- 東京都
- 愛知県
- IT
- EC・通販サイト
今回ご紹介するのは、成長している段階で事業を譲渡したことによって、成功を導いた事例です。その先の可能性があるのになぜ譲渡?と思われるかもしれません。しかし、成長しているからこそ、譲り受ける大手企業から高い評価を受け、譲渡した企業側も次の挑戦に安心してのぞむことができるのです。これから増えてくるであろう成長過程でのM&A。その流れをスムーズにするために、M&Aサクシードがお手伝いさせていただきました。株式会社イノセンス 代表取締役社長 猪嶋亮宏氏とforest株式会社 ブランド投資部 福嶋優氏に話を聞きます。
成長過程のなかの譲渡。その理由は?
――イノセンス様は順調に事業を展開されているなかで、譲渡を決断されました。その理由をお聞かせください。
イノセンス 猪嶋 23才の時に「お米で日本一になる」ことを目標に起業しました。5年ほどかかりましたが、「Rice King(ライスキング)」というブランドが成功し、ギフトの領域では日本一になれたと自負しています。しかし、さらなる高みを目指そうとした時にハードルを感じるようになっていきました。新たな投資や事業計画、組織の充実、会社としての体力の維持やスピード感が必要だからです。ほぼひとりで今のレベルまで来ました。熟考の末、個人の力では限界が見えてしまうかもしれないと感じました。育ててきたブランドが新たなステージに行くためには、M&Aでの譲渡が必要だと判断しました。現状の延長線上で失敗して継続できなくなり、ブランド自体がなくなってしまうことはどうしても避けたかったのです。
――forest様はイノセンス様のどこに魅力を感じられたのですか?
forest 福嶋 M&Aサクシードでイノセンス様の概要を拝見し、素晴らしい会社だとすぐに交渉リクエストを出しました。譲り受けたいと思った理由は2点あります。
ひとつは商品力が素晴らしいこと。「ライスキング」はレビューや口コミなどで非常に良い評価を得ており、お客様にしっかりと受け入れられていると思いました。赤ちゃんの1歳の誕生日を祝う「一升米」や、引越しの際に渡せる「ご挨拶米」など、ニーズをおさえた商品を出されています。ふたつ目は猪嶋様・奥様のお人柄です。初めてお会いした際に誠実な方との印象を受け、それが商品やサービスにも現れているなとも感じました。
――イノセンス様には10社からリクエストがありました。そのなかでforest様を選ばれた理由は?
猪嶋 ファンド様からもオファーをいただきやり取りをさせていただきましたが、よく話を聞くと数年後のイグジット(株式を売却することによって投資資金の回収を図ること)が目的でした。永続的に会社を継続するスタンスではありません。イノセンスのミッションは「農家と消費者の架け橋になる」こと、お米の生産量を上げたいという思いでやってきました。道半ばでビジネス観点で会社を売却されると、当初の意志が台無しになってしまいます。それは許容できません。forest様はブランドを維持し、さらに大きくしていくという方針でした。そこが最大の決定ポイントになりました。
「心が震えました」。トップ会談で通じ合った志
――振り返って、印象に残った場面を教えてください。
福嶋 猪嶋様・奥様との初回の会食が大変印象に残っております。弊社の湯原(代表取締役)も同席して、長い時間、お話しさせていただきました。単純に楽しい時間を過ごさせていただきましたし、猪嶋社長の事業に対する考え方や想い等もお伺いすることができ、大変有意義な時間でした。直感的ではありますが、本件は両社にとって良い方向に進むのでは、と感じました。
猪嶋 forestの皆さんは物腰が柔らかくて、すぐに経営陣の人柄が伝わってきました。湯原社長から「絶対に売上げを伸ばします!」という一言がありました。その時の眼光や言葉の発し方、態度が私に突き刺さり、大袈裟ではなく心が震えました。
福嶋 弊社の代表の湯原はこれまでも一貫して「誠実さ」を大切にしてきており、それが猪嶋様に感じていただけたのだと思います。
――forest様は創業から短期間で評価を高めていますね。
福嶋 2021年に創業し、資金調達については2023年10月にシリーズAラウンドを終え、累計の調達額は約38億円となりました。事業モデルは、Eコマースにおいて販売される日本の良質なプロダクトを企画・販売するブランドを、M&Aを通じて譲り受け、そのブランドのさらなる成長を実現することです。基本的には譲り受けたブランドを永続保有します。「日本のモノを育み、世界を彩る」。これがforestのミッションですので、日本のブランドを、日本中や世界中に羽ばたかせていきたいと考えています。
