事業承継・M&Aプラットフォーム M&Aサクシード

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事業承継・引継ぎ支援センター×M&Aサクシード 地域を超えた全国規模のマッチングが可能に

  • 譲渡
    株式会社アサヒメディケア
    事業概要:介護施設・病院向け離床センサーの製造・販売
    本社所在地:東京都
    従業員数:3名
    譲渡理由:後継者不在
    
    譲り受け
    譲り受け
    長野テクトロン株式会社
    事業概要:入力装置・表示パネル専門メーカー、医療関連事業なども展開
    本社所在地:長野県
    従業員数:90名(グループ合計)  
    売上高:約20億円(グループ合計)
    譲り受け理由:新規事業の開始
    
  • 東京都
  • 長野県
  • 医療・介護

中小企業の事業承継を促進するため、国が2011年から「事業承継・引継ぎ支援センター」を通じて、第三者承継を支援していることをご存知でしょうか。円滑な事業のバトンタッチをサポートし、2020年度の成約件数は過去最多の実績となりました。しかし、後継者問題を抱える中小企業経営者は増加の一途をたどっており、M&Aのスピードと頻度をさらにあげていく必要があります。中小企業のM&Aで最も難しいのは「マッチング」と言われます。その課題解決のさらなる向上を図るために、事業承継・引継ぎ支援センターでは、民間M&Aプラットフォーム3社とシステム連携を開始しました。そのなかで、「M&Aサクシード」を通して、初の成約が生まれました。今回のインタビューでは、事業承継・引継ぎ支援センターとM&Aサクシードの連携による、予想を超えた出会い(最初のやりとりから5カ月で成約)の舞台裏をお伝えします。事業譲渡した株式会社アサヒメディケア 代表取締役 町田 勉 氏、譲り受けた長野テクトロン株式会社 代表取締役 柳澤 由英 氏、そして東京都事業承継・引継ぎ支援センター 統括責任者 吉田 亨 氏の3者に話を聞きます。(2021年12月公開)

 

アフターサービスで信頼を得ていたため、やめるにやめられなかった

――会社の事業概要を教えてください。

長野テクトロン 柳澤 1984年、長野市で創業の入力装置・表示パネルの専門メーカーです。現在の主力製品はメンブレンスイッチです。メンブレンスイッチは、薄いフイルム基材に回路印刷や加工を行い、スイッチ機能を持たせたシートです。周辺事業を広げ、グループ各社でPOSシステム開発・販売事業、病院向けサイネージシステム事業、病院向け遠隔画像診断サービス事業、企業向けポータルおよび会議室サイネージ事業、飲食サービス事業などを展開しています。このところ、医療関係に力を入れています。

 

アサヒメディケア 町田 介護施設・病院向け離床センサーの製造・販売を行なっています。2003年の創業で、社員は総勢3名です。離床センサーは、患者がベッドから離れたことをナースコールで知らせるシステムで、利用されています。製品と同様に評価していただいているのが、迅速な修理です。販売して終わりではなく、長期にわたって使っていただけるよう、丁寧な仕事を続けてきました。小さな会社で20年間やってこられたのは、信頼性にあったと思います。

 

 

柳澤 当社のメンブレンスイッチとアサヒメディケア様の離床センサーは、ほぼ同じ仕組みです。そこが今回のM&Aのきっかけとなりました。

 

――なぜ第三者への承継に踏み切ったのですか?

町田 得意先を回るのが体力的にきつくなってきたこと、後継者が見つからなかったことの2つの理由からです。メーカーの義務として、10年間は製品保証しないといけません。うちの製品は長く大事に使ってくださるお客様が多いため、そのはざまで悩んできましたが、限界を感じ、譲り受け企業を探しはじめました。

 

――親族に後継者はいなかったのですか?

町田 私は学生の頃から子どもや介護が好きでこの商売を始めましたが、息子や娘はそれぞれ別の分野に進みました。

 

――福祉に関心を抱いたきっかけは何だったのですか?

町田 大学生の時、小学生と遊ぶサークルに入っていました。仲間の多くは教師になりましたが、私は商社に進みました。しかし、その時の想いは消えず、福祉関係の仕事をどうしてもやりたくて起業したんです。

 

――廃業は考えていなかったのですか?

