アパレル業の売却価格相場、M&A動向・事例
アパレル事業の売却・M&Aは、「後継者不足の解決」や「EC事業の強化」といった戦略を遂行する手段として役立ちます。アパレル事業の売却について、事例や売却額の相場、メリットをくわしく解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)

アパレル業界の概要
はじめに、アパレル業界の定義や市場規模、現状を解説します。
アパレル業界の定義
精選版日本国語大辞典によると、アパレル(apparel)には「服装」や「装い」という意味があります。[1]
また、経済産業省 製造産業局が取りまとめた「アパレル・サプライチェーン研究会 報告書」では、アパレル産業を「製品の製造に関わる事業者、企画・流通・販売に関わるアパレル企業によって構成される」としています。[2]
以上より、アパレル業界とは「衣料品を取り扱う企業の集まり」であると言えます。
具体的な業態としては、主に以下に挙げたものが当てはまります。
- アパレルメーカー(商品の企画や製造を手がける業態)
- アパレル物流業(アパレル商品の物流を手がける業態)
- アパレル小売業(メーカーや物流業者から仕入れた商品を販売する業態)
- 製造小売業(デザインの企画から商品の販売までを一貫して手がける業態)
また、「アパレル商品に用いられる原材料を製造している業者」や「繊維商社」、「ECサイトや通販でアパレル商品を販売する業者」もアパレルの業態に含まれます。
アパレル業界の市場規模
経済産業省の「繊維産業の現状と経済産業省の取組」によると、2017年における国内アパレル業界の市場規模は10.4兆円です。
バブル期の1990年は市場規模が約15兆円ありましたが、その後は2010年ごろまで右肩下がりで市場が縮小し、2010年〜現在までは市場規模は横ばいとなっています。[3]
一方で、アパレル製品の供給量は、1990年〜2017年にかけて約20億点から40億点に倍増しています。
また、衣料品の購入単価・輸入単価は1991年と比較して60%ほどの水準まで下がっています。[3]

出典:経済産業省「繊維産業の現状と経済産業省の取組」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/200129seni_genjyou_torikumi.pdf)一部抜粋
以上より、衣料品の単価低下が主な要因となって、供給量自体は増えているにもかかわらず市場規模が縮小していると考えられます。

M&A市場の現状と動向 今後の展望も解説
M&Aの市場は、後継者不足問題の深刻化などを理由に拡大してきました。しかし2020年は、コロナ禍の影響で市場が縮小しました。公認会計士が、M&Aの市場の動向および今後の展望を徹底解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)
アパレル業界の現状
アパレル業界における近年の特徴としては、下記の2点が挙げられます。
Eコマース市場が拡大している
前述した経済産業省のデータによると、衣類・服飾雑貨等のEC市場規模は2013年(1.16兆円)以降右肩上がりに拡大し、2018年には1.77兆円となりました。
またEC化率も、2013年から2018年にかけて7.47%から12.96%まで上昇しました。[3]

