化粧品会社のM&Aの動向、売却価格、事例30件を徹底解説
- 法務監修: 相良 義勝 (京都大学文学部卒 / 専業ライター)
化粧品関連企業のM&Aが活発化しています。化粧品ビジネスのデジタル化・EC化やアジアメーカーの台頭、コロナ禍など、業界を取り巻く状況と絡めながら、M&Aの動向やメリット、売却価格、近年の事例をわかりやすく解説します。
新型コロナウィルス感染拡大以前は外国人観光客によるインバウンド需要が増大し、国内需要も好調で、化粧品の市場規模は成長基調にありました。[1]
出典:化粧品市場に関する調査(2021年)(矢野経済研究所)を基に弊社作成
ところが、コロナ禍によりインバウンド需要は急激に落ち込み、外出自粛やテレワークが広がりマスク着用が一般化したことで国内需要も減退し、化粧品業界は大きな痛手を受けました。
中長期的には人口減少による全体的な需要縮小が予想されており、今後の化粧品産業にとって海外市場の開拓が大きな課題となっています。
近年では中国向けの輸出や越境EC(国をまたいだECでの売買)が伸びているものの、現在のところ海外大手メーカーに比べて日系大手メーカーの海外売上比率は低い水準にあります。[2]
出典:化粧品産業ビジョン(経済産業省)をもとに弊社作成
韓国や中国の化粧品メーカーの台頭による競争激化も懸念されます。
販売チャネル別に見ると、化粧品の売上はドラッグストア・百貨店・量販店・化粧品専門店などの実店舗での販売や訪問販売の割合が大きく、ECの比率はまだ低水準にあります(下図)。
図:2019年のチャネル別販売実績構成費
出典:化粧品産業ビジョン(経済産業省)、2020年度 化粧品産業動向調査報告書(独立行政法人製品評価技術基盤機構)
そうしたなか、ベンチャー企業を中心にSNSなどを活用したデジタルマーケティングやECを基軸とする商品開発・販売が試みられ、消費者一人ひとりに合わせたパーソナライズ商品の提供や、メーカーによる自社ECサイトでの直接小売販売(いわゆるD2C)が広がりつつあります。
大手メーカーもベンチャー企業や研究機関との協働で商品開発のデジタル化を進めており、コロナ禍をきっかけに営業・販売においてもデジタル技術の活用を加速しているところです。
今後はリアルとバーチャル(オフラインとオンライン)を融合した形のオムニチャネルが化粧品産業において一般化していくものと見られます。
従来、化粧品ブランドはプレステージ(プレミアム)ブランドとマスブランドに二分されていましたが、その中間を狙ったマスプレステージ(マステージ、プレミアムマス)ブランドが近年広がりを見せています。
さらに、特定の悩みにフォーカスした商品や年齢・嗜好に沿った商品、独自の自然成分を用いた商品などが続々と登場し、化粧品の品目・ターゲットの多様化・細分化が進み、多種多様なニーズに対応したニッチな市場が開拓されてきています。
近年では男性向け化粧品の市場も着実に拡大しています。[3]
デジタル技術を活用して個人ごとに最適な化粧品を提案するカウンセリングサービスなども、実店舗・オンラインの双方で拡大していくことが予想されます。
食品・飲料メーカーや医薬・化学メーカーなどが、既存事業で培った技術やネットワークをベースに化粧品事業に参入する例が多く見られます。
大手小売チェーンでも、化粧品関係のオリジナル商品・PB商品を導入する動きが盛んです。[2]
ニッチ商品をD2Cで販売するモデルが一般化したことで、小規模な事業者による参入も容易になっています。
[1]化粧品市場に関する調査(2021年)(矢野経済研究所)
[2]化粧品産業ビジョン(経済産業省)
[3]メンズコスメティックス、ヘアケア・ヘアメイクの国内市場を調査(富士経済)
ブランドポートフォリオ拡充、デジタル化推進、販売チャネル拡大などを目的として、化粧品メーカー同士のM&Aが盛んに行われています。
