





「同業のネット広告代理店(運用型広告)が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
ネット広告代理店(運用型広告)の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
ネット広告代理店(運用型広告)の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。媒体費のグロス売上で見るか、運用で積み上がる手数料・継続収益で見るかで、評価は変わってきます。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 公開事例では、年商1〜3億円規模で年商倍率が約1倍、運用力や継続顧客を持つ会社では数億〜十数億円での成約も見られます(詳細は売上規模別表) |
② 買い手の値付け方法 | オファーで多い算定方法は「EBITDA 3〜5倍 + ネットキャッシュ(手元現金)」 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | 1案件あたりのオファー社数は4社(M&Aサクシードのオファーデータ) |
まず、上場企業による買収のうち公開されている広告運用・マーケティング支援関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。譲渡額そのものよりも、「年商の何倍で成約しているか」と、その会社が持つ運用力・顧客基盤に注目してください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
1〜3億円 | 約1倍 | 約600万円〜約7.7億円 |
3〜5億円 | 約0.5倍 | 約9000万円〜約10億円 |
5〜10億円 | 約1.7倍 | 約6100万円〜約19億円 |
10〜30億円 | 約0.3倍 | 約3.2億円〜約31億円 |
30億円〜 | 約0.3倍 | 約1.4億円〜約20億円 |
• 譲渡理由は「自社事業の選択と集中」が約35%、「事業の成長」が約32%、「後継者不在」が約13%
• 所在地は東京が約6割。買い手・売り手とも首都圏に集まりやすい傾向
• 黒字での成約が約5割。赤字でも事業資産や成長余地で買い手がつく例がある
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
求人メディア | 1000万円以下 | 約330万円 |
メディア運営 | 1000万円以下 | 約350万円 |
マッチング広告 | 1億円~2億5000万円 | 約600万円 |
求人メディア | 5000万円~1億円 | 約700万円 |
結論:運用型広告代理店の価格は、媒体費のグロス売上ではなく、運用ノウハウと実績、そして継続的に入る手数料収益で決まります。
評価要素には序列があります。同じ売上でも、運用力と顧客継続率があるかで価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 運用ノウハウと実績(ROAS改善などの再現性ある運用力) | ◎ 最重要 | 買収後も成果を出し続けられる力として評価される |
2 | 継続課金・運用手数料などのストック収益(顧客継続率) | ◎ 重要 | 買い手は継続する収益を基準に値付けしやすい |
3 | 特定媒体・業種での専門性や代理店認定 | ○ | 参入障壁と安定した取引につながる |
4 | 顧客分散と代表・特定担当者に依存しない運用体制 | ○ | 買収後の売上継続リスクを下げる |
— | 媒体費のグロス売上の大きさ | △ | グロスより、手数料・利益・継続性が見られる |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。グロス売上を追うより、運用の再現性を高め、継続顧客を厚くし、特定担当者への依存を下げることが先です。
結論:運用型広告代理店のオファーでは、買い手は共通して継続収益力(EBITDA)と手元資金、そして自社事業とのシナジーを見ています。
M&Aサクシードのネット広告代理店(運用型広告)関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計しました。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA 3〜5倍 + ネットキャッシュ | 買い手が提示したオファーの算定方法 |
EBITDA 倍率 + ネットキャッシュ | 買い手が提示したオファーの算定方法 |
EBITDA 3〜5倍 | 買い手が提示したオファーの算定方法 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、倍率評価ではその3〜5倍が初期レンジの土台になります。ここに手元現金や、継続顧客がもたらす将来の手数料収益が加味されます。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は、継続収益を厚くし、買い手が安心して引き継げる運用体制を整えることです。
結論:運用型広告関連の案件には、1案件あたり中央値で複数社の買い手がオファーを寄せています。関心は一定して集まります。
M&Aサクシードのネット広告代理店(運用型広告)関連案件のオファーデータで、1案件あたりの買い手数を確認できます。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 4社 |
平均 | 約7.6社 |
最も多い案件 | 36社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうでしょうか。現在、M&A市場に売りに出ているネット広告代理店(運用型広告)関連の案件は約15件と、決して多くありません。
一方の買い手側は、前述のとおり中央値4社がオファーを出しています。流通量・オファー数とも派手な数字ではありませんが、裏を返せば競合する売り案件も少なく、一件一件が丁寧に検討される市場です。買い手の網を広く張れるかどうかが結果を分けます。
交渉の進め方という点でも、押さえておきたいことがあります。プラットフォームを使えば、複数の買い手が同じ期間に案件を検討するため、条件を見比べられるオファーがまとまって集まりやすくなります。相対で1社と向き合うのではなく、複数のオファーを並べて比較しながら進められる状態です。比較されている前提で買い手が条件を出す状況では、価格はもちろん、経営者の関与期間や引き継ぎの進め方についても、売り手の希望条件を軸に交渉を進めやすくなります。