出典:経済産業省「繊維産業の現状と経済産業省の取組」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/200129seni_genjyou_torikumi.pdf)一部抜粋
以上のデータから、アパレル業界ではEコマース市場が急速に拡大していると言えます。
今後も、IT技術の発展や消費者による購買様式の変化などにより、EC市場は拡大することが見込まれます。
一方で、人口減少が進む日本において「ECサイトによるアパレル商品の販売」が拡大するに伴い、実店舗には単なる売り場としての機能ではなく、ショールームや倉庫機能を併せ持った戦略的な拠点としての役割が重要になってくると言われています。[2]
商品開発力やクリエイション力が課題となっている
前述した「アパレル・サプライチェーン研究会報告書」では、「商品開発力の低下」や「クリエイション力の不足」がアパレル業界の課題として挙げられています。[2]
アパレル業界では、コストを削減する目的で、商品の企画を外部企業に委託するケースがあります。
外部の企業に商品企画を任せていることで、「独自性のある商品の開発」や「ブランドの価値を顧客に示すこと」ができず、価格の競争力でしか消費者に訴求できない(商品開発力が低下している)アパレル企業は少なくありません。
また、「ビジネススキル」や「資金力」が不足していることを理由に、若手のデザイナーがビジネスの現場で中々成長できないことも問題となっています。
若手・中堅デザイナーが主力となれない現状が続いている結果、既存アパレル企業のクリエイション力が不足している、という指摘も少なくありません。
こうした課題を解決するために、国内アパレル企業には、「ブランディング」や「高付加価値のデザイン創出」、「若手デザイナーの育成」といった施策に注力することが求められています。
[1] アパレルとは(コトバンク)
[2] アパレル・サプライチェーン研究会報告書(経済産業省 製造産業局)
[3] 繊維産業の現状と経済産業省の取組(経済産業省 生活製品課)
アパレル業界における売却・M&Aの最新動向
近年のアパレル業界における売却・M&Aには、主に下記2つの特徴があります。
大手企業による海外アパレル会社の買収が進んでいる
国内人口の減少やZOZOTOWNをはじめとしたアパレル ECサイトの成長、海外ブランドの上陸などの影響により、アパレル会社を取り巻く競争環境は厳しさを増しています。
このような状況下において、国内大手のアパレル企業は海外進出を目的として、海外で事業活動を行うアパレル会社の買収を進めています。
たとえばユニクロで有名なファーストリテイリングは、2012年にアメリカに拠点を置くアパレル企業「J Brand Holdings, LLC」を買収しました。[4]
また、業界大手のオンワードホールディングスは、2016年に中国で衣料品の生産事業を行う恩瓦徳開成有限公司(現:樫山有限公司)を買収しました。[5]
今後も国内人口の減少や海外市場の活性化が続くことで、海外アパレル会社の買収は加速すると考えられます。

買収とは?M&Aとの違い・メリット・手法・事例・手続きを解説
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クロスボーダーM&Aとは?メリットや手法、有名事例を徹底解説
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EC事業の強化やDX化を目的に売却・M&Aを行うアパレル会社も少なくない
前述したとおり、アパレル業界ではECサイトの市場規模が急速に拡大しています。
それに伴い、EC領域の強化やビジネスモデルのDX化を図る目的で、売却・M&Aを実施するアパレル会社も多いです。
たとえば、アパレルメーカーや実店舗を運営するアパレル小売会社が、ECサイトで製品を販売する目的で、ECサイトを運営する企業を買収するケースは少なくありません。
また、M&Aによって中小規模のアパレル会社が大手アパレル会社に傘下入りし、資金・ノウハウ不足などを理由に課題となっていたDX化を加速させるケースも多いです。

M&Aとは?目的・手法・メリット・流れを解説【図解でわかる】
M&A(エムアンドエー)とは、Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で「会社あるいは経営権の取得」を意味します。今回はM&Aの意味・種類・目的・メリット・基本的な流れ・税金・手数料など、全般的にわかりやすく解説します。
[4] 米国J Brand Holdings, LLCの持分取得に関するお知らせ(ファーストリテイリング)
[5] 沿革(オンワードホールディングス)
アパレル業界における売却・M&A事例13選

アパレル業界で実施された売却・M&Aの事例を13例紹介します。
事例ごとに、M&Aの目的や用いられた手法を解説しますので、アパレル会社・事業の売却やM&Aに対する理解を深めたい方は参考にしてください。
特に、前半の5例は2021年に実施された最新の売却・M&Aです。
そのため、アパレル業界における最新のM&A動向を知りたい方もご確認ください。
【アパレル×AR開発】アダストリアとプレティア・テクノロジーズの資本提携
譲渡企業の概要
プレティア・テクノロジーズ:ARクラウドおよび各種ARサービスの企画・開発・運営事業を展開
譲り受け企業の概要
アダストリア:30種類を超えるブランド(グローバルワークなど)を国内外で約1,400店舗(2021年3月時点)展開[6]
M&Aの目的・背景
譲り受け企業:最先端のARテクノロジーを活用したDX化の推進、新たな顧客体験の実現(自宅で衣料品をARで試着できる機能の開発など)[7]
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2021年3月
- 手法:資本提携
- 結果:アダストリアがプレティア・テクノロジーズに出資
- 出資金額:1億円[7]