コロナ禍などをうけて、事業の選択と集中(不採算・ノンコア事業の切り離しとコア事業への経営資源集中)を図るためにM&Aを活用するメーカーの例もあります。
開発力強化を目的とした化粧品メーカーと化粧品原料メーカーのM&Aや原料メーカー同士のM&Aも盛んです。
化粧品メーカーが化粧品のECやデジタルマーケティングを展開する企業とM&Aを行う例も見られます。
M&Aを通して異業種から化粧品事業に参入する例も少なくありません。
総合商社やファンドはメンズコスメや化粧品D2Cなどの成長分野に属する企業への投資を盛んに行っており、コスメ・ファッション分野の海外大手企業による日系ベンチャー企業への投資も活発化しています。
買い手・売り手の業種の組み合わせと買い手から見たM&Aの目的・メリットをまとめると以下のようになります。
買い手 | 売り手 | 目的・メリット |
---|---|---|
化粧品メーカー | 化粧品メーカー |
|
化粧品メーカー | 化粧品原料メーカー |
|
化粧品原料メーカー | 化粧品原料メーカー |
|
化粧品メーカー | 化粧品EC・D2C |
|
小売(ドラッグストアなど) | 化粧品メーカー |
|
マーケティング会社 | 化粧品D2C |
|
商社 | 化粧品メーカー |
|
ファンド | 化粧品メーカー |
|
その他の異業種企業 | 化粧品関連企業 |
|
売り手側では以下のような目的でM&Aを実施しています。
M&Aの売却価格は企業価値評価に基づいて交渉により決定されます。
企業価値評価には3つの考え方があり、それぞれにいくつかの手法があります。
考え方 | 代表的な手法 |
---|---|
売り手企業の収益性を直接的に計算(インカムアプローチ) | DCF法(事業計画に基づいて将来のキャッシュフローを予測し、ファイナンス理論の手法で現在の価値に直した上で、事業外資産などを加味して企業価値とする) |
市場による評価をもとに算定(マーケットアプローチ) | 市場株価法(株式時価総額の平均値などを企業価値とする) 類似会社比較法(事業内容などが類似した上場企業との比較で非上場企業の価値を評価) |
純資産額をもとに評価 (コストアプローチ) | 時価純資産法(「時価純資産=時価資産-時価負債」を企業価値とする) 年倍法(「時価純資産+直近年度営業利益の数年分」を企業価値とする) |
企業価値評価の手法には一長一短があるため、できる限り合理的な評価内容とするために複数の手法が併用されることがあります(DCF法と市場株価法など)。
非上場中小企業の売却では簡便な手法である「年倍法」がしばしば用いられます。「年倍法」における「直近年度営業利益の数年分」は、現在の利益をもとに将来の収益性を大雑把に評価したものです。一般的な相場は「営業利益×3~5」とされます。
M&Aにおいては以下の2つの企業価値を考えることができます。
通例、シナジーの大きさに相当する分だけBのほうが大きくなります。
価格交渉においては、売り手としてはA以上のなるべく高い金額、買い手としてはB以下のなるべく安い金額を求めるのが合理的です。最終的には、Aの金額にある程度のプレミアムを上乗せした額に落ち着くのが通例です。
年倍法で言えば、時価純資産の部分は同一ですが、営業利益にかける年数は(M&Aによるシナジーの分だけ)AよりBのほうが大きくなります。
例えば、Aでは「営業利益×3」、Bでは「営業利益×4」だったとすると、3に上乗せする小数点を交渉により決定することになります。
コンビ:ベビー用品の大手メーカーで、機能性食品や独自開発美容成分を用いた自然派化粧品の製造なども展開[4]
アイケイ:独自のマーケティング力と企画・製造・物流の一貫体制を強みとして化粧品・食品・フィットネス商品などを展開[5]
