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事業承継した会社のその後を追う「『その後』のストーリー」。M&Aサクシードを通じて出会ったタッグが、どんな素晴らしい物語を紡ぎ出したのかを紹介します。今回のサクセスストーリーでは、2020年7月にM&Aを機に金融システム開発の株式会社SDアドバイザーズ・グループに入った、非金融システム開発の株式会社コウイクスを紹介します。優秀なエンジニア集団であるコウイクスのグループインは、「売上高の増加」と「信用力の増加」を導き、1年後にはグループのマイルストーンと言うべき売上げ10億円突破に寄与します。結果が出たことによって、次々と状況は好転していきます。M&Aに伴うPMI(統合プロセス)がスムーズに進んだ背景には、複数のM&Aを成功させたSDアドバイザーズのノウハウがありました。「M&A経験あり」の優良な譲り受け企業が集まっているM&Aサクシードならではの好事例と言えるでしょう。株式会社 SDアドバイザーズ 代表取締役 高木 栄児 氏と株式会社コウイクス 代表取締役社長 小迫 清則 氏に話を聞きます(2023年2月公開)。
参考:前回の成功事例インタビューはこちら
売上げが10億円を突破! 目標のマイルストーンを達成
――両社が一緒になってその後、どのような前進がありましたか?
SDアドバイザーズ 高木 2つの増加――「売上高の増加」と「信用力の増加」です。M&Aは、グループが成長するための大きなエンジンとなりました。グループ全体の売上げは、初めてのM&Aを実施する前の2016年12月期は4億円強(従業員数10名程度)でした。コウイクスがグループ入りした後の2021年12月期にはグループ全体で10億円強(従業員数40名程度まで成長しました。目標のマイルストーンである10億円を達成できたのです。コウイクスという優秀なエンジニア集団が加わったことによって、既存クライアントの信頼が高まったことが大きかったと思います。
コウイクス 小迫 仲間が増えたことで社員が刺激を受けています。よい意味での切磋琢磨が生まれているように感じています。グループ内のコミュニケーションツールでのつぶやきをうちの社員も見ていて、グループの他社社員が「資格に合格しました!」と書き込むと、自分も挑戦してみたいという気持ちがわくようです。コウイクスからも今年、2名が資格に挑戦する予定です。対面での仕事がかなうようになって、「うちの会社の会合にぜひ参加してください!」と、グループ内での誘いを受ける機会も増えました。いい意味での刺激になっています。
高木 グループ内での組織改編も行い、コウイクスにはグループ全体の社内システムを担当してもらうことにしました。これまでその業務は私がやっていたので、経営者としての仕事に集中できるようになりました。これまで課題だった事項が解消されていっています。
――コウイクスでは、創業オーナー兼社長が高齢のため引退し、SDアドバイザーズにグループ入りした際に、取締役だった小迫様が代表取締役社長に就任されました。小迫様の役割はどう変わりましたか?
小迫 私自身の負担も軽くなりました。コウイクス単体だったときは、バックオフィス業務を前社長がやっていて、相当な時間を割いていました。今はグループとしての担当部署があるので、負担がずいぶんと軽くなりました。それといつも周りに仲間がいるので、不明なことがあってもすぐに相談することができます。効率がずいぶんとよくなりましたね。
閉塞感がなくなり、ポジティブ思考へと変身
――M&A成立時に小迫様はそのダイナミクスを、「噴火しないと山はできない。そこで生じるエネルギーこそが、会社にとって大事」とおっしゃっていました。
小迫 噴火(=M&A)の後、いろいろと見えてきました。やはり社員の意識が変わったことが大きい。SESとしてお客様先に常駐する社員が多く、単体の小さな会社だったときは、「どうせ私はずっとここにいるんでしょ・・・」という閉塞感のようなものがありました。業務もポジションも何も変わらない。でも今は社員が望めば、新たな道が用意されている。その事実がポジティブな思考を生んでいます。それぞれの社員にそれぞれの事情があります。仕事に対する考え方が変わることだってあるでしょう。これまでは細やかな対応はできませんでした。でもグループになって、社員の選択の幅が広がりました。
高木 多様性は私の掲げる方針のひとつです。今後はグループ内異動も視野に入れています。
――M&Aの結果が足し算ではなく掛け算の効果を生んでいるように思います。
高木 優秀なエンジニアがよりチャレンジングな仕事をすることで、売上げは向上することがはっきりとわかりました。単純な積み上げというのではなく、一気に扇状に広がっていくイメージですね。結果が出れば、エンジニアのモチベーションもアップする。すると会社の規模が大きくなる。いろんなポジションが増えて、社員が新たなチャレンジができるようになります。
2社目のM&A。経験のある譲り受け企業だからうまくいったPMI
――SDアドバイザーズ様にとってコウイクス様は2社目のM&Aでした。1社目のときと比べて、PMIはいかがでしたか?
