事業承継の相談先おすすめ7選 相談先別のメリットも詳しく解説
- 法務監修: 前田 樹 (公認会計士)
事業承継の相談先には、税理士やM&A仲介会社などがあります。相談内容を得意としている専門家を選ぶことが重要です。公認会計士が、各相談先に事業承継を相談するメリットや、相談先を選ぶポイントを解説します。
事業承継の相談先を選ぶ際は、下記の3つの理由から、慎重になる必要があります。
相談先によって買い手候補にどれだけアプローチできるか、事業承継を成功に導くための知見・ノウハウをどれだけ持っているか、どれだけ親身になってサポートしてくれるかなどが大きく異なります。事業承継先候補が少ない相談先に相談してしまった場合、良い承継先と巡り合えない可能性が高まります。
結果として、どこに事業承継の相談をするかによって、事業承継の成功率が変わってしまいます。自分の状況に応じて適切な相談先を選ぶ必要があり、相談を開始する際は事前の吟味が重要になります。
相談先によって、報酬体系が大きく異なります。相談先によっては、無料である、初回の相談手数料が必要、成功報酬のみの報酬体系になっているなど、様々な違いがあります。初回の相談料が必要なケースでは、そもそも最初に相談料を支払える状況なのかどうかを検討しなければなりません。
また、成功報酬のみの報酬体系であっても、事業承継の金額が大きければその分、報酬総額も多額になってしまうケースもあります。相談前に成約した場合の報酬が総額でどれだけになるのかを見積もっていくことが大事です。
事業承継を成約に導くためには、担当者の知見・ノウハウが重要になりますが、相談先によってそのレベルは大きく異なってきます。実務レベルがあまり高くない担当者の場合、自身の事業承継に対して、適切でないアドバイスをしてしまう恐れがあります。
相談する際には自身の担当がどのような人か、実務レベルを確認しておくと安心できます。また、相談先によっては案件を最後まで一貫してサポートしてくれる一任制、プロセスに応じて担当が変わる可能性があるなど、担当者の制度も異なってくるので確認してみるようにしましょう。
相談先を探す際の課題は下記の2つかがあります。
相談先を探す際、様々なホームページを確認することになります。他方で、報酬体制や成約事例など全ての情報を網羅的に開示している相談先は稀です。ホームページに開示してある情報だけを過信せず、実際に担当者と打ち合わせをするなど、疑問点や足りない情報があれば問い合わせを行う必要があります。
事業承継を行う際、グーグルなどの検索サイトで情報を検索しようとしても、相談先の候補となるホームページが多数ヒットすることでしょう。検索先から網羅的に相談の検討をしていくことは時間がかかりすぎるため、現実的ではありません。
まずは自身の事業承継の状況や元々の繋がりを鑑み、どのようなタイプの相談先に相談するべきかを検討し、ある程度絞り込んでおくことが重要です。
相談先を決めて、実際に相談し事業承継のプロセスを進めたとしても、承継先が見つからずに事業承継できないこともあります。結果として、事業を廃止することになり、従業員や取引先に多大な影響を及ぼしてしまう可能性があります。
事業承継はすぐに実現できるわけでなく、最低でも3か月~6か月程度の時間は必要です。あらかじめ事業承継を進める計画を立てて置き、適切なスケジューリングをしながら実務を進めていく必要があります。
中小企業において事業承継を相談する先として思い浮かぶのは顧問の税理士などかもしれません。
中小企業庁が出している「事業承継ガイドライン」[1]では、顧問の公認会計士や税理士がトップとなっています。
これは後継者が決定している場合もしていない場合も他の選択肢よりも圧倒的に多く、後継者が決定している場合には72.9%、後継者が決定していない場合には52.0%となっています。
参考:2017年版 中小企業白書(中小企業庁)を基に弊社作成
他の選択肢で2番目になっているもので後継者が決定している場合で51.4%、後継者が決定していない場合で35.1%ということを考えると圧倒的な差になっています。
事業承継というとやはり顧問に入っている公認会計士や税理士に相談しやすいということが調査結果でもわかります。
なお、2番目は親族、友人・知人、3番目は取引がある金融機関となっており、身近なところに相談しているという特徴があります。
中小企業が事業承継する際の相談先として7つの相談先を紹介していきます。
相談先 | メリット | デメリット(留意点) |
---|---|---|
税理士・公認会計士 | 会社の現状を踏まえたアドバイスを得やすい(顧問の場合) | 事業承継に対しての専門知識を保有しているとは限らない |
弁護士・行政書士 | 会社の現状を踏まえたアドバイスを得やすい(顧問の場合) | 事業承継に対しての専門知識を保有しているとは限らない |
