手企業の調査をすることを指します。

デューデリジェンスの全体像(1)

デューデリジェンスは、各分野のプロフェッショナルが行うことになります。
各分野のデューデリジェンスを紹介していきます。

法務デューデリジェンス

法務DDは、法的なリスクを抽出し、買収スキームや買収価格、また、買収後の経営統合に影響がないかを確かめていくことになります。
発見された法的リスクは買収価格に反映したり、表明保証に入れたりすることで対応していくことになります。

また、手続き面では独占禁止法や外国貿易法などに抵触しないかなどを確かめていきます。
法務DDは、弁護士事務所などに依頼することが一般的です。

M&A・事業承継
法務デューデリジェンス(法務DD)とは?目的、実務の流れ、費用

法務デューデリジェンスは、買収対象企業に関する法的・労務的なリスクを洗い出す目的で行います。具体的には、訴訟・紛争や資産・負債などを調査します。公認会計士が法務DDの目的や内容、流れ、費用、実務に役立つ本を紹介します。 […]

財務・税務デューデリジェンス

財務・税務DDは財務、会計、税務面から過去の状況を調査して、将来の事業計画に影響がないか、また、簿外債務などがないかなどを確かめていくことになります。
発見された財務・税務リスクは事業計画や契約書、また、買収価格に反映させていくことになります。

財務・税務DDは、公認会計士や税理士などが属する会計事務所や税理士法人、財務系のコンサルティングファームに依頼することが一般的です。

M&A・事業承継
財務デューデリジェンスとは 手続きや調査内容を公認会計士が解説

財務デューデリジェンスとは、売り手企業の財務・会計面を調査することです。財務リスクの抽出や事業計画の発射台策定などを目的に行います。目的や進め方、ポイント、専門家への依頼でかかる費用を徹底解説します。 目次財務デューデリ […]

M&A・事業承継
税務デューデリジェンスとは?目的や流れ、調査範囲を詳しく解説

税務デューデリジェンスとは、買収先企業の税務を調査することです。税務リスクの把握やM&A実行可否の判断などを目的に実施します。手続きの流れや調査範囲、税務DDを学べる書籍をわかりやすく解説します。 目次税務デュー […]

ビジネスデューデリジェンス

ビジネスDDは事業性や統合による影響などを評価していくことになります。
買収後の収益性を確かめることで事業計画の影響を把握することや統合によるシナジー効果などを確かめることで統合計画に活かされることになります。

ビジネスDDは経営コンサルティングファームなどに依頼することが一般的です。

M&A・事業承継
ビジネスデューデリジェンスとは?目的、進め方、手法を徹底解説

ビジネスデューデリジェンスとは、買収先の将来性やシナジー効果を分析するプロセスです。ビジネスDDを行うことで、精度が高い事業計画の策定などが可能です。目的や進め方、分析手法を公認会計士が解説します。 目次ビジネスデューデ […]

人事デューデリジェンス

人事DDは、人事や労務面からM&Aに伴う影響を評価していくことになります。
人事面の影響を評価することで、統合後の影響や人事面でリスクがないかを評価され、買収価格などに反映されます。
また、統合後の人事制度に影響がないかなどを把握することで統合後の作業に活かされることになります。

人事DDは人事系のコンサルティングファームなどに依頼することが一般的です。

M&A・事業承継
M&Aの人事デューデリジェンス、人事PMIを徹底解説

M&Aにおける人事手続きは、シナジー効果を最大化する上で重要なものです。今回の記事では、M&Aにおける人事デューデリジェンス、人事PMIの内容や重要性、注意点をわかりやすく解説します。(公認会計士 西田綱 […]

システムデューデリジェンス

システムDDは現状導入しているシステムを把握することで統合後に与える影響を評価していくことになります。
統合後のシステム投資などを把握することで価格などに影響させるとともに、統合後のシステム統合計画などに活かされることになります。

システムDDはITコンサルティングファームなどに依頼することが一般的です。

デューデリジェンスにおける留意点

デューデリジェンスは多岐に渡り、さまざまなプロフェッショナルファームに依頼することになります。
それぞれの問題点は発見された分野だけではなく、他の分野にも影響することもあるので
全体を把握しておくことが必要です。

また、スケジュール面に関しても関わっている人が多い分、コントロールが必要となり、遅れがないかなどを確かめる必要があります。

これらのコントロールはデューデリジェンスに重要なポイントとなります。

案件の規模によっては依頼範囲も検討しておく必要があります。
全てを実施するとコストもかかってしまい、コストとそこから得られるリスク回避の効果が釣り合わないという結果になってしまうので留意が必要です。

M&A・事業承継
M&Aのデューデリジェンスとは?公認会計士が費用や項目を解説

デューデリジェンスは、買い手、売り手の両社にとってM&Aの成否や譲渡価格を左右する重要なプロセスです。 公認会計士がデューデリジェンスの目的(メリット)や費用、注意点をわかりやすく解説します。 目次M&A […]

最終交渉・契約書の作成

デューデリジェンスが終われば、最終交渉、契約書締結に向けて進めていくことになります。

デューデリジェンスで発見された問題点で、価格に影響することは最終交渉の中で協議され、価格を決めていくことになります。
また、
価格に影響させることができないことは表明保証などで対応していくこととなり、契約書に反映されることになります。

