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会社売却の相談はどこにすべき?相談先一覧と選び方を徹底解説

会社売却の相談先には様々な種類があり、相談内容や相談時期、コストなどを考慮し適切な相談先を選ぶことが重要です。各相談先の特徴とメリット、注意点、選び方のポイントをわかりやすく解説します。(執筆者:京都大学文学部卒の企業法務・金融専門ライター 相良義勝)

相談先 メリット

デメリット

金融機関 買い手候補や士業事務所とのネットワークが豊富 融資業務とM&A支援業務との間で利益相反の問題が生じやすい
税理士・公認会計士 財務や税務分野、経営全波の相談相手として最適

一般的に、M&A全般の知識やネットワークは有していない

M&A仲介会社 比較的安い手数料で、M&Aの手続きを支援 買い手側の利益に偏った支援を行うインセンティブが働きやすい
目次
  1. 会社売却の相談先の種類
  2. 会社売却の相談先一覧|特徴・メリットと利用する際の注意点
  3. 会社売却の相談先を選ぶポイント
  4. まとめ

会社売却の相談先の種類

会社売却には財務法務、労務など多種多様な分野が関わってくることから、相談先の種類も多岐にわたります。
また、近年では民間機関・公的機関のM&A支援サービスが拡大し、選択肢が広がっています。

主な相談先としては以下のようなものが挙げられます。

会社売却の相談先としてよく利用されるのはどこか

東京商工リサーチのアンケート調査によると、会社売却を行う意向のある中小企業が相手先を探す際に利用しようと考えている相談先の順位・割合は以下のようになっています(参考として買い手企業の数値も挙げています)。[1]

順位

相談先 / 売り手企業が利用すると答えた割合

買い手企業が利用すると答えた割合

1

金融機関 / 59.9%

76.5%

2

専門仲介機関 / 42.9%

45.0%

3

なし(自社で独自に探索) / 32.7%

38.0%

4

公認会計士・税理士 / 19.7%

17.0%

5

事業引継ぎ支援センター / 14.3%

8.9%

6

同業他社 / 12.2%

12.3%

7

取引先 / 10.9%

15.4%

8

商工会議所・商工会 / 9.5%

6.8%

9

マッチングサイト / 2.7%

7.4%

10

その他 / 2.0%

2.5%

金融機関と専門仲介機関を利用しようと考えている企業の割合が売り手・買い手ともに高くなっています(金融機関の割合は買い手側でとくに高く、これには買収資金調達のニーズが関係していると思われます)。

売り手と買い手の相違点を見ると、売り手の方では事業引継ぎ支援センターや商工会議所・商工会などの公的機関を利用すると回答した割合が高く、買い手の方では取引先やマッチングサイトを利用すると回答した割合が高いという傾向が見て取れます。

マッチングサイトは仲介機関に比べてまだ認知度が低いこともあり全体的に数値が低めですが、買い手側の数値が売り手側の3倍近い値になっている点が注目されます。
実際の利用割合を見ても、多くのマッチングサイトで買い手の登録数が売り手の登録数を優に上回っています。

各相談先には実際にどのような相談が持ち込まれているのでしょうか。
2021年の中小企業白書には、相談先と買い手企業の相談内容の関係を示すデータが掲載されています。[2]

相談先

相談内容の割合

事業を承継すべきかどうかの相談(承継決断前)

親族内承継・M&Aなど、承継の手法に関する相談(承継決断後)

M&Aの相手に関する相談(M&Aによる承継を決断後)

事業引継ぎ支援センター

39.6%

39.6%

20.8%

M&A仲介業者

51.1%

37.8%

11.1%

金融機関

70.4%

19.5%

8.4%

その他(※)

52.1%

27.1%

18.8%

※FA(ファイナンシャル・アドバイザー)、M&Aプラットフォーム、公認会計士、税理士など

金融機関やM&A専門機関、公認会計士・税理士などの専門家においては、比較的初期段階からの相談の割合が高いと言えます。
とくに金融機関でそれが顕著です。

取引金融機関や顧問税理士に日頃の経営相談の一環で事業承継・会社売却に関する相談をする(あるいは取引金融機関の方からそうした選択肢があることを持ち出す)といった例や、M&A専門機関にとりあえず問い合わせをしてみるといった例の多いことが想像されます。

