敵対的買収とは、買収対象会社の現経営陣から賛同を得ずに行うM&Aです。主に、公開買付けによる株式取得の手法で行います。敵対的買収の仕組みやメリット・デメリット、成功・失敗事例、防衛策を徹底解説します。(公認会計士 西田綱一 監修)
敵対的買収は、一般に、買収の対象になる会社の現経営陣の賛同を得ないで行われます。
定義の上では、対象会社の経営陣の賛同の有無により、敵対的買収と友好的買収とが明確に区別できます。
しかし実際に起こった買収が、友好的買収と敵対的買収のどちらにあたるかは、あくまでも、相対的なものでしかありません。
敵対的買収においては、対象会社の現経営陣の賛同を得られることができません。
そのため、合併・会社分割・事業譲渡等の対象会社の同意が必要となるスキームを選択することは、非常に難しいです。
そこで、株式取得と自己以外の者が保有する対象会社の議決権を利用した議決権支配が、敵対的買収の主な方法として考えられます。
敵対的買収の多くは、上場会社を対象とし、公開買付けによる株式取得の方法が採用されることが多いです。
以下の理由からです。
買収者としては、公開買付けを行う場合、その前段階として、株式市場で対象会社の株式をある程度買い集めるのが一般的です。
これにより、株主名簿閲覧請求権[2]、取締役会議事録閲覧請求権[3]、株主総会招集権[4]、株主提案権[5]、帳簿閲覧請求権[6]等の、会社法上、少数株主に付与される権利の行使が可能となります。
他方で、対象となる上場株式の株券等保有割合が5%を超えた場合には、5営業日以内[7]に財務局長等に対し、大量保有報告書の提出が必要となる[7]など、株式保有割合に応じて様々な規制が適用されます。
経営権支配の争いの際に、買収者に単独で十分な株式を取得するための資金がない場合や、保有株式が議決権の過半数を占めていない場合でも、役員選任決議等の場面において、他の株主に株主総会の議案で自己と同調した議決権行使を行わせることができれば、経営支配の目的を達成することが可能です。
この委任状勧誘については規制があります。
金商法194条は、上場株式等について、金商法施行令を守らずに、自己または第三者に議決権の行使を代理させることを勧誘してはならないと定めています。
当該勧誘を行おうとする勧誘者は、その相手方に委任状及び参考書類[8]を交付しなければならず、当該交付書類の写しを財務局長等に提出しなければなりません。[9]
また、上記の勧誘が行われる場合、株主は当該会社に対して参考書類の交付を請求できます。[10]
この委任状勧誘規制は、以下の場合には、適用されません。[11]
まず、他人名義で株式保有する者が、その他人に対し議決権の代理行使の勧誘を行う場合です。
次にそれ以外で、上場会社またはその役員以外の者が行う勧誘であり、被勧誘者(以下における被勧誘者を除く。)が10人未満[11]の場合です。
さらに、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙による広告を行う場合です。
(発行会社の名称、広告の理由、株主総会目的事項及び「委任状の用紙等」(委任状の用紙、参考書類その他の書類または電磁的記録)を提供する場所のみを表示する場合に限ります。)
上記の委任状勧誘規制の違反については、30万円以下の罰金が定められています。[12]
金融庁または証券取引等監視委員会による裁判所に対する緊急禁止・停止命令の申立てが可能です。[13]
上記違反により、決議方法が「著しく不公正」として、株主総会決議取消事由[14]に該当すると解釈される可能性もあります。
議決権を有する株主が1000人以上の大会社については、書面による議決権行使が認められなければなりません。[15]
ただし、上場会社において招集者が委任状を交付して議決権の代理行使の勧誘を行う場合は、係る書面投票制度は義務付けられません。[16]
[1]金商法27条の13の4項
[2]会社法125条2項
[3]会社法371条2項3項
[4]会社法297条1項2項
[5]会社法303条、304条、305条
[6]会社法433条
[7]金商法27条の23
[8]金商法施行令36条の2の1項
[9]金商法施行令36条の3、43条の11
[10]金商法施行令36条の5
[11]金商法施行令36条の6
[12]金商法205条の2の3の2号、207条1項6号
[13]金商法192条、194条の7の4項2号
[14]会社法831条1項1号
