





「同業のAI開発(AI受託開発)が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
AI開発(AI受託開発)の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
AI開発会社の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。売上規模で見るより、AI人材と独自技術の希少性で評価される点が、この業界の特徴です。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 公開事例は小規模の会社が中心で、年商の2.5〜3.5倍と高めの倍率がつく例が見られます。AI人材・技術の希少性が評価されるためで、公開事例が限られる分、当社のオファーデータもあわせて見るのが有効です(詳細は売上規模別表) |
② 買い手の値付け方法 | オファーで多い算定方法は「EBITDA 3〜5倍 + ネットキャッシュ(手元現金)」 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | 1案件あたりのオファー社数は8社(M&Aサクシードのオファーデータ) |
まず、上場企業による買収のうち公開されているAI・先端技術関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。件数は多くありませんが、小規模でも高い倍率がつきやすい点に注目してください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
1億未満 | 約2.5倍 | 約7600万円〜約16億円 |
1〜3億円 | 約3.5倍 | 約2.8億円〜約5.1億円 |
• 譲渡理由は「事業の成長」が約39%、「代表者の引退」が約17%、「後継者不在」が約11%
• 所在地は東京が約6割。買い手・売り手とも首都圏に集まりやすい傾向
• 黒字での成約が約3割。赤字でも事業資産や成長余地で買い手がつく例がある
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
アプリ開発 | 1000万円以下 | 約5000万円 |
IoT事業 | 5000万円~1億円 | 約3000万円 |
IoTシステム開発 | 1000万円~5000万円 | 約1500万円 |
教育システム提供 | 5000万円~1億円 | 約1500万円 |
結論:AI開発会社の価格は、売上規模よりも、AI人材の数と質、そして独自データ・モデルの資産性で決まります。
評価要素には序列があります。同じ売上でも、人材と独自資産があるかで価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | AI人材の数と質(機械学習エンジニア・データサイエンティスト) | ◎ 最重要 | 採用・育成に時間がかかるため、チームごと引き継げる価値が高い |
2 | 独自データ・学習済みモデル・アルゴリズム | ◎ 重要 | 他社が簡単に再現できない資産として評価される |
3 | 運用保守・SaaS型などの継続収益 | ○ | 買い手は継続する収益を基準に値付けしやすい |
4 | 特定業種・課題での実績と再現性 | ○ | 参入障壁になり、買い手のシナジーを生みやすい |
— | 受託の一時売上の大きさ | △ | 一時受託中心だと、売上があっても評価は伸びにくい |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。人材を定着させ、独自データ・モデルを資産化し、継続収益と特定業種での実績を積むことが先です。
結論:AI開発会社のオファーでは、買い手は共通して収益力(EBITDA)と手元資金、そしてAI人材・技術のシナジーを見ています。
M&AサクシードのAI開発(AI受託開発)関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計しました。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA 倍率 + ネットキャッシュ | 買い手が提示したオファーの算定方法 |
EBITDA 3〜5倍 + ネットキャッシュ | 買い手が提示したオファーの算定方法 |
EBITDA 倍率 | 買い手が提示したオファーの算定方法 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、倍率評価ではその3〜5倍が初期レンジの土台になります。ここに手元現金や、AI人材・独自技術がもたらす将来価値が加味されます。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は、AI人材と独自資産を明確にし、買い手が安心して引き継げる状態を作ることです。
結論:AI・先端技術関連の案件には、1案件あたり中央値でも多くの買い手がオファーを寄せています。AI人材ニーズを背景に、関心は非常に厚く集まります。
M&AサクシードのAI開発(AI受託開発)関連案件のオファーデータで、1案件あたりの買い手数を確認できます。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 8社 |
平均 | 約11.2社 |
最も多い案件 | 73社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。AI開発(AI受託開発)関連の売り案件は市場に約5件しかなく、流通量は限られています。
これに対して買い手側は、前述のとおり1案件あたり中央値8社がオファーを出しています。売り案件の少なさに対して買い手の需要が上回る、売り手優位の需給バランスです。数少ない案件に買い手が集中するため、複数の候補を比べながら条件交渉を進めやすい環境にあります。
