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「同業の通信工事・電気通信工事会社が、いくらでM&Aされたのか」――気になったことはありませんか。
通信工事・電気通信工事会社の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る――どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
通信工事・電気通信工事会社の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すか――をあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 上場企業による買収の公開事例(年商5〜10億円帯)では、譲渡額は年商の約0.3倍前後。ただし公開事例は多くなく、公的統計・オファーとあわせて見るのが現実的 |
② 買い手の値付け方法 | オファーでは「純資産+営業利益の数年分」「EBITDA×3〜5倍+手元現金」など、収益力と純資産を軸にした方法が中心 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値3社・最大14社の買い手がオファー |
まず、上場企業による買収のうち公開されている通信工事・電気通信工事会社の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。この業種は公開される成約事例自体が多くないため、数字は「水準感の手がかり」としてご覧ください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
5〜10億円 | 約0.3倍 | 約2.4億〜約4.2億円 |
• M&Aサクシード内の成約では、譲渡理由は「代表者の引退」「後継者不在」が中心
• 黒字の会社が成約しているが、価格は利益水準や引き継げる体制によって個別に決まる
• この業種は成約データの蓄積がまだ薄いため、構成比(◯%)の形では示さず、傾向のみ紹介
事業の特徴(匿名) | 年商規模 | 成約額の目安 |
電気通信設備工事会社 | 1億〜2.5億円 | 約2.7億円 |
電気工事会社 | 2.5億〜5億円 | 約4.7億円 |
結論:通信工事・電気通信工事会社の価格を決める中心は、売上規模ではなく「有資格者と施工体制が買収後も残るか」です。電気通信主任技術者や工事担任者、施工管理技士の在籍は、買い手にとって工事を受注・遂行する力そのものだからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 有資格者・施工体制が残るか(電気通信主任技術者・工事担任者・施工管理技士の在籍、協力会社網) | ◎ 最重要 | 資格と施工力=事業そのもの。買い手が気にするのは買収後に工事を担える体制が残るか |
2 | 営業利益(EBITDA) | ◎ 重要 | 買い手は利益を基準に値付けする。キャリア・元請からの継続発注や保守・運用で利益が安定しているほど、評価が上がりやすい |
3 | 通信キャリア・元請との取引の継続性、保守・運用収益の比率 | ○ | 継続的な発注枠や保守契約は買収後の売上を安定させ、評価を底上げする |
4 | 顧客分散・代表非依存 | ○ | 特定元請への依存や代表個人への営業集中はリスクとして減点される |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 工事の出来高で売上が大きくても、利益が薄く体制が引き継げなければ評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「資格者と施工体制が残る状態」を作り、次に「利益を残す」。売上を追うのはその後です。
結論:通信工事・電気通信工事会社へのオファーでは、買い手は共通して収益力と純資産を見ています。「純資産+営業利益の数年分」「EBITDA×3〜5倍+手元現金」が代表的な型です。
M&Aサクシードの通信工事・電気通信工事関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、方法は分かれるものの、その多くは純資産か収益力(EBITDA・営業利益)を軸にした型に整理できます。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
純資産 + 営業利益の3〜5年分 | 資産価値に収益力(のれん)を加算する型。工事業では純資産を土台に見る買い手が多い |
EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金 | 収益力を軸に、手元現金を上乗せする型 |
純資産 + EBITDA × 3〜5倍 | 上記の変種。資産と収益力の両面から評価 |
具体的にイメージすると――
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。ここに純資産や手元現金、買い手とのシナジーが加味されて、オファーの初期レンジが決まります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は、利益を厚くし、純資産と手元現金を整えておくこと。節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような工事会社に買い手はつくのか」という点は、データで確認できます。通信工事・電気通信工事関連の案件には、1案件あたり中央値3社の買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの通信工事・電気通信工事関連案件(10案件)のオファーデータでは、1案件あたり中央値で3社、多いケースでは14社の買い手がオファーを寄せています。件数は派手ではありませんが、複数の買い手が比較できる状態は交渉上の意味が大きい水準です。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 3社 |
平均 | 約5.1社 |
最も多かった案件 | 14社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうでしょうか。現在、M&A市場に売りに出ている通信工事・電気通信工事会社関連の案件は約27件で、一定の流通量がある業種です。
買い手側は、前述のとおり1案件あたり中央値3社がオファーを出しています。供給と需要が釣り合った、いわば「実力勝負」の市場です。案件が珍しくないぶん、買い手は事業内容を見て選別します。強みが伝わる形で情報を整理できるかどうかが、オファーの数と条件を分けます。
もう一つ、交渉の環境として知っておきたい点があります。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件を検討するため、比較検討できるオファーを同じ期間にまとめて集めやすくなります。オファーを1本ずつ受けて判断するのではなく、同じ期間に並べて比較できることが、交渉のしやすさに直結します。オファーが複数並ぶと、買い手も他社と比較されていることを前提に条件を出すため、価格だけでなく、従業員の雇用継続や取引先との関係維持といった条件面でも、売り手の希望をのんでもらいやすくなります。