システム開発・受託開発の最新売却・M&A事例、売却価格の相場
システム開発・受託開発会社の売却は、後継者不足などの課題を背景に増加傾向です。システム開発・受託開発会社の売却・M&A事例やメリット、売却価格の相場、高値での売却可能性を高める方法を徹底解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)
【アパレル×アパレル】オンワードホールディングスとサンマリノの資本業務提携
譲渡企業の概要
サンマリノ:婦人服の企画提案、OEM事業を運営。アジア・欧州における幅広い情報収集・素材調達力が強み。
譲り受け企業の概要
オンワードホールディングス:オリジナルブランドや海外ブランドを多数展開する大手アパレル企業[8]
M&Aの目的・背景
両社は、下記4つの目的で資本業務提携を実施しました。
- 原材料調達から顧客まで一気通貫したサプライチェーンの構築
- 顧客満足の向上
- OEM・ODM 事業の拡大
- 人財の相互交流による最適なモノづくり体制の創出
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2021年1月
- 手法:資本業務提携(資本提携は発行済み株式の一部取得によって実施)
- 結果:サンマリノが発行済み株式総数の4%をオンワードホールディングスに売却
- 出資金額:不明[9]
【アパレル×アパレル】ユニオンゲートグループに対するフィーゴの会社売却
譲渡企業の概要
フィーゴ:ユナイテッドアローズの子会社として、革製品や紳士服、婦人服、雑貨等の企画・輸入・販売事業を運営[10]
譲り受け企業の概要
ユニオンゲートグループ:バッグやゴルフアパレルのブランド「BRIEFING(ブリーフィング)」を展開[11]
M&Aの目的・背景
譲渡企業(親会社):シナジー効果を創出しながらフィーゴの成長を実現することが困難であるため(選択と集中の実施)
譲り受け企業:ブランドポートフォリオの拡充、アメリカ・アジアでのビジネス拡大
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2021年3月
- 手法:株式譲渡(全株式の売却)
- 結果:ユナイテッドアローズがフィーゴの全株式をユニオンゲートグループに売却
- 譲渡金額:不明[11]
【ファンド×アパレル】ユニゾン・キャピタルに対するデイトナ・インターナショナルの株式売却
譲渡企業の概要
デイトナ・インターナショナル:全国53店舗の直営店とECサイトでアパレル小売事業を展開
譲り受け企業の概要
ユニゾン・キャピタル:1998年に創業したプライベート・エクイティ・ファンド[12]
M&Aの目的・背景
譲渡企業:後継者への事業承継[13]
譲り受け企業:企業基盤の強化
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2021年4月
- 手法:株式譲渡(株式の過半数売却)[13]
- 結果:デイトナ・インターナショナルが過半数の株式をユニゾン・キャピタルに売却
- 譲渡金額:不明[14]

M&Aにおけるファンドの役割 種類やメリット・デメリットも解説
M&Aで投資ファンドは、出資等を通じて企業価値を高め、株式売却などで利益を得ることを目的とします。M&Aにおけるファンドの役割や種類、ファンドとM&Aを行うメリットとデメリットをくわしく解説します。(公認会計士 西田綱一 監修)
【アパレル×アパレル】宝島ジャパンに対するアパレルECサイトの事業売却
譲渡企業の概要
大阪府でアパレル商品や雑貨、小物を取り扱うECサイトを運営していた企業
譲り受け企業の概要
宝島ジャパン:アパレルショップ3店舗の運営、モンゴルの商品を日本に紹介する事業を展開
M&Aの目的・背景
譲渡企業:事業の選択と集中
譲り受け企業:アパレル事業の拡大、自社事業のデジタル化
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2021年8月
- 手法:事業譲渡
- 結果:譲渡企業が宝島ジャパンに対して、ECサイトや在庫などを売却

アパレル販売会社が同業の通販サイトをM&A。with/afterコロナを見据え、ECサイトを強化
ビズリーチ・サクシード経由で、アパレル販売や貿易事業を行う株式会社宝島ジャパン(茨城県)が、EC・通販サイト事業(所在地:大阪府)を譲受しました。同社は、with/afterコロナを見据え、ECサイトを強化します。

