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「同業の自社開発のソフトウェア・システム開発会社が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
自社開発のソフトウェア・システム開発会社の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
自社開発のソフトウェア・システム開発会社の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 上場企業による買収の公開事例では、譲渡額は年商のおよそ0.7〜1.0倍に分布(規模が小さいほど高めの傾向。小規模帯は事例が少なく幅がある) |
② 買い手の値付け方法 | オファーで多いのは「EBITDA(利益)の3〜5倍+手元現金」を軸にした方法 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値5社の買い手がオファー |
まず、上場企業による買収のうち公開されている自社開発ソフトウェア・パッケージソフト・システム開発関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。譲渡額そのものよりも、「年商の何倍で成約しているか」の傾向に注目してください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
1〜3億円 | 約1.0倍 | 約1.2億円〜約15億円 |
3〜5億円 | 約0.9倍 | 約5,700万円〜約11億円 |
5〜10億円 | 約0.7倍 | 約2.4億円〜約6億円 |
10〜30億円 | 約0.7倍 | 約5.2億円〜約26億円 |
• 譲渡理由は「自社事業の選択と集中」と「事業の成長(さらなる拡大)」がそれぞれ約4割。事業を伸ばすための前向きな譲渡が中心で、「後継者不在」は約1割にとどまる
• 所在地は東京が約9割。買い手・売り手とも首都圏に集中
• 黒字案件は約4割。営業赤字でも成約しており、黒字であることは必須条件ではない
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
クラウドサービス | 5,000万〜1億円 | 約1,072万円 |
アプリ開発 | 1,000万〜5,000万円 | 約3,750万円 |
ソフトウェア開発 | 5,000万〜1億円 | 約6,050万円 |
SaaS | 1億〜2.5億円 | 約5.3億円 |
ソフトウェア販売 | 5億〜10億円 | 約7.9億円 |
結論:自社開発のソフトウェア・システム開発会社の価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「プロダクトが継続的な収益(保守・サブスクリプション・ライセンス更新)を生んでいるか」です。受託と違い、プロダクトと顧客基盤という引き継げる資産があることが、この業態の評価の土台だからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | プロダクトの継続収益(保守・サブスクリプション・ライセンス更新の比率) | ◎ 最重要 | 買収後も続く収益は、買い手がそのまま引き継げる資産。単発販売より継続課金が価格の土台になる |
2 | 営業利益(EBITDA) | ◎ 重要 | 買い手はEBITDA基準で値付けする。利益が出ているほど素直に価格が上がる |
3 | 開発を担うキーパーソン・開発体制の継続 | ○ | プロダクトの改修・保守が特定の個人に依存していると、その人が残るかどうかが評価を左右する |
4 | 特定業界・特定顧客への依存度 | ○ | 顧客・業界が分散しているほど、買収後の売上継続リスクが小さいと見られる |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、単発販売中心で利益が薄ければ評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず保守・サブスクリプションなど「続く収益」を厚くし、開発が特定の個人に依存しない体制を整える。売上規模を追うのはその後です。
結論:買い手のオファーは「EBITDA(利益)の3〜5倍+手元現金」を軸にした方法に集約されます。プロダクトの将来性が話題になりやすい業態ですが、値付けの出発点はあくまで利益です。
M&Aサクシードの自社開発ソフトウェア関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、最も多いのはEBITDA倍率+手元現金を軸にした方法。残りの方法も、EBITDAか純資産を軸にした変種にすぎません。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ) | 標準形。これが基準と考えてよい |
EBITDA × 倍率のみ | 上記の変種。手元資金を分けずに収益力で評価 |
時価純資産 + 営業利益の数年分 | 資産価値に、のれん(営業利益の数年分)を加える方法 |
純資産 + EBITDA × 倍率 | 上記の変種。資産価値に収益力を加算 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。これに手元現金を上乗せした金額が、オファーの初期レンジになります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「利益(EBITDA)を厚くし、手元現金を残しておくこと」。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。継続課金の比率やプロダクトの独自性は、この基準の上に上乗せされる要素です。
結論:「うちのようなニッチなプロダクトに買い手がつくのか」という心配は、データを見ると小さいといえます。自社開発ソフトウェア関連の案件には、1社あたり中央値5社の買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの自社開発ソフトウェア関連案件のデータでは、1社あたり中央値で5社、多いケースでは31社の買い手がオファーを寄せています。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 5社 |
平均 | 約8社 |
最も多かった案件 | 31社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。自社開発のソフトウェア・システム開発会社関連の売り案件は市場に約36件あり、案件の流通は安定して続いています。
一方の買い手側は、1案件あたり中央値5社のオファーを出しています。需給バランスの取れた市場だけに、評価は個社の中身で決まります。同業種の他案件と並んだときに何が違うのかを示せる売り手ほど、良い条件を引き出しています。
