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ハッピーリタイアのためのM&A メリットや成功のポイント、事例

M&Aによるハッピーリタイアには、創業者利益を獲得できるメリットなどがあります。ハッピーリタイアの意味やM&Aのメリット、M&Aによるハッピーリタイアを成功させるポイント、事例をくわしく解説します。(公認会計士 西田綱一 監修)

ハッピーリタイア メリット

目次
  1. ハッピーリタイアとは
  2. 中小企業における事業承継の現状
  3. ハッピーリタイアの手法
  4. M&Aによるハッピーリタイアのメリット
  5. M&Aによるハッピーリタイアを成功させるポイント
  6. M&Aによるハッピーリタイアの事例
  7. まとめ

ハッピーリタイアとは

一般的に、ハッピーリタイアとは、豊かな老後資金を確保した上で、悠々自適な引退生活へと入っていくことを意味します。
最近、このハッピーリタイアを目的としたM&Aが増えているとされています。

M&A・事業承継
M&Aとは?目的・手法・メリット・流れを解説【図解でわかる】

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中小企業における事業承継の現状

近年は廃業件数が増加傾向

東京商工リサーチによると、2020年の「休廃業・解散」は4万9,698件(前年比14.6%増)に達し、2000年に調査を開始して以来、最多になりました。[1]

廃業 件数
2020年「休廃業・解散企業」動向調査( 東京商工リサーチ)をもとに作成

政府などによるコロナ禍の支援策の実行により2020年の「企業倒産」は7,773件であり前年比7.2%減少したものの、中長期的な事業の持続可能性の改善には直結せず、休廃業を回避できなかったと考えられます。[1]

M&A・事業承継
廃業とは?倒産・閉店・休業との違い、手続、回避方法を徹底解説

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事業承継を目的としたM&Aの件数が増えている

レコフによると、2020年の事業承継を目的としたM&Aの内、公表されているものの件数は616件です。[2]
2010年の140件に比べて、大幅に増加しています。[2]

一方、非上場企業同士等のM&Aは公表されていません。
そのため、非公表のものも含めた事業承継を目的としたM&Aの件数を正確に知ることは難しいのが実情です。
ただし、2020年の事業承継を目的としたM&Aは、公表されているものと非公表のものを合わせて、年間約4,000件程度だと推測する見方が存在します。[2]

事業承継を目的としたM&Aの件数は、以前より増えていると言うことができるでしょう。

M&A・事業承継
事業承継(事業継承)とは?税制や補助金、方法、税金【図解で解説】

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M&A・事業承継
2020年最新のM&A件数、コロナ禍以降の推移を振り返る

この記事では2020年9月までのM&A成約件数や譲渡金額の推移を紹介します。2019年に譲渡金額の大きかったM&Aランキングや、自社の事業売却を検討する会社の経営者が、コロナ禍で下した決断も紹介します。レ […]

[1]2020年「休廃業・解散企業」動向調査 : 東京商工リサーチ
[2]事業承継|レコフ

ハッピーリタイアの手法

事業継承 手法

親族内承継

親族内承継は現経営者の子供をはじめとした親族に事業を承継させる方法です。

一般的に、他の方法と比べて、企業内外の関係者から心情的に受け入れられやすいこと、後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能であること、相続等により財産や株式を後継者に移転できるため所有と経営が一体となるような承継が期待できること等のメリットがあります。

一方、親族内に経営の資質と意欲を併せ持つ後継者候補がいるとは限らないことや相続人が複数いる場合、後継者の決定・経営権の集中が難しいことがデメリットです。

M&A・事業承継
親族内承継とは?メリット、デメリット、割合、税金【徹底解説】

親族内承継とは、子供や兄弟などの親族に事業を承継する方法です。一方で、親族以外に事業承継する方法を親族外承継と呼びます。関係者からの理解を得やすい点が親族内承継のメリットです。親族内承継の意味や割合、方法、税金を公認会計 […]

親族外承継(M&A等以外/役員・従業員承継)

親族外承継の内、役員・従業員承継は親族以外の役員・従業員に事業を承継する方法です。
経営者としての能力のある人材を見極めて承継できること、社内で長期間働いてきた役員・従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいことがメリットです。

一方デメリットとして、親族内承継の場合以上に、後継者候補が経営への強い意志を有していることがポイントですが、そういった適任者がいないおそれがあることや、後継者候補に株式取得等の資金力が無い場合が多いこと、個人債務保証の引き継ぎ等に問題が多いことが挙げられます。

M&A・事業承継
従業員承継とは|方法、メリット・デメリット、流れ、成功のポイント

従業員承継とは、社内の従業員等に事業を引き継ぐ方法です。後継者候補の選択肢が多い点などのメリットがあります。公認会計士が従業員承継の方法や流れ、デメリット、株価の算定方法を詳しく解説します。 目次従業員承継とは従業員承継 […]