ECサイト・ネットショップの売却価格相場や所要期間、最新事例を解説
ネットショップの売却価格は、営業利益の1〜3年分が相場です。近年は、Amazonや楽天等のショッピングモールを活用したネットショップの売却が活発に行われています。売却事例やメリットを徹底解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)
【IT×アパレル】Zホールディングスに対するZOZOの株式売却
譲渡企業の概要
ZOZO:アパレルECサイト「ZOZOTOWN」を運営
譲り受け企業の概要
Zホールディングス:検索エンジンやECサイト、ニュースアプリなどのサービスを展開
M&Aの目的・背景
譲渡企業:顧客層や販路の拡大、商品カテゴリーの拡充
譲り受け企業:アパレル領域におけるEC事業の強化[15]
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2019年11月
- 手法:TOB(公開買付け)
- 結果:ZホールディングスがZOZO株式の50.1%を取得
- 譲渡金額:約4,007億円[16]

EC業界におけるM&A・売却事例30選【図解で相場も解説】
EC業界では、市場拡大などの影響でM&Aが活発化しています。EC事業のM&Aでは、主力事業への集中などのメリットを得られます。EC事業のM&Aについて、成功させる方法や事例、相場をくわしく解説します。(中小企業診断士 鈴木裕太 監修)
【アパレル×アパレル】TSIホールディングスに対する上野商会の株式売却
譲渡企業の概要
上野商会:AVIREXやSchott、ROYAL FLASHなどのアパレルブランドに関する企画や生産、販売などの事業を運営
譲り受け企業の概要
TSIホールディングス:衣料品の企画や生産、輸入、専門店・百貨店への卸売、直営店での小売販売を展開[17]
M&Aの目的・背景
譲り受け企業:ブランドポートフォリオの拡充、グローバルな成長促進
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2018年10月
- 手法:株式譲渡(一部株式の売却)
- 結果:TSIホールディングスが上野商会株式の79%を取得
- 譲渡金額:150億1,600万円[18]
【アパレル×アパレル】夢展望に対する住商ブランドマネジメントの会社売却
譲渡企業の概要
住商ブランドマネジメント:全国77店舗(EC店舗を含む)で婦人向け衣料品の企画・販売事業を運営
譲り受け企業の概要
夢展望:10代後半〜30代女性向けに衣料品・靴・雑貨などの商品をECサイトで販売する事業を運営
M&Aの目的・背景
譲り受け企業:事業領域の拡大、相互の販売機会拡大、コストや販売面でのシナジー効果獲得、EC比率の向上
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2018年10月
- 手法:会社分割、株式譲渡(会社分割によって一部の事業を切り離した上で株式譲渡を実施)
- 結果:親会社である住友商事が住商ブランドマネジメントの全株式を夢展望に売却
- 譲渡金額:5億円[19]

