合併と買収の違いとは?メリットや事例、M&Aについて解説
- 記事監修: 鈴木 裕太 (中小企業診断士)
M&Aとは、合併と買収の総称です。合併は複数の会社を1つに統合する手法である一方で、買収は片方の会社が他方の会社から事業や会社を買うM&Aの手法です。今回は、合併と買収の違いをわかりやすくお伝えします。
M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略称です。つまりM&Aは、大きく「合併」と「買収」という2つの種類に大別されるわけです。この章では、合併と買収の違いをご説明します。
合併とは、複数の会社を1つの会社に統合させるM&Aの手法です。合併における最大の特徴は、法人格の消滅を伴う点です。合併の実務では、ある会社の法人格を消滅させて、消滅した会社が保有していたすべての権利義務を他の会社に引き継ぎます。
主に合併は、グループ内の組織再編を目的に活用されています。複数の子会社間で機能を統合するケースが最たる例です。また、株式を対価として他社を完全子会社化する目的で活用されるケースもあります。
一方で買収とは、片方の会社がもう片方の会社から事業や会社を買うM&Aの手法です。一部の事業または資産のみを買収するケースや、株式を100%取得することで会社ごと買収するケースもあります。
合併との間にある最大の違いは、法人格の消滅を伴う会社が存在しないことです。例えば株式譲渡により会社丸ごと買収されても、株主(≒経営者)が変わるだけで法人格自体は消滅しません。また、M&Aを実施する目的も合併とは根本的に異なります。買収は、経営資源(人材やノウハウなど)の獲得や多角化、リスク軽減、事業規模の拡大などを目的に活用されることが多いです。
合併には、「吸収合併」と「新設合併」という2種類の手法があります。この章では、それぞれの特徴と事例をご紹介します。
吸収合併とは、合併によって消滅する会社の権利・義務のすべてを、合併後存続する会社が引き継ぐM&Aの手法です。[1]法人格が消滅する側の会社は「消滅会社」、消滅会社から権利や義務を引き継ぐ会社は「存続会社」といいます。
吸収合併が持つ特徴は以下のとおりです。
吸収合併の事例としては、印刷事業を主力とする日本創発グループによるグラフィックグループの吸収合併が有名です。
日本創発グループが本件M&Aを行なった目的は、グラフィックグループが持つ企画やデザインのノウハウを取得するためでした。このM&Aによって、劇的な変化が続く印刷市場における競争力強化が期待できるとのことです。
なお本件の吸収合併は、1:6という合併比率でグラフィックグループに対する株式の割り当てが行われました。[2]
新設合併とは、合併によって消滅する会社の権利・義務のすべてを、新しく設立する会社が引き継ぐM&Aの手法です。[3]
新設合併には、主に以下4つの特徴があります。
新設合併の事例として、富士ゼロックスによるグループ内再編をご紹介します。機械メーカーの大手である富士ゼロックスは、2010年に分散していた生産および開発の機能を再編・統合する目的で、グループ会社同士による新設合併を実行しました。
本件のM&Aでは、主に2種類の再編が実施されました。まず1つ目は、生産に関する機能の統合です。生産に関する機能を担う3社が、新しく設立された「富士ゼロックスマニュファクチュアリング」に統合されました。
2つ目は、開発に関する機能の統合です。具体的には、開発の機能を担っていた富士ゼロックスエンジニアリングという会社が、新設の「富士ゼロックスアドバンストテクノロジー」に吸収されました。[4]
[1] 会社法第2条27項(e-Gov)
[2] グラフィックグループ株式会社の株式取得及び吸収合併による日経印刷株式会社の完全子会社化に関するお知らせ(日本創発グループ)
[3] 会社法第2条28項 (e-Gov)
[4] 開発・生産機能を再編・統合開発、生産新会社を設立(富士ゼロックス)