プライムダイレクト:アイケイの子会社で、ダイレクトマーケティングを強みとしてTVショッピング・ECを中心とする事業を展開[6]
譲渡企業:ダイレクトマーケティングの深い知見を有する企業に化粧品ブランドを譲渡し、譲渡後も業務提携(美容成分の研究開発や原料生産・供給)を通して同ブランドの事業成長に関わりつつ、総合的な提携の継続により両社のさらなる発展を図る[4]
譲り受け企業:ダイレクトマーケティング事業・セールスマーケティング事業の販路を通した譲受ブランド商品の販売拡大[6]
Sparty:パーソナライズ化粧品(ヘアケア・スキンケア・ボディメイク)のD2C事業を展開[7]
ロレアル:パリに本社を置く大手化粧品メーカー[7]
譲渡企業:増資により調達した資金とロレアルの戦略的専門知識・流通ネットワークを活用し、パーソナライズ分野における競争優位性の獲得とサービスの向上・世界展開を図る
譲り受け企業:高い成長が期待できるパーソナライズ化粧品分野への投資[7]
I-ne:デジタルマーケティングを強みとして美容ケア用品・家電ブランドの自社開発および共同開発の事業を展開[8]
ピュマージ:ドラッグストア・調剤薬局を全国展開するサンドラッグの子会社で、化粧品・美容雑貨のセレクトショップ運営事業、サンドラッグ向け化粧品製造販売事業などを展開[9]
譲り受け企業:サンドラッググループのオリジナルブランド強化の一環[10]
ユイット・ラボラトリーズ:通信販売大手・千趣会の子会社で、自社ブランド化粧品・医薬部外品の製造・卸売・通信販売やOEMなどの事業を展開[11]
アクシージア:エイジングケア・目元ケアなどのニッチなテーマ性のある化粧品・サプリ・美容機器やサロン向けスキンケアブランドの製造販売事業を展開[12]
譲渡企業:両社の長所を活かし事業のさらなる成長・発展を図る[13]
譲り受け企業:
Reternal:ヘアケアブランドのD2C事業とインターネット広告代理店事業を展開[14]
リバースラボ:スキンケアやファンデーションのD2C事業を展開[15]
譲り受け企業:ブランドポートフォリオ拡充による事業拡大
Lycka:天然由来成分を用いたヘアケア・ボディケア製品や増毛サロン向け製品の製造事業と増毛サロン運営事業を展開[16]
ジェイフロンティア:美容品・健康食品・医薬品の開発と自社ECを通した販売、オンライン診療・服薬指導・処方薬宅配プラットフォームの提供、ヘルスケア企業向けプロモーション支援などの事業を展開[17]
譲り受け企業:
ロート製薬:OTC医薬品(市販薬)や機能性化粧品、機能性食品、再生医療用製品などの製造販売事業を展開[18]
三洋化成工業:界面活性制御技術をコア技術として3,000種に及ぶ機能性化学品を製造し、近年では化粧品、バイオ・医薬、農業、エネルギー、エレクトロニクスなどの分野に注力[19]
化粧品や再生医療・医療機器の分野における協業(新素材・新製品の開発、新分野への適用拡大、人材交流など)[18]
ノイン:SNSマーケティングとDXをベースに、Z世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)を主なターゲットとするコスメショッピングアプリ「NOIN」を運営[20]
新日本製薬:様々な世代に向けたスキンケアを中心とする化粧品、健康食品、市販薬の製造販売事業を展開[21]
譲り受け企業:Z世代顧客データベース・SNSマーケティング力を有するノインとの協業によりZ世代向け商品開発やDXを加速[20]
Hair O’right:100%生分解性を持つボトルやゼロカーボンシャンプーなど、環境・持続可能性に配慮した商品開発を行う台湾の化粧品メーカー[22]
b-ex:利用者の健康や環境・持続可能性に配慮したヘアサロン向け化粧品の開発を行うメーカーで、海外他社ブランドの国内外販売も展開[22]