M&A

親族外承継の内、M&Aは株式譲渡事業譲渡等により承継を行う方法です。
親族や社内に適任者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができる等のメリットがあります。
詳しくは後述します。

デメリットとしては、希望の条件(従業員の雇用、価格等)を満たす買い手を見つけるのが困難であることや経営の一体性を保つのが困難であることが挙げられます。

どの手法を用いるにしても、事業承継の流れをしっかりと押さえる必要があります。

事業継承 ステップ
出典:
事業承継ガイドライン(meti.go.jp)

M&A・事業承継
M&Aと事業承継の違いは?自社に合う方法を選ぶポイントも解説

近年、日本で増加傾向にある事業承継問題。後継者不在による廃業を避けるための手段のひとつがM&Aです。今回は、事業承継問題の解決策としてのM&Aの方法・メリット・デメリットをわかりやすく解説します。 目次M […]

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M&Aスキーム(手法)の種類・特徴・メリット・税金を図で解説

M&Aのスキーム(手法)には多くの種類があります。目的にあわせた方法を選ぶことで、利益を最大化することができます。今回は各スキームごとの特徴・メリット・デメリット・かかる税金・成功事例を解説します。(中小企業診断 […]

M&Aによるハッピーリタイアのメリット

創業者利益を獲得できる

M&Aは、M&A対象企業の経営者がそれまでの努力により築き上げてきた事業の価値を、社外の第三者である譲り受け企業が評価して認めることで初めて実現することです。

そのため、M&A対象企業の経営者にとって誇らしいことであると言えます。
そしてその対価としてハッピーリタイアに十分な金額の現金を一括で受け取れるという創業者利益を獲得できる可能性があります。

従業員の雇用を維持できる

事業承継問題の行き詰まりなどによって廃業の危機に直面している中小企業が、既存取引先・地域の同業種・隣接業種企業とのM&Aによって、事業や雇用の継続を実現しているケースは日本中で多くみられます。

M&A対象企業の雇用維持は、地域活力の維持にもつながります。
地域経済の源泉は、その多くが中小企業によるものであり、中小企業による雇用から成り立っているともいえるからです。

M&A・事業承継
M&Aで従業員はどうなる?雇用や待遇などへの影響を徹底解説

M&Aを実施すると、従業員の雇用契約が継続されるなどのメリットを得られます。ただし、円滑な雇用の引継ぎには、従業員の不安解消が重要です。M&Aが従業員に与える影響やメリットをくわしく解説します。 目次従業 […]

経営者は個人保証から解放される

非上場企業においては、オーナーが個人保証を金融機関やリース会社に差し入れているケースが多いです。
こういった場合は、売り手から買い手に、M&Aの後速やかに個人保証を外すことを求めることも少なくありません。

それに買い手がどのように応じるかは交渉の論点ですが、通常、M&A対象企業のオーナーが引退する場合は、買い手としてはその個人保証を外すよう対応することになります。
2020年度において、経営者保証の提供状況として、借入の全部に経営者保証を提供している割合は44%、借入の一部に経営者保証を提供している割合は36%でした。[3]

経営基盤の強化、事業の成長加速を実現できる

会社を設立し、人を雇い、市場を知り、技術を開発し…、とゼロから事業を育てていくのは非常に時間がかかります。
買い手にとっては、既に存在する企業を買収すれば、一気に市場へのアクセスが可能になります。
特に先行する競合先が既に利益を出しているような市場では、ゼロから始めて追いつくのは容易なことではありません。

このような時間短縮を目的としたM&Aの結果として、会社や事業の成長が加速する可能性があります。

企業譲渡 吸収合併 比較
出典:
中小M&Aの意義 (中小企業庁)

趣味などの時間を確保できる

アーリーリタイアを実現できると、まとまった時間が取れるため、仕事を理由にこれまでできていなかった趣味などに時間を充てることができます。

[3] 中小企業庁:経営者保証のガイドライン

M&A・事業承継
M&Aのメリット・デメリットを買い手・売り手ごとに徹底解説

M&Aをする最大のメリットは時間を買えることです。買い手は新規事業や既存事業の拡大にかかる時間を買えます。売り手は投資回収・現金化の時間を短くできます。今回はM&Aのメリット・デメリットを解説します。 目 […]

M&Aによるハッピーリタイアを成功させるポイント

早いタイミングで決断し、準備を進める

M&Aをより早期に検討し実現することにより、M&Aの後に手元に残る金額が多くなるケースがあります。
また、事業全体としては継続できなくとも、例えば利益計上できている優良店舗の一部事業のみを早期に譲り渡すこと等で事業の一部を継続させることができるケースもあります。

