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M&Aサクシードのマッチングサービスを使い、成約に至った成功事例を紹介します。千葉県香取市の有限会社西商店は創業以来100年にわたり、スーパーマーケットやガソリンスタンドなどを運営してきた地元密着型のローカル企業です。しかし経営陣の高齢化により、黒字にも関わらず店をたたむ瀬戸際にありました。そんななか、M&Aサクシードがサポートし、「地域にとって大切な企業をなんとか残したい」という熱意あるSAKAEホールディングス株式会社に出会うことができました。(2022年4月公開)
地域密着で100年、継承者不在で廃業寸前に
――西商店様は千葉県香取市で長く、地域密着の商売を続けてこられました。
西商店 高岡 会社の設立から65期を迎えましたが、店そのものの創業は約100年前に遡ります。先代社長の西ハルさんが70年間、暖簾を守り続け、娘であるきみこさんが後を継ぎました。現在のメイン事業は石油販売関連ですが、長い歴史のなかで心がけてきたのは「町の生活に役立つ存在」であることです。ある時期まではスーパーマーケットの事業展開もしていました。
――そのなかで石油製品部門が残りました。
高岡 35年前、石油関連は規模も小さく採算が合わず、事業を畳む予定でした。しかし、なくしてしまうと町の皆さんに迷惑をかけてしまう。そこで「私にやらせてほしい」と経営者に話し、事業を続けてきたことで、基幹部門に成長しました。人口減少や高齢化で町のお客様が減ってしまい、スーパーは撤退を余儀なくされました。
――地域の縮小は日本の抱える大きなテーマです。
高岡 全国で6万店舗以上あったガソリンスタンドですが、現在2万店舗にまで減少しました。この町も7店舗が2店舗になってしまいました。時代が変わっても、灯油や重油、軽油の需要はあります。うちが閉店してしまったら、地域の皆さんに大変なご迷惑をかけてしまいます。「なんとか続けたい」という気持ちが、SAKAEホールディングス様への株式譲渡による第三者承継につながりました。
――M&Aに踏み切った一番大きな理由は何だったのでしょうか?
高岡 西社長も社長を支えてきた私も共に高齢になってしまいました。後継者は見つからず、「手伝ってくれる方がいなければ、2年後には閉店しよう」という流れでした。従業員さんも長く頑張ってくれたので、「皆で日本一周旅行でもしよう」と終わりに向けての話をしていたところでした。半ばあきらめかけていたところ、第三者承継に向けてM&Aサクシードが手を尽くしてくれ、SAKAEホールディングス・高橋社長に巡り会うことができました。夢みたいな展開でした。
マッチングサービスで状況が一転、素晴らしい譲り受け企業との出会い
――M&Aサクシードのマッチングサービスを利用することになった経緯を教えてください。
高岡 当初、日本政策金融公庫様に相談していたところ、M&Aサクシードを紹介され、お願いすることにしました。出会いから経営者同士の面談調整までをバックアップしてくれることに大きな安心を感じました。
<M&Aサクシードのマッチングサービスとは>
日々の業務が忙しいなど、自分でシステムを活用してM&Aの相手探しや交渉を進めることが難しい経営者に対して、ネット上での案件掲載や相手企業との面談調整などの手続きをサポートするものです。M&Aサクシードの担当者がオンラインサポートを通じてシステムの利用(匿名情報の掲載、メッセージのやりとり 等)を代行し、候補企業様とのお引き合わせを行います。
――マッチングサービスによってスピーディに話が進みました。
高岡 担当の方のリードがうまかったことが大きいですね。私自身「もう事業承継はダメか」と感じる場面も何度かありましたが、背中を押してもらったことで、関係者に粘り強く交渉することができました。それがなければ、2年後には閉店していたはずです。本当に感謝しています。
――契約に至るまでで時間がかかった部分はありますか?
高岡 私のM&Aの決意は固かったのですが、100年企業のオーナーである西社長や身内は、あくまでもこのままで続けてほしいという想いがあったことも事実で、社内でもとんとん拍子に事が運んだわけではありませんでした。また、M&Aに伴う条件についての交渉もわからないことばかりでしたが、そこに対してもM&Aサクシードの担当はフォローしてくれました。
実は先代の遺言書を先日、西社長から手渡されました。そこには私宛にこう書かれていました。大約すると2つ。「娘のことを守ってほしい」「会社を閉じる時はガソリンスタンドを売るなり貸すなりして老後資金にしてください」。先代はM&Aを容認していたんですね。
――奇しくも遺言書に書かれていた内容と同じ行動を高岡様は取られたわけですね。
高岡 単なる偶然かもしれませんが、先代が暖簾を守り続けてくれたおかげで、なるべくして素晴らしい承継先を見つけられたように思います。
共通点は、地域に必要とされている企業をなんとか残したいという想い
――一方、譲り受けたSAKAEホールディングス様は石油関連事業から始まり、成長を重ねてきました。
SAKAEホールディングス 高橋 SAKAEグループは1963年創業の栄石油株式会社から始まりました。石油製品の小売販売事業から事業を広げ、新車・中古車販売、レンタカー事業、整備事業など自動車関連事業のほか、保険代理店事業、貨物運送事業に展開しています。交通、物流基盤を支える担い手として地域社会とともに発展してきた歴史があります。
――西商店様はSAKAEホールディングス様のどこに魅力を感じたのでしょうか?
