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廃業の相談先7選 各相談先の特徴、廃業を避ける方法・事例を解説

廃業の相談先には、商工会や金融機関などがあります。廃業には費用がかかるなどのデメリットがあるため、M&Aによる事業承継がおすすめです。各相談先の特徴やM&Aで事業承継を実現した事例を徹底解説します。(公認会計士 西田綱一 監修)

廃業の相談先 一覧

目次
  1. 廃業の相談先7選
  2. 廃業のデメリット・注意点
  3. 廃業せずに事業承継を行う方法
  4. M&Aによる第三者承継の成功事例
  5. まとめ

廃業の相談先7選

商工会・商工会議所

商工会議所・商工会・中小企業団体中央会・商店街振興組合連合会等の商工団体は地域の商工業の振興に向けた取組を行う組織です。
地域の中小企業の最も身近な相談窓口です。
中小企業に向けられた公的な支援制度の詳細を最も熟知した支援機関の1つです。

商工団体の経営指導員等の職員は経営等について一般的な相談を受けるケースが多いです。
廃業の相談も可能です。

都道府県等中小企業支援センター

都道府県等中小企業支援センターは中小企業者の多様な課題に対して専門的な解決策を提供しています。
地域中小企業支援センター、都道府県等中小企業支援センター及び中小企業・ベンチャー総合支援センターの3類型の中小企業支援センターを中心とする支援体制です。
窓口相談・専門家派遣・事業可能性評価・情報提供等の事業を実施しています。
廃業の相談にも乗ってもらえます。

また中小企業庁は事業承継・引継ぎ補助金に関する事業も行っています。
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業等及び、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度です。
事業承継・引継時の金銭に問題を抱えている場合等には、この補助金の利用が大きな手助けとなります。

事業承継・引継ぎ・再生支援事業

出典:事業承継・引継ぎ支援 (経済産業省)

M&A・事業承継
事業承継(事業継承)とは?税制や補助金、方法、税金【図解で解説】

事業承継(事業継承)とは、会社の経営権を後継者に引き継ぐことです。事業承継の方法は親族内承継、社内承継、M&Aの3種類です。事業承継を行う理由、方法ごとのメリット・デメリット、流れ、税金、税制や補助金などの支援策 […]

よろず支援拠点

よろず支援拠点は中小企業・小規模事業者のために国が設置した無料の経営相談窓口です。
よろず支援拠点の相談対応件数は年々増加しており、 令和2年度は432,640件[1]の相談に乗っています。

よろず支援拠点 相談件数出典:よろず支援拠点とは (よろず支援拠点)

廃業の相談にも乗っています。

よろず支援拠点 相談内容

出典:よろず支援拠点とは (よろず支援拠点)

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する公的相談窓口です。
親族内への承継も、第三者への引継ぎも、相談対応しています。
後継者不在であるため廃業を考えている方は、こちらに相談すると良いでしょう。

金融機関

金融機関は与信先である顧客の詳細な財務情報等を保有しており、顧客にとって経営相談等も行う身近な支援機関です。
特に地方において重要なネットワークを有する存在です。
廃業の相談にも乗ってもらえます。

M&A・事業承継
M&Aにおける銀行の役割は?融資・アドバイザリーの特徴と手数料

M&Aにおいて銀行は、買収資金の融資や専門的な助言などを提供します。また、売り手側の立場に立って、M&Aの支援や相談対応なども行います。M&Aにおける銀行の役割・立場、手数料をわかりやすく解説しま […]

税理士やコンサルタントなどの専門家

経営者が廃業の意思決定を行うには様々なポイントを検討しなければなりません。
しかし経営者が単独で検討してもなかなか具体的な検討が進まないケースが多いです。
また専門的な知見を有しない中で検討を続ければ誤った判断を行うおそれもあります。

普段から経営判断についてまずは顧問の税理士コンサルタントなどに相談している方は、廃業についても相談するのが実情に合っています。

M&A・事業承継
M&Aにおける専門家の種類、選ぶポイントを公認会計士が解説

M&Aには専門知識が必要であるため、様々な専門家からのサポートが必要です。専門家には、公認会計士や仲介事業者などの種類があります。M&Aにおける専門家の重要性や種類、選び方をくわしく解説します。(公認会計 […]

