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「同業の託児所・一時預かり保育施設が、いくらでM&Aされたのか」――気になったことはありませんか。
託児所・一時預かり保育施設の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る――どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
託児所・一時預かり保育施設の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すか――をあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 託児・一時預かりを単体で手がける中小企業の公開成約事例は僅少。ベビーシッター事業などを含む子育て支援会社の事例では、年商約5.7億円に対し譲渡額約7.5億円(年商の約1.3倍) |
② 買い手の値付け方法 | オファーでは案件の個別事情に応じた提示が多く、算定方法を明示した提示では「EBITDA(利益)の3〜5倍」が使われている |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | 該当する案件数は限られるものの、複数の買い手が同時にオファーを寄せた案件も。保育関連の買い手候補はおよそ78社が登録(仮説段階の候補数) |
まず、上場企業による買収のうち公開されている託児・一時預かり・ベビーシッターなど子育て支援関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しようとしました。ただし、託児所・一時預かり保育施設を単体で手がける中小企業の公開成約事例はごく僅少で、確認できたのはベビーシッター事業などを含む子育て支援会社の事例に限られます。年商倍率は単一の事例にもとづく参考値としてご覧ください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
5〜10億円 | 約1.3倍 | 約7.5億円 |
• 託児所・一時預かり保育施設に該当する当社プラットフォーム内の成約は、現時点の集計では確認できません。そのため譲渡理由・所在地・黒字比率などの傾向値の掲載は控えます
• 一方で、当社プラットフォームのオファーデータでは、託児関連の案件に複数の買い手が関心を示した実績があります(詳細は後述)
結論:託児所・一時預かり保育施設の価格を決める大きな要素は、売上規模ではなく「保育を担うスタッフが買収後も定着するか」と「稼働率や法人契約(院内・事業所内保育の受託など)が安定して続くか」です。人がいなければ施設の運営は続けられず、継続的な利用と受託契約が収益の土台だからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 保育スタッフ(有資格者)の確保・定着 | ◎ 最重要 | 保育に必要な人員体制を保てないと施設の運営を続けられない。買い手が気にするのは、買収後に人が辞めないか |
2 | 稼働率と法人契約(院内・事業所内保育の受託など)の継続性 | ◎ 重要 | 継続的な利用と受託契約が収益の源泉。安定していれば買収後の収益予測が立てやすい |
3 | 営業利益(EBITDA) | ○ | 買い手は利益を基準に値付けしやすい。利益が出ているほど素直に価格が上がる |
4 | 立地と代表非依存の運営体制 | ○ | 駅や病院・オフィスに近い立地は利用ニーズに直結する。代表が抜けても運営が回る体制は評価されやすい |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、稼働が低い・利益が薄い・人が定着していなければ評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず保育スタッフの定着と稼働率・契約の安定を保ち、次に利益を残す。売上規模を追うのはその後です。
結論:託児所・一時預かり保育施設のオファーでは、案件の個別事情に応じた提示が多く、算定方法を明示した提示では「EBITDA(利益)の3〜5倍」が使われています。買い手は共通して、収益力と引き継げる運営体制を見ています。
M&Aサクシードの託児所・一時預かり保育施設関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を確認すると、事業内容やシナジーに応じた個別の提示が多く、方法を明示した提示ではEBITDA倍率が使われています。該当する提示が僅少なため、構成比としてではなく提示例として整理します。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
その他(案件の個別事情に応じた算定) | 最も多い。事業内容・資産・買い手とのシナジーに応じた個別の提示 |
EBITDA × 3〜5倍 | 算定方法を明示した提示の代表形。収益力(EBITDA)に一定の倍率を掛けて評価する方法 |
具体的にイメージすると――
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円が初期レンジの土台になります。ここに手元現金や純資産、買い手とのシナジーが加味されます。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は、稼働率を保って利益(EBITDA)を厚くし、買い手が安心して引き継げる運営体制を作ることです。
結論:託児所・一時預かり保育施設に該当する案件は当社プラットフォームでも多くはなく、1案件あたりのオファー社数の統計は目安にとどまります。それでも複数の買い手が同時にオファーを寄せた案件があり、保育関連の買い手候補はおよそ78社が登録しています(仮説段階の候補数)。
M&Aサクシードの託児所・一時預かり保育施設関連案件では、1案件あたり中央値で1社、多いケースでは2社の買い手がオファーを寄せています。該当する案件の数自体が限られるため、値は参考としてご覧ください。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 1社 |
平均 | 約1.4社 |
最も多かった案件 | 2社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。託児所・一時預かり保育施設関連の売り案件は市場にほとんど出回っておらず、公開されること自体が珍しい業種です。
買い手側の関心が前述のとおり存在することを踏まえると、この業種は「売り案件が出てくれば注目される」待ち需要型の市場です。市場に類似案件が少ないぶん、買い手は他案件と天秤にかけにくく、売り手が交渉の主導権を握りやすい構図といえます。
そのうえで大事になるのが、オファーの集め方です。プラットフォームを使えば複数の買い手が同じ期間に案件を検討するため、オファーが重なったときに、条件を見比べながら判断できます。相対で1社と向き合うのではなく、複数のオファーを並べて比較しながら進められる状態です。複数のオファーが集まれば、交渉の主導権は売り手側に寄ります。価格に加えて、従業員の雇用継続や取引先との関係維持などの条件面でも、売り手側の意向を反映しやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを見ると、買い手像の輪郭が見えてきます。該当するオファーが僅少なため、構成比ではなく傾向の参考としてご覧ください。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 10〜30億円の中堅企業が中心。1億円未満から50億〜100億円規模まで幅がある |