一方で、決断が遅れれば遅れるほどM&Aの選択肢は狭まる傾向にあります。

会社の業績が良いタイミングで会社を売却する

会社の業績が良いタイミングで会社を売却することも非常に重要です。
業績が良くない場合には、資金繰りが尽きてしまい身動きを取れなくなるケースも見られるので、早期の判断が求められることに注意が必要です。
実際、判断が遅れた結果、廃業費用すら捻出できない状況に陥るケースもあります。

ハッピーリタイア後の計画を明確化しておく

M&A対象企業の経営者は、引退後のビジョンを含む希望条件を事前によく考えておく必要があります。例えば、当面は事業に関わり続けたいのか、別の事業に進出したいのか、それとも社会貢献活動や余暇を楽しむといった全く別のことを行いたいのか等です。
ハッピーリタイア後にどのような過ごし方をするかは、本人のその後の人生にとって非常に重要な要素です。

実績豊富な仲介会社やマッチングサイトを利用してM&Aを進める

仲介会社は、売り手・買い手の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関です。

またマッチングサイトは、売り手・買い手がインターネット上のシステムに登録することで、主にマッチングをはじめとするM&Aの手続を低コストで行うことができる支援ツールです。
無料で登録できるものが相当数あり、マッチングのために支援機関に相当額の手数料を支払う資力のない小規模な事業者であっても、M&Aの可能性が大きく広がったと評価されています。

M&Aの成功のためには、特に実績豊富な仲介会社やマッチングサイトを利用してM&Aを進めることが重要です。

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M&Aによるハッピーリタイアの事例

最後に、M&Aサクシードで成約したM&Aの事例を3例紹介します。
ハッピーリタイアを検討している方はぜひ参考にしてください。

【メーカー×メーカー】アサヒメディケアと長野テクトロンのM&A

譲渡企業の概要

アサヒメディケア:介護施設・病院向け離床センサーの製造・販売

譲り受け企業の概要

長野テクトロン:入力装置・表示パネル専門メーカー、医療関連事業なども展開

M&Aの目的・背景

譲渡企業:後継者不在

譲り受け企業:新規事業の開始

M&Aの手法・成約

  • 実行時期:2021年10月[4]
  • 手法:株式譲渡
  • 結果:後継者問題を解決し事業承継を実現。技術者を擁する譲り受け企業とM&Aを行ったことで、取引先の要請に対する対応力を向上させることが可能となった。
成功事例
事業承継・引継ぎ支援センター×M&Aサクシード 地域を超えた全国規模のマッチングが可能に

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【旅館×写真館】桐のかほり 咲楽と小野写真館のM&A

譲渡企業の概要

桐のかほり 咲楽:高級温泉旅館(4室定員9名)を運営

譲り受け企業の概要

小野写真館:フォトスタジオ事業、ブライダル事業、成人振袖事業などを運営

M&Aの目的・背景

譲渡企業:後継者不在

譲り受け企業:事業拡大のため

M&Aの手法・成約

  • 実行時期:2020年10月
  • 手法:事業譲渡
  • 結果:後継者問題を解決し事業承継を実現。「お客さまに感動を与える」という理念が一致する譲り受け企業とM&Aを行ったことで、顧客に親しまれている旅館を存続させることに成功。
成功事例
写真館と予約の取れない小規模旅館のM&A そこにはコロナを乗り越えるシナジーがあった【M&A事例】

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【運送×運送】東航とTRUTH LOGISTICSのM&A

譲渡企業の概要

東航:陸路の運送業

譲り受け企業の概要

TRUTH LOGISTICS:海上・航空輸送、通関ロジスティクスサービス

M&Aの目的・背景

譲渡企業:後継者不在

譲り受け企業:事業拡大のため

M&Aの手法・成約

  • 手法:株式譲渡
  • 結果: 事業承継を実現し、思い入れのある社名や取引先との関係を存続させることに成功。譲渡企業の経営者は、健康なうちに引退し、趣味に没頭できる見通しを立てることができた。
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[4] アサヒメディケアとの株式譲渡契約についてのお知らせ(長野テクトロン)

まとめ

ここまでハッピーリタイアのためのM&Aについて説明してきました。

手法・メリット・成功のためのポイント・実際の事例を挙げたため、しっかりとイメージできた方もいらっしゃることでしょう。
ハッピーリタイアのためのM&Aを実行する際は、早いタイミングで決断し、準備を進めることが特に重要です。

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(執筆者:公認会計士 西田綱一 慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、一般企業で経理関連業務を行い、公認会計士登録を行う。その後、都内大手監査法人に入所し会計監査などに従事。これまでの経験を活かし、現在は独立している。)