ちなみに、市場に出ている案件の譲渡理由を見ると「後継者不在」が中心で、「事業拡大・成長戦略」も一定数あります。売却は特別な事情のある会社だけのものではなくなりつつあります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 売上100億円以上の大手が最多。5億〜50億円の中堅企業も幅広く参加 |
M&A経験 | オファーを出した買い手の約8割が「M&A経験あり」。買い慣れた企業が中心 |
上場/非上場 | 非上場が中心(約4分の3)。東証プライムをはじめ上場企業も参加 |
エリア | 東京が半数超。大阪・埼玉・愛知など各地の買い手も |
業種 | 電気・通信工事の同業グループ、電設系、IT・インフラ系の事業会社など |
結論:買い手の中心は、電気・通信工事の同業や電設系のグループです。有資格者と施工体制を面で確保し、対応エリアと工事領域を広げられることが動機だからです。
買い手は複数のタイプに分かれますが、出現頻度も価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業・電設系の工事会社グループ | ◎ 主役候補 | Cross Eホールディングス(約45.8億円、共新電設工業を約4.2億円で取得) | 施工体制・有資格者・エリアをそのまま引き継げる。雇用も継続されやすい |
上場企業・大手グループ | ○ 価格が出やすい | AKIBAホールディングス(約182.7億円、通信インフラ領域で複数の工事会社を取得) | 通信インフラ事業の基盤強化。グループ会社として複数社を取得する動きも |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | セキュア(物理セキュリティ、約62.5億円)/アトラ(約42.3億円) | 設置施工の内製化や、自社サービスと工事の一貫提供が狙い |
投資ファンド | △ 条件次第 | — | 成長投資や同業を束ねる起点。利益と管理体制が整った会社に関心 |
つまり、買い手像を一つに決めつけないことが大切です。施工体制を評価する同業、通信インフラ投資を進める大手、内製化を狙う異業種――自社の強みをどの買い手が最も評価するかで、条件は変わってきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
電気通信工事・電気工事(ジェイ・ティー・エヌ) | 約4.9億 | セキュア(約62.5億円) | 約7.6億 | セキュリティシステムの設計から施工・保守までを一貫提供する体制の強化 |
電気通信工事の設計・施工管理(ブランチテクノ) | 約9.5億 | AKIBAホールディングス(約182.7億円) | 約2.7億 | 通信インフラ事業の基盤強化と新たな収益源の獲得 |
Wi-Fi機器設置・保守などの電気通信工事+BPO(バディネット) | 約2.7億 | アドテック(現AKIBAホールディングス、約182.7億円) | 2.5億 | 業容拡大と収益基盤の強化に向けた通信インフラ領域への進出 |
IP-PBX設計・構築・保守+通信設備工事(Phone Appli) | 約8.3億 | アトラ(約42.3億円) | 約2.4億 | 全国展開する自社サービスを支えるIT・通信基盤の強化 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い――「あなたが抜けても、資格者と工事は回り続けるか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の不安です。「資格者が辞めて施工体制が崩れないか」「元請からの発注が続くか」「代表がいなくなって現場が回らなくならないか」。この不安を小さくする要素は価格を押し上げ、不安を大きくする要素は価格を下げます。
同じ売上規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 電気通信主任技術者・工事担任者など有資格者が定着し、買収後も残る | ◎ 資格者が少なく、特定の職人・技術者に施工が依存している |
◎ 代表が抜けても受注・施工管理・安全管理が回る | ◎ 代表個人に営業・元請との関係・現場管理が集中している |
○ 通信キャリア・元請との取引が続き、保守・運用収益がある | ○ スポット工事中心で、翌期の売上が読みにくい |
○ 元請・顧客が複数に分散している | ○ 発注元が1社に偏り、契約終了の影響が大きい |
○ 営業利益が継続的に出て、契約書・労務・財務情報が整理されている | △ 必要資料が整理されておらず、実態把握に時間がかかる |
最初の2行(◎)が決定的です。「資格者と施工体制が残るか」「代表に依存していないか」――この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。通信工事・電気通信工事を含む「設備工事業」の倍率です。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
設備工事業(111件) | EV/EBITDA | 3.3倍 | 6.7倍 | 12.1倍 |
設備工事業(130件) | PER | 6.3倍 | 13.2倍 | 24.1倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、通信工事・電気通信工事会社との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | 純資産や収益力(EBITDA・営業利益の数年分)を軸にした算定。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのは“あなたの会社の社名”だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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相場の確認も、会員企業からのオファーの受け取りも無料です。契約や決算書の提出も不要で、オファー相手の企業に対しては会社名を匿名のまま利用できます。
問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
通信工事・電気通信工事会社の価格を最も左右するのは「有資格者と施工体制が残るか」、次に「利益(EBITDA)」です。買い手の値付けは純資産や収益力を軸にした型が中心で、通信キャリア・元請との取引の継続性や保守・運用収益、5G・データセンターなどインフラ投資需要への対応力が評価を底上げします。買い手には電気・通信工事の同業グループや電設系、IT・インフラ系の企業が並び、1案件あたり中央値3社の買い手がオファーを寄せています。
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