町田 本音の部分では、廃業という考えもありました。でもうちの製品を使ってくださっている施設はもあります。一方、会社のために尽くしてくれたメンバーは高齢化していました。2人いた技術者のうち、1人は10年前に亡くなり、もう1人も目の障害で通常作業は無理な状態になりました。技術面で新しい製品を作るのは難しく、修理とリピートオーダーのみで業務を続けてきました。

このジャンルの製品はうちが日本でのパイオニアでしたが、後発の競合他社が出てきて、3分の2から半額で売りはじめました。収益としても難しくなってきました。ただ、リピートも多く、販売店さんもがんばってくれている。紹介してくれる口コミにも助けられました。そういったお客様がいるので、やめるにやめられませんでした。

 

あきらめかけていたところ、「事業承継・引継ぎ支援センター×M&Aサクシード」で好転へ

――そこで東京都事業承継・引継ぎ支援センター(以下、支援センター)に相談に向かいます。

町田 付き合いのある会社の経営者が、支援センターを介して事業譲渡に至ったという話を聞いたんです。彼も70代半ばで思案していたところだったようです。そこから支援センターにつないでもらい、(2021年)3月末に支援センターを訪問しました。

 

――支援センター様ではどんな話をされたのですか?

町田 「後継者がいない。年齢の限界がある。でもどうしてもお客様を大事にしたい」。なんとか第三者に引き継ぎたいことを伝えました。

 

――支援センター様としてはまずどういう風に仲介の話を進めたのですか?

東京都事業引継ぎ・支援センター 吉田 なんとか力になろうと、当センターに譲り受け登録されている11社を紹介しました。専門性が高くニッチな領域のため、探すのに苦労しました。

 

――支援センター様から紹介を受けてどう感じましたか?

町田 11社のうち半分がコンサルティング会社で、「(想定する業態とは)ちょっと違うな」と思いました。せっかくここまでやってきたので、修理もやってほしいし、蓄積した販売店の資産をうまく運用してくれる会社に譲渡したかった。特に取引先の500施設のうち、250が病院なので、医療関連の会社を要望しました。2社は要望に近かったのですが、決算書を提出した時点で断られ、面談には至りませんでした。先方はかなり大きい会社で、うちのような小規模ではメリットがないと思ったのかもしれません。

 

――その次の策としてM&Aプラットフォームを支援センターは選びました。

吉田 支援センターに登録している譲り受け企業をさらに探しましたが、ニッチな領域であったため、希望に沿える相手がなかなか見つかりませんでした。そこで申し込みの幅を広げるために、町田様の了承を得て、6月にM&Aサクシードにデータベースを連携させ、M&Aサクシードに登録する全国の譲り受け希望企業(当時累計7,600社超)がアサヒメディケア様の匿名の案件情報を閲覧できることにしたのです。

 

 

――支援センター様からM&Aサクシードの存在を伝えられてどう思いましたか?

町田 あきらめかけていたところでしたので、一も二もなくお願いしました。選択肢が広がる上に登録無料です。以前、ある大手のM&A仲介会社に聞いたところ、手付金が500万円必要とのことでした。そんな額はうちのような会社には無理ですからね。

支援センターが伴走してくれ、M&Aサクシードと連携できて、希望がつながりました。ただでさえ厳しい状況に追い込まれていましたし、コロナ禍で譲り受けてくれる相手などいないと気落ちしていたところでした。だから、すぐに長野テクトロン様からお声がけいただいた時は、正直驚きました。

 

成約までのスピード感が「次」の計画も促進する

――支援センター様と民間のM&Aプラットフォーム3社との連携が始まり、その初の成功案件が今回のM&Aサクシードを通じたM&Aです。

吉田 全国の支援センターの案件情報を一元化するNNDB(「事業引継ぎ支援データベース」)という仕組みがあります。譲渡オーナーに了承を得て、これまで一部の仲介会社・金融機関にも共有していました。今回、そこに3つのM&Aプラットフォームが連携できるようになりました。譲渡オーナーから了承を得て、支援センター員がチェックすると、支援センターが入力した匿名の案件情報が掲載を希望するM&Aプラットフォーマーに共有されます。

 

――長野テクトロン様は「M&A経営」に何を求めていますか?

柳澤 ソフトとハードを掛け合わせている事業に非常に興味がありました。というのも、最終的な商品を作りたい、自社ブランドメーカーになりたいというのが、創業以来の目標だったからです。現在、私たちは組み込みという形で、お客様に製品を提供していますが、オリジナルの製品・サービスを直接、市場にリーチさせることを考えています。川下にある業界を強化するという意識のもと、M&Aサクシードから送られてくる案件情報をチェックしていました。

特に医療・介護領域への進出・拡大のために、これまで複数社のM&A実績があり、事業領域を広げ、グループ全体で成長しています。そのなかでも、病院向けのサイネージシステムを運営する会社と病院向けの遠隔画像診断サービス事業を運営する会社の2社を2020年に譲り受けています(いずれも、M&Aサクシード経由)。

そのようななか、(2021年)6月に、センター経由でM&Aサクシードに登録された案件メールが私の元に届きました。タイトルには「離床センサー」が入っていました。うちが手掛けるメンブレンスイッチのシートセンサーとほぼ同じ仕組みです。技術的なシナジー効果もあり、業界も当社が注力している医療・介護業界でした。「技術も販路も両方シナジー効果がある」と思い、すぐに連絡しました。

