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1956年に設立し、石川県に本社を置く大手合繊織物メーカーの丸井織物株式会社。
2011年に常務取締役の宮本智行氏がジョインして以降、圧倒的な企業成長のためにM&Aを経営戦略の大事な柱とし、2~3年の間に5社をグループ化しています。
今回は、2018年に子会社化したオリジナルラボ株式会社の執行役員CFO・尾川祐樹氏がM&Aサクシードを活用してお声がけした企業の事業を、丸井織物が譲り受けました。
その背景と、丸井織物の傘下に入ることでどのような事業成長が実現するのかについて、宮本氏と尾川氏にお話を伺いました。(2019年11月公開)
M&Aは、事業成長には欠かせない重要な経営戦略
ーー:今回、丸井織物の子会社であるオリジナルラボがM&Aサクシードで売り手企業に声をかけ、親会社である丸井織物がM&Aをされています。その経緯について教えてください。
尾川 まず我々の関係からお話しします。オリジナルラボは、1枚からオリジナルTシャツを作れる「TMIX」というサービスを運営しており、子会社としてグループにジョインする前から丸井織物のTシャツを仕入れていました。
2017年に出資いただき、翌年にはM&Aで丸井織物の子会社になったのですが、その出資からM&Aまでをリードしていたのが宮本です。当時私は監査役の立場でオリジナルラボに関わっていましたが、子会社化したタイミングで正式にジョインしてCFOになりました。
宮本 丸井織物は、ここ2~3年でオリジナルラボを含めた5社のM&Aを実施しており、M&Aを経営戦略の重要な柱と位置づけています。そういった背景もあって、2018年から尾川にはグループ全体のM&A担当としても動いてもらうようになりました。
ーー:それが今回の経緯につながったのですね。
尾川 そうですね。オリジナルラボはインキュベーション投資に積極的に取り組んでいるので、投資とM&Aの両方の視点を持って、半ば趣味のようにM&Aサクシードの「新着案件」などさまざまな情報を毎朝チェックしています。
そして、投資して成長しそうだ、織物事業の一貫生産とシナジーを出せそうだと思ったら、積極的にお声がけをする。そのなかで今回出会ったのが、株式会社ミチでした。
ミチが運営していたのは、ネイリストが作ったネイルチップを販売し、即日発送するECサイト「ミチネイル」です。
ECのノウハウがあり、リスティング広告やSEOに強いことがわかってすぐに連絡を取りました。
オリジナルラボもデジタルマーケティングに強みを持っているので、強みをさらに増強した体制を作れるのではないか、と。
ただ、投資としては金額面が折り合わなかったので、丸井織物にM&Aを検討してもらうべく、宮本に相談したというのが今回の経緯です。
シナジーを出せると確信。丸井織物のアセットを活用して横展開へ
ーー:宮本さんは、ミチのお話を聞いてどう思いましたか? また、今後どのような展開ができると考えたのでしょうか。
宮本 尾川から話を聞いて、オリジナルラボはデジタルマーケティングに強みを持つ会社なので、確かにミチとのシナジーを出せると思いました。加えて、Webで簡単にオリジナルTシャツを作るサービスも展開しているので、そのノウハウを生かせばユーザーが自分でデザインするネイルチップも作れると思ったんですね。
他にも、グループとのシナジーでさまざまな横展開ができる可能性を感じたので、具体的なお話をさせてもらいました。ミチのオーナーの希望は、事業譲渡です。丸井織物と一緒になればどのような事業成長が見込めるのかなどをお話しし、尾川が最初に連絡を取ってから約2ヶ月後の2019年7月、ミチネイルの丸井織物への事業譲渡が決定しました。
その後、すぐにコスト関係をすべて見える化し、無駄なコストを削っていったところ、2ヶ月後には利益率が15%から40%にまで改善。
この調子でこれから実現させたいのは、ネイルチップ以外の商品を増やし、さまざまなネイルサービスを横展開していくこと。
そして、中国や韓国にも進出することです。ネイルシールやネイルのCtoCビジネス、ネイリストとのマッチング、ブランド等とのコラボレーションなど幅広い展開を考えています。
