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マーケットの開拓、業界再編への対応、資金調達など、中小企業経営者が抱える将来への不安を解消できるのが、M&Aの大きなメリットのひとつです。大手企業に譲渡して傘下に入ることで、潤沢な資本のもとで安定した経営が行えるだけでなく、営業先の拡大などさらなる成長も見込めます。譲り受け企業との間でシナジー効果も期待でき、そのメリットは想像を超えるものとなります。福岡県でリネンサプライを運営する有限会社グリーンアースは、営業黒字の安定経営を続けていましたが、規模の拡大を図るための人手不足や県外の開拓などの不安要素を抱えていました。そこで大手企業の傘下に自ら入る選択をとります。M&Aサクシードを通じて出会ったのは、東証プライム市場の大手企業、株式会社ダイオーズの100%子会社である株式会社ダイオーズ ジャパンでした。経営状態が好調な時期での早めの決断が、素晴らしい結果をもたらしました。有限会社グリーンアース 代表取締役社長 大鳥 広尊 氏と株式会社ダイオーズ 代表取締役社長 兼 株式会社ダイオーズ ジャパン 代表取締役会長 大久保 真一 氏、同社 代表取締役社長 柏﨑 秀次 氏に話を聞きます。(2022年4月公開)
福岡県のニッチ企業と東証プライム上場企業のM&A
――グリーンアース様は福岡県嘉麻市でリネンサプライを中心に事業を展開されています。
グリーンアース 大鳥 創業は1988年です。売上げはここ数年、1億5千万円前後で推移してきました。従業員は正社員が3割、パート7割で約45名です。営業範囲は福岡県全域で、福岡市内が半分ほど占めています。美容室に特化してレンタルタオルの事業を運営しており、県内では7〜8割のシェアを得ています。ほぼ独占的な状態です。
――ダイオーズ ジャパン(以下ダイオーズ)様は、事業所向けコーヒーサービスの日本でのパイオニアです。オフィスで働くビジネスパーソンで知らない人はいません。
ダイオーズ 大久保 1969年に浅草のお米屋さんからスタートし、東証プライム市場にまで成長しました。年間契約によるサブスク型の積み上げビジネスで、BtoBに特化した事業所向けのサービスを提供しています。国内では、飲料サービス(日本で初めて事業化したオフィス向けコーヒーサービスをはじめ、ティーサービス、ピュアウォーターサービス)と環境衛生サービス(医療レベルの高度な除菌清掃、清掃用品をはじめ空間除菌消臭機、オフィスグリーンなどのレンタル)の2つが柱になっています。昨年はコロナ禍で売上げは若干下がりましたが、今期は創業53年来の最高の売上げ・利益を更新する見通しです。国内の従業員数は約1200名、直営の拠点が九州から北海道まで約70カ所、フランチャイズを入れると約200カ所となります。海外では、アメリカで業界第3位のコーヒーサービスを展開するほか、中国・韓国・台湾・シンガポール・マレーシアなどアジアにも積極的に進出しています。
黒字だが、企業規模・市場規模に不安を抱えていた
――大鳥様が会社を第三者に承継しようと考えた背景や、なぜこのタイミングだったのかを教えてください。
大鳥 M&Aを考えた一番の理由は、単独での事業拡大に不安を抱いたからです。福岡県内の市場を独占しているとはいえニッチです。この先、売上げを増やすには2つの選択しかありません。他県に進出するか、新規事業を立ち上げるか。5〜6年前から新たな営業先がなくなっていました。打開策として他県に打って出ようにも、うちの規模では人手が足りませんでした。
――売上げも利益も安定していたとお聞きしました。
大鳥 営業をかけなくても利益は上がっていました。しかし、さらなる事業拡大が難しいと感じていました。このまま営業先を開拓できずに10年、20年を過ごしていくか。思案していたときにメディアでよく取り上げられていたM&Aに「その手はありかもしれない」と思い立ちました。早速、ウェブでチェックしたところ、M&AプラットフォームのM&Aサクシードが目にとまりました。「譲渡企業は登録無料」と書いてあったので、ほんの軽い気持ちで登録しました。すると翌日にダイオーズさんから「拝見させていただきました」というご挨拶のメールが届きました。
――ダイオーズ様から最初の連絡が来たとき、どんな気持ちを抱きましたか? また、譲渡先企業としてどこに魅力を感じたかを教えてください。
大鳥 ダイオーズ様を深く掘り下げて気がついたのは「うちと流れる血、血液型が似ている」ことでした。構成する事業や理念、たどってきた変遷が近しいと感じたんです。「BtoB」「ストックビジネス」「お客様のところに定期的にお伺いする」。飲料や清掃とタオルの違いはありますが、血液型は同じだと思えました。私どもを一番理解してくれるのではないか。この先の展開という点でも、ダイオーズさんだったら画期的なプランを創出していただけそうだと希望が湧いてきました。
足し算ではなく掛け算になる、素晴らしい出会い
――ダイオーズ様は、グリーンアース様がM&Aサクシードに登録した翌日にメッセージを送られました。何が心をつかんだのでしょうか?