高岡 初めてお会いしたとき、高橋社長の若さにびっくりしました。いろいろな方面でやる気があり、どんなことも中途半端にはしておかないという気概を感じました。そして、何よりも「西商店は地域のためにはなくてはならない」ということ、地域のなかでの町の人々や会社との協調という点でも理解いただきました。「地域と共存する」という考えを高橋社長はお持ちだと知ることができました。
――地域への貢献や想いが共通点だったのですね。
高橋 今回が初めてのM&Aでしたが、出発点は地域に必要とされている企業をなんとか残したいという想いです。後継者のいない企業を継承し、地域の貴重なエネルギーインフラを守りつつシナジー効果を生み出す、それが「M&A経営」の最大の目標です。
高岡 西商店は地域の核になる「住民拠点SS」(SS:サービスステーションの略称で、ガソリンスタンドを意味)に国から指定されていますが、地域の人が核になるように育ててくれたというのが本当のところです。だからこそ、うちの従業員はどこに出しても恥ずかしくない素晴らしいサービスができるのだと思います。
――SAKAEホールディングス様は西商店様のどこに可能性を感じたのでしょうか?
高橋 企業風土、顧客層が魅力的でした。それに従業員の皆さんが接客力が高く自立していたところです。トップ面談の際に、スタッフの方々とコミュニケーションを取れる機会がありました。非常に頼もしく感じましたし、接客レベルも素晴らしかった。また、当社のノウハウを共有することで、一緒になるとさらなる成長が期待できると感じました。
――期待するシナジー効果は?
高橋 当社にとってエリアの拡大はもちろんですが、西商店様が持っている建設業許可を活用して新規事業の拡大なども想定しています。
高岡 設備工事関係や建設関連も伸び代は多いと思います。地域の皆さんも喜んでくれるはずです。高橋社長も「ぜひ工事関係を若い人に教えてください!」とおっしゃってくれていますので、私もあと2年くらいは頑張ろうと思っています。日本一周旅行はその後、女房と行くことにします。
――「M&A経営」も含め今後の事業の展望を教えてください。
高橋 社会の変化の速度を考えると、中長期の展望を持つことの意味はあまりないように感じています。スピードに対応することが肝要です。そう考えると、事業の拡大や新規事業の開発はM&Aを活用していくことが理に叶っているのではないでしょうか。
「企業社会の仲人=M&Aサクシード」という選択肢
――今回のプロセスの中で、印象に残ったことなどを教えてください。
高岡 M&Aサクシードの担当の方から「このようないい提案はなかなかないと思いますよ」と言われました。それが私の背中を押した決定的な言葉でした。M&Aを何件もまとめた経験から来る言葉には説得力がありました。
狭い地域だけに、善かれという気持ちから地元の人がうちの先行きについて、「西商店を我々でなんとかしよう」「私たちで残すべきだ」など、いろいろな話を交わしていました。一方、M&Aサクシードの担当の方に「会社という事業体をそんなに簡単に継承できる人はいないと思います」と言われた時にハッとさせられました。それからですね、関係者を説得して回ったのは。
――SAKAEホールディングス様にとって初めてのM&Aでした。どんな感慨をお持ちでしょうか?
高橋 PMI(統合プロセス)も目処がつきました。初めてのM&Aはとても上手くいっているように思います。振り返ってみると、3カ月ほど前にデューデリジェンス(譲渡企業調査)の報告書を眺めていたころは、本当に上手くいくのだろうかと、心配になったこともあります。しかし、どれだけ考えても100%成功の確証は得られません。最後はやってみるしかありません。ただ一歩進んだことは事実です。それは今後に活かせると考え、割り切ることができました。M&Aの決意ができたのはその時でした。
――事業継続に悩む中小企業経営者にメッセージをいただけますか。
高岡 「業績は良い、資産はある、しかし後継者はいない」――西商店のような会社は日本全国にたくさんあります。1店舗でもいいから継続できるようになれば、地域の衰退に歯止めがかかります。かつて、結婚相手を探して結びつける「仲人さん」がどこにもいて、家庭を作る手助けとなり人口も増えていきました。今の企業社会にも同じような存在が必要とされているんじゃないでしょうか。それがM&Aサクシードだと思います。仲人が良い相手を見つけて世話を焼いてくれるなら、地方の中小企業も安泰になるはずです。
M&Aサクシード 担当者コメント
木戸 亮介(シニアコンサルタント)
西商店様は地域のインフラとしての機能を有し、事業を存続されることに強いご希望をお持ちでした。必ず承継先を見つけたいという気持ちでサポートをさせていただき、密にやり取りをしながら、シナジー効果の高いSAKAEホールディングス様というベストなお引き合わせが実現できました。ますますのご繁栄をお祈りしております。
担当者プロフィール
大学卒業後、株式会社三井住友銀行へ入行。関西の法人営業部を経て、東京の本店営業部へ。大企業の融資取引や、事業承継案件にも従事。2018年「M&Aサクシード(旧ビズリーチ・サクシード)」の立ち上げに参画。