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製造業や物流業界などへの人材派遣・人材紹介業を手がける碧海スタッフ(愛知県)が、サービス業などへの人材派遣・人材紹介を手がけるマルコビジネスサポート(静岡県)を譲り受けることで、事業拡大を目指す同業同士のM&A事例です。隣県で取引先の業種が異なる両社が一緒になることで、シナジー効果が期待できます。人事・人材業界歴50年超の譲渡企業の小沼社長(69歳)から経験や知識を学びたいと考えた、譲り受け企業の金原社長。一方、今後も現在の仕事を継続し、これまでの経験やノウハウを伝えたいと考えていた小沼社長。その二人の思いが合致し、2カ月で成約しました。譲渡後は二人が共同代表を務め、譲渡企業の社名、従業員、取引先も継続します。その経緯や今後について、両社長に伺いました。(2021年8月公開)
愛知県と静岡県で人材サービス業を営む二社が出会う
――碧海スタッフ様の事業概要について教えてください。
碧海スタッフ 金原 当社は「人材派遣を通じて日本の労働環境を変える」をミッションに掲げ、人材紹介、紹介予定派遣、派遣の3つの採用形態で人材サービスを愛知県で提供しています。製造業や物流業への外国人の人材派遣がメイン事業です。日本語と母国語を使いこなす優秀な外国人の採用を企業にご提案しています。
――マルコビジネスサポート様の事業概要について教えてください。
マルコビジネスサポート 小沼 静岡県で、人材派遣、人材紹介、人材に関するコンサルティングを3つの柱としています。メイン事業はサービス業向けの人材派遣で、派遣先業務内容は、百貨店の各種専門販売員、カードの新規登録開拓など販売サービス業務、百貨店およびスーパーの試飲試食補助、倉庫内の仕分け業務などです。ほかにも、事務、経理等の派遣も行っています。
――マルコビジネスサポート様が第三者承継を検討した背景について教えてください。
小沼 息子が一人いるのですが、ものづくりの仕事をしており、好きなことをやってもらいたいと思っています。また、社内にも後継者はいませんでした。それで、私が60代後半になった2018年に、地元のメインバンクに「いい年になったので、面倒見てくれる会社はいないかな」と冗談まじりに話したところ、早速コンサルタントの方が候補先を探してくれました。そして、広告企画を行うイベント会社さんとご縁があり、2020年3月によいところまで進んだのですが、コロナ禍の影響で4月以降、人材派遣業界は逆風となり、お見送りになってしまっていました。
それで、しばらく自力でやらないといけないかなと思っていたところ、たまたまM&Aサクシードからメールが来て、興味をもちました。
コロナ禍の経験を経て、M&Aによる事業拡大を決意
――碧海スタッフ様がM&Aを検討された背景について教えてください。
金原 当社のメイン事業である製造・物流に特化した外国人の派遣業は、昨年春以降、コロナ禍の影響を大きく受けました。その後、愛知県の人材派遣業の業績の戻りは早かったのですが、この経験からこのまま一本足打法でいいのかと社内で検討することになりました。その結果、アクセルを踏んで、事業を拡大すべきだということになり、M&Aの検討を始めました。そこで、2020年10月に、当社がお付き合いのある碧海信用金庫経由で、「M&Aサクシード」を知り、登録したところ、マルコビジネスサポートさんを見つけました。マルコビジネスサポートさんは、日本人を対象にした販売サービスなどの派遣業で、当社とは全く異なる領域の派遣業だったので、興味をもちました。
――その後、どのように進んでいったのですか?
小沼 「コロナで人材派遣には逆風が吹いているし、借金はあるし、そのような当社を評価してくださる会社あるのだろうか」と思ったのですが、「M&Aサクシード」に登録してから1カ月以内に10社を超える企業が興味を示してくださり、そのなかで、碧海スタッフさんととんとん拍子でうまくいき、驚きました。
金原社長は今後、製造や物流以外にも派遣領域を広げたいとのことでした。非常に私のことをたててくれまして、とても熱心な方です。
私自身、まだ続けられる限り続けたいというのが、譲渡の条件でした。金原社長と2回お会いして、これまで一生懸命やってきたことをもってお手伝いしたいと思い、私が「よろしくご指導ください」とお伝えしました。すると、金原社長が、「いやいや小沼社長は経験豊かで学ぶことたくさんあるので、逆に教えてください」と返してくださったのです。考え方がとても素敵な人だな、一緒にやっていきたいと思いました。
社名、顧客、従業員を引き継ぎ、ともに歩む
――金原社長がマルコビジネスサポート様と一緒になろうと考えた決め手は何ですか?