M&Aの仲介業者、マッチングサイト

廃業ではなく本当は別の道があると良いと考えている経営者でも、自社の事業を譲り受けてくれるような第三者はいないだろうと考えて、そもそもM&Aを検討しようとすらせずにそのまま廃業してしまうケースが多いです。
しかし買い手企業の経営者が売り手企業の経営者でも気付いていなかったような事業の価値を高く評価し、M&Aの成約に至るケースもあります。

仮に事業が小規模であったり赤字や債務超過であったりしても、買い手が事業の価値を認めて譲り受けたいと申し出るケースがありえますので、廃業検討中の経営者はその事実を認識しましょう。

廃業ではなく本当は別の道があると良いと考えている別の道を探している経営者は、自分自身にとっては自明であるが故に気付きにくい魅力を発掘する意味で、M&Aの仲介業者マッチングサイトへ相談しましょう。

M&A・事業承継
M&Aはどこで相談できる?相談先一覧や料金、選び方を解説

M&Aの相談相手には、公認会計士や税理士などの士業、銀行や証券会社などの金融機関、商工会議所などの公的機関、M&Aの仲介会社などがいます。相談相手ごとのメリット・デメリットや選び方を説明します。 相談先 […]

M&A・事業承継
M&Aマッチングサイトのおすすめ16選【徹底比較】

M&Aマッチングサイトとは、インターネット上でM&Aの相手企業を探せるサービスです。この記事では、代表的なM&Aマッチングサイトを取り上げ、特徴や料金などをわかりやすく比較・紹介します。 目次M& […]

[1]よろず支援拠点とは (よろず支援拠点)

廃業のデメリット・注意点

多額の費用がかかる

法人の解散登記・清算人の選任登記・法人の清算結了登記にはそれぞれ登録免許税が30,000円・9,000円・2,000円かかります。[2][3]
また官報公告の掲載費用には約32,300~39,500円かかります。[4]
さらに手続きを専門家に頼めば数十万円程度の専門家報酬が別途かかります。
多額の費用は廃業の大きなデメリットです。

M&A・事業承継
法人の廃業費用はどのくらい?廃業手続きやタイミングも徹底解説

法人の廃業では、登記手続きで4万1,000円、官報掲載に約3〜4万円の費用がかかります。また、専門家への依頼などでも費用が生じます。廃業の費用や手続き、廃業前に検討すべきM&Aをくわしく解説します。(公認会計士 […]

手続きに労力や時間がかかる

廃業は明日したいと思ってすぐにできるものではありません。
例えば廃業では官報公告を行いますがその労力や期間も見込んでおかなければなりません。

M&A・事業承継
会社の解散手続きや清算の流れ、期間、費用を税理士が徹底解説

経営者の中には、会社の解散(廃業)を検討しているがどうすればいいかわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は、会社の解散・清算手続きの流れや期間、費用をくわしく解説します。(公認会計士・税理士 河野 雅人 監修 […]

経営者としての地位を失う

当然ですが廃業すれば経営者としての地位を失います。

従業員や顧客に迷惑がかかる

仮に地域の中核企業と言われる規模の企業が廃業した場合、多くの従業員の雇用が失われ地域のサプライチェーンにも大きな穴が生じるおそれがあります。
従業員や顧客に迷惑がかかるのは廃業の大きなデメリットです。

M&A・事業承継
M&Aで従業員はどうなる?雇用や待遇などへの影響を徹底解説

M&Aを実施すると、従業員の雇用契約が継続されるなどのメリットを得られます。ただし、円滑な雇用の引継ぎには、従業員の不安解消が重要です。M&Aが従業員に与える影響やメリットをくわしく解説します。 目次従業 […]

M&A・事業承継
廃業とM&Aのどちらが良い?メリットや税金を徹底比較

廃業せずにM&Aを行うと、従業員の雇用維持などのメリットを得られます。そのため、近年はM&Aを行うケースが多い傾向です。廃業の意味や現状、廃業回避の手段となるM&Aを税理士がくわしく解説します。( […]

[2]株式会社解散及び清算人選任登記申請書(法務省)
[3]株式会社清算結了登記申請書(法務省)
[4]官報公告掲載料金(全国官報販売協同組合)

廃業せずに事業承継を行う方法

親族内・従業員承継

中小企業は事業承継に当たり後継者候補を経営者の親族内から選定し、親族内に不在であれば自社の役員や従業員の中から選定しようとするのが一般的です。
親族に承継する方法を親族内承継、従業員に承継する方法を従業員承継と言います。

