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「同業の受託ソフトウェア開発会社が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
受託ソフトウェア開発会社の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
受託ソフトウェア開発会社の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 上場企業による買収の公開事例では、譲渡額は年商のおよそ0.5〜1.4倍に分布(規模が小さいほど高め) |
② 買い手の値付け方法 | オファーで多いのは「EBITDA(利益)の3〜5倍+手元現金」を軸にした方法 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値8社の買い手がオファー |
まず、上場企業による買収のうち公開されている受託ソフトウェア開発関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。譲渡額そのものよりも、「年商の何倍で成約しているか」の傾向に注目してください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
1〜3億円 | 約1.4倍 | 約1,000万円〜約28.5億円 |
3〜5億円 | 約0.7倍 | 約5,700万円〜約8.8億円 |
5〜10億円 | 約0.6倍 | 約1.2億円〜約6億円 |
10〜30億円 | 約0.5倍 | 約5億円〜約12.3億円 |
• 譲渡理由は「後継者不在」と「事業の成長(さらなる拡大)」がそれぞれ約4割
• 所在地は東京が約5割。買い手・売り手とも首都圏に集まりやすい傾向
• 黒字案件は約半数。営業赤字でも成約しており、黒字であることは必須条件ではない
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
ITサービス | 1,000万〜5,000万円 | 約380万円 |
IoTシステム開発 | 1,000万〜5,000万円 | 約1,500万円 |
受託開発 | 1億〜2.5億円 | 約2,760万円 |
WEB制作 | 1億〜2.5億円 | 約3,000万円 |
システム開発 | 5,000万〜1億円 | 約5,000万円 |
結論:受託ソフトウェア開発会社の価格を決める最大の要素は、売上でも案件数でもなく「買収後もエンジニアと開発体制が残るか」です。請負で開発をやり切り、検収まで完遂する力はチームに宿っており、買い手が引き継ぎたいのはその体制そのものだからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | エンジニアと開発体制が残るか(定着率・PM/リーダー層の継続意思) | ◎ 最重要 | 請負開発はチームで完遂する事業。買収後に体制が崩れないことが価格の土台 |
2 | 営業利益(EBITDA) | ◎ 重要 | 買い手はEBITDA基準で値付けする。利益が出ているほど素直に価格が上がる |
3 | 直請け比率・継続顧客(リピート発注)の比率 | ○ | 検収後も発注が続く顧客は引き継げる資産。直請けは粗利が厚く評価されやすい |
4 | 特定顧客への依存度・代表非依存 | ○ | 売上の大半が1社に集中していると、発注終了リスクとして減点される |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 単発・低粗利の案件を積み上げた売上は、評価が伸びにくい |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「開発体制が残る状態」を作り、次に「継続顧客と利益」を積み上げる。売上規模を追うのはその後です。
結論:買い手のオファーは「EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金」を軸にした方法に集約されます。算定方法を明示した買い手の多くが、共通して利益を基準に見ています。
M&Aサクシードの受託ソフトウェア開発関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、最も多いのはEBITDA倍率+手元現金。残りの方法も、EBITDAか純資産を軸にした変種にすぎません。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ) | 標準形。これが基準と考えてよい |
純資産 + EBITDA × 倍率 | 上記の変種。資産価値に収益力を加算 |
時価純資産 + 営業利益の数年分 | 上記の変種。資産に、のれん(営業利益の数年分)を加える方法 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。これに手元現金を上乗せした金額が、オファーの初期レンジになります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「利益(EBITDA)を厚くし、手元現金を残しておくこと」。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような開発会社に買い手がつくのか」という心配は、データを見ると小さいといえます。受託ソフトウェア開発関連の案件には、1社あたり中央値8社、多いケースでは70社を超える買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの受託ソフトウェア開発関連案件のデータでは、1社あたり中央値で8社、多いケースでは73社の買い手がオファーを寄せています。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 8社 |
平均 | 約11.9社 |
最も多かった案件 | 73社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうか。M&A市場に出ている受託ソフトウェア開発会社関連の売り案件は約60件と、コンスタントに案件が出てくる業種です。
一方で、前述のとおり買い手の関心は厚く、1案件あたり中央値8社のオファーが集まります。案件の流通で相場観が形成されつつ、なお需要が供給を上回る売り手に追い風の市場です。相場が読みやすいうえに買い手間の競争も働くため、好条件を引き出しやすい環境といえます。