金原 隣接地域でかつ、当社が手掛けるのとは他業種への人材派遣だったというのが大きいです。
また、自分一人ではなく、いろいろな人の協力があって初めて事業は成り立つもので、これまで何十年も事業をされてきた小沼社長から学ぶことがたくさんあると思っています。これから当社が親会社にはなりますが、どちらが上ということは立場上はないです。それで、小沼社長から「よろしくご指導ください」と言われましたが、そうではなく、「ともにがんばりましょう」と伝えました。小沼社長をリスペクトしているので、そのままやっていただきたいと思い、社名も顧客も従業員もそのまま引き継ぎました。
さらに、お互いに違う業種に強みを持っているので、シナジー効果が出せると思いました。静岡県は製造・物流業が多いので、これを機に静岡県にも事業展開できそうです。また、以前、愛知県の小売り業の企業様から販売補助の派遣の依頼があったのですが、お断りせざるを得なく、機会損失していた経験があり、今後はそこもカバーできそうです。
――小沼社長は、人材業界の大先輩でいらっしゃるのですね。
小沼 人材業界でいうと40年間、人事も含めると50年間、人にかかわる事業に携わっています。私は大手百貨店出身でして、静岡で総務・人事・教育などの部門を13年間経験した後、本社で人事部所属になりました。当時の常務取締役が新しいことを考えていて、グループ全体の人事部機能をつくることになり、人事・教育担当が全国から呼ばれたのです。いろいろ研究した結果、ビジネスとして派遣・紹介・教育をやることになり、新会社をつくりました。そのときに(1986年)、ちょうど人材派遣法ができ、人事部が外に出たほうがおもしろいということになり、派遣と紹介の免許をとったのです。その会社で8年ほどお世話になりました。
その後、静岡にUターンしました。もともと、地域のお役に立ちたいという強い思いがあったのです。それで、静岡で知人の人材会社に勤めた後、22年前に独立し、マルコビジネスサポートを設立しました。人材業界で長いことやってきた者として、金原社長に経験をお伝えできるかなと思います。
――「M&Aサクシード」を利用してみた感想をお聞かせください。
金原 「M&Aサクシード」がサポートに入ってくれてよかったです。小沼社長に聞きたいことや、これにしてほしいということを先読みして対応してもらえました。
小沼 私たちの仕事(人材サービス業)は仲人で、間に入って、お互いのよいところもそうでないところも説明したうえで仲人します。それと同じで、「M&Aサクシード」では、当社のよいところもそうでないところも含めて説明してくれて、とてもスピード感をもってつないでくれました。「M&Aサクシード」に出会えてよかったです。
今後も一緒に成長し続け、支え合う
――小沼社長の今のお気持ちと今後についてお聞かせください。
小沼 これまで私がオーナー社長でしたが、これからは雇われ社長になります。今回、銀行から借入金の連帯保証人を金原社長に書き換えてもらうことになり、肩の荷が下りました。金原社長には、恩義を感じていて、よい会社になるように何でもやりたい、残りの人生をお手伝いしたいという気持ちです。私は、今でも野球を続けていて、体育会系で粘り強い性格です。社長業ともにこれまで営業をずっとやってきているので、フットワーク軽く、続けられる限り続けたいです。
金原 経験、実績豊富な小沼社長と、国内に加えて海外支店を設立するなどグローバルに展開を始めており、起動力のある弊社が一緒になることで共に成長していきたいと思いました。
――碧海スタッフさまは、今後もM&Aを積極的に検討されていきますか?
金原 よいご縁があればぜひと思っています。具体的には、IT系と物流系を探しています。具体的には物流のなかでも流通加工や荷役業務などを行われている事業者様、ITはSESなど技術者派遣などへの領域も検討したいと思っています。
――これから事業の譲渡を検討する経営者の方へメッセージをお願いします。
小沼 相手の社長との信頼関係につきるなと。事業をやってきた歴史があり、従業員がこれからお世話になるので、信頼関係がとても大切だと思います。