[15]会社法298条2項
[16]会社法298条同項但し書、会社法施行規則64条
敵対的買収事例の増加を受け、買収防衛策の導入企業は2005年の買収防衛指針の公表後、急激に増加し、2008年には569社[17]が導入するに至りました。
しかし、その後は、日本版スチュワードシップコードの策定に伴い買収防衛策に対する機関投資家の姿勢が厳しさを増したことなどから、買収防衛策の継続を中止する企業も増加して、2017年7月末時点で当店買収防衛策を導入する企業は413社[17]まで減少しました。
日本で導入されている買収防衛策は、そのほとんどが事前警告型買収防衛策です。
事前警告型買収防衛策は、防衛策導入会社(対象会社)の株式を大量に(多くの場合、20%以上[18])買付けようとする買収者に対して、以下を求めます。
また以下の場合に、差別的な行使条件の付された新株予約権無償割当て等の対抗措置を発動する旨を警告しておきます。
ここからは、具体的な買収防衛策について説明します。
ライツプラン(ポイズンピル)では、買収者が一定割合の株式を買い占めた場合(典型的には20%[19]程度)、買収者だけが行使できないという差別的行使条件を付した新株予約権を、全株主に無償で割り当てます。
そしてその結果、買収者以外の者に買収者登場前の時価の半額で株式を取得させ、買収者の持株割合を低下させるという仕組みです。
事前警告型ライツプランでは、買収者登場時に講じる防衛策について、平時のうちに開示して事前警告を行います。
ライツプランのメリットとしては、買収プレミアムが10%[20]程度高くなると言われていることが挙げられます。
一方のデメリットとして、ライツプランの導入は株価を下げるという説があります。
信託型ライツプランの直接型では、平時のうちに、買収者だけが行使できないという差別的行使条件を付した新株予約権を信託銀行に対して無償で発行し、信託銀行は買収者登場時の株主(受益者)のために新株予約権を信託勘定内で管理します。
また買収者が登場(受益者確定)した後、信託銀行は、全株主(受益者)に対して、管理していた新株予約権を無償で交付し、買収者以外の者に買収者登場前の時価の半額で株式を取得させ、買収者の持株割合を低下させることになります。
信託型ライツプランのSPC型では、平時のうちに、買収者だけが行使できないという差別的行使条件を付した新株予約権をSPCに対して無償で発行し、SPCは信託銀行へ信託します。
信託銀行は買収者登場時の株主(受益者)のために新株予約権を信託勘定内で管理します。
そして買収者登場(受益者確定)後、信託銀行は、全株主(受益者)に対して、管理していた新株予約権を無償で交付し、買収者以外の者に買収者登場前の時価の半額で株式を取得させ、買収者の持株割合を低下させる仕組みです。
黄金株とは、合併承認決議や取締役の選解任決議に対して拒否権を持つ特殊な株式のことです。
黄金株は、種類株式を活用することにより特定の第三者に発行することができます。
定款の変更が必要であるため、株主総会の特別決議が必要です。
黄金株のメリットとしては、買収者が現経営陣に取って代わる株主総会の決議を拒否できることです。
一方、黄金株のデメリットとして、株主平等の原則に基づくと、黄金株に拒否権を付与する行為は平等ではないという意見を主張する株主が出てくる可能性があることが挙げられます。
ホワイトナイトとは、友好的な会社による合併や新株の引受による子会社化のことです。
ホワイトナイトのメリットとして、友好的な関係に基づき増資が行えることが挙げられます。
一方、デメリットとしては、たとえ友好的な企業であるにしろ、他社に自社を買収されてしまうこと自体には変わりない点が挙げられます。
クラウンジュエルとは会社の重要財産をホワイトナイトに営業譲渡することを言います。
大規模なものは焦土戦略と呼ばれます。クラウンジュエルのメリットとして、会社に対する買収意欲をそぐことができることが挙げられます。
一方、デメリットとして、クラウンジュエルについての意思決定を行う取締役が善管注意義務や忠実義務違反を問われる可能性があることがあります。
ゴーイング・プライベートとは、株式上場を廃止することです。
ゴーイング・プライベートのメリットとして、市場における短期的圧力を回避した長期的思考に基づく経営を実現しうることが挙げられます。
一方、デメリットは社会的な信用が毀損する可能性があることが挙げられます。