一方、事業引継ぎ支援センターには初期段階の相談からM&Aの相手企業選定に関する相談までが比較的まんべんなく持ち込まれていると言えるでしょう。

[1] 2021年版中小企業白書 第3章:事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用(中小企業庁)369頁
[2] 上掲資料406頁

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会社売却の相談先一覧|特徴・メリットと利用する際の注意点

会社売却 相談先

金融機関(取引金融機関・その他の金融機関)

特徴・メリット

取引金融機関は日頃のやり取りを通して会社の経営状況や財務・金融面の課題・ニーズをある程度深く把握しており、経営相談の機会も頻繁にあることから、M&Aの検討段階における相談先として利用しやすい存在です。

会社売却を検討しているという情報は重大な機密事項に属しますが、相談相手が取引金融機関であれば情報漏洩のリスクは非常に低いと言えます。

また、金融機関は全国レベルないし地域レベルで一般企業や士業事務所などとの豊かなネットワークを形成していることから、M&Aの相手企業(買い手候補)を探すための相談先にもなり得ます。

さらには、金融機関のなかにはM&A支援に特化したサービス(ファイナンシャル・アドバイザリーや仲介)を提供しているところもあり、M&A専門機関として利用することもできます。

金融庁もM&Aの相談機関・支援機関としての金融機関の働きを後押しする姿勢を示しており[3]、近年では都市銀行に限らず地方銀行でも積極的にM&A支援に乗り出すところが増えています[4]。

注意点

金融機関を会社売却の相談先として利用する場合に注意が必要なのが、コストと利益相反の問題です。

金融機関のM&A支援サービスの料金はM&A専門業者のものにくらべて高額であるケースが一般的です。
とくにファイナンシャル・アドバイザリー型のサービスは費用が高額になる傾向があります。

大手銀行が提供しているのはこの型のサービスで、ある程度以上の取引金額が見込める案件しか受け付けていないのが通例です。
金融機関は企業に対する融資も行っている(むしろ融資の方が本業である)ため、融資業務とM&A相談・支援業務の間で利益相反が生じやすいという問題もあります。

例えば、売り手企業に支援を提供する一方で買い手企業には買収資金の融資を行うとすると、融資の回収可能性を高めるために譲渡価格を低く抑える方向へ取引を誘導するようなインセンティブが働く可能性があります(逆に、買い手に不利な誘導がなされるケースも考えられます)

また、仲介型のサービスの場合、同一の金融機関が売り手・買い手双方と契約を結ぶことになることから、M&Aの支援そのものにおいて利益相反が生じやすいと言われています(詳しくは後ほど仲介会社の項目で解説します)。

銀行法(第13条の3の2[5]、同法施行規則第14条の11の3の3[6]など)により、金融機関には利益相反を防ぐ管理体制の構築が義務づけられていますが、利用する側としてもこの問題に十分注意しておく必要があります。

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取引先事業会社

特徴・メリット

東京商工リサーチの調査では、約11%の企業が会社売却先を探す際に取引先に相談すると回答しています。

取引先の関係会社や取引関係のある企業のなかに買い手候補を探したり、念頭にある特定の買い手候補とつながりのある取引先のトップなどに交渉アプローチのための仲立ちをしてもらったりするケースが考えられます。
取引先自身が買い手候補となるケースもあるでしょう。

注意点

取引先への相談では情報漏洩のリスクが重大です。
会社売却を検討していることが漏れると、会社売却や現在の事業の遂行に支障を来す恐れがあります。
相談する相手と内容は慎重の上にも慎重を期して選択することが必要です。

取引先はビジネスのパートナーとして会社売却の影響を被りかねない立場にあり、なかには売り手企業への依存度が高いために会社売却により大きなダメージを受ける恐れのあるケースもあります。
逆に、取引先の意向によりM&Aによる会社売却が困難になるケースもあります(重要な取引契約が打ち切られるなど)。

相談する相手を選ぶ際にはそうした側面も念頭に置く必要があります。

同業者

特徴・メリット

直接的な取引関係のない知己の同業者は、取引先に比べてより中立的・客観的な立場からのアドバイスを求めやすい相手です。
とくに、会社売却の経験のある同業者やM&A関係も含めて業界動向に詳しい同業者のアドバイスは参考になるかもしれません。

注意点

取引先の場合と同様に、情報漏洩のリスクに注意が必要です。

税理士・公認会計士

特徴・メリット

顧問契約を結んでいる税理士や決算書類の監査などを依頼している公認会計士は、取引金融機関と同様に、会社の財務状況などに通じ経営相談にも応じる身近な専門家であることから、会社売却検討段階の相談先として好適と言えます。
情報漏洩のリスクが低いのも利点です。