金融機関 | 適切な事業承継先や専門家を紹介してくれる可能性がある | 金融機関の別商品もセットにされて、事業承継を進められる可能性がある |
事業承継・引継ぎセンター | 専門的な知識を国の公的機関から得ることができる | 特になし |
商工会・商工会議所 | 無料でその地域の事業承継に詳しい専門家に相談できる | 専門家への報酬は別途必要となる |
経営コンサルタント | さまざまな視点からアドバイスを受けることができる、同様の案件の知見を得ることができる | 高額な報酬が発生する可能性がある |
M&Aの仲介会社・マッチングサイト | スムーズにM&Aの案件を進めることができる、所属する専門家に相談できる場合がある | 高額な報酬が発生する可能性がある |
先述した通り事業承継の一番多い相談先が税理士や公認会計士となります。
経営者にとってお金のことなど経営について相談をしており、会社のことを理解し経営者の立場で回答がもらえると考えるためです。
税理士や公認会計士の強みは経営者たちが考えている通り、会社のことを理解して経営者の立場でアドバイスをもらえる点です。
一方で、必ずしも税理士や公認会計士が事業承継に対しての専門知識を保有しているとは限りません。
そういった場合には他の事業承継を専門としているコンサルティング会社などに相談することも一つの選択肢です。
弁護士や行政書士も顧問として依頼している場合、会社のことに詳しく、事業承継などの相談先として候補となります。
弁護士や行政書士も税理士などと同様、顧問である場合には会社のことに対して詳しいため、余計な説明もなく進めることができます。
一方、こちらも税理士などと同様ですが、事業承継を専門としていないケースも多く、そういった場合には別のコンサルティング会社に依頼することが無難でしょう。
取引先の金融機関も相談しやすい先の一つです。
金融機関のメリットは他の取引先なども多く抱えており、適切な事業承継先を紹介してくれる可能性があります。
会社のことも詳しいことは同様ですが、税理士などと違い、事業承継先も見つけてくれる可能性があります。
また、自社で知見がない場合にも提携している専門家などを紹介してくれるなどメリットがあります。
一方で、融資など金融機関の別商品もセットにされて事業承継を進められることもあり、必要最低限の中で事業承継を進めることができるかが留意すべき点になります。
事業承継・引継ぎセンターは、国が設置する公的機関になります。
中小企業庁から委託を受けて支援を実施しており、全国47都道府県の各認定支援機関に設置されています。
事業承継・引継ぎセンターは事業承継に関する専門機関で国が設置しているという特徴があります。
より専門的な知識を国の公的機関から得ることができるというメリットがあります。
商工会や商工会議所では、経営者向けにさまざまなサポートを行なっています。
その中で、事業承継についてもサポートを行なっており、無料でその地域の事業承継に詳しい専門家に相談をすることができます。
事業承継の相談だけではありますが、地域の専門家に無料で相談することができるというメリットがあります。
ただし、紹介だけで商工会や商工会議所に必ずしも専門家はおらず、当然ながら話が進むと専門家に対して報酬が発生することに留意が必要となります。
事業承継は国の問題となっているため、多数の事業承継の専門家がいます。
事業承継に詳しい経営専門家がコンサルティング会社に集まっているケースも多く、さまざまな視点からアドバイスをもらうことができます。
事業承継が詳しいコンサルティング会社には多数の経営コンサルタントが属しており、さまざまな視点からアドバイスを受けることができること、また、それまでの知見が溜まっており、同様の案件の知見を得ることができます。
一方、経営コンサルタントに業務を依頼すると高額になることも多く、その点は留意が必要となります。
M&A仲介会社やマッチングサイトも事業承継の相談先の一つとなります。
事業承継はM&Aに関連することも多く、M&Aの専門知識や豊富な実績が必要で、これら実績や知見のある専門会社に相談するとスムーズに案件を進めることができます。
また、各士業が属していたり、各士業と繋がっていたりするなどそれぞれの専門家に相談ができ、対応してもらうことができます。
経営コンサルタントと同様、依頼内容によっては報酬が高額になることも多く、留意が必要となります。
事業承継の相談先として選択するポイントについて解説していきます。
当然ながら、相談しようとしている内容ができること、また、事業承継は専門知識等も必要となるため、相談したい内容が得意な先を選択することが相談先として選ぶポイントとなります。
事業承継は特殊な業務であるため、相談したい内容である事業承継を得意にしていなければ、適切なアドバイスが得られない可能性があります。
また、事業承継においては相手探しも必要で、得意でなければ適切な相手を探してきてもらえない可能性があります。