この需給の環境は、売り手にとって交渉の進め方そのものを変えます。プラットフォームを使えば、複数の買い手が同じ期間に案件を検討するため、条件を見比べられるオファーがまとまって集まりやすくなります。オファーを1本ずつ受けて判断するのではなく、同じ期間に並べて比較できることが、交渉のしやすさに直結します。比較されている前提で買い手が条件を出す状況では、価格はもちろん、従業員の処遇や引き継ぎ期間についても、売り手の希望条件を軸に交渉を進めやすくなります。
なお、売りに出ている案件の譲渡理由としては「事業拡大・成長戦略」が最も多く、「後継者不在」がそれに続きます。事業や業績に問題があって売りに出るケースばかりではない、という点は売り手・買い手双方にとって押さえておきたいポイントです。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 100億円超の大手が最多(約4分の1)。10〜30億円の中堅も多い |
M&A経験 | 約78%が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が約7割。東証プライム・グロース等の上場企業も約3割近く |
エリア | 約65%が東京。愛知・大阪など都市圏が続く |
業種 | ソフトウェア・IT関連の同業が中心。開発機能の取り込みやDXを狙う事業会社も |
結論:自社開発のソフトウェア・システム開発会社の買い手で存在感が大きいのは、プロダクトと顧客基盤をまとめて取り込みたいIT・Web系の事業会社です。プロダクトという引き継げる資産があるため、異業種の事業会社にまで買い手の裾野が広がります。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業のソフトウェア・システム開発大手 | ◎ 中心・動きが早い | SBテクノロジー(約657億)/東海ソフト(約107億) | パッケージ・プロダクトラインと開発体制をまとめて取り込み、サービスを拡充 |
Web・プラットフォーム事業会社 | ○ 価格が出やすい | メドレー(約293億)/エイチーム(約239億)/ジーニー(約113億) | 自社サービス群への組み込み。技術・プロダクト・顧客基盤の獲得 |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | ジェイリース(約173億・家賃債務保証) | 自社の業務・顧客基盤とプロダクトを掛け合わせるDX・サービス強化 |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | —(IT関連の買い手候補にも一定数) | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買われるのでは」という心配は実態と逆です。買い手はプロダクト・顧客基盤・開発チームをまとめて引き継ぎたいからこそ、事業の継続を前提に、複数のタイプの買い手が手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
医療分野のパッケージシステム開発・導入・運用(オフショア) | 約10.4億 | メドレー(約293億) | 約25.8億 | 医療ヘルスケア領域のDX推進。パッケージシステムと顧客基盤の取り込み |
ヘッドレスCMS「microCMS」の開発・販売(microCMS) | 約2.1億 | エイチーム(約239億) | 15億 | 成長する自社プロダクト(SaaS型CMS)の獲得によるグループ強化 |
環境検査システムやパッケージソフト等の開発・販売(エイビス) | 約17億 | ジェイリース(約173億) | 12.3億 | 異業種(保証関連事業)によるシステム開発機能の取り込み・サービス強化 |
全文検索エンジン等の研究開発・企業向け検索サービス(ビジネスサーチテクノロジ) | 約4.5億 | ジーニー(約113億) | 11億 | 独自の検索技術の獲得と、マーケティングプラットフォーム事業との連携 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが抜けても、プロダクトは売れ続け、開発は続くか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「開発を担うキーパーソンが辞めて改修や保守が止まらないか」「保守・サブスクリプションの解約が増えないか」「代表がいなくなって販売や顧客対応が回らなくならないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商2億円でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 保守・サブスクリプションなど継続課金の比率が高い | ◎ 単発のライセンス販売が中心で、収益が翌期に続かない |
◎ 開発を担うキーパーソンが買収後も残り、設計・ソースコードが文書化されている | ◎ 開発が代表や特定個人の頭の中に集中している |
○ 顧客が複数の業界・企業に分散している | ○ 特定業界・特定顧客に売上が偏っている |
○ 営業利益が継続的に出ている | ○ 値引きや個別カスタマイズ対応で利益が薄い |
○ ライセンス契約・知財・開発資料が整理されている | △ 契約書・知財・開発資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「収益が続くか」「開発が特定の個人に依存していないか」この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。継続課金比率などの具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。自社開発のソフトウェア・システム開発会社を含む「情報サービス業」の評価倍率です。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
情報サービス業(100件) | EV/EBITDA | 4.9倍 | 9.7倍 | 17.7倍 |
情報サービス業(106件) | PER | 6.7倍 | 13.5倍 | 27.7倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、自社開発のソフトウェア・システム開発会社との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDAの3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
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