会計事務所のなかにはFAやM&A仲介機関として専門的なM&A支援サービスを提供しているところもあります。

注意点

税理士・公認会計士は基本的に税務・会計のスペシャリストであり、FA・仲介機関を兼ねている場合を除き、M&A全般に精通しているケースはまれです。
金融機関が有するような総合的なネットワークを有している事務所も多くありません。

したがって、会社売却の相手候補探しや取引交渉に入る段階では他の相談先を利用することが必要になるでしょう。

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中小企業診断士

特徴・メリット

中小企業診断士は中小企業の経営診断や成長戦略の策定・実行支援などを行う専門家で、中小企業と金融機関をつなぐパイプ役となったり、中小企業に関する公的施策の活用を促進したりする役目も果たします。

会社売却の準備段階において、会社売却後の展開を見据えた売却戦略を考えたり、利用可能な公的施策を検討したりする際に、中小企業診断士のアドバイスが役に立つと考えられます。

注意点

中小企業診断士は中小企業の経営について比較的幅広い知識を有していますが、財務・税務・法務などについて各分野の専門家ほどの深い知識を有しているわけではなく、M&A全般について精通している中小企業診断士も少ないでしょう。

M&Aの検討を本格化する段階や交渉を開始する段階においてはM&A専門機関などへの相談が必要になると思われます。

弁護士

特徴・メリット

顧問弁護士がいる企業であれば、金融機関や顧問税理士・公認会計士と同様に身近な相談相手として利用できます。
大企業を除き弁護士と顧問契約を結んでいる企業というのは多くないでしょうが、何らかのつきあいのある弁護士であれば会社売却についても比較的相談しやすいかもしれません。

弁護士は法律全般の専門家であり、会社や経営者の代理人として債権者や株主従業員、労働組合などと利害調整のための交渉を行える立場にあります。
会社売却の見通しや、株式・債務・個人保証・契約などに関わる問題について、法的な側面からの深いアドバイスが期待できます。

注意点

弁護士は基本的に法律のスペシャリストであり、税理士や公認会計士と同様、M&A全般に精通している弁護士や、多分野にわたるネットワークを有している法律事務所というのは多くありません。

なかにはM&A全般について専門的な支援サービスを提供している法律事務所もありますが、そうしたところを除けば、会社売却の初期段階や特定の法務面の懸念がある場合に利用するのに適した相談先と言えます。

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FA

特徴・メリット

FA(ファイナンシャル・アドバイザー)はM&A全般に関する専門家・専門機関で、M&A戦略の策定に始まり、相手企業の情報収集・マッチング、企業価値評価M&Aスキーム株式譲渡事業譲渡などの取引の枠組み)の構築、交渉の進め方、情報開示などについて助言し、プロセス全体のスケジュール調整や手続きの補佐を行います。

仲介の場合は売り手・買い手双方と契約を結ぶのに対し、FAはいずれか一方とのみ契約します。
したがって、依頼者の利益をシビアに追求することができます。

また、一般的にM&A仲介会社よりFAのほうが専門性は高く、大規模で複雑な利害の絡むM&Aや海外企業とのM&Aにも対応できる体制を有している傾向があります。

注意点

FAはM&A仲介会社やM&Aマッチングサイトに比べて手数料が高額になりがちです。
FAの報酬はM&A成約時の取引金額に応じた成功報酬が大部分を占めており、少額の成功報酬しか期待できない小規模な案件は引き受けていない業者が少なくありません。

また、FAは依頼者と自社のために売却金額をできる限り高めることを目指し、綿密な戦略のもとで取引を進めようとするため、成約までに時間がかかる傾向があります。

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M&A仲介会社

特徴・メリット

M&A仲介会社は売り手と買い手を引き合わせ、M&A成約に向けた助言や手続き面のサポートを提供します。
一般的にFAよりも手数料が安価です。

仲介会社の業務範囲はFAと基本的には同じですが、売り手・買い手の両方が依頼者となることから利益相反が生じやすいため、売却条件の決定などには深く踏みこまず、検討段階やマッチング段階のサポートに重点を置いたサービスを提供しているケースが一般的です。