子会社売却とは?流れやメリット、手法、税金、事例を徹底解説
子会社の売却には、「不採算事業の切り離し」や「売却収入の獲得」などのメリットがあります。今回の記事では、公認会計士が子会社を売却する流れや理由、手法、メリット・デメリット、税金などを詳しく解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)
【アパレル×アパレル】ナルミヤ・インターナショナルに対するハートフィールの会社売却
譲渡企業の概要
ハートフィール:小中学生の男児向けアパレルブランドを自社のECサイトを中心に展開
譲り受け企業の概要
ナルミヤ・インターナショナル:国内百貨店やECサイトを通じて、 多種多彩な子供服を企画・販売する事業を展開
M&Aの目的・背景
譲り受け企業:男児向けブランドの獲得、さらなる事業拡大
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2019年3月
- 手法:株式譲渡(全株式の売却)
- 結果:ハートフィールが全株式をナルミヤ・インターナショナルに売却
- 譲渡金額:7億円[20]
【多角化企業×アパレル】ライザップグループに対するジーンズメイトの株式売却
譲渡企業の概要
ジーンズメイト:ジーンズを中心としたカジュアルウェアの販売事業を展開
譲り受け企業の概要
ライザップグループ:美容・健康関連事業、アパレル関連事業、住関連ライフスタイル事業などを多角的に展開
M&Aの目的・背景
譲渡企業:マーケティング力向上による顧客基盤の拡大、協業による仕入機能の強化、販売チャネルの拡大、自己資本の強化、成長に必要な投資資金の確保
譲り受け企業:アパレル事業の強化[21]
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2017年
- 手法:公開買付けと第三者割当増資の併用
- 結果:ジーンズメイトがライザップグループに対して一部の株式を売却
- 譲渡金額:約15億6,500万円(公開買付けと第三者割当増資の合計金額)[22]
【アパレル×アパレル】モリトに対するマニューバーラインの会社売却
譲渡企業の概要
マニューバーライン:アパレル用品やマリンレジャー、スノーボード用品などの輸入販売、卸売事業を展開
譲り受け企業の概要
モリト:服飾資材(履物・アパレルなど)と身の回り品を中心とする生活関連資材に特化した事業を展開
M&Aの目的・背景
譲渡企業:後継者不在による事業承継
譲り受け企業:グループ収益基盤の拡大・強化、商品の相互販売
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2018年4月
- 手法:株式譲渡(全株式の売却)
- 結果:マニューバーラインが全株式をモリトに対して売却
- 譲渡金額:約35億7,200万円[23]
【卸売×アパレル】鷹岡に対する大東紡織の子会社が運営する事業の売却
譲渡企業の概要
ロッキンガムペンタ:大東紡織の子会社として繊維・アパレル事業を運営
譲り受け企業の概要
鷹岡:紳士服地、婦人服地、繊維製品、洋品雑貨の卸売業
M&Aの目的・背景
譲渡企業(親会社):業績悪化に伴う子会社の解散(不採算事業からの撤退)[24]
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2015年6月
- 手法:事業譲渡
- 結果:ロッキンガムペンタが専門店事業を鷹岡に売却
- 譲渡金額:7,000万円[25]
【持株会社×アパレル】ゲートウェイホールディングスに対するマーファスの株式売却
譲渡企業の概要
マーファス:婦人向け衣料品の販売事業を運営
譲り受け企業の概要
ゲートウェイホールディングス:発電事業などを運営する子会社を抱えていた持株会社(現在は法人格が消滅)[26]
M&Aの目的・背景
譲り受け企業:アパレル領域への新規参入
M&Aの手法・成約
- 実行時期:2013年3月
- 手法:株式譲渡(一部株式の売却)
- 結果:ゲートウェイホールディングスがマーファス株式の90%を取得
- 譲渡金額:1,800万円[27]

アパレル業界のM&A動向と事例18選
アパレル業界は現在大きな転換期を迎えており、M&Aが活発に行われています。アパレル業界およびM&Aの動向を解説します。また、2019年から2021年に行われたM&Aの最新事例もくわしく紹介します。(執筆者:京都大学文学部卒の企業法務・金融専門ライター 相良義勝)

M&A成功事例40選 大企業・中小企業・業界別|2021年版
今回は大企業・中小企業別、業界別に厳選したM&A事例40選を紹介します。国内・海外の大企業事例から中小企業事例まで、譲渡・譲り受け企業の概要、M&Aの目的・M&A手法、成約に至るまでを解説します。コロナ禍以降の最新M&A事例も紹介します。
[6] AR開発のプレティア、アダストリアと資本提携を締結(PR TIMES)
[7] アダストリア、プレティアに出資 自宅でAR試着(日本経済新聞)
[8] 事業セグメント(オンワードホールディングス)
[9] サンマリノと資本業務提携(オンワードホールディングス)
[10] 子会社であるフィーゴの譲渡に関するお知らせ(ユナイテッドアローズ)
[11] フィーゴ株式取得のお知らせ(ユニオンゲートグループ)
[12] ユニゾン・キャピタル
[13] デイトナ・インターナショナル創業者の鹿島研社長が電撃退任 独占インタビュー(WWDJAPAN)
[14] デイトナ・インターナショナルの株式取得に関するお知らせ(ユニゾン・キャピタル)
[15] ZOZO株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ(ヤフー)
[16] Zホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの結果に関するお知らせ(ZOZO)
[17] グループ会社(TSI HOLDINGS)
[18] 上野商会の株式の取得に関するお知らせ(TSIホールディングス)
[19] 住商ブランドマネジメントの株式の取得に関するお知らせ(RIZAPグループ)
[20] ハートフィールの株式の取得に関するお知らせ(ナルミヤ・インターナショナル)
[21] RIZAPグループによる当社株券に対する公開買付けに関する意見表明及び資本業務提携のお知らせ(ジーンズメイト)
[22] ジーンズメイト株式に対する公開買付けの結果に関するお知らせ(RIZAPグループ)
[23] マニューバーラインの株式取得に関するお知らせ(モリト)
[24] 子会社の解散予定および特別清算の方針に関するお知らせ(大東紡織)
[25] 連結子会社の一部事業の譲渡および特別利益の発生に関するお知らせ(大東紡織)
[26] 石山ゲートウェイが破産 業績粉飾で社長ら有罪(SankeiBiz)
[27] マーファスの株式の取得及びアパレル事業への進出に関するお知らせ(ゲートウェイホールディングス)
アパレル会社の売却価格相場