譲渡企業・譲り受け企業:
トレミー:スキンケア商品を中心に化粧品・医薬品の受託製造(OEM・ODM)事業を展開[24]
ナック:個人・企業向け宅配水や建築コンサルティングなどの事業を手がけ、子会社を通して化粧品製造販売事業も展開[25]
譲り受け企業:美容・健康分野を中心に商品開発ノウハウを深化させ、新商品開発と新規ビジネス展開を図る[24]
LIGUNA:サステナビリティを重視したスキンケア商品・雑貨・食品の企画・開発・EC、 飲食店運営、 不動産賃貸・管理などの事業を展開[26]
ユーグレナ:微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)の大量培養技術をコア技術として、ユーグレナを活用した機能性食品・化粧品の製造販売、バイオ燃料開発などの事業を展開[26]
譲渡企業:
譲り受け企業:
三菱ケミカル:三菱ケミカルホールディングスグループの中核事業会社で、化粧品原料を含む各種機能化学品・素材の製造販売事業を展開[27]
大阪有機化学工業:アクリル酸エステルの生産を基盤として、樹脂原料、電子材料、化粧品原料、機能性材料などの製造販売事業を展開[28]
譲り受け企業:譲渡企業の頭髪化粧品用アクリル樹脂事業を取り込み、化粧品用アクリル樹脂の製品ラインナップ拡充、海外への販売展開、生体適合材料・超親水性コーティング開発への活用を図る[27]
トリコ:サプリメントやフェイスマスクのパーソナライズ商品をサブスクリプション形式で展開[29]
ポーラ・オルビスホールディングス:プレステージブランドとマスプレステージブランドを自社販売網(前者はエステ融合型自社店舗・訪問販売、後者は自社EC・カタログ通販・直営店舗)で展開する大手化粧品メーカーグループの持株会社[30]
譲渡企業:ポーラ・オルビスグループの研究開発技術の活用や生産・物流面の協業により成長加速を図る
譲り受け企業:個性的なブランドの集合体の構築を図る戦略の一環[29]
タカミ:皮膚科クリニック医師が所有するスキンケアブランドのライセンス製品を開発し、サブスクリプション型ECを主軸に百貨店なども含むオムニチャネルでの販売を展開[31]
ロレアル:パリに本社を置く大手化粧品メーカー[31]
譲渡企業:ロレアルグループの科学的・国際的専門知識を活用しブランドのさらなる発展を図る
譲り受け企業:高付加価値・高価格帯ブランドの取り込みによるブランドポートフォリオ補完[31]
マルマンH&B:健康食品・化粧品・禁煙関連商品などの企画・開発・販売事業を展開[33]
イワキ:化粧品・食品原料の商社事業、薬局・ドラッグストア向け一般用医薬品・雑貨の卸売事業、自社企画化粧品の販売・ダイレクトマーケティング事業などを展開[33]
譲り受け企業:ダイレクトマーケティング事業の拡大[33]
ファイブテイルズ:脱毛サロンの運営事業、オリジナルブランド美容・化粧品のEC事業などを展開[34]
かがやくコスメ:全国の生活協同組合を主な顧客として化粧品などの企画提案・販売事業を展開[34]
譲渡企業:かがやくコスメの豊富なリソースを活用し、より組織的な経営を通して事業成長を図る
譲り受け企業:化粧品企画開発・ECのノウハウや販売チャネルの共有を通して事業成長を図る[34]
ビューティードア・ホールディングス:化粧品・医薬部外品の受託製造事業を展開する子会社ビューティードアの経営管理を行う持株会社[35]
粧美堂:ファブレスメーカーとして自社ブランド・OEMによる化粧雑貨・化粧品・服飾雑貨・キャラクター雑貨の企画・販売事業を展開[35]
譲り受け企業:ビューティードアの製造設備・ノウハウを取り込むことで製造も含めた全過程を自社で管理する体制を構築し、多品種小ロット生産によるオリジナル製品事業・OEM事業の展開強化を図る[35]