M&A経験 | M&A経験のある買い手が半数超。買い慣れた買い手も手を挙げている |
上場/非上場 | 非上場の事業会社が中心。上場企業からのオファーも |
エリア | 東京が最多。福岡など首都圏以外の買い手も |
業種 | 保育・子育て支援に近い事業や、教育・福祉など隣接領域の事業会社が想定される(該当が僅少のため構成比は示していません) |
結論:託児所・一時預かり保育施設の買い手で最も存在感があるのは、「施設・スタッフ・利用者をまとめて引き継ぎ、保育・子育て支援サービスを広げたい同業・隣接の事業会社」です。新規開設や採用をゼロから行うより、運営実績のある施設を引き継ぐ方が早いと考えているからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業(保育・子育て支援)の事業会社 | ◎ 主役候補 | テノ.ホールディングス(約160億、ベビーシッター等を含む子育て支援会社を取得)/グローバルキッズCOMPANY(約270億、保育関連2社を取得) | 施設・スタッフ・利用者をまとめて引き継ぎやすく、運営の継続を前提に評価 |
上場教育サービス大手 | ○ 価格が出やすい | 京進(約265億)/城南進学研究社(約56億)がそれぞれ保育会社を取得 | 教育と保育の一体展開。グループ会社化で子育て支援領域を強化 |
異業種・事業会社(医療・福祉・生活サービス等) | ○ シナジー次第 | ソラスト(約1,374億、保育事業会社を取得) | 医療・介護・福祉サービスと組み合わせた子育て支援領域への展開 |
投資ファンド | △ 条件次第 | — | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり、買い手像を一つに決めつけないことが大切です。施設の立地・法人契約・スタッフ体制をどの買い手が最も評価するかで、条件は変わってきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。託児・一時預かりを単体で手がける会社の公開事例は僅少なため、ベビーシッター事業を含む子育て支援会社の事例に加え、近接する保育施設運営の事例を参考として掲載します。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
子育て支援事業:認可保育所の運営・ベビーシッター・英語教室など(オフィス・パレット) | 約5.7億 | テノ.ホールディングス(約160億) | 約7.5億 | 「女性が働き続けるために何が必要か」に応える子育て支援サービスの拡充。保育ニーズの高まりを捉えた主要都市への施設展開 |
0〜2歳児対象の小規模保育事業:東京・千葉等で保育施設を運営(JBSナーサリー) | 約2.5億 | 城南進学研究社(約56億) | 約1.5億 | 教育の会社が、女性の社会進出を後押しする将来性のある事業として保育事業を拡大 |
保育所の運営(ビーフェア) | 約3.4億 | 京進(約265億) | 約5.2億 | 学習塾の会社が、次の柱となる新規事業として保育に投資。子育てをめぐる社会の要請に応える |
保育事業・コンサルタント事業:東京都中心に認可保育所等を運営(こころケアプラン) | 約30.3億 | ソラスト(約1,374億) | 約33.2億 | 東京都を中心とした認可保育所等のシェア拡大と保育事業の成長 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い――「あなたが手を離しても、スタッフと利用者、そして契約は残るか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後にスタッフが辞めないか」「稼働率が落ちないか」「法人契約が打ち切られないか」「代表がいなくなって運営が回らなくならないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ売上規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 保育スタッフが定着し、買収後も必要な人員体制を保てる | ◎ 離職が多く、人員体制の維持が不安定 |
◎ 稼働率が安定し、法人契約(院内・事業所内保育の受託など)が続く見込みが高い | ◎ 稼働率が低い・特定の契約の打ち切りで収益が崩れやすい |
○ 代表が抜けても運営・採用・保護者や契約先への対応が回る | ○ 代表個人に運営・採用・契約先対応が集中している |
○ 利用者・契約先が複数に分散している | ○ 収益が特定の契約先1社に偏っている |
○ 施設運営に関する届出・契約書・労務・財務の資料が整理されている | △ 必要資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が大切です。「人が残るか」「稼働と契約が安定しているか」――この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 買い手の取得理由や当社プラットフォームのデータから見られる傾向の一般的な整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。認可外保育施設の届出など制度面の要否は施設の形態・地域により異なるため、個別には所管自治体等の情報をご確認ください。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。託児所・一時預かり保育施設を直接対象とした区分がないため、保育・福祉を含む「社会保険・社会福祉・介護事業」を参照します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
社会保険・社会福祉・介護事業(99件) | EV/EBITDA | 3.7倍 | 9倍 | 19.2倍 |
社会保険・社会福祉・介護事業(104件) | PER | 3.5倍 | 8.5倍 | 19.7倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、託児所・一時預かり保育施設との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDA(利益)の3〜5倍。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのは“あなたの会社の社名”だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
▶ まずは自社に近い託児所・一時預かり保育施設の相場を見る(無料)
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相場の確認も、会員企業からのオファーの受け取りも無料です。契約や決算書の提出も不要で、オファー相手の企業に対しては会社名を匿名のまま利用できます。
問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
託児所・一時預かり保育施設の価格を最も左右するのは、売上規模ではなく「保育スタッフが定着するか」と「稼働率・法人契約(院内・事業所内保育など)が安定して続くか」です。該当する公開成約事例や当社プラットフォームでの案件は多くないものの、オファーではEBITDA(利益)を軸にした値付けが見られ、保育関連の買い手候補はおよそ78社が登録しています(仮説段階の候補数)。買い手の主役は、施設・スタッフ・利用者の引き継ぎを前提に手を挙げる、保育・子育て支援を広げたい同業・隣接の事業会社です。
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