会社の譲渡先を検討するにあたり相手側経営者との相互理解・共感や従業員の雇用維持などを重視し、友好的で円満な事業承継を希望しているような場合には、FAよりも仲介会社に相談した方が希望に適うM&Aが早期に実現する可能性が高いかもしれません。

実際、中小企業の売却ではそうしたニーズが高く、コスト面の利点もあることから、仲介会社がよく利用されています。

注意点

契約上、仲介会社は売り手・買い手双方の利益を追求する役目を担いますが、売却条件など、売り手・買い手の利害が対立する(利益が相反する)側面に関しては、一方の利益に偏った行為(利益相反行為)を犯してしまいやすい立場にあります。

一般的に、売り手よりも買い手のほうが将来再び買収を行う可能性が高く、仲介会社にとってリピーターとなりやすいことから、買い手の利益に偏った支援(売却金額を低く抑えるなど)を行うインセンティブが働きやすいという指摘があります。

仲介会社の多くは利益相反に留意して事業を行っていますが、利用者としてもこの問題に十分注意し、不審な点については適宜説明を求めるなどの対応をとる必要があります。

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M&Aマッチングサイト

特徴・メリット

M&Aマッチングサイトはインターネットを活用して売り手と買い手のマッチングを図るサービスです。
売り手側は売却案件情報、買い手側は企業情報や買収ニーズをサイトに登録し、互いの情報を検索して相手方に交渉のオファーを送るという仕組みになっています。

インターネットの特性を利用することにより、金融機関やFA、M&A仲介会社が提供する従来型のマッチング(業者独自のネットワークに基づく紹介)よりも幅広い相手とのマッチングを可能にしています。

FAはもとより仲介会社に比べても手数料が安価であり、売り手側は無料で利用できるマッチングサイトが大半です。

FAや仲介会社を利用したM&Aでは少なくとも半年から1年程度の期間が必要になりますが、M&Aマッチングサイトで相手企業を見つけ、当事者間の直接交渉で話を進めた場合、1~2か月程度で成約にいたる例も少なくありません。

東京商工リサーチの上記調査によると、相手企業探しでM&Aマッチングサイトを利用すると回答した企業の割合は買い手側が売り手側の3倍近くあり、実際の登録数を見ても買い手側が大きく上回っています。

これはマッチングサイトに売り手市場の傾向があることを示しており、会社売却を検討している企業にとってマッチングサイトは有望な相談先と言えるでしょう。

注意点

M&Aマッチングサイトは基本的にはマッチングに特化したサービスです。
手続き面や企業価値評価などに関して一定程度のサポートは提供されることもありますが、マッチング成立後の交渉について専門的・全般的な支援を望む場合には、FAや仲介会社に依頼することになります。

M&Aマッチングサイトの多くはFAや仲介会社などの専門家にもサービスを提供しており、買い手企業と契約したFAや仲介会社が代理で情報を登録しているケースもあります。
仲介会社と契約している買い手企業とのマッチングが成立し交渉を進めることになった場合、売り手側もその仲介会社との契約が必要になります。

数あるM&Aマッチングサイトのなかから利用するサイトを選定する際には企業登録数の多さが大きなポイントとなりますが、社会的に問題のある企業やM&Aに真剣とは言えない企業が登録する可能性もあるため、そうした企業を排除するための審査が行われているかどうかをチェックすることが重要です。

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事業承継・引継ぎ支援センター(事業引継ぎ支援センター)

特徴・メリット

事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県に国が設置している公的相談窓口です(東京都のみ2箇所、他は各都道府県に1箇所)[7]。
従来は事業引継ぎ支援センターと呼ばれていましたが、2021年4月からは事業承継ネットワークと統合されて事業承継・引継ぎ支援センターという名称になりました。

それぞれの事業承継・引継ぎ支援センターには中小企業診断士や金融機関OB、税理士、公認会計士などの専門家が在籍し、無料で相談を受け付けています。

会社売却に関わるところでは、以下のような支援が提供されています。

  • 地元地域を中心とする全国的なネットワークを活かした相手企業・起業家とのマッチング
  • 民間の専門支援機関への紹介・引継ぎ
  • 「経営者保証に関するガイドライン」に基づく経営者保証解除のためのサポート
  • 民間のM&A支援機関と契約し会社売却を進めているケースに対するセカンドオピニオンの提供

注意点

事業承継・引継ぎ支援センターが提供する主なサポートはマッチングと民間機関の紹介までであり、M&Aの交渉・手続きについて専門的な支援を求める場合には民間機関との契約が必要になります。