チェンジ・オブ・コントロール条項は主要株主の異動や経営陣の交替などにより、ライセンス契約が即時解約されたり、融資契約が即時返済を迫られたりする条項を盛り込む仕組みのことです。
チェンジ・オブ・コントロール条項のメリットは対象会社に対する買収意欲をそぐことができる点です。
一方、デメリットは友好的買収の際にも問題になりうる点です。
株式相互保有とは、友好的な会社に株式を保有してもらうことです。
そのメリットは、買収防衛策として活用できるほか、安定的かつ長期的な取引関係を構築しやすいことです。
一方デメリットは、株式相互保有する場合で、自らが発行する株式の25%以上[21]を保有される場合、当該会社の発行株式を保有していても議決権行使できないことです。[21]
増配で株価引上げをはかることも買収防衛策になります。
そのメリットとして、増配は、その企業の財務戦略明確化のメッセージとなるため、比較的株価にプラスの影響を与えるといわれています。
一方デメリットとして、内部留保が減り、投資の自由が制限されることが挙げられます。
[17]M&A実務の基礎 p.291
[18]M&A実務の基礎 p.295
[19]企業買収を日本経済の活力につなげるための対応 (meti.go.jp)
[20]敵対的買収防衛策(企業価値防衛策)の整備(meti.go.jp)
[21]会社法308条1項
敵対的買収の買収者側のメリットとして、買収先の経営権を取得できる点が挙げられます。
敵対的買収で経営権を握ると、経営戦略を実行できる上に、経営資源を獲得できます。
自社の既存事業と買収対象企業の事業との間でシナジー効果の発生が見込めます。
シナジー効果の例としては、コストダウンに繋がるコストシナジーや売上アップに繋がる売上シナジーなどがあります。
敵対的買収が成功すると、企業の成長へと繋がり、事業規模が拡大しえます。
企業が成長を持続させるには、意図的に事業構造を転換しなければなりません。
市場環境が変化する中で、基本的には特定の製品や事業が永久に成長し続けるということはあり得ないと考えてよいでしょう。
買収後に経営体制を変革できることは大きなメリットです。
例えば、組織は戦略に従うというように、買収後の経営戦略に合わせて、被買収企業の組織構造を見直すことなどから、経営体制を変革します。
敵対的買収は会社のあり方を株主に問うことになります。
それと関連して、株主の支持を得るため、経営方針が株主の利益に繋がるものとなりやすいことが敵対的買収のメリットとして挙げられます。
敵対的買収は、現経営陣から反発・拒否を招きます。
また、名の知れた企業ほど買収防衛策をしっかりと講じている傾向があるので、簡単には買収できません。
そのため、敵対的買収の成功率は高くありません。
TOB以外で敵対的買収を行う場合、株式の買い取りを進めた結果、目標とする議決権割合を取得できずに高いコストで取得した株式を抱え込んでしまう可能性があります。
買収者が買収対象企業のイメージや伝統を壊してしまうケースもありえます。
買収成功が買収対象企業の悪いイメージを生み出したりすることがあります。
買収対象企業の従業員は敵対的買収が行われたことで、退職してしまう可能性があります。
また敵対的買収によるイメージ低下により、顧客が離れてしまったりすることもありえます。
買収者の株価は上がることが多いといえます。
買収が成功すれば、今後の事業拡大などの期待が上がることなどが理由です。
しかし、近年ではかえって株価が下がる事例もありますので一概には言えません。
次に、買収対象企業の株価も上がることが多いでしょう。
株式公開買付による影響が大きいと考えられます。
しかし買収終了後は、買収防衛策などにより下がることもありえます。
新生銀行: 法人営業・ストラクチャードファイナンス等[22]
SBIホールディングス:金融サービス事業等[23]
譲渡企業:このM&Aは、支配権の取得を意図していながら買付数に上限のある部分買付けであり、残存株主に不利益が生じるおそれがあること、および、公開買付価格は低水準であり、新生銀行の本源的価値を反映した価格と考えられないことにより反対[24]
譲り受け企業:新生銀行をSBIホールディングスの連結子会社とするに足る議決権比率を取得し、SBIホールディングスグループと新生銀行グループの事業上の提携を構築・強化すること[25]
東京製綱:ワイヤロープ等の製造および販売等[27]
日本製鉄:鉄鋼の製造・販売等[28]
譲渡企業:株主共同の利益はもとより、すべてのステークホルダーの共同の利益の毀損につながりかねないと反対
