M&Aにおけるタームシートは、契約内容の重要点を明確化できる便利なツールです。M&A専門家が実務の視点から、タームシートの重要性や記載項目、書き方のポイントをわかりやすく解説します。(公認会計士監修記事)
買い手の目線におけるM&Aの基本的な流れは、以下のとおりです
タームシートは、基本合意書の締結前に買い手または売り手から、相手先に提示を行います。
交渉のうえ、タームシートが固まり次第、そのタームシートの内容を基本合意書に落とし込んでいきます。
買い手と売り手のどちらからタームシートを提示するかについては、交渉の関係上、どちらも考えられます。
例えば、複数の買い手候補がいる場合には、売り手が最低限この条件でなければ売ることはできないといった条件がタームシートとして提示されることがあります。
上記のM&Aの基本的な流れのうち、「5.基本合意書の締結」がないこともありますが、その場合、デューデリジェンス後、契約交渉の段階でタームシートを利用することもあります。
基本合意書の添付資料としてタームシートを用いることもあり、M&Aのプロセスにおいて、様々な場面で利用することができます。
タームシートの主な機能として、買い手と売り手の間で、M&Aにおける主要な条件は何かということを明確にできる点が挙げられます。
基本合意書や最終契約書の締結前にタームシート上で、主要な条件に合意できていれば、契約書に落とし込んでいく中で、想定していなかった重要な論点が出てしまい交渉ブレイクしてしまう可能性を低くすることができます。
ただし、タームシートは基本合意書と同様に法的拘束力を持たせないことが一般的であるため、タームシートの合意=最終契約締結ではない点には留意が必要です。
タームシートは、基本合意書や最終契約書の作成プロセスを効率的にできるという点で重要なものとなります。
もちろん、タームシートなしで、最終契約書を直接作成することも可能ですが、契約書に慣れていない場合、どこが重要なのかを判断するのに時間がかかってしまいます。
修正履歴が多くなってくると契約書を読み込むのにも時間がかかります。
弁護士に契約書ドラフト作成を依頼する場合、タームシートがあれば効率的に契約書を作成することができるため、ドラフト作成にかかる費用を安く抑えることができることもあります。
契約書ベースで直接交渉すると、買い手と売り手の双方の修正回数が多くなり、重要な論点も見えづらくなり、修正箇所がどこか確認するのに時間がかかるなど、契約書作成プロセスが非効率となります。
また、M&Aにおける関係者が多い場合には、契約書の要約としてタームシートを共有することもでき、社内情報共有のツールとしても重宝します。
M&Aにおけるタームシートは、基本合意書に記載するべき内容を記載することが一般的です。
具体的には以下のような事項を記載していくことになります。
その他、買い手と売り手がM&Aの契約上、重要と認識している点を追記していきます。
クロージングの前提条件や表明保証は、買い手によるデューデリジェンスの内容次第で追加していくことになるため、タームシートの段階では具体的な内容は記載しないことが一般的です。
タームシートの書き方には決まった形式はありませんが、記載すべき事項が網羅されており、明確に記載されていることがポイントです。
実務上、エクセルベースで作成することが多く、縦軸に項目、横軸に具体的な内容を記載していきます。
買い手と売り手で双方の主張が異なっている場合には、横軸に買い手と売り手ごとに、主張する内容を記載していきます。
買い手と売り手の中で、タームシートのやり取りを複数回行うことで、合意できている点、合意できていない点を明確にしていき、最終的に全ての項目で合意できるよう交渉していきます。
タームシートを作成する中で、双方が合意できない点が出てきた場合には、条件の優先順位を鑑み、譲れる点と譲れない点を明確にし、落としどころを探していくことが必要になります。
M&Aにおけるタームシートは、基本合意書締結前に、お互いが重要と思われる条件を明確にするために利用されます。
その後のM&Aプロセスを効率的に進めるため、できる限り重要な論点について買い手と売り手が合意できている事が重要です。
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