ネイルチップの市場規模は小さくても、ネイルサービス市場は2000億円規模あります。ミチ単体ではサービスの多角化は難しかったと思いますが、丸井織物のアセットを活用することで可能性は広がりました。
尾川 オーナーは新しいビジネスを始めつつ、丸井織物でネイル事業の新しい挑戦を一緒に牽引してくれていますし、それができるのも丸井織物に譲渡したからこそ。
しかも、M&Aで丸井織物に新しい事業が加わったことで、M&Aサクシードで新たにお声がけする売り手企業の幅も広がりました。
宮本 ミチネイルはサイト集客力がありますし、主なユーザーは10~20代の女性。この領域でシナジーを出せそうな売り手企業の選択肢が増えたことは、今回のM&Aの副産物ですね。
丸井織物のノウハウにより、子会社の利益率アップ
ーー:丸井織物は、子会社とどのような関係性を築いているのでしょうか。また、グループに入るメリットを教えてください。
宮本 もともとの文化は守り、事業を伸ばすために変えるべきところは変えていますが、関係性の築き方は、売り手企業のオーナーの考え方などによって違います。
オーナーに、これからも経営を続けたいのか、どうしたいのかを聞いて寄り添うので、丸井織物が全面的に入り込む場合もあれば、オリジナルラボのように独立した状態を保つこともありますね。
尾川 グループになる良さはいくつもありますが、ひとつファクトとして言えることは、ミチが利益率を大きく上げられたのと同じように、赤字だったオリジナルラボもM&A後に利益が出るようになったこと。
これは、丸井織物が徹底した見える化をして、無駄をなくしていくノウハウを持っているからです。やり方は売り手企業の要望に沿ってくれるので、オリジナルラボの場合はKPIをかなり細かくして目標の進捗もわかりやすくし、会計管理体制も進化させたことで会社の成長につながりました。
それから、メーカーや商社、物流、IT といったさまざまな領域の知見やノウハウが、グループに集まっているのもメリットです。人材面においても、商社や投資銀行、コンサルティングファームなど多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっているので、最短距離で成長できる実感がありますね。
積極的なM&Aとインキュベーション投資で圧倒的成長を目指す
ーー:今後M&Aを検討したい企業を教えてください。また、いずれ事業譲渡を検討したいと考えているオーナーに向けて、メッセージをお願いします。
尾川 今後M&Aを検討したいのは、織物事業の一貫生産にフィットする縫製工場や商社、企画会社、ユニフォームの製造・企画会社、またオリジナル商品を作っているのでオーダースーツやカスタマイズしたアイテムをEC販売する会社などです。とにかくシナジーを出せそうな企業は積極的にお声がけしたい。
グループ全体で掲げている高い目標を達成するには、自社事業だけでは実現できないので、精力的に活動したいと思っています。
それから、いずれ譲渡を検討するオーナーに伝えられることがあるとしたら、M&Aで会社を乗っ取られることはないということ。実際、親会社の方針に全部従うこともありませんし、子会社が成長するために親会社をうまく利用できるようになります。だからぜひ、M&Aは成長のための一つの手段として考えてほしいです。
宮本 そうですね。丸井織物は譲渡企業のオーナーが何をしたいかを大切にしており、オーナーの考えに寄り添ったM&Aをしています。だから、丸井織物に興味を持った譲渡企業がいらっしゃったら、安心して相談してほしい。グループとしてのシナジーを追求して、積極的にM&Aを検討したいと思っています。
それから、これまでM&Aをした5社の社長は全員、M&A後に退任することを希望していました。だけど実際は、全員が残って続けてくれているんですね。なぜなら、資金面での安心感を得た上で、自分のやり方を変えずに新しい挑戦ができ、丸井織物グループとのシナジーによって新たなビジネスを生み出せているから。会社やオーナー、丸井織物グループのすべてにwin-winの状態を作れているのではないかと自負しています。
丸井織物は次の中期経営計画でさらに大きな目標を掲げます。その達成のためにも、シナジーを出せる企業と一緒に新しい挑戦をしながら、丸井織物グループを大きく成長させたいと思っています。