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承継した会社のその後を追う「その後のストーリー」。M&Aサクシードを通じて出会ったタッグが、どんな素晴らしい物語を紡ぎ出したのかを報告します。今回のサクセスストーリーでは、東証プライム上場IT企業、株式会社アイモバイルのグループ入りした個人運営のアプリ会社を紹介します。ひとりでの制作・運営ながら、600万ダウンロードの優良アプリを制作・運営するSimple App Studio株式会社は、新たな事業に向かうため、アイモバイルへの譲渡を行います。そしてグループ本社でM&Aを担当した部長がそのまま代表取締役を兼任。譲渡前から現在まで一気通貫で対応されているお話を伺いました。(2022年12月公開)
アプリダウンロード数1割増、新たな手法の広告営業が快調!
――2021年10月の承継から約1年、ビジネスは順調ですか?
アイモバイル 今井 私たちが譲り受けたのは、「シンプルダイエット」という体重管理のアプリを制作・運営するSimple App Studioです。この1年あまりで、売上げは2.5倍に増え、累計ダウンロード数は660万になりました。サービスは文字通りシンプルで、体重の入力を毎日していただくユーティリティアプリです。
――譲り受けされたアイモバイル様はふるさと納税サイト「ふるなび」で有名ですね。
今井 創業時はアドネットワークという広告配信プラットフォームからスタートしました。ふるさと納税制度が進み、2014年に「ふるなび」を開始しました。現在はこちらが成長事業となっています。BtoBとBtoCでプラットフォームを展開しています。
――シンプルダイエットの何が魅力だったのですか?
今井 プラットフォームビジネスのベースとなるのは大量のデータです。その点で、エンゲージメントの高いユーザーを抱える「メディア」を探していました。体重記録にしぼったシンプルダイエットは、接触時間は短いながら毎日使われる確かな価値を持っています。M&A交渉時の累計ダウンロード数は約600万、MAU(1カ月に1回以上利用や活動があるユーザーの数)も40万と、私たちの希望に合致しました。
――グループイン後に新たなビジネスは生まれましたか?
今井 前オーナー様は全てお一人で運営をされておりましたので、事業の拡大を図るにはリソースに課題がありました。一方で、広告収入がある程度あったため、アプリの使いやすさや見やすさ等の追求を丁寧に対応されておりました。譲り受け後は時間を経て新しいビジネスへの取り組みをスタートすることができました。それがヘルスケア領域の企業様とのコラボ/タイアップ広告です。営業的な反応はすごくいいですね。健康を意識したヘルシー宅食やベジタブルミールの加工食品とのタイアップ記事はユーザー様との親和性が高いため、とても好評いただいております。
シンプルダイエットは「健康」が強力な事業ドメインです。ヘルスケア関連の企業様からすると、シンプルダイエットとのコラボ/タイアップ広告は効率・効果の面で大きなメリットがあります。アイモバイルでは、それまでの広告メニューはホリゾンタル(広告主の業種を問わない)でしたが、シンプルダイエットによって焦点が定まったことで、これまで難しかった広告主様ともお取り組みができるようになったことは、グループとしても新しい知見になりました。
M&A担当者がそのまま譲り受け会社の社長へ。スムーズに進んだPMI
――前オーナー様が譲渡された理由は?
今井 「新しいことにチャレンジしたい」という前向きなお気持ちでした。縁とタイミングがうまく合ったのだと感謝しています。譲り受けから1年以上経過しますが、今も時折ご連絡いただいたりします。
2011年におひとりでアプリを開発・運営された方でした。アプリに対する愛情が非常に深く、いろいろなことを丁寧に教えていただきました。PMIの際に大切にしている想いについてもたくさん語ってくださいました。そのなかで印象に残った言葉が「技術は細部に宿る」です。シンプルダイエットはシンプルが命です。しかしだからこそ、ユーザーに少しでも感覚的に嫌だと思わせてしまうことをしてはいけない。その思想を通して無駄な部分をどんどん省いていったことで、使いやすさの極みに達したのだと思います。
――同じIT業界でのM&Aでした。やりやすさはありましたか?