相談したい内容である事業承継が得意である相談先を選ぶ必要があります。
事業承継は専門知識が必要で、豊富な実績がなければ適切なアドバイスができません。
そのため、事業承継を相談する先として事業承継やM&Aなどの実績が豊富であることが必須で、それらの実績に裏付けられた知識や知見を保有している必要があるといえます。
顧問先の税理士や公認会計士などであれば知識を持っているだろうと思われがちですが、必ずしも実績などが豊富であるとは限らず、知見などがない可能性があるので留意が必要となります。
事業承継を進めるにあたっては事業承継やM&Aの実績が豊富な先を相談先として選ぶようにしましょう。
事業承継は業務がわかりにくいため、報酬体系が明確になっていない場合もあります。
その結果、当初想定していた金額とは異なる金額で提示され、驚くこともないとは言えません。
また、事業承継に進めるにあたって、各専門家に正しく状況を理解してもらった上で依頼をしなければ業務が適切に進めてもらえない可能性があります。
事前に相談ができるよう、相談が無料である専門家を選択してまずは相談して、実際の業務に進むことでお互いに理解の齟齬なく、進めることができます。
事業承継の相談先として選ぶポイントとして報酬体系が明確で相談が無料である専門家を選択する方が無難でしょう。
事業承継を進めるにあたって、税理士や弁護士など各士業に相談するケースや金融機関などの各種機関に相談するケースがあります。
そのため、事業承継を進めるにあたっては各専門家や各種機関に相談できるよう連携している先の方がスムーズに進めることができます。
事業承継の相談先に選ぶにあたっては、各専門家や各種機関と連携している先を選択するようにしましょう。
業務を委託するにあたっては、どの業務でも同じですが相談がしやすく、コミュニケーションが図りやすい先を相談先として選んだ方がいいでしょう。
コミュニケーションが取れなければ、どのように進められているのかがわからず、気がついたら自分達が思い描いていたものとは異なる結果になる可能性があります。
また、事業承継は経験がなく、不安になりやすく相談したいタイミングでできなければ余計に不安になってしまいます。
コミュニケーションが図りやすい先を事業承継の相談先として選ぶようにしましょう。
M&Aによる事業承継を行う際におすすめの相談先を紹介していきます。
弊社はM&Aのプラットフォームを運営しています。
弊社は、インターネット上で買い手と売り手をマッチングするサービスを提供しています。
また、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社のサービスとは異なり、M&Aの交渉や契約などの各種手続にアドバイザーが入ることは原則ありません。
弊社の最大の特徴は、売り手は登録無料でサービスを利用できる点です。
大半の仲介会社などでは、先述した着手金、中間金、成功報酬がかかりますが、M&Aサクシードでは成功報酬のみとなっております。
インテグループは中堅・中小企業を対象にM&A支援業務を提供しています。
報酬体系も中堅・中小企業が取り組みやすい完全成功報酬型[2]となっています。
中堅・中小企業を中心に業務を行なっており、実績も豊富です。
業務内容は、M&A仲介やアドバイザリー、MBO支援などを行なっており、M&Aの実績も豊富な先であるため、おすすめの相談先となります。
日本M&Aセンターは中堅・中小企業の友好的なM&Aを支援[3]しており、M&Aや事業承継に精通したコンサルタントが業務を提供しています。
業務内容は、M&A仲介をはじめ、企業価値評価、PMIなどM&Aについて幅広く業務を提供しているという特徴があります。
[2] インテグループ 会社概要
[3] 日本M&Aセンター 会社概要
事業承継の相談先についてここまでみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
事業承継は誰しもが経験するものではなく、経験するとしても1回で多くても数回です。
また、事業承継は専門的な知識や経験が必要となります。
業務も多岐に渡るため、各専門家などとの連携も重要です。
そのため、事業承継を相談する先としては事業承継を得意とし、専門的な知識や豊富な経験を有しており、専門家などのネットワークも広く持っている先に相談をしましょう。
事前に相談を行い、適切なアドバイスがもらえるよう相談先は慎重に選ぶことで失敗する確率を下げましょう。
(執筆者:公認会計士 前田 樹 大手監査法人、監査法人系のFAS、事業会社で会計監査からM&Aまで幅広く経験。FASではデューデリジェンス、バリュエーションを中心にM&A業務に従事、事業会社では案件のコーディネートからPMIを経験。)
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