M&A・事業承継
親族外承継の方法やメリット・デメリット、ポイントを徹底解説

親族外承継とは、親族以外の役員・従業員や社外人材に事業承継することです。親族内承継と比べて、後継者の選択肢が多いことがメリットです。親族外承継の方法やデメリット、事例を詳しく解説します。(公認会計士 西田綱一 監修) 目 […]

M&Aによる第三者承継

M&Aとは

後継者不在の中小企業が対策を講じずに廃業すると多くの関係者の混乱を招きます。
地域経済にも悪影響を生じさせるおそれがあります。
また廃業によって優良な経営資源が活用されないまま喪失されてしまうと日本経済の発展にとっても大きな損失となりえます。

このような中小企業の事業をM&Aにより社外の第三者が引き継ぐケースは増加しており、M&Aも中小企業にとって事業承継の手法の1つとの認識が広がっています。

M&A・事業承継
M&Aとは?目的・手法・メリット・流れを解説【図解でわかる】

M&A(エムアンドエー)とは、Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で、「会社あるいは経営権の取得」を意味します。今回は、M&Aの意味・種類・目的・メリット・基本的な流れ・税金・ […]

M&Aによる第三者承継の成功事例

[運輸×運輸]富士運輸に対する日向商運の第三者承継

譲渡企業の概要

日向商運:原乳、タイヤ、肥料、雑貨、医薬品などの中長距離配送

譲り受け企業の概要

富士運輸(現:フジトランスポート):大型トラックによる長距離輸送

トラック保有台数:グループ総数2,350台(2021年7月)

M&Aの目的・背景

譲渡企業:後継者不在

譲り受け企業:売上・市場シェア拡大

M&Aの手法・成約

  • 実行時期:2021年7月
  • 手法:株式譲渡
  • 結果:M&Aで社内に後継者が不在でも事業承継できた。また日向商運の従業員の雇用及び荷主との取引の継続がなされた。さらにシナジーが発揮され日向商運の宮崎県から首都圏に運送した復路の運賃がこれまでより約10~15%高くなった。他にもコストシナジーが発揮された。
成功事例
運送業界の「2024年問題」を乗り越える 選択肢としての第三者承継

宮崎県で40台トラックを保有し、地域密着で運営を続けてきた有限会社日向商運は、「M&Aサクシード」を通じて、全国に108拠点、トラック2,350台以上保有する物流グループであるフジトランスポート株式会社(旧・富士 […]

[製造業×持株会社]ウシオ工産による丸加ホールディングスへの株式譲渡

譲渡企業の概要

ウシオ工産:鋼製の建築用建具等の製造業

譲り受け企業の概要

丸加ホールディングス:港湾運送事業、製缶・機械部品加工業の持株会社

M&Aの目的・背景

譲渡企業:後継者不在

譲り受け企業:事業拡大

M&Aの手法・成約

  • 実行時期:2022年(公表)
  • 手法:株式譲渡

結果:M&Aによって親族内に後継者が不在でも事業承継できた。またウシオ工産の従業員全員の継続雇用がなされた。

成功事例
ニッチな事業を集めて成長する「M&A経営」。後継者不在の地元企業を救った若手経営者

欧米の中小企業に比べ、小規模の会社の割合が高いのが日本の特徴です。技術やサービスは優れているのに、競争力が弱いと言われるゆえんでもあります。そういった中小企業の弱点を補う役目を果たしているのがM&Aです。営業ルー […]

まとめ

ここまで廃業したい時の相談先について説明しました。
相談先を具体的に7つ紹介し事例を挙げ、注意点や廃業を避ける方法についても説明したため、よくイメージできた方もいらっしゃるでしょう。
廃業について検討する際は、M&Aなど事業を継続する方法も含めて、今回の記事を参考にしてください。

M&A・事業承継
事業承継における専門家の種類・役割【中小機構の支援策も解説】

事業承継の専門家は事業承継の過程でサポートしてくれるパートナーであり、税理士・弁護士・中小企業診断士・事業承継士等が該当します。事業承継に関する専門家の役割や種類、探し方を徹底解説します。 主な専門家の種類 主な役割・業 […]

(執筆者:公認会計士 西田綱一 慶應義塾大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、一般企業で経理関連業務を行い、公認会計士登録を行う。その後、都内大手監査法人に入所し会計監査などに従事。これまでの経験を活かし、現在は独立している。)