ダイオーズ 柏崎 大久保社長からは「M&Aは成長戦略の一つ」と言われています。ただし、「BtoBであること」「年間契約であること」「他事業との相乗効果があること」という3つのポイントを前提にすることは約束していました。私たちは、その3つのポイントを基本にM&Aサクシードを定期的にチェックしています。そうしたところグリーンアース様の情報を得て、「これは面白いことをやっていらっしゃる!」と。細かな確認は後回しにして、すぐにご挨拶のメールを出したわけです。
交渉の会話を始めてから、当社では経験がなかったサービスですので、より興味が湧きました。
――大久保社長がおっしゃっていた他事業との相乗効果がある事業だったわけですね。
柏崎 足し算ではなく掛け算になる可能性が大いにあることに、お互いに気がついたんです。
大鳥 当社は、最初はホテルリネン事業をしていたのですが、単価が低くてボリュームが多く、収益を上げるのが難しかったです。それで、いろいろ探してみたところ、美容室は市場が空いていました。美容室はホテルリネンの10分の1くらいの規模で、他社は採算が合わなかったようです。そこで、うちがほぼ独占することになりました。他社はどこもこの規模だと単体で採算をとるのが難しいと思いますが、ダイオーズさんは清掃事業をされていて全国でネットワークがあるので、当社と掛け算になると思いました。
事業譲渡にあたって、ダイオーズさんは希望金額を快く承諾してくださいました。すごい会社だと思いました。過大な評価をしていただいたという感じです。ほとんど交渉もなく、とても気持ちのいいプロセスでした。グリーンアースという社名には愛着があったので、事業部という形で名前も残していただけることになりました。もちろん社員の雇用も継続していただけました。それだったらと、納得しました。何もかも早かったですね。実は、初めは資本提携にしようかとも話していました。でも、「他県で一旗揚げてみたい」から「ダイオーズさんのお手伝いをしよう」という気持ちに変わっていきました。
柏崎 「ノウハウをしっかり伝授してほしいので、3年間は顧問としてお手伝いください」というのが当社の条件のひとつでした。事業の将来など多方面でお話しをさせていただいたところ、大鳥さんから「それならやる気も出ますね」と言っていただけました。
――契約から2カ月経ちましたが、今の状況を教えてください。
柏崎 幹部社員がグリーンアースさんの側で学んでいる状況です。いろいろなノウハウを引き継がせていただいています。
大鳥 一緒になったときに共通の感覚があると、一体化や進歩が早いと思います。説明はさほど必要なく、一言で背後にある複数の要素が汲みとれますからね。私個人としては、すごく気持ちが楽になりました。経営の先行きを悩む気持ちで日々過ごしていたのが、今は「ご飯が美味しい!」。
――従業員の皆さんにも化学反応が起こっているそうですね。
大鳥 ダイオーズさんという大きな看板に変わったことで、東証プライム上場企業の従業員になり将来に対してより安心感を持ったように思います。それだけでなく、今まで知らなかったことが学べるということでイキイキと働いてくれています。
今、引き継ぎをしているのですが、社長がすごい方で、社員のみなさんも元気がいい。やはりM&Aは間違いなかったと確信に変わりました。引き継ぎを終わらせた後、当社の事業部の旗が立つのを一本だけでもいいから、見させてもらいたいなと思っています。
M&Aは中小企業経営者にとってより大きなフィールドで活躍できるチャンス
――譲渡を検討している中小企業経営者様に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。
大鳥 経営の打開策として、M&Aは絶対に選択肢として入れるべきだと思います。私のようにすぐに素晴らしい出会いがある場合もありますし、5〜6年かかることもあるかもしれません。しかし、呼吸が合えば絶対に良い結果が生まれます。M&Aにネガティブなイメージがあるかもしれませんが、それはただの思い込みに過ぎないと思います。実際にはそうではないこと、経営の選択肢のひとつとして有効であることはぜひお伝えしたいですね。
柏崎 M&Aの先進国であるアメリカは、日本とは逆に早く譲渡し、早くリタイアした方が成功者と言われます。企業オーナーは早く成功した人としてステイタスが高いんです。日本もいずれそういう状態になると思います。扉は常に開かれていますので、恐れずにM&Aへの第一歩を踏み出してほしいですね。
――今回の出会いのきっかけは、カジュアルな気持ちでのM&Aサクシードへの登録でした。そういう感覚でも問題ありませんか?
柏崎 全く問題ありません。やり取りの中で見えてくるものがあると感じます。
――2020年から社長直轄として専従者を置かれたことからも、ダイオーズ様のM&Aへの真剣度が感じられます。
大久保 私どもがアメリカのコーヒーサービス業界で、全米3位にまで拡大できた最大の理由はM&Aです。30年前から専門のM&A仲介会社を使わず、自分の力で100社以上の交渉とM&Aを積み重ねてきた結果とも言えます。日本でもM&Aを行うつもりだったのですが、日本の風土の中ではなかなか難しい部分がありました。しかしこのところ、M&Aに対する認識が大きく変わってきました。
私どもにとって、M&Aはビジネスの側面だけではなく人材を拡張する策でもあります。一方、小規模・中小企業経営者様や従業員の方々にとっては、より大きなフィールドで活躍できるチャンスでもあるということです。ご自身の能力も伸ばせるチャンスだと捉えていただきたいですね。当グループでも、M&Aで参画してきた人たちが社長に次ぐポジションで活躍しています。フラットに見ていて、誰もが活躍する大きな場を提供しています。私どもの事業や経営に対して共鳴し、互いにシナジー効果を活かせる可能性が少しでもあれば、ぜひお声掛けください。