 

――社長自らが案件を見て、直接声がけができるのは、M&Aプラットフォームならではのメリットですね。

柳澤 「最短の時間で町田社長に会わせてください!」と支援センターの方にお願いしました。事業を譲り受けた後、ある程度の期間、二人三脚でやっていくため、一緒にやりたい人なのかをまず判断したかったからです。これまでも何度か譲り受けたことがあるのですが、毎回必ず、まず社長に直接お会いしています。

 

町田 支援センターで柳澤様に会った第一印象で「あ、決めた!」。一目惚れですね。うちのいいことわるいことも含めて全部お話ししました。長く商売を続けるためには、やっぱり人なんですよ。社員にも会いました。みんな目が輝いている。それは柳澤社長が人を大事にしているということの表れだと思います。

 

柳澤 アサヒメディケア様のビジネスモデルに強く惹かれました。レンタルと修理で、収益の半分を占めている。当社の技術者は修理もできるし、アサヒメディケア様の事務所と歩いて15分の場所に販売拠点もあるので、東京の拠点も統合できます。いろいろな点でシナジー効果を見出せます。

今、強化しているのが、製品を販売した後に継続的に収益をあげる方法です。保守メンテナンスやシステム利用料などのサービスで事業を収益化していきたい。既に事業化している病院向けの遠隔画像診やサイネージも毎月の課金によるものです。アサヒメディケア様のビジネスモデルは良いお手本になります。

 

――M&Aサクシードを使ったことから、状況が大きく動き出しました。

町田 M&Aサクシードは早い! 感心しました。「御社に興味がある会社があるので会ってみましょう」。支援センターの一言から、とんとん拍子に話は進みました。2週間後には、長野テクトロン様と面会していました。

 

――第三者承継することについて社員の方々にどのように伝えましたか?

町田 第三者承継の意向は以前から伝えていました。物事は決めると進むので、長野テクトロン様と会った後すぐに社員に話しました。うちはもう新しい製品は作れないけれど、長野テクトロン様は技術者がいるので、新しいものが生まれる。今までは、取引先から「何か新しい製品は作れませんか?」と要請されても、「できません」としか言えなかったのが、これからはいろいろできるようになる。技術も会社名も残せて良かったと。

 

柳澤 現在、信州大学様と無呼吸症候群の検知シートの共同研究・製品化を行っています。アサヒメディケア様は取引先の病院が250ほどあるので、そこに無償で提供すればテストもできるようになります。

 

今後、介護施設などでB2B2Cのビジネスを構想しています。例えば、実家にセンサーを置いて、遠隔で子どもが親の健康状態を見守るという製品もあるかもしれません。うちはスマホのアプリ開発もやっているので、アサヒメディケア様の技術を使った製品開発もできるようになるでしょう。今は医療の分野だけですが、ゆくゆくは予防医療、ヘルスケアやフィットネスにも進出したいですね。健康は全ての人が対象になるので、長期的にはそこを目指しています。

 

リアルとネットの融合で、M&Aはより充実したものに

――中小企業のマッチングが難しいという課題に対し、支援センター様は身近な窓口として全国で活動されています。民間M&Aプラットフォームとの連携は、隔地間での可能性を広げるために始まりました。

吉田 中小企業のM&Aを推進していく上で、新しい展開であること間違いありません。支援センター内だけでのマッチングは、特殊な事業分野などでは、難しい場合があります。M&Aプラットフォームと提携することで、幅広く相手を募り、地域を超えたM&Aの可能性が広がります。今後中小企業の事業承継を進めていく上で、M&Aプラットフォームが大きな力となってくれることを期待しています。公的支援機関が民間企業の協力も得ながら、今後より一層、後継者難の事業承継の支援に注力していきます。

 

――支援センター様の長所とM&Aプラットフォームの長所が組み合わさったことが、状況の改善につながっていますね。

吉田 いきなり「M&Aプラットフォームに載せましょう」では、高齢の経営者にとってかなり抵抗感が強いと思います。まず支援センターにお問い合わせいただき、その後、M&Aプラットフォームと連携する。この流れならば、心理的な障壁は取り除かれ、マッチング先の選択肢が飛躍的に拡大します。

 

――支援センター様の存在は大変重要です。地域ごとに対面で相談できる窓口があることは、第三者承継を考える経営者にとって安心感があります。そこに、情報を流通させるのがM&Aプラットフォームの役割です。リアルとネットの仕組みが融合したことで、M&Aはより充実したものになります。

吉田 経営者の潜在的なニーズを引き出すのは、簡単ではありません。人が介在することで起こるズレのようなものもあります。経営者本人が直接、案件情報を見て判断・決断する時間があったほうがいいと思います。その意味で「支援センター×M&Aプラットフォーム」がスピーディーに非常に良い結果をもたらすことを、今回の事例は証明したと思います。