アパレル会社・事業を売却したい経営者にとって、「売却金額の相場」を理解しておくことは非常に重要です。
なぜなら、相場を知らずに買い手企業との価格交渉に臨むと、安い金額で買い叩かれるおそれがあるためです。
また、相場以上の金額での売却にこだわるあまり、買い手企業との交渉が成立しにくくなる可能性もあります。
このような事態を避けるためにも、どのくらいの金額で売却できるかを知っておくことは大切です。
この章では、アパレル会社・事業の売却価格相場や、実際に売却価格を決定する際に用いる企業価値評価の手法を紹介します。
時価純資産+営業利益の2〜5年分が相場となる
アパレル会社・事業に関しては、時価純資産に2〜5年分の営業利益を加算した金額が売却金額の相場となります。
たとえば時価純資産が5,000万円、過去3年間の平均営業利益が2,500万円のアパレル事業は、概ね以下の金額で売却できる計算です。
- 売却金額(目安) = 5,000万円 + 2,500万円 × 3 =1億2,500万円

年買法とは?企業価値の計算方法やメリットを図解で詳しく解説
年買法とは、時価純資産に営業利益の3〜5年分を加算して買収額を求める方法です。営業利益は営業権を表し、年数は将来性を基に決定します。公認会計士が、年買法の計算式やメリット・デメリットを解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)

M&Aの相場【公認会計士が図解でわかりやすく解説】
M&Aの相場や企業価値の計算方法を、公認会計士が詳しく解説します。相場を知ることで、買い手は相場より高い金額での会社買収を避けられます。一方で売り手は、より高い金額で会社売却することも可能になります。(公認会計士 西田綱一 監修)
実際の売却価格は買い手企業との交渉で決定する
前述した計算式に当てはめることで、誰でも簡単にアパレル事業の売却金額に関する目安を知ることができます。
ただし、実際のM&Aでは、買い手企業との交渉によって売却価格を決定します。
そのため、以下の要素によって相場と大きく乖離した売却価格となる可能性があります。
特に注意すべきは、偶発債務や倒産リスクが発見されることで、相場よりも低い金額で売却せざるを得なくなることです。
早い時期から「財務状況の健全化(有利子負債の削減)」などに取り組み、価格を下げる要因を排除することが大切です。
一方で、高値で売却できる可能性を高めたいならば、シナジー効果が見込まれる買い手候補を選定したり、競合他社にない強みを確立した上でM&Aに臨んだりすることが効果的となるでしょう。
企業価値評価で用いる3つのアプローチ

アパレル事業に限らず、売り手企業はなるべく高い金額で売却したいと考え、買い手企業は極力安い金額で買収したいと考えます。
相反する考えを持つ両社が交渉に臨むことで、意見が対立し交渉が平行線となる可能性があります。
そこで、実際のM&Aでは「企業価値評価(バリュエーション)」の結果を交渉時の基準とすることが一般的です。
企業価値評価のアプローチは、「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」、「コストアプローチ」の3種類に大別されます。
インカムアプローチは、評価対象企業が将来獲得すると見込まれるキャッシュフローなどを基準に企業価値を算出する方法です。
具体的な手法に、「DCF法」や「配当還元法」などがあります。
マーケットアプローチは、評価対象企業と事業内容が類似する上場企業や、類似する過去のM&A取引、市場の平均株価などを基準に企業価値を算出する方法です。
具体的には、「類似企業比較法」や「類似取引比較法」、「市場株価法」などの手法を用います。
コストアプローチは、評価対象企業の純資産をベースに企業価値を算出する方法です。
具体的な手法に、「簿価純資産法」や「時価純資産法」があります。
アプローチごとに、メリットやデメリット、適している場面は異なります。
したがって、状況に応じて使い分けたり、複数の方法を併用したりすることが重要です。