譲り受け企業:企業価値向上[28]
大戸屋ホールディングス:定食店「大戸屋ごはん処」等のグループ会社の管理等[30]
コロワイド:飲食店の経営等[31]
譲渡企業:企業価値を棄損すると認識していたためTOBに反対[32]
譲り受け企業:譲渡企業の成長戦略を実現するための資本関係の強化[33]
デサント:スポーツ用品およびこれらに関するものの製造と販売[35]
伊藤忠商事:繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において国内、輸出入及び三国間取引を行うほか、国内外における事業投資[36]
譲渡企業:企業価値及び株主共同の利益に資さないばかりか、それらを害するおそれが大きいと判断して反対[37]
譲り受け企業:企業価値の更なる向上[38]
ソレキア:テクノロジー・プロダクツ事業等[41]
フリージア・マクロス:機械等の製造から供給まで行う「製造供給事業」等[42]
譲渡企業:企業価値・株主価値の棄損の可能性が否定できない[43]
譲り受け企業:株式保有によるROEの向上経営[44]
サンヨーホームズ:戸建住宅事業等[47]
日本アジアグループ:空間コンサルティング事業等[48]
譲渡企業:企業価値の向上は認められないとして反対[49]
譲り受け企業:資本関係の更なる強化[50]
新華ホールディングス・リミテッド:アプリケーションの開発等[52]
テクノグローバル:プラスチック製品設計支援等 [53]
譲渡企業:公開買付者の事業の詳細は不明な点が多いとして反対
譲り受け企業:安定株主として対象者の現経営陣に対して継続的な支援と助言等を行うため[54]
セゾン情報システムズ:HULFTビジネス等[56]
ECMマスターファンドSPV:エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが運用するファンドですが、詳細については公開されていません。
譲渡企業:株主利益を害するとして反対[57]
譲り受け企業:純投資目的[56]
[22]有価証券報告書(shinseibank.com)
[23]事業内容|SBIホールディングス
[24]SBI地銀ホールディングスによる当行株式に対する公開買付けに関する意見表明(反対、但し賛同のための条件を提示)のお知らせ(shinseibank.com)
[25]新生銀行株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ (sbigroup.co.jp)
[26]新生銀行の株式に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ(sbigroup.co.jp)
[27]会社概要|東京製綱
[28]日本製鉄株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ(tokyorope.co.jp)
[29]変更報告書No.5(日本製鉄)
[30]会社概要|大戸屋ホールディングス
[31]会社概要|コロワイド
[32]意見表明報告書(大戸屋ホールディングス)
[33]公開買付報告書(コロワイド)
[34]変更報告書No.1(コロワイド)
[35]会社概要|デサント
[36]会社概要|伊藤忠商事
[37]BSインベストメント株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ(descente.co.jp)
[38]デサント株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ (itochu.co.jp)
[39]変更報告書No.13(伊藤忠商事)
[40]公開買付報告書(BSインベストメント)
[41]事業内容|ソレキア
[42]有価証券報告書(フリージア・マクロス)
[43]意見表明報告書の訂正報告書(フリージア・マクロス)
[44]公開買付届出書(佐々木ベジ)
[45]変更報告書No.8(フリージア・マクロス)
[46]変更報告書No.10(フリージア・マクロス)
[47]事業概要|サンヨーホームズ
[48]有価証券報告書(日本アジアグループ)
[49]意見報告書の訂正報告書(サンヨーホームズ)
[50]公開買付届出書(日本アジアグループ)
[51]大量保有報告書(日本アジアグループ)