内容によっては、クロージングまでの対応が必要となり、クロージング条項などに入れられることになります。

これらの交渉を経て、契約書は修正され完成に向かいます。

M&A・事業承継
【ひな型付き】M&Aで使用する契約書をわかりやすく解説

M&Aでは、秘密保持契約書や基本合意契約書、株式譲渡契約書などの契約書を作成します。この記事では、各契約書に記載する内容をご説明します。また、実際のM&Aで使える契約書のひな型も掲載しています。 目次M& […]

クロージング

最終交渉を経て契約書が合意されれば、契約書締結、また、株主名簿の書き換え、重要物の授受などのクロージングに向かっていきます。

クロージングは手続きを漏れなく実施することが重要になります。
手続きに漏れが生じてしまうと、影響が大きいものであれば案件がブレイクしてしまう可能性もあるので、留意して進めていきましょう。

M&A・事業承継
M&Aのクロージングとは?流れや手続き、必要書類を詳しく解説

M&Aのクロージングとは、株式等の引き渡しと対価の支払いを行うことです。クロージングは、法的にM&Aの有効性を証明する上で重要な手続きです。公認会計士が、クロージングで重要なポイントを徹底解説します。(公 […]

エグゼキューションの重要性(メリット)

ここまで手続きや流れなどを解説してきましたが、エグゼキューションの重要性を説明していきます。
エグゼキューションが重要である理由は主には2つあります。

双方が納得できる条件で合意する

M&Aは買収された会社は買収した会社の子会社になり、買収した会社のコントロールで会社が運営されることになります。
そのため、
買収後のことを考えて、エグゼキューションの段階で条件などを決めていなければM&A実行後に苦労することになります

エグゼキューションの段階で双方が納得できる条件で合意しておく必要があるため、エグゼキューションはM&Aにおいて重要になってきます。

M&A手続きを漏れなく実施する

エグゼキューションは漏れなく実施することが重要で、事後的に漏れやリスクなどが発見されると誰にとっても不幸な結果になってしまいます。
そのため、エグゼキューションの段階では
いかに漏れなく手続きを実施しておくことが重要となります。

また、エグゼキューションの段階で事後のリスクをしっかり把握しておくことも重要です。
これもエグゼキューションの段階で把握できていなければ、価格に反映するのか、契約書に反映するのか、またその後のPMIの段階でどう対応していくのかに影響していくため、手続き等を漏れなく実施してリスクを低減しておく必要があります。

エグゼキューションを成功させるポイント

M&A エグゼキューション ポイント

エグゼキューションを成功させるポイントとして3つ紹介していきます。

各分野の専門家からサポートを得る

エグゼキューションを成功させるには各分野の専門家のサポートが重要になってきます。
特に先述した通り、デューデリジェンスでは各分野の調査をすることになるため、専門家のサポートが重要になってきます。

また、M&Aにおいては進めるにあたっては専門的な知識や経験が必要になるため、M&Aの専門家にサポートしてもらうことでリスクを低減することができます。
交渉なども経験がなければ、なかなかうまく進めることができず、思った通りの結果にならない可能性もあります。

M&A・事業承継
M&Aアドバイザーとは?業務内容や手数料、必要なスキルを解説

M&Aアドバイザーとは、M&Aの業務全般に対して、アドバイスやサポートを行う専門家を意味します。業務はM&Aの検討~デューデリジェンスといった専門的な分野まで多岐に渡ります。今回はM&Aア […]

M&A・事業承継
M&Aのサポート内容や依頼先の専門家を選ぶコツ【徹底解説】

M&Aには専門的な知識が求められるため、専門家によるサポートが不可欠です。具体的なサポート内容には、マッチングや契約の立ち会いなどがあります。M&Aのサポート内容や仲介会社を選ぶ際のコツをくわしく解説しま […]

通常業務に支障をきたさないように手続きを進める

エグゼキューションですが、進めていくと時間を取られることになり、通常業務に手が回らないことが起こることもあります

しかし、通常業務が進められなければ、企業の収益性が低下したり、取引がストップしてしまったりと今後の経営に影響が出てしまう可能性もあります
その結果、M&Aどころではなくなり、案件がストップしてしまうかもしれません。
そうなってしまうと元も子もありません。

そのため、エグゼキューションを進めつつ、通常業務においても滞りのないように進め、M&Aを実行に移していく必要があります。

事前に準備をしっかりする

エグゼキューションでは事前の準備も重要になってきます。

エグゼキューションではさまざまなものを用意することや社内、当事者間含め協議することが多く、M&Aで時間が取られてしまいます。
その中で、デューデリジェンスなどの用意もしないといけないなどさまざまなものが並行して動くため、事前に準備ができるものは事前に準備しておくことが重要になってきます。

まとめ

ここまでM&Aのエグゼキューションについて見てきましたが、いかがでしょうか。

エグゼキューションフェーズになると、当事者間での協議やデューデリジェンスなど時間が取られてしまうことやスキーム検討やバリュエーション、契約書交渉など専門的な知識が必要となる場面が出てきます。
これらを効率的に進めるとともに、漏れなく実施していくことが重要となるため、専門家などをうまく活用して進めていくことが重要になってきます。

通常業務に支障きたさないように、エグゼキューションフェーズを進め、M&Aで失敗しないように進めていきましょう。

(執筆者:公認会計士 前田 樹 大手監査法人、監査法人系のFAS、事業会社で会計監査からM&Aまで幅広く経験。FASではデューデリジェンス、バリュエーションを中心にM&A業務に従事、事業会社では案件のコーディネートからPMIを経験。)