M&Aのバリュエーション(企業価値評価)とは【図解で解説】
M&Aのバリュエーションとは、企業価値を評価することです。さまざまな手法があるため、状況に応じて使い分けることが重要です。会計のプロである公認会計士が、バリュエーションの方法をくわしく解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)
アパレル会社を売却するメリット
アパレル会社の売却では、以下に挙げた6つのメリットを期待できます。
- 後継者不足の問題を解決できる
- 従業員の雇用や取引先との契約を維持できる
- 優良企業の傘下に入ることで、事業の安定化・成長を実現できる
- 会社・事業の売却により資金を獲得できる
- 個人保証から解放される
- 廃業にかかるコストをかけずに済む
以下では、それぞれのメリットをくわしく解説します。
後継者不足の問題を解決できる
顧客から人気を集めているブランドを持っていても、後継者がいないことを理由に廃業するアパレル会社は少なくありません。
後継者がいなければ、黒字経営でも廃業せざるを得なくなります。
そんな後継者不足のアパレル会社にとって、問題を解決する手段となり得るのが会社や事業の売却です。
M&Aを行えば、自社のアパレル事業を外部の経営者・法人に引き継いでもらえます。
つまり、後継者がいないアパレル会社でも事業承継を行えるのです。

事業承継(事業継承)とは?税制や補助金、方法、税金【図解で解説】
事業承継(事業継承)とは、会社の経営権を後継者に引き継ぐことです。事業承継の方法は親族内承継、社内承継、M&Aの3種類です。事業承継を行う理由、方法ごとのメリット・デメリット、流れ、税金、税制や補助金などの支援策をわかりやすく解説します。
従業員の雇用や取引先との契約を維持できる
後継者不足や経営不振を理由に会社を畳むと、従業員との雇用契約や取引先との契約は打ち切りとなります。
その結果、従業員の収入が大幅に減少して生活苦となったり、取引先の売上が減少して連鎖倒産したりするおそれがあります。
M&Aによって外部の経営者・法人にアパレル事業を売却すれば、ブランドだけでなく、従業員や取引先との契約も引き継ぐことができます。
そのため、廃業にともない従業員や取引先に迷惑をかけずに済むでしょう。

会社売却のメリット・デメリット 相場や事例、従業員の処遇も解説
会社売却の方法、手続きの流れ、相場の計算方法、株式譲渡と事業譲渡の場合の違いを分かりやすく解説します。また、会社売却が従業員・経営者に与える影響も解説します。会社売却を行いたい経営者様は必見です。
優良企業の傘下に入ることで、事業の安定化・成長を実現できる
前述のとおり、アパレル業界では大手と中小・零細企業による同業種M&Aが盛んに行われています。
アパレル会社を売却すると、売却先企業の傘下に入ることができます。
売却先が大手の優良企業である場合、M&A後は豊富なリソース(資金や人材、ノウハウなど)を活用して、アパレル事業を運営できるようになります。
その結果、売却前と比べて安定的に収益を確保できるようになったり、アパレル事業の成長スピードを加速させたりできる可能性があります。
会社・事業の売却により資金を獲得できる
株式譲渡によって会社ごと売却した場合、株主である経営者は株式の売却利益を受け取れます。
一方で事業譲渡によって一部の事業や資産を売却すれば、会社が事業の売却利益を獲得できます。
数百万円〜数億円ほどの利益が手元に残るため、主力事業や新規事業の立ち上げに資金を投入したり、リタイア後の生活資金に充てたりすることができます。
もしくは、経営者個人のローン返済に使うこともできるでしょう。