[52]会社概要|ビート・ホールディングス・リミテッド
[53]テクノグローバル–会社概要
[54]テクノグローバルによる当社株式に対する公開買付けへの反対の意見表明のお知らせ(beatholdings.com)
[55]新華ホールディングス・リミテッド株式に対する公開買付けの結果に関するお知らせ(technoglobal.co.jp)
[56]ECMマスターファンドSPV1による当社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ (saison.co.jp)
[57]意見表明報告書の訂正報告書(saison.co.jp)
[58]有価証券報告書(セゾン情報システムズ)
[59]変更報告書No.26(エフィッシモ・キャピタル・マネジメント)
富士興産:燃料油等の仕入販売[60]
アスリード・キャピタル:投資ファンド
譲渡企業:企業価値ひいては株主の皆様共同の利益の最大化を妨げるとして反対
譲り受け企業:株式の非公開化が企業価値の向上に繋がるとの考え[61]
買収防衛策に基づく新株予約権の無償割当てを取締役会で決議し、さらに株主総会でTOBへの反対意見が可決されたことにより、アスリード・キャピタルのTOBは失敗に終わりました。
日邦産業:産業資材全般の販売等[64]
フリージア・マクロス:各種機械類の製造、販売等[65]
譲渡企業:株主の意思、少数株主の利益を軽視しているとして反対[66]
譲り受け企業:対象会社の持分法適用会社化及び対象者との資本業務提携の交渉に際しての交渉力の向上を目的[67]
フリージア・マクロス及びその関係者が保有している限り、新株予約権の行使はできないが、それ以外であれば新株予約権1個につき日邦産業の普通株式1株を対価として取得する旨と、定められた期間までにフリージア・マクロスが公開買付けを撤回すれば、有償ではなく無償で新株予約権を取得する旨を決議したことにより、フリージア・マクロスのTOBは失敗に終わりました。
ぺんてる:文具事務用品の製造販売等[70]
コクヨ:オフィス等の家具の製造等[71]
譲渡企業:他社の支配に服さず独立性を堅持することを大切にしたいとして反対[72]
譲り受け企業:ぺんてる及びコクヨ社双方の利益の拡大及び企業価値の向上[73]
コクヨは議決権の過半数を占めることを目的に株式取得を進めましたが、プラスがホワイトナイトとしてぺんてる社の株式取得を進めたため、結果としてコクヨは議決権の過半数を取得できませんでした。
ユニゾホールディングス:不動産業等[76]
エイチ・アイ・エス:旅行事業等 [77]
譲渡企業:シナジー創出は困難として反対[78]
譲り受け企業:新規事業の開始や企業規模の拡大[79]
エイチ・アイ・エスのTOBに対抗して、ホワイトナイトとしてソフトバンクグループ傘下のフォートレス・インベストメント・グループがTOBを仕掛けた結果、エイチ・アイ・エスのTOBに対する応募がなく、議決権比率を伸ばすことができませんでした。[81]
ブルドックソース:ソースの製造・販売[82]
スティール・パートナーズ:投資ファンド
譲渡企業:株主の共同の利益の毀損につながるとして反対[82]
譲り受け:明確な目的を明らかにせず
ブルドックソースはスティール・パートナーズ以外の株主のみが行使できる新株予約権を株主に交付、スティール・パートナーズには新株予約権を行使できない代わりに金銭を交付するとした。[83]この結果、スティール・パートナーズは目標の議決権を達成できずに失敗しました。
ニッポン放送:放送法に基づく一般放送事業(AMラジオ放送)等
ライブドア:コンピュータ・ネットワークに関するコンサルティング等
譲渡企業:マスコミとして担う高い公共性の確保のため反対
譲り受け企業:シナジー効果を得ること
ニッポン放送はフジテレビに新株予約権の割当てを公表したが、ライブドアが新株予約権の発行差し止め仮処分を東京地裁に申請し、東京高裁はライブドアの主張を認め、新株予約権の発行差し止めの仮処分を決定しました。[85]
この後、ニッポン放送が保有しているフジテレビ株式をソフトバンク・インベストメントに貸借することで、ニッポン放送に対して敵対的買収を行ったライブドアによるニッポン放送を通じたフジテレビ株式の議決権行使を回避したことは、クラウンジュエルの一つに該当するといわれています。[86]
