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事業承継した会社のその後を追う「その後のストーリー」。M&Aサクシードを通じて出会ったタッグが、どんな素晴らしい物語を紡ぎ出したのかを報告します。今回のサクセスストーリーでは、札幌に本社を置くリサイクル総合企業、株式会社鈴木商会のグループ入りした釧路の株式会社木村工務店を紹介します。会社を譲渡後、木村工務店の前オーナーは取締役として得意な営業に力を集中。新たな経営を担ったのは、鈴木商会の釧路出身者でした。そして1年。グループの手厚いバックアップが奏功し、過去最高の売上げを記録します。グループ間のシナジー効果だけでなく、地元を想う気持ちや人を大切にする社風が好循環を生み、理想的なM&Aとなりました。(2022年12月掲載)
参考:前回の成功事例インタビューはこちら
鈴木商会グループ入りで過去最高の売上げに! 将来への投資も実現
――鈴木商会様に木村工務店様がグループ入りして1年が経ちました。
鈴木商会 駒谷 リサイクルの総合企業としての鈴木商会グループの発展を考えた時、川上から川下までを網羅することが必要となります。木村工務店のグループ入りが素晴らしい結果を出したのは、その計画が正しかったことを証明したものだと考えています。
鈴木商会のこれまでのビジネスモデルは、産業廃棄物やビルの解体現場などから生じる金属スクラップを選別し、産業資材へ再生、販売することでした。一方、木村工務店の主な事業は解体工事で、スクラップを発生させる立場です。つまり、グループ内で原料を調達できるようになったわけです。
木村工務店 木村 売上げは過去最高でした!グループ入り1年目で更新でき感無量です。かなりのスピード感ですべてが進んでいます。
これまでは下請け主体でしたが、今では元請けの工事も増えています。本来は携われなかったであろう規模の案件も見えてきています。鈴木商会グループの営業力がさまざまな局面で力を発揮しています。
木村工務店 小野塚 鈴木商会の本社での部長職を経て、2021年7月に、木村工務店の専務取締役に任命されてすぐ、5年後を見据えた事業計画を作成しました。目指すべき数値を達成するために、初年度はまず「社名を売る」ことに注力しました。鈴木商会の営業チームが盛り上げてくれたおかげもあり、数値目標は見事にクリアできました。
木村工務店の売上げの向上=スクラップ発生の向上です。グループとしてもうれしい結果が続いています。
――売上げが好調なことで、将来への投資も可能になりましたね。
木村 今までは、大型の重機の購入は一歩踏み出せないところがありました。しかし、先々の仕事が見えてくると先行投資ができるようになります。2023年の春には、新しく大型機3台が納品されます。
小野塚 人材への投資もすぐに取り掛かりました。社員の給与は年収ベースで全員上がっています。福利厚生についても早々に、鈴木商会と同じレベルに持っていきたいですね。
駒谷 人口の減少などもあって、北海道の鉄の生産量が減ってきています。しかしそれをただやり過ごすのではなく、私たちでスクラップを発生させ、加工して、付加価値をつけ、外部に販売する。現状加工している鉄・アルミ以外にも、ナイロンの漁網をリサイクルし、ペレットにして、繊維メーカーに売るなど、新しい取り組みも始めています。まだまだ捨てているものも多いですので。それ以外の原料も挑戦していきたいと考えています
「今は取締役として現場に集中できています」(前オーナー・木村様)
――前オーナーの木村様は譲渡後、取締役を務めています。どういう役割を担っていらっしゃるのですか?
