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「同業の観光バス会社・貸切バス会社が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
観光バス会社・貸切バス会社の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
観光バス会社・貸切バス会社の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 観光バス・貸切バスを単体で手がける中小企業の公開成約事例は僅少。相場観は買い手の値付け(EBITDA基準・時価純資産法)と、事業の中身(運転士・車両・取引先)に置くのが現実的 |
② 買い手の値付け方法 | オファーでは、EBITDA(利益)や時価純資産を軸に、保有する車両・営業権・手元現金を加味する形が中心 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | 当社プラットフォームでの該当案件は限られるため統計値は示せないものの、関心を持ちうる買い手候補が登録されている |
まず、上場企業による買収のうち公開されている観光バス会社・貸切バス会社の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しようとしました。ただし、観光バス・貸切バスを単体で手がける中小企業の公開成約事例は僅少で、年商規模別の倍率テーブルとしてお示しできるだけの件数がありません。ここでは倍率表は載せず、買い手が実際に使う値付け(EBITDA基準・時価純資産法)と、事業の中身(運転士の確保・車両・取引先の構成)を相場観の軸に置きます。実名の成約事例は後半でご紹介します。
結論:観光バス会社・貸切バス会社の価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「運転士(乗務員)が確保・定着しているか」と「保有する車両と安全性評価」です。運転士不足(2024年問題)が深刻ないま、買い手が気にするのは買収後もバスを走らせ続けられる人と車があるかだからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 運転士(乗務員)の確保と定着(人員・年齢構成・採用力) | ◎ 最重要 | 運転士がいなければバスは走らせられない。運転士不足(2024年問題)のなか、買い手が最も気にするのは、買収後も人が残り、車両を稼働させ続けられるか。ここが価格の土台 |
2 | 保有車両(台数・年式)と安全性評価(セーフティバス等)・許認可 | ◎ 重要 | 車両は事業を動かす資産そのもの。台数・年式が揃い、一般貸切旅客自動車運送事業の許認可や安全性評価認定(セーフティバス等)を得ていると、買い手はゼロから作りにくい基盤として評価しやすい |
3 | 取引先の構成と継続性(旅行会社・学校・自治体・インバウンド) | ○ | 旅行会社との契約・学校の送迎・自治体の受託・インバウンドの取り込みなど、安定した取引先を持つほど収益予測が立てやすい。特定の取引先への偏りは評価を抑える |
4 | 営業利益(EBITDA)・代表非依存の運営体制 | ○ | 買い手は利益を基準に値付けしやすい。代表が抜けても運行管理・整備・営業が回る体制は、引き継ぎリスクが小さいと評価される |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、運転士が不足していたり車両が古い・利益が薄いと評価は伸びない。走らせ続けられる基盤が見られる |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「運転士が確保でき、車両と安全性評価が揃った走らせ続けられる状態」を示せるようにし、次に「利益を残す」。売上を追うのはその後です。
結論:観光バス会社・貸切バス会社のオファーでは、買い手はEBITDA(利益)や時価純資産を軸に、保有する車両・営業権・手元現金を加味して値付けしています。事業を動かす資産(車両)と収益力の両方が見られます。
M&Aサクシードのバス関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を確認すると、EBITDA基準や時価純資産法による提示が見られます。該当する提示が僅少なため、構成比としてではなく提示例として整理します。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA × 倍率 | 収益力(EBITDA)に一定の倍率を掛けて評価する方法。利益が厚いほど価格が伸びる |
時価純資産法 | 資産・負債を時価で評価し直した純資産を基準にする方法。車両など資産を持つ事業で使われやすい |
時価純資産 + 営業利益の数年分 | 資産価値に、のれん(営業利益の数年分)を加える方法 |
その他(案件の個別事情に応じた算定) | 事業内容や運転士・車両・取引先と買い手とのシナジーに応じた個別の提示 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、そこに買い手ごとの倍率を掛けた金額が初期レンジの土台になります。ここに保有車両・営業権の時価純資産や手元現金、運転士・取引先と買い手とのシナジーが加味されます。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は、利益(EBITDA)を厚くしつつ、運転士・車両・取引先といった「買い手が安心して引き継げる基盤」を示せる状態を作ることです。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:観光バス・貸切バス関連の案件は当社プラットフォームでの該当が限られるため、1案件あたりのオファー社数(中央値・平均・最大)を統計として示すことは控えます。それでも関心を持ちうる買い手候補は複数登録されており、運転士・車両・取引先をまとめて引き継ぎたい買い手が存在します。
M&Aサクシードの観光バス・貸切バス関連案件は、現時点で当社データベースに該当する案件が限られます。そのため、1案件あたりのオファー社数の中央値・平均・最大といった統計値の掲載は控え、傾向の参考にとどめます。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
統計値(中央値・平均・最大) | 当社データベースでは該当が限られるため記載を控えます |
確認できる傾向 | 運転士・車両・取引先をまとめて引き継ぎたい買い手が関心を示している |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。観光バス会社・貸切バス会社関連の売り案件は市場にほとんど出回っておらず、公開されること自体が珍しい業種です。
買い手側の関心が前述のとおり存在することを踏まえると、この業種は「売り案件が出てくれば注目される」待ち需要型の市場です。市場に類似案件が少ないぶん、買い手は他案件と天秤にかけにくく、売り手が交渉の主導権を握りやすい構図といえます。