今井 KPI設定のしやすさはありますね。オンライン上でのユーザー動向数値や広告収益の指標等も同じなので、感覚的なずれはありません。今回のグループインについても、私がグループ本社の投資企画部部長として経緯や内情を事前にしっかりと把握して交渉、その延長線での社長就任でしたので、あらゆることがスムーズにいきました。
――PMIで大変だったことがあれば、教えてください。
今井 なかったです! 前オーナー様はとても丁寧に最後まで対応してくださいました。また、社内の皆さんも協力的な方が多く、いつもささえていただいています。
案件数の多いM&Aサクシードでチャンスを逃さない
――今井様は現在もM&Aの最前線で活躍されています。
今井 投資企画部は出資からM&Aまでのほぼ全てを統括する部署です。ほぼ毎日、M&Aサクシードをチェックしていますね。
M&Aサクシードで一番評価しているのは、案件数が多い点です。機会損失がもったいないので、掲載される案件の数は絶対条件です。もうひとつは業種を絞ってまとめて見ることができる点です。対象領域が細かく設定してあるので、M&Aの方向性が明確な時は手間が省けて助かっています。
――今井様にとって社長業とは?
今井 社長は今回で2度目になります。1度目は31歳、入社1年半の時でした。思いがけず会社から社長を命じられましたが、絶対チャレンジした方がいいだろうと引き受けました。しかし、現場の営業マンから突然の転身でしたので、経営どころではありませんでした。決算書は読めませんし、会社組織としての取締役会の運営と事業運営も両方こなさないといけない。本当に大変でした。しかしその時の経験がSimple App Studioの運営を順調に導いたのだと思います。
――「ただの貢献より還元する貢献がいい」とおっしゃっていますね。
今井 日常を生きていて、「感謝するポイント」が世の中にはたくさんあることに気がつきました。誰かからいただいた感謝は、巡りめぐって誰かに返したいと思うようになります。感謝を世の中に還元する――還元のための貢献が新しく始まるわけです。お金の貸し借りが経済を動かすように、受けた感謝が新たな感謝を生み出すことになれば、世の中はお金とは違う価値で回っていくのではないでしょうか。「ただの貢献より還元する貢献がいい」というのは、社会との関わりのなかでの私の理想論ではありますが、会社を運営するなかでも実践していきたいですね。
縁をつくり、縁を大事にする
――「『縁をつくり、縁を大事にする』ことを学びました」ともおっしゃっています。M&Aにおいて、特に意味を持つ言葉だと感じました。
今井 私自身にさほど能力があるわけではありません。タイミングや運、周りの人のおかげで今の自分があります。この会社の継続も私一人では無理でした。協力があって初めて、成り立っていると思っています。立場は社長ですが、決裁者ではなく、社内の調整者であると自らに言い聞かせています。会社の内部も縁ですし、M&Aのような外部も縁だと思っています。また、外部と内部をシームレスにしていくことも縁であり、それこそが私の職務だと思っております。
――「M&A経営」を推進される立場から一言いただけますか?
今井 アイモバイルはこれまで4社を譲り受けました。M&Aは成長戦略のひとつの手段と考えています。そのうち著しい成功事例となったゲーム関連会社があります。グループイン後、売上げを10倍にまで伸ばすことができたのです。1+1=2の足し算ではなく掛け算となったのは、アイモバイルグループの培ってきたナレッジが役に立ったものだと考えています。私たちのグループのベースにあるのはマーケティングですので、ユーザーデータが多ければ多いほどPDCAも回しやすいし、そのノウハウもあります。シンプルダイエットも今、その道中にあります。
今後も、エンゲージメントの高いユーザーを有するアプリやWebサイトを運営する企業などを積極的に探しています。また、「M&A経営」の新しい方向性としては、グリーンエネルギーを新たな選択肢として掲げています。IT関連企業だけでなく、GXに関する領域についてもM&Aサクシードでチェックしています。今、譲渡をお考えの経営者、開発者の皆様には、ぜひアイモバイルグループに興味を持っていただき、お声がけいただければと思います。