そして、ライブドアとフジテレビを中心に業務提携等に関する協議が続けられた結果、フジテレビによるニッポン放送の完全子会社化、フジテレビによるライブドアへの資本参加及びライブドアとフジテレビの業務提携を柱とした基本合意が成立しました。[87]
西武ホールディングス:西武鉄道など関係会社管理等[88]
サーベラス:投資ファンド
譲渡企業:実質的な議論もなく、適切な過程を踏んでいないとして反対
譲り受け企業:上場申請取り下げ
西武ホールディングスの幹部によると、「沿線の自治体や地域住民の後押しが効いた」とのことでした。
[60]会社情報|富士興産
[61]アスリード・ストラテジック・バリュー・ファンド及びアスリード・グロース・インパクト・ファンドによる当社株式に対する公開買付けに関する意見表明(反対)及び株主意思確認を当社第91 回定時株主総会で行うことのお知らせ(富士興産)
[62]買収防衛策に基づく新株予約権の無償割当て及び新株予約権の無償割当てに係る基準日設定に関するお知らせ (富士興産)
[63] アスリード・ストラテジック・バリュー・ファンド及びアスリード・グロース・インパクト・ファンドによる当社株式に対する公開買付けの撤回に関するお知らせ(富士興産)
[64]日邦産業|会社概要
[65]事業内容|フリージア・マクロス
[66]フリージア・マクロスによる当社株式に対する公開買付けに関する意見表明(反対)の概要
(nip.co.jp)
[67]日邦産業株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ(freesiamacross-extruder.com)
[68]「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」に基づく新株予約権の有償取得又は無償取得に関するお知らせ (nip.co.jp)
[69]フリージア・マクロスによる当社株式に対する公開買付けの撤回及び新株予約権の無償取得に関するお知らせ (nip.co.jp)
[70]会社案内|ぺんてる
[71]企業情報|コクヨ
[72]コクヨによる「ぺんてる株式の買付け方針に関するお知らせ」等に関する当社見解|ぺんてる
[73]ぺんてる株式会社の株式の買付け方針に関するお知らせ(コクヨ)
[74]コクヨのぺんてる買収、プラスが対抗案 争奪戦に: 日本経済新聞
[75]ぺんてる株式の買受けの結果に関するお知らせ|ぺんてる
[76]企業情報|ユニゾホールディングス
[77]会社概要|HISグループ
[78]意見表明報告書の訂正報告書(ユニゾホールディングス)
[79]ユニゾホールディングス株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ (his.co.jp)
[80]公開買付届出書(サッポロ)
[81]公開買付報告書(HIS)
[82]スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド-エス・ピー・ヴィーⅡ・エル・エル・シーによる当社株券等に対する公開買付けへの反対の意見表明並びに新株予約権無償割当て及び関連議案の定時株主総会への付議に関するお知らせ(bulldog.co.jp)
[83]当社定時株主総会特別決議に基づく新株予約権無償割当てに関するお知らせ(bulldog.co.jp)
[84]我が国M&Aの現状と課題(sangiin.go.jp)
[85]平成17年(ヨ)第20021号 新株予約権発行差止仮処分命令申立事件 (courts.go.jp)
[86]M&A実務の基礎 p.295[87]見直しを迫られる株主と企業の関係(sangiin.go.jp)
[88]会社概要|西武ホールディングス
[89]西武HD、米サーベラスTOBに反対表明「上場を阻害」:日本経済新聞
[90]西武HD社長、サーベラス提案反対「株主に要請」:日本経済新聞
ここまで敵対的買収について、概要、スキーム、防衛策、メリット・デメリット、成功事例・失敗事例について説明してきました。
敵対的買収について、しっかりとイメージできたという方もいらっしゃるでしょう。今後敵対的買収について分析を行うときは、今回の記事を参考にしてください。
(執筆者:公認会計士 西田綱一 慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、一般企業で経理関連業務を行い、公認会計士登録を行う。その後、都内大手監査法人に入所し会計監査などに従事。これまでの経験を活かし、現在は独立している。)