そのうえで大事になるのが、オファーの集め方です。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件に目を通すため、関心が重なれば、比較検討できるオファーを同じ期間に集められます。1社ずつ順番に打診して回るのではなく、複数のオファーを手元に並べて、価格や条件を見比べながら交渉相手を選べる状態をつくれます。オファーが複数並ぶと、買い手も他社と比較されていることを前提に条件を出すため、価格だけでなく、従業員の雇用継続や取引先との関係維持といった条件面でも、売り手の希望をのんでもらいやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを見ると、買い手像の輪郭が見えてきます。該当するオファーが限られるため、構成比ではなく傾向の参考としてご覧ください。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 運行事業を持つ同業から、事業拡大を狙う中堅企業まで幅がある |
M&A経験 | M&A経験のある買い手が中心。運転士・車両を面で確保したい買い手が手を挙げやすい |
上場/非上場 | 非上場の事業会社のほか、上場企業も |
エリア | 東京をはじめとする都市圏の買い手のほか、営業エリアの補完を狙う地場の同業も |
業種 | 貸切バス・観光バス・路線バス・タクシーなど旅客運送の同業のほか、旅行業・観光・自治体連携などの隣接領域の事業会社 |
結論:観光バス会社・貸切バス会社の買い手で最も存在感があるのは、「運転士・車両・営業エリアをまとめて引き継ぎ、事業を面で広げたい同業・隣接の事業会社」です。運転士不足(2024年問題)のなか、人と車を面で確保できることが大きな動機だからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業(旅客運送)・地域補完型 | ◎ 主役候補 | 大和自動車交通(約190億。多摩・東京都西部の営業拠点強化のため十全交通を取得) | 運転士・車両・営業エリアをまとめて引き継ぎ、配車・整備・間接部門の統合でコスト削減。屋号・雇用が継続されやすい |
旅行・観光と組み合わせる事業会社 | ○ シナジー次第 | AFC-HDアムスライフサイエンス(約327億。旅行業との連携でラビット急行の貸切バス事業を取得) | 自社の旅行・観光事業とバスの運行・車両・運転士を組み合わせ、インバウンドを含む観光需要の回復を取り込む |
異業種・複合エンタメ/レジャー系 | ○ シナジー次第 | 映像・イベント制作会社が貸切バス・ハイヤー事業を含む複合企業を取得した事例も | 自社事業の周辺として送迎・移動サービスを取り込み、サービスの幅を広げる |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | —(旅客運送関連の買い手候補にも一定数) | 成長投資・再編の起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。同業・隣接の買い手は、運転士と車両、営業エリアをまとめて引き継ぎたいからこそ、雇用や運行の継続を前提に手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。観光バス・貸切バス事業単体の公開事例は僅少なため、貸切バス・旅客運送の同カテゴリの事例を「参考」として挙げます。「どんな会社が、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください(金額は個別事情で決まっており、そのまま自社に当てはまる水準ではない点にご注意ください)。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
旅客自動車運送事業(十全交通/参考) | 約4.4億 | 大和自動車交通(約190億) | 約0.04億 | 東京都西部・多摩地区の営業拠点強化。配車・整備・間接部門の統合によるコスト削減とエリア補完 |
貸切バス事業+旅行業(ラビット急行/参考) | 約4.6億 | AFC-HDアムスライフサイエンス(約327億) | 非開示(株式は備忘価額) | 静岡県西部で29台のバスと運転士を保有。自社の旅行業との連携でシナジーを狙い、車両・運転士の経営資源を取り込み |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが手を離しても、運転士と車両で、バスを走らせ続けられるか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後に運転士が辞めないか」「車両が古くて買い替え負担が重くないか」「安全面や許認可でつまずかないか」「代表がいなくなって運行管理が止まらないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ売上規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 運転士(乗務員)が確保・定着し、買収後も運行を続けられる見込みが高い | ◎ 運転士が不足・高齢化し、運行の継続が不安定 |
◎ 車両の台数・年式が揃い、安全性評価(セーフティバス等)を得ている | ◎ 車両が古く、近い将来の買い替え負担が大きい |
○ 旅行会社・学校・自治体・インバウンドなど取引先が分散し、契約が継続している | ○ 特定の取引先に売上が偏り、契約終了の影響が大きい |
○ 代表が抜けても運行管理・整備・営業が回る | ○ 代表個人に営業・運行管理が集中している |
○ 運行記録・整備記録・許認可・労務・財務情報が整理されている | △ 必要資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「運転士が残るか」「車両と安全性が揃っているか」この2つを整えるだけで、同じ売上規模でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。運転士の充足率や車両年式などの具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照しようとしました。ただし、この統計には観光バス・貸切バス事業(道路旅客運送業)に対応する中分類の公表値がありません。運輸業・郵便業では「道路貨物運送業」など貨物側の中分類のみが公表されており、貸切バス・観光バスといった旅客運送の中分類は集計対象になっていないためです。そのため、本記事では公的統計の倍率表は掲載せず、相場観は買い手のオファーの値付けと、実名事例の事業の中身に置いてご覧ください。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、観光バス会社・貸切バス会社との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDA(利益)や時価純資産を軸にした評価。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
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