[4]化粧品事業譲渡・業務提携(コンビ)
[5]事業内容(アイケイ)
[6]連結子会社による事業譲受(同上)
[7]第三者割当増資による資金調達(Sparty)
[8]事業内容(I-ne)
[9]会社概要(ピュマージ)
[10]ピュマージが I-ne 社ブランド「skinvill」を買収(サンドラッグ)
[11]ユイット・ラボラトリーズの株式取得(アクシージア)
[12]ブランド(同上)
[13]アクシージア・グループ参画(ユイット・ラボラトリーズ)
[14]会社概要(Reternal)
[15]ヘアケアブランドNeffy事業譲受(リバースラボ)
[16]HOME(Lycka)
[17]事業内容(ジェイフロンティア)
[18]三洋化成工業との資本業務提携(ロート製薬)
[19]製品情報(三洋化成工業)
[20]ノインと資本業務提携(新日本製薬)
[21]事業紹介(同上)
[22]O'rightと資本業務提携(b-ex)
[23]O’right業務用ヘアケア製品日本初上陸(同上)
[24]トレミーの株式の取得(ナック)
[25]事業・サービス(同上)
[26]LIGUNAの完全子会社化(ユーグレナ)
[27]化粧品用アクリル樹脂事業の譲受(大阪有機化学工業)
[28]事業・製品(同上)
[29]2021年12月期有価証券報告書(ポーラ・オルビスHD)
[30]事業セグメント(同上)
[31]タカミと買収に関する契約を締結(日本ロレアル)
[32]タカミ買収完了(同上)
[33]株式の取得(イワキ)
[34]かがやくコスメによるファイブテイルズの株式取得(ニューホライズン キャピタル)
[35]ビューティードアHDの株式の取得(粧美堂)
リップス:ヘアケア・メンズコスメ商品の開発・販売とヘアサロンフランチャイズの事業を展開[36]
野村キャピタル・パートナーズ:野村グループのプライベートエクイティ投資会社[36]
譲渡企業・譲り受け企業:野村グループ内外のネットワークを活用し、メンズビューティー分野におけるリップスのイノベーションを推進[36]
パーフェクト:美容・ファッション分野向けにAR・AIなどのデジタル技術を活用したソリューションやSaaS・アプリを開発・提供(資生堂も同社サービスを主要ブランドにて導入)[37]
資生堂:スキンケア・メイクアップ・フレグランスなどの製造販売事業を中心に、レストラン・美容室・美容専門学校の運営や事業所内保育所運営サポートなどの事業を展開する企業グループの中核企業 [38]
譲り受け企業:パーフェクトとの関係性強化、新たな領域での協業、DXの加速[37]
メビウス製薬:スキンケアブランドを中心に、化粧品・医薬品・健康食品の製造販売事業を展開[39]
INSTYLE GROUP:経営コンサルティングのインスタイルを中核企業とし、経営コンサルティングのほか不動産、飲食、アパレル、エンターテインメント、ITサービス、美容雑貨(ハワイアンソルト)などの多角的事業を展開する企業グループ[40]
譲渡企業:
譲り受け企業:既存グループ企業とのシナジー追求[39]
DINETTE:美容メディアの運営に加え、同メディアユーザーの声を元に開発したオリジナル化粧品ブランドを主にサブスクリプション形式で展開[42]
大和企業投資:大和証券グループのリソースを活用してベンチャー投資・バイアウト投資を展開[43]
セレス:ポイントサイト「モッピー」を中心とするメディア事業、化粧品や健康食品のD2C事業、スマートフォンアプリ・Webサイト受託開発事業、暗号資産・ブロックチェーン事業、ベンチャー投資事業などを展開するグループの中核企業[44]
MTG Ventures:健康・美容分野の未上場企業を対象としてコーポレートベンチャーキャピタル事業を展開[45]
譲渡企業:以下を目的とした資金調達