イグジット(エグジット、EXIT)とは?意味をくわしく解説
イグジット(エグジット、EXIT)とは、M&AやIPOで利益を得ることです。ハーベスティングとも言われるイグジットは、事業の投資資本を回収する出口戦略です。公認会計士がイグジットの意味を解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)
個人保証から解放される
銀行などの金融機関から資金調達する際、経営者個人が負債に個人保証を提供するケースは少なくありません。
会社が倒産した場合、個人保証を負っている経営者に対して、債権者から借金の返済を要求されることになります。
その結果、経営者自身の財産を返済のために提供せざるを得なくなったり、経営者個人が自己破産する事態となったりする可能性があります。
このとおり、個人保証は経営者にとって非常にハイリスクなものです。
M&Aによって会社ごと売却すれば、会社の債務も引き継がれます。
そのため、M&Aにともない経営者の個人保証は外してもらえることが一般的です。
個人保証から解放されることで、借金を背負う心配をせずにリタイア後の生活を過ごせるようになるでしょう。

ハッピーリタイアのためのM&A メリットや成功のポイント、事例
M&Aによるハッピーリタイアには、創業者利益を獲得できるメリットなどがあります。ハッピーリタイアの意味やM&Aのメリット、M&Aによるハッピーリタイアを成功させるポイント、事例をくわしく解説します。(公認会計士 西田綱一 監修)
廃業にかかるコストをかけずに済む
後継者不足などの理由で廃業する場合、解散登記や公告、専門家への依頼などで数万円〜数十万円もの費用がかかります。
特にアパレル会社の場合、大量に抱えている在庫を処分する必要が生じることで、他の業種と比べて廃業時に多額のコストがかかる可能性があります。
会社や事業を売却すれば、登記や在庫処分などにかかる廃業コストをかけずに、会社経営からリタイアすることができます。
そのため、最終的に手元に残るキャッシュも廃業するケースと比較して多くなる傾向があります。

廃業とは?倒産・閉店・休業との違い、手続、費用、回避方法を徹底解説
廃業とは、会社や個人事業を辞めることを意味します。廃業の原因は業績悪化だけではありません。この記事では、廃業の意味や原因、手続きなどをくわしく解説します。また、廃業を回避する方法も紹介します。(執筆者:京都大学文学部卒の企業法務・金融専門ライター 相良義勝)

M&Aのメリット・デメリットを買い手・売り手ごとにわかりやすく徹底解説
M&Aをする最大のメリットは時間を買えることです。買い手は新規事業や既存事業の拡大にかかる時間を買えます。売り手は投資回収・現金化の時間を短くできます。今回はM&Aのメリット・デメリットを解説します。
アパレル会社の売却案件一覧
M&Aサクシードでは、無料でアパレル事業や会社の売却先を探すことができます。
案件を登録すれば、審査を通過した優良な買い手企業からM&Aのオファーを受け取れます。
また、交渉や契約成立に至るまでのサービスもすべて無料で利用できるため、少ない予算でアパレル会社の売却を行いたい経営者におすすめです。
一方で買い手企業にとっては、買収したいアパレル事業・会社を直接探せる点がサービスの利点となっています。
法人審査をクリアした質の高いアパレル会社のみが案件一覧ページに掲載されています。
また、掲載されている案件の規模や業態も多種多様ですので、会社の戦略や予算に応じて買収先を選定できるでしょう。
まとめ
アパレル事業・会社の売却では、概ね「時価純資産+2〜5年分の営業利益」で算出した金額が相場となります。
人気ブランドや希少な在庫などを抱えていれば、相場以上の金額で売却できる可能性もあります。
また、事業承継の実現や事業成長の加速など、売却で得られるメリットは他にもたくさんあります。
後継者不足や資金不足などの課題を抱えている売り手経営者にとって、アパレル会社の売却は最適な戦略となるでしょう。

アパレル業界のM&A動向と事例18選
アパレル業界は現在大きな転換期を迎えており、M&Aが活発に行われています。アパレル業界およびM&Aの動向を解説します。また、2019年から2021年に行われたM&Aの最新事例もくわしく紹介します。(執筆者:京都大学文学部卒の企業法務・金融専門ライター 相良義勝)
(執筆者:中小企業診断士 鈴木 裕太 横浜国立大学卒業。大学在学中に経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士資格を取得(休止中)。現在は、上場企業が運営するWebメディアでのコンテンツマーケティングや、M&Aやマーケティング分野の記事執筆を手がけている)