なお、売りに出ている案件の譲渡理由としては「事業拡大・成長戦略」が最も多くなっています。同じ悩みを抱えるオーナーが売却という選択肢を現実に選んでいる、ということでもあります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像は具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 最も多いのは10億円以上30億円未満。100億円以上、30億円以上50億円未満など大手も一定数が関心を寄せています |
M&A経験 | オファーを出した買い手の約7割がM&A経験あり |
上場/非上場 | 非上場。東証グロース、東証プライムも含まれます |
エリア | 東京都中心。大阪府、愛知県など全国から |
業種 | PR・広告・マーケティング支援の同業、メディア・プラットフォーム運営の事業会社、広告運用を内製化したい事業会社など |
結論:買い手は、PR・広告・マーケティング支援の同業と、メディアやプラットフォームを運営する事業会社に大きく分かれます。どちらが主役になるかは、引き継げる運用力・顧客とシナジーで変わります。
買い手は複数タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
PR・広告・マーケ支援の同業(上場・大手) | ◎ 主役候補 | ベクトル、フィードフォース、マテリアルグループ、Macbee Planet など | サービス領域の拡張・運用人材の獲得を狙う |
メディア・プラットフォーム運営の事業会社 | ○ 価格が出やすい | じげん、ポート など | 自社メディアへの送客・集客力の強化を狙う |
広告運用を内製化したい事業会社 | ○ シナジー次第 | 隣接領域の事業会社 | 内製化・新規チャネル開発 |
投資ファンド | △ 条件次第 | — | 成長投資・同業ロールアップの起点 |
つまり、買い手像を一つに決めつけないことが大切です。実際に、複数の広告・マーケ会社を続けて取得してロールアップを進める上場企業も見られます。自社の運用力・顧客をどの買い手が最も評価するかで、条件は変わってきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
コンサルティング事業、広告運用代理事業、マーケティング支援事業 | 約45.2億円 | 株式会社フィードフォース(約43.7億円) | 約12.5億円 | 広告運用代理・マーケティング支援の専門性と人材を評価。テクノロジーを活用した高度なマーケ支援体制の共同構築を狙った取得。 |
1.運用型広告の運用代行 2. 検索エンジンマーケティングの研究、教育事業 | 約27.3億円 | 株式会社ベクトル(約592.5億円) | 約11億円 | 運用型広告の運用代行と検索エンジンマーケティングの知見を評価。PR事業を核とするグループのサービス領域拡張。 |
ソーシャルメディアマーケティング/DX支援/映像スクール事業等 | 約6.5億円 | マテリアルグループ株式会社(約62.9億円) | 約18.9億円 | TikTokを中心としたSNSマーケティング・採用支援を評価。PRプラットフォーム事業の成長に向けた運用型マーケ機能の取り込み。 |
AI マーケティングプラットフォーム「3D AD」の運営 | 約6.7億円 | 株式会社Macbee Planet(約516.8億円) | 約12億円 | AIマーケティングプラットフォームの技術とデータを評価。データ・解析力の強化による運用高度化を企図した取得。 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると「買い手が安心して運用と顧客を引き継げるか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後に運用成果と売上が続くかという点です。この不安を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ売上規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 運用ノウハウ・実績が仕組みやチームで回る | ◎ 特定の運用担当者に依存している |
◎ 継続課金・高い顧客継続率がある | ◎ スポット出稿・単発運用が中心 |
○ 特定媒体・業種での専門性や認定がある | ○ 何でも運用で差別化が弱い |
○ 顧客が分散している | ○ 特定クライアントに依存している |
○ 数値管理・レポート体制が標準化されている | △ 属人的で引き継ぎが難しい |
最初の2行(◎)が大切です。「運用が仕組みで回るか」「継続顧客があるか」この2つを整えるだけで、同じ売上でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。ネット広告代理店(運用型広告)に近い区分を併記します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
専門サービス業(他に分類されないもの)(50件) | EV/EBITDA | 2.8倍 | 5.1倍 | 10.8倍 |
専門サービス業(他に分類されないもの)(51件) | PER | 5.3倍 | 10.4倍 | 18.6倍 |
広告業(32件) | EV/EBITDA | 2.9倍 | 6.5倍 | 8.9倍 |
広告業(35件) | PER | 6.3倍 | 13.3倍 | 20.8倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、ネット広告代理店(運用型広告)との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDA 3〜5倍 + ネットキャッシュ(手元現金)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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相場の確認も、会員企業からのオファーの受け取りも無料です。契約や決算書の提出も不要で、オファー相手の企業に対しては会社名を匿名のまま利用できます。
問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
運用型広告代理店の価格は、媒体費のグロス売上の大きさではなく、運用ノウハウと実績、継続課金・手数料のストック収益、顧客の継続率と分散、買い手とのシナジーで変わります。公開成約事例とM&Aサクシードのオファーデータをあわせて見ることで、自社が市場でどう見られるかの目安が分かります。
そして、自社に実際どんなオファーが届くかは、匿名・無料で確かめられます。まずは相場を見て、気が向いたらオファーを受け取ってみる、その順序で、ご自身のペースで選択肢を広げてみてください。
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