M&Aサクシードの伴走がスムーズな交渉をもたらした
――数あるM&A仲介会社のなかから、M&Aサクシードを選んでいただきました。その理由を教えてください。
猪嶋 仲介実績が豊富にあること、そして着手金や中間金なしの「完全成功報酬制」というところに魅かれました。どこにお願いすればいいのか考えていた時、M&Aサクシードと出会いました。
担当者の高口さんはとても紳士的で、実作業に入った時も、知識量が豊富で “M&Aの家庭教師”と思うほどでした。安心して伴走してくれる会社だと感じました。
福嶋 当社がM&Aサクシードを選んだ理由は2つあります。ひとつは担当の髙口様がきめ細やかに対応してくれ、信頼できる方だったことです。もう一つは専門知識の豊富さで、M&Aに関する共通認識や言語があればお互い効率的に進めていくことができますし、実際に弊社としても大変やりやすかったです。また、こちら側の伝え方が多少粗くても意図を汲み取っていただきイノセンス様との橋渡しを丁寧に・正確に行ってくれたので非常に助かりました。それも、本件が成就した一因だと思います。
成長過程のM&A譲渡には大きなメリットが
――イノセンス「ライスキング」というブランドを今後、どのように成長させていきますか?
福嶋 猪嶋さんが丹精込めて築き上げたブランドですので、一人でも多くの人に手に取っていただけるようにしたいです。お譲り受けした後にすぐに引き継ぎに取り掛かりましたが、これまでのやり方などを十分に理解するため猪嶋様に丁寧に教えていただいているところです。「ライスキング」を一人でも多くの消費者に届けるべく、事業構造から商品の詳細まで勉強の毎日です。
――成長の過程でM&Aの可能性を検討する経営者様も増えています。
猪嶋 会社が伸びている間にM&Aで譲渡することには大きなメリットがあると思います。なぜなら、体力のある会社と一緒になった方が、投資や人モノ金という点で資源が豊富になるからです。しかも成長スピードも上がります。自分で立ち上げた会社に対して思い入れがあるなら、なおさらある段階で譲渡を考えた方がいいと思います。自分がいなくても会社が回っていく、大きくなるのは創業者としてうれしいことです。伸びているうちにお譲りして、それを陰ながら見守るというのも経営者の喜びだと思います。
――forest様は今後、どんな会社様との出会いを期待していますか?
福嶋 経営管理、ECモール運営、商品開発チーム等、ECの機能別に専門組織を複数持っているのが弊社の特長です。日本発のブランドでBtoC(消費者向け)の商品をお持ちで、今、課題感や手詰まりを感じていらっしゃるブランド様やお店様があれば是非弊社にお声がけいただけたら嬉しいです。
――猪嶋様は譲渡を決める際に心のうちで葛藤もあったかと思います。
猪嶋 右も左も分からない状態で会社を興しました。「絶対に1位になるぞ」とやってきました。それは達成できましたが、次の段階では私とは違う能力を持つ人が必要だと感じました。譲ると決めた時は、正直なところ悔しい気持ちもありましたが、それ以上にブランドへの思いが私の決断を支えてくれたように思います。今後、forest様に引き継いだ後の「ライスキング」も楽しみです。引き継ぎを終えたら、これまで私を支えてくれた妻と一緒にビジネスを始めることも考えています。
M&Aサクシード 担当者コメント
髙口 啓介(シニアコンサルタント)
イノセンス様は「お米の魅力を全世界に」、forest様は「日本のモノを育み、世界を彩る」と、両社日本の文化に着目し、世界に発信していくという素晴らしい事業を展開されています。 オーナーの猪嶋様は、お米の流通拡大に向け、農家様、協力会社様と一丸になりお米の魅力を発信して来られました。 その過程で、会社として新たなステージに進むためM&Aを選択され、この度、日本のブランドや企業をM&Aを通じてグループ化し、成長させているforest様と出会われました。今後のご両社の更なる発展を願っています。
担当者プロフィール
2017年、福岡大学を卒業後、SMBC日興証券株式会社へ入社。首都圏の支店にて中小企業オーナーや医師などへの資産運用のコンサルティング業務に従事。 2019年株式会社ビズリーチに入社し、「ビズリーチ・サクシード」(現「M&Aサクシード」)に参画