業務提携とは?メリットや進め方、資本提携・M&Aとの違い
- 執筆者: 相良 義勝 (京都大学文学部卒 / 専業ライター)
業務提携は他社の資源を活用して事業成長を図る施策のひとつです。同様の施策である資本提携・M&Aとの違いや、業務提携の種類、メリット・デメリット、進め方、契約方法、事例を解説します。
業務提携とは、複数の独立した企業が経営資源を出しあって協力体制を築き、一社単独では達成が難しい課題を解決して競争力向上や事業成長を図る施策です。提携する分野や目的、企業間の関係などにより多種多様な業務提携の形態が生じ、それぞれの形態に応じた契約が取り結ばれます。
業務提携と同様の目的で取り交わされる企業間契約に資本提携とM&Aがあり、業務提携は業務委託とも共通した側面を持っています。業務提携、資本提携、M&A、業務委託には根本的な相違点がありますが、戦略上の選択肢として相互に比較検討される対象でもあります。
業務提携の典型的な類型として、販売提携、技術提携、共同開発提携、生産提携の4つがあげられます。他に調達提携、流通提携、包括提携などがあります。
製品の開発力・供給力に優れたA社と販売力に優れたB社が提携し、B社の販売資源(販売網・人材・販促ノウハウなど)を介してA社製品の販売を行うのが販売提携です。販売提携には以下のような契約形式があります。
B社がA社製品を購入し、自らの計画と管理に基づいて販売を行う形式です。B社は自由に価格設定などを行える反面、自社で在庫を抱え、購入者に対して直接的に責任を負うことになります。
B社がA社の販売活動を代理し、A社の在庫をA社の販売計画・管理に基づいて販売する形式です。A社が価格設定などを自らコントロールし、購入者に対して直接的に責任を持つことになります。
本部企業(フランチャイザー)と複数の加盟店企業(フランチャイジー)の間で取り結ばれる契約で、以下の3つの要素を持っています。
A社が有する技術資源(知的財産権、ノウハウなど)をB社に有償で提供し、B社がそれを用いて開発・生産などを行うのが技術提携です。両者が互いに独自の技術を提供しあうパターンもあります。
複数の企業が技術力・開発力や人材・資金などを持ち寄り、共同で新しい技術や製品の開発を目指すのが共同開発提携です。当事者が互いに技術を提供しあうという意味で、技術提携の一種とも言えます。
A社がB社に生産方法や仕様を提供し、B社の生産力を自社の管理のもとで活用するのが生産提携です。B社から見れば、A社のノウハウやブランドを活用して生産事業の競争力を高めるのが生産提携であり、販売提携の側面も合わせ持っています。生産提携の代表例としてOEMとODMがあります。
A社(委託者)が提供する設計・生産方法の詳細や技術指導に基づき、B社(受託者)がA社ブランドの製品を生産する形態をOEMと呼びます。B社から見れば自社の製造品をA社のブランドで販売するということになります。
B社(受託者)が開発・設計から生産まで行った製品をA社(委託者)が自らのブランドで販売する形態をODMと呼びます。A社が製品の開発・設計と生産をB社に委託する場合と、B社が開発済みの製品をA社に売り込む場合があります。OEMよりもさらに販売提携の要素が強い形態だと言えます。
先進国大手企業が委託者となり、特定分野について高い技術力を持つ開発途上国企業が受託者となるのがODMの典型的なケースです。
商品・原材料・部品を共同で購入する調達提携や、物流施設の共同利用や販売先への共同配送を行う物流提携などがあります。
また、複数の事業分野にわたって提携して総合的な協力体制を築く包括提携という形態もあります。
業務提携と資本提携・M&Aは資本の移動の有無という点で異なり、資本提携とM&Aは支配権(経営権)の移動という点で異なります。
2社(の株主)の間で株式が譲渡・交換されたり、自己株式(会社が保有している自社株)や新株の取得を通して増資が行われたりすることを資本の移動と呼びます。業務提携は資本の移