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商工会議所・商工会

特徴・メリット

商工会議所・商工会の多くは事業承継の無料相談窓口を設けており、事業承継・引継ぎ支援センターの運営主体となっているところもあります。

事業承継に関する無料セミナーや後継者・次世代経営者育成のためのグループ研修なども各地の商工会議所・商工会により定期的に開催されています。

注意点

事業承継・引継ぎ支援センターと同様に、マッチング成立後の交渉・手続きについて専門的な支援を求める場合には民間のFA・仲介会社などとの契約が必要になります。

[3] 事業承継ガイドライン(中小企業庁)85-86頁
[4] 中小企業の経営資源集約化等に関する検討会(第1回)事務局説明資料(中小企業庁)
[5] 銀行法第13条の3の2
[6] 銀行法施行規則第14条の11の3の3
[7] トップ(事業承継・引継ぎポータルサイト)

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取引先事業会社や同業者、個人的な知己など、守秘義務契約によって相談の秘密を保護することが難しい相手に会社売却の相談を持ちかけるのは、よほどの信頼関係が築かれているか、相談相手に譲受け企業とのパイプ役になってもらうことを打診するような場合を除き、控えたほうがよいでしょう。

検討のどの段階にあるか

まだ会社売却を決断しておらず、身内への承継や廃業などと合わせて選択肢の1つとして検討している段階であれば、顧問税理士や顧問弁護士、中小企業診断士に相談したり、商工会議所・商工会が開催するセミナーに参加してみたりするのもよいでしょう。

一方、すでに会社売却を決断しており、早期に交渉を開始したいというような場合には、FAやM&A仲介会社、M&Aマッチングサイト、事業承継・引継ぎ支援センターに相談したほうが早道と言えます。

どのような相手への売却を希望しているか

同じ地域の同業者や関連業種の企業に会社を譲りたいという場合には、地域企業の豊富なネットワークを有している地方銀行、近隣のM&A仲介会社、事業承継・引継ぎ支援センターなどが相談先として適していると考えられます。

一方、異業種への売却で新たな事業展開を図りたいという場合や、多くの事業を展開し経営基盤に優れた企業に売却したいといった場合には、全国的なネットワークを有する金融機関や大手FAに相談するか、M&Aマッチングサイトに登録するのがよいでしょう。

M&Aマッチングサイトでは小規模事業者と異業種上場企業とのマッチングなど、従来では考えられなかった組み合わせのマッチングもしばしば成立しています。

自社の企業価値を高く評価してくれる相手を選び、できる限り高額で売却したいというのであれば、最終的にはFAへ支援を依頼することになるでしょう(ただしある程度以上の額での売却が期待できる企業に限られます)。

トップ同士の共感や円満な承継を重視するのであれば、仲介会社が適していると言えます。

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一方、相手企業との直接交渉によるスピーディーな取引を望むのであれば、取引先や同業者のつてをたどるか、事業承継・引継ぎ支援センターやM&Aマッチングサイトに相談して相手企業を探すのがよいでしょう。

直接交渉を行うとしても、最終契約書のチェックは弁護士に依頼した方が賢明です。

自社にとって不利になる問題点やM&Aの支障となるリスクが判明したり、買い手企業によるデューデリジェンス(売り手企業の抱えるリスク・問題点の調査)で指摘されたりした場合にも、弁護士や公認会計士・税理士、中小企業診断士などの専門家に適宜相談するのが望ましいと言えます。

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まとめ

公的機関や民間機関によるM&A支援サービスが広がり、様々なタイプの相談先が利用可能になっています。

それぞれの相談先には守備範囲や向き不向きの違いがあります。
相談先の選択でミスマッチが起こると、有望な売却先になかなか出会えなかったり、余計なコストがかかったりする恐れがあり、最悪の場合には会社売却が暗礁に乗り上げるような事態にも陥りかねません。

会社売却の目的や会社の置かれた状況を明確化したうえで、それに即した適切な相談先を選ぶことが重要です。

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(執筆者:相良義勝 京都大学文学部卒。在学中より法務・医療・科学分野の翻訳者・コーディネーターとして活動したのち、専業ライターに。企業法務・金融および医療を中心に、マーケティング、環境、先端技術などの幅広いテーマで記事を執筆。近年はM&A・事業承継分野に集中的に取り組み、理論・法制度・実務の各面にわたる解説記事・書籍原稿を提供している。)