木村 営業部と工事部を担当しています。代表だった時は営業から管理まで何でもやっていたので、本当に大変でした。今は経営の面、特に銀行関係を小野塚さんが担当してくれているので、私は得意な領域である現場に集中できています。
駒谷 経営者と取締役とでは、仕事の領域が大きく異なります。経営の不安がありながら、営業するのは大変だったと思います。
木村 小野塚さんが来てから、会社の雰囲気も一新しました。小野塚さんのようにコミュニケーション能力がある人はそうそういません。すぐに溶け込んで、私よりも社員からの信頼を得ている(笑)。経営者が変わったことによる違和感は全くありません。
――M&Aでは「社風の違い」がよくテーマにあがります。
木村 社風がどうこうとかあまり考えたことはないですね。意識したこともありません。それほどまでに、自然に一つになっていきました。小野塚さんは事あるごとに声をかけてくれたので、社員ともすぐに打ち解け、社内がやんわりした雰囲気になりました。
小野塚 順序を踏んで、社員が受けとめやすいものから取りかかりました。真っ先に始めたのは社員との対話です。変わる可能性のある業務については、質疑も含めて一つずつ時間をかけました。グループと同じ体制にすることにはメリットがあります。しかしそれを焦ると収集がつかなくなる恐れもあります。気をつけながら丁寧に社風を融和させていきました。
最初に社員全員で、両社合同のBBQも企画しました。お互いに自分達がやっていることなどを紹介し合える時間を持ててよかったです。
駒谷 経営者が変わり違うやり方になると、辞めてしまう社員が出てくる場合もあります。これまでのM&Aで、私たちもそういう苦い経験があります。今回、そうならずに一体感を持てたのは、木村さんの存在があったからだと感謝しています。
ホームページをリニューアル。人を大切にする会社の雰囲気を伝える
――ホームページ(HP)では社員の笑顔が印象的です。
木村 HPをリニューアルしたのは小野塚さんです。人の関わりを大事にする小野塚さんのスタイルが反映されているのだと思います。私が作成した時は機械ばかりを載せていましたから。
小野塚 採用も意識して写真撮影をしました。求職者のほとんどがHPをしっかりご覧になります。社内の明るい雰囲気を伝えることが大切だと考えました。おかげさまで、新たに工事部に4名、営業部には2名が入社となりました。話を聞くと、HPを見て好印象を持ったようです。
――HPに掲載している社員の言葉のなかで、「自由度が高い」とあります。どういった取り組みをされたのでしょうか?
小野塚 鈴木商会では役職や肩書きで呼ぶことは既にやめています。木村工務店でもそのコミュニケーション方法にしました。「同じ目線で話しましょう」というスタンスが、管理職と社員の間の距離を縮めたのかもしれませんね。
――生産性向上の点ではDXも推進されています。以前は紙ベースの仕事が多かったと聞きました。
小野塚 事務業務を可能な限りクラウドに一本化しました。水平展開もできるし、グループ間の連携もスムーズになりました。今取り掛かっているのは、社内の状況を一元管理するための独自のアプリ開発です。
――小野塚様が専務に就任されたのがキーポイントだったように感じます。駒谷代表はなぜ小野塚様を選ばれたのですか?
駒谷 小野塚は釧路出身なんです。鈴木商会では釧路事業所の所長を経験し、その後、本社で部長を務めていました。札幌なので単身赴任でした。地元への思いがあることは私も理解していましたが、昇進などの人事を考えると釧路に戻るタイミングはそう簡単ではありません。そんな時に木村工務店のM&Aの話が具体化したんです。「そうだ!」と思いました。小野塚はバランス感覚もいいし、譲り受けの責任者として最適です。実は彼の自宅は木村工務店から車で5分くらいです。これは彼の持っている運だと思いました。昇格して故郷に戻る。こんな理想的なことはありません。
「M&A経営」を推進。M&Aサクシードで、第二、第三の木村工務店と出会いたい
――M&Aから1年。木村様は当時をどのように振り返られますか?
木村 後悔など一切ありません。会社も安泰になりました。以前は行き当たりばったりで、この先どうなるかわかりませんでした。先代から後を継いでからずっとそういう感じでした。なんとなく仕事の話が来て、短いスパンで消化して・・・。今は何より安心感があります。
――2年目に突入です。今後の目標をお聞かせください。
小野塚 これまで網羅していた営業エリア人口は60万人程度です。しかしこれからは北海道全域、520万人をターゲットにしたい。北海道内は今、さまざまな開発が進んでいますので、解体対象がたくさんあります。そこに攻めこみたいですね。
木村 グループ入りする時に、私なりの将来の売上目標を密かに立てていました。それがすでに来年達成できそうです。「行けるところまで行ってやろう!」。それが私の今の目標です。
駒谷 木村工務店の敷地を拡張する予定です。グループの拠点となる事業所としても、ますますの成長を期待しています。
――鈴木商会様の今後の「M&A経営」を教えてください。
駒谷 鉄やアルミのリサイクルは順調です。しかしリサイクル総合企業としてそれ以外の領域を充実させたい。私たちと同じような分野、そしてシナジー効果のある隣接分野は常にM&Aを検討しています。M&Aサクシードを通じて、第二、第三の木村工務店と出会いたいですね。