こうした買い手の厚みは、交渉の場面で具体的な意味を持ちます。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件を検討するため、比較検討できるオファーを同じ期間にまとめて集めやすくなります。1社ずつ順番に打診して回るのではなく、複数のオファーを手元に並べて、価格や条件を見比べながら交渉相手を選べる状態をつくれます。比較されている前提で買い手が条件を出す状況では、価格はもちろん、社名・屋号の存続や従業員の雇用継続についても、売り手の希望条件を軸に交渉を進めやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像は具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 最も多いのは10億円以上30億円未満。100億円以上、50億円以上100億円未満など大手も一定数が関心を寄せています |
M&A経験 | オファーを出した買い手の約7割がM&A経験あり |
上場/非上場 | 非上場。東証グロース、東証プライムも含まれます |
エリア | 東京都中心。大阪府、愛知県など全国から |
業種 | AI・システム開発の同業、AIを内製化・DXに取り込みたい事業会社、業種特化でAIを活用したい事業会社など |
結論:買い手は、AI・システム開発の同業と、AIを内製化・DXに取り込みたい事業会社に大きく分かれます。どちらが主役になるかは、引き継げる人材・技術とシナジーで変わります。
買い手は複数タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
AI・システム開発の同業(AI専業・システムインテグレーター) | ◎ 主役候補 | AI inside、Laboro.AI、コアコンセプト・テクノロジー など | AI人材・技術・独自データの獲得を狙う |
AIを内製化・DXに取り込む事業会社 | ○ 価格が出やすい | Macbee Planet、アイビス など | 自社プロダクト・DXへのAI機能の取り込み |
業種特化でAIを活用したい事業会社 | ○ シナジー次第 | タウンズ(医療)など | 特定業界の課題解決へのAI適用 |
投資ファンド | △ 条件次第 | — | 成長投資・同業ロールアップの起点 |
つまり、買い手像を一つに決めつけないことが大切です。特定業界に特化したAIソリューションを持つ会社は、買い手にとって参入の近道になるため、プレミアムがつきやすくなります。自社の人材・技術をどの買い手が最も評価するかで、条件は変わってきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
AI を活用したシステムの企画・設計・開発事業 | 約1億円 | 株式会社コアコンセプト・テクノロジー(約191.7億円) | 約2.8億円 | 独自の良品学習AIアルゴリズムと外観検査ソフトを評価。製造業向けの検査自動化ソリューションの取り込みを狙った取得。 |
企業向けのデザイン・システムの企画・開発、各種アプリケーション開発 | 約0.6億円 | 株式会社Laboro.AI(約15.2億円) | 約1.5億円 | 機械学習を活用したオーダーメイド型AI開発の技術・人材を評価。カスタムAI事業の開発力強化を企図した取得。 |
AI音声合成技術関連事業 | 約1.2億円 | 株式会社アイビス(約46.2億円) | 約5.1億円 | AI音声合成技術を評価。持続的な成長基盤の確立に向け、独自技術の取り込みを狙った取得。 |
AI コンサルティング事業、AI関連ソフトウェア開発事業、AI関連人材教育事業 | 約1億円 | AI inside株式会社(約44億円) | 約16.4億円 | AI開発・AIコンサル・AI人材教育の一体的な体制を評価。物体検知AIを核とするグループの事業拡大に向けた取得。 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると「買い手が安心してAI人材と技術を引き継げるか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後にAI人材が定着し、技術と売上が続くかという点です。この不安を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ売上規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ AI人材がチームで定着している | ◎ 特定研究者・代表個人に依存している |
◎ 独自データ・モデルなど再利用できる資産がある | ◎ 都度開発のスクラッチが中心 |
○ 運用保守・SaaSの継続収益がある | ○ 受託の一時売上が中心 |
○ 特定業種・課題で実績がある | ○ 何でも開発で差別化が弱い |
○ 顧客が分散している | △ 特定顧客・研究費に依存している |
最初の2行(◎)が大切です。「AI人材が定着しているか」「独自データ・モデルがあるか」この2つを整えるだけで、同じ売上でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。AI開発(AI受託開発)に近い区分を併記します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
情報サービス業(100件) | EV/EBITDA | 4.9倍 | 9.7倍 | 17.7倍 |
情報サービス業(106件) | PER | 6.7倍 | 13.5倍 | 27.7倍 |
インターネット附随サービス業(22件) | EV/EBITDA | 4.3倍 | 10.4倍 | 18.9倍 |
インターネット附随サービス業(24件) | PER | 11.2倍 | 23.6倍 | 31.5倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、AI開発(AI受託開発)との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDA 3〜5倍 + ネットキャッシュ(手元現金)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
AI開発会社の価格は、売上の大きさだけではなく、AI人材の数と質、独自データ・モデルの資産性、継続収益、買い手とのシナジーで変わります。公開事例は限られますが小規模でも高い倍率がつきやすく、当社のオファーデータでは1案件あたり中央値でも多くの買い手が関心を示しています。
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