Ci FLAVORS:プレミアムマス市場やプレステージ市場向け37ブランドを展開する化粧品メーカー企業群を傘下に持つ企業[46]
Lキャタルトン・アジア:投資会社キャタルトンとラグジュアリーブランドのコングロマリットLVMHなどにより設立された会社で、消費者向けブランドを対象としたプライベートエクイティ投資事業を展開[47]
譲渡企業:Lキャタルトンの有する専門知識・ノウハウ・ネットワークの活用による海外展開強化、高品質ブランドのポートフォリオ拡充[46]
譲り受け企業:継続的な市場拡大が見込まれるプレミアムマス分野における成長企業への投資[46]
SHIGETA: パリの自社工場でクリーンビューティー製品(サステナビリティ・倫理・コンプライアンスに配慮した自然派化粧品)の研究開発・製造を行うSHIGETAの日本法人[48]
丸紅:多様な分野において輸出入・国内取引・事業投資・資源開発などの事業を展開する総合商社[49]
譲渡企業・譲り受け企業:今後の市場成長が見込まれるクリーンビューティー分野への進出の第一歩として、丸紅が日本・アジア市場におけるSHIGETAの事業拡大を支援[48]
資生堂:化粧品の製造販売を中心とする事業を展開[38]
CVC Capital Partners:世界23拠点で事業を展開するプライベートエクイティ・ファンド[50]
Advent International Corporation:米国に本社を置くプライベートエクイティ・ファンド[51]
譲渡企業:スキンビューティー分野をコア事業として抜本的な経営改革・事業ポートフォリオ再構築を行い世界的な競争優位性獲得と大幅な利益率向上を図る戦略の一環として、以下のブランドに係る事業を譲渡
B社の親会社の一部株式(35%)を資生堂が取得
これらの譲渡・取得を通して対象事業をCVC Capital Partnersとの合弁事業とし、共同で運営
TACHIAOI:リラクゼーションをコンセプトにしたエステサロン運営、オリジナルコスメECなどの事業を展開[52]
AcroX Holdings:ホテル向けコンセプトルームのプロデュースを中心とした観光コンサルティング事業、地域創生コンサルティング事業などを展開[53]
譲り受け企業:化粧品・サロン事業を取り込み、ホテル向けアメニティの開発や観光に照準を合わせたサロンの展開などを行うことで、多様なニーズに対応するサービス提供体制の構築を図る[53]
Cファクトリー:化粧品・健康食品・美容機器の製造・販売・輸出入、医療機器の販売・輸出入、医療経営コンサルティングなどの事業を展開[54]
ジー・スリーホールディングス:未稼働太陽光発電所の買取・事業化による売電事業、太陽光発電事業者向け発電商材販売、太陽光発電所のオペレーション・メンテナンス、非常用発電機開発・販売などの事業を展開[54]
譲り受け企業:新分野に参入し事業領域を拡大することでリスク分散と収益基盤強化を図る[54]
PORTFOLIOS:スキンケアブランドを初めとするヴィーガン向けライフスタイルブランドを展開[55]
Heart Driven Fund:ゲーム事業・IPビジネス事業などを展開するアカツキ[56]が運営するコーポレートベンチャーキャピタル
East Ventures:シンガポール・インドネシア・日本に拠点を置き、東南アジア地域の企業を主な対象としてベンチャーキャピタル事業を展開[57]
D2C&Co.:丸井グループの子会社で、D2Cブランド企業を対象とした支援サービス(資金提供、オフライン出店活用、物流支援など)を展開[58]
譲渡企業:マーケティング強化・新商品開発・商品改良・海外販売チャネル獲得のための資金調達[55]
バルクオム:サブスクリプション型EC・デジタルマーケティングを主軸に男性向け化粧品ブランド「BULK HOMME」を展開[59]