高木 1社目の経験がものすごく役に立ちました。1社目の時は初めての経験だったため、相当苦労しましたから。コウイクスは同じ業種業態だったこともありますが、M&Aの経験・ノウハウを持っていたことが、内容的にも時間的にもPMIを順調に進めることにつながりました。
労務管理、経理、給与・・・。1社目では社内を整備する事項が次から次へと現れ、試行錯誤でテンテコ舞いでした。実際に経験してわかったことですが、PMIにはノウハウが必要です。
――2社目では、PMIのスピードは上がりましたか?
高木 3カ月くらいで形にできました。1社目は1年かかりましたから、1/4にまで短縮できたことになります。その分すぐに本業に取り掛かることができました。その早さも売上げに貢献したと思います。社員に分配できる原資が増えれば、優秀な社員を集めることにつながります。
小迫 グループの売上げが10億円を超え、2021年のお正月に金一封が出ました。以前のコウイクスではそういう節目のお祝いのようなことはできませんでした。一生懸命がんばってきたという自己満足だけでした。2023年1月には物価高に対応するためのインフレ手当も支給されました。本当にありがたいかぎりで、社員皆が喜んでいます。
「M&Aサクシードには質の高い情報をキープし続けてほしい」(高木様)
――グループインして成果を収めました。今後、新たにチャレンジしたいことは?
小迫 社内的には、未経験の新入社員を受け入れられる環境づくりをしながら、業務経験が積めるような組織にしたいですね。もともとコウイクスには、未経験の人材を育てて一人前にする文化がありました。その仕組みを再び強固にしていきたい。事業としてはDX推進サービスの拡大です。現在、グループでは内製でDXを進めていますが、そのノウハウを活かして、中小企業向けのDX推進を当社サービスとして展開していく方向で、調査中です。
高木 新しい事業に向けては「M&A経営」(M&Aを取り入れた「掛け算」の経営)をひとつの軸として考えています。グループで優秀なエンジニアは確保できていますので、次は、彼らの力を存分に発揮できる新規事業のM&Aを考えています。その一つが「動画制作系サービス」です。毎日、M&Aサクシードをチェックしています。
――M&Aサクシードへの期待をいただけますか。
高木 M&Aサクシードの案件の質の高さは特筆したいですね。ノンネームシート(会社が特定できる具体的な情報は記載せず、地域、事業内容、売上規模等の概要を匿名でまとめたもの)の段階で、ある程度質の高い情報が提供されています。ここは引き続きキープしていただきたい。
「M&A経営」で社員が活躍するフィールドを広げる
――中小企業のM&AやPMIをうまく進めるポイントを教えてください。
高木 絶対にやるべきことは、社員の目線に降りて真剣にPMIを行うことです。最初は経営者自身がどっぷり現場に入るくらいの気持ち、意識が必要です。決して人任せにしないことです。そして基本は「変えない」。既存の社員を不安にすることは避けなければなりません。しかし、社員のためになることは別です。そこは積極的にアピールして同意してもらうべきです。
――高木様は「M&A経営」を続けてこられました。
高木 初めてM&Aを行ったときのことを思い出します。「失敗したらどうしよう」。自分が保証人になって銀行から大金を借入れして、内心はガクガクブルブルでした。でも最初に大きな投資を行ったおかげで、成功をつかまえることができました。それなりの経験もついてきて、M&Aは今後も経営のカギになると思います。
――1年半前に思い描いていた絵に近づけましたか?
高木 金融に特化したSDアドバイザーズを起点に、システム開発の全領域を網羅する――この1年半、M&Aを中心に目標達成に邁進してきました。M&A1社目では上流工程を押さえるコンサルティング業の株式会社オーシャン・コンサルティングが、そして非金融のコウイクスがジョインしてくれたことで下流工程が埋まりました。業態的にもマイルストーンをクリアしたように思います。システム開発業として新たなチャレンジができる広いフィールドが生まれました。このフィールドで社員が思いっきり能力を発揮できるようにすること、それが今の私に課せられた最大の責務だと感じています。