この需給の環境は、売り手にとって交渉の進め方そのものを変えます。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件を検討するため、比較検討できるオファーを同じ期間にまとめて集めやすくなります。相対で1社と向き合うのではなく、複数のオファーを並べて比較しながら進められる状態です。複数のオファーが集まれば、交渉の主導権は売り手側に寄ります。価格に加えて、従業員の雇用継続や取引先との関係維持などの条件面でも、売り手側の意向を反映しやすくなります。
なお、売りに出ている案件の譲渡理由としては「後継者不在」が最も多くなっています。同じ悩みを抱えるオーナーが売却という選択肢を現実に選んでいる、ということでもあります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 10〜30億円が最多。100億円超の大手も約2割を占める |
M&A経験 | 約74%が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が約7割。東証プライム・グロース・スタンダード等の上場企業も約3割 |
エリア | 約7割が東京。大阪・愛知など都市圏が続く |
業種 | 同業の受託開発・システム開発、隣接するIT・Web企業のほか、開発の内製化を狙う事業会社も |
結論:受託ソフトウェア開発会社の買い手で最も数が多いのは「同業の受託開発・システム開発会社によるロールアップ型」です。採用難のいま、検収まで完遂できる開発チームと、発注が続く顧客をまとめて確保できることが動機だからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業の受託開発・システム開発会社(ロールアップ型) | ◎ 最多・最速 | コアコンセプト・テクノロジー(受託系の会社を4社連続取得)/システムサポートホールディングス(約269億) | 開発体制と顧客を面で引き継ぐ。屋号・雇用が継続されやすく、売り手に優しい |
隣接領域の上場IT企業 | ○ 価格が出やすい | バルテス(約108億、ソフトウェアテスト)/Orchestra Holdings(約140億) | テスト・デジタル領域などの隣接事業に、開発力と専門分野を取り込む |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | ジェイリース(約173億、家賃保証) | システムの内製化・DX推進。自社の開発部門として取り込む |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | —(IT関連の買い手候補にも一定数) | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。同業ロールアップ型は、開発チームと顧客をまとめて引き継ぎたいからこそ、雇用継続を前提に、競って手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
WEBシステム開発+理美容向け予約管理システムの提供・運営(パシフィックポーター) | 約2.9億 | サインド(約22.4億) | 28.5億 | 同じ理美容予約領域でのプロダクト統合と開発力の取り込み |
金融機関向けシステム開発(シンフォー) | 約4.0億 | バルテス(約108億) | 約8.8億 | ソフトウェアテスト大手による開発領域への拡張。金融分野の専門性と模倣されにくい事業基盤 |
ゲームの開発・運営受託(ランド・ホー) | 約13億 | Orchestra Holdings(約140億) | 6.1億 | 多ジャンルにわたるゲーム開発実績と、エンジニア組織の獲得 |
ソフトウェア受託開発・パッケージ開発(エコー・システム) | 約14.2億 | システムサポートホールディングス(約269億) | 5.2億 | 同業グループの成長戦略の一環としての開発体制の拡充 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが抜けても、開発チームと顧客からの発注は続くか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の不安です。「買った後にエンジニアが辞めないか」「主要顧客からの発注が止まらないか」「代表がいなくなってプロジェクトが回らなくならないか」。この不安を小さくする要素は価格を押し上げ、不安を大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商2億円でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ エンジニアが定着し、買収後も開発体制を維持できる | ◎ 離職が多く、プロジェクトの継続に不安が残る |
◎ 代表が抜けても受注・プロジェクト管理・採用が回る | ◎ 代表個人が営業とプロジェクト管理を抱えている |
○ 直請け中心で、検収後もリピート発注が続く顧客が多い | ○ 下請け中心・単発案件が多く、翌期の売上が読みにくい |
○ 顧客が複数の業界・企業に分散している | ○ 売上が特定の1社に偏り、発注終了の影響が大きい |
○ 営業利益が継続的に出て、契約・検収・労務の資料が整っている | △ 契約書・検収記録・財務情報が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「開発体制が残るか」「代表に依存していないか」この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。直請け比率などの具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。受託ソフトウェア開発を含む「情報サービス業」の評価倍率です。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
情報サービス業(100件) | EV/EBITDA | 4.9倍 | 9.7倍 | 17.7倍 |
情報サービス業(106件) | PER | 6.7倍 | 13.5倍 | 27.7倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、受託ソフトウェア開発会社との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDAの3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
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