三井物産:金属資源・エネルギー・機械・インフラ・化学・鉄鋼・生活産業などの分野においてトレーディングと事業経営・事業開発を両輪とするビジネスを展開する総合商社[60]
譲渡企業:出向による人的交流などを通して協業し、国内外での販路拡大を図る[61]
譲り受け企業:ファッション・繊維事業で培ったノウハウや総合商社としてのネットワークを活かし、バルクオムの海外販路拡大や物流・サプライチェーン強化などを支援しつつ、化粧品分野の新規展開・ポジション確立を図る[59]
青山メディカルラボラトリーズ:コスメブランド「MANOEUVRE」を展開[62]
WAOCON:グラフィック・動画・Webサイトのデザイン、デジタルマーケティング、SNSマーケティング、フランチャイズ展開支援などの事業を展開[63]
譲り受け企業:
ジョンマスターオーガニックグループ:ニューヨークヘアサロンのトップスタイリストが立ち上げたオーガニックヘアケア・ボディケア製品メーカー[64]
アナイスカンパニー:ブランド戦略の構築、ブランドの起点となるクリエイティブパッケージ・各種サイト・メディア・コンテンツの制作、広告・PRキャンペーンの企画・実施支援、ECサイト構築・運用支援などの事業を展開[65]
譲り受け企業:既存事業のノウハウ・ネットワークをもとにした譲受ブランド事業の拡大(新商品開発やデザインリニューアル、アジア圏への展開など)[66]
[36]リップスとの資本提携(野村キャピタル・パートナーズ)
[37]パーフェクト社へのマイノリティ出資(資生堂)
[38]事業概要(同上)
[39]メビウス製薬との持分譲渡契約(INSTYLE GROUP)
[40]トップ(同上)
[41]経営体制変更(メビウス製薬)
[42]第三者割当増資・融資による資金調達(DINETTE)
[43]大和企業投資について(大和企業投資)
[44]事業内容(セレス)
[45]Ci FLAVORSへの資本参加(L キャタルトン)
[46]LVMH Relationship(同上)
[47]SHIGETAへの出資参画(丸紅)
[48]事業紹介(丸紅)
[49]会社概要(MTG Ventures)
[50]パーソナルケア事業譲渡(資生堂)
[51]プレステージメイクアップブランドの譲渡(資生堂)
[52]トップページ(TACHIAOI)
[53]TACHIAOIの株式取得(AcroX Holdings)
[54]新会社設立及び事業譲受(ジー・スリーHD)
[55]資金調達を実施(PORTFOLIOS)
[56]サービス(アカツキ)
[57]ABOUT US(East Ventures)
[58]トップ(D2C&Co.)
[59]三井物産がメンズのバルクオムへ出資(繊研新聞社)
[60]事業(三井物産)
[61]三井物産と資本業務提携(バルクオム)
[62]コスメブランド事業譲渡(WAOCON)
[63]トップ(同上)
[64]History(ジョンマスターオーガニックグループ)
[65]about us(アナイスカンパニー)
[66]「SINN PURETÉ」の運営開始(同上)
化粧品業界ではデジタル化・EC化などによるビジネスモデルの変革が進行しており、2020年以降はコロナ禍の影響により従来の業界構造が大きく揺さぶられる状況となっています。
そうしたなか、M&Aによる統合や協業が盛んに試みられており、今後さらにこうした動きが活発化していくことが予想されます。
(執筆者:相良義勝 京都大学文学部卒。在学中より法務・医療・科学分野の翻訳者・コーディネーターとして活動したのち、専業ライターに。企業法務・金融および医療を中心に、マーケティング、環境、先端技術などの幅広いテーマで記事を執筆。近年はM&A・事業承継分野に集中的に取り組み、理論・法制度・実務の